「空母いぶき」【映画レビュー(ネタバレあり)】国を守るとはどういうことか、考えるきっかけになれば駄作でも価値がある


2019年、映画館で観る4本目は「空母いぶき」。

「空母いぶき」公式サイトはこちら

ちょうど憲法改正が争点となりそうな選挙が迫る中での公開となりました。
扱うテーマとしてはいいのですが、いろいろ突っ込みどころがある作品だというのは確かです。



なお、以下に映画「空母いぶき」の感想・レビューを書きますが、ネタバレを含みますのでその点を納得した上で読まれる方はどうぞ。



「空母いぶき」、国を守るとはどういうことか、考えるきっかけになれば駄作でも価値がある




軍事的にツッコミどころ満載


まず、細かい点でおかしな点が多すぎる作品だった。


なぜ偵察に通常のファントムが行く? RF-4Eではないのか? しかもミグ35をステルス戦闘機と呼ぶ? そして仮にステルス戦闘機だとしてファントムのレーダーでなぜ補足できる?

カタパルト装置のない空母いぶきからF-35が発艦するためにはリフトファンを使うはずだが使っているようには見えない。

いぶきの格納庫のシーンではF-35Bがズラッと並んでいるが、車輪に車止めもなく、機体をロープで固定もしていない。また、整備のための道具もなにもないガランとした空間になっている。

海上自衛隊員の戦闘服には日の丸ではなく日章旗だと思うのだが、これは日章旗アレルギーの某国に対する配慮なのか?

イージス艦の150mm砲でピンポイント攻撃ができるのか?


ちょっとマニアックすぎるかもしれないが、おかしな点が多すぎる。
日本の観客の多くは気づかない点なのでこれでいいと思ったのか、あるいは調べ足りなかったのか。

こういう細かい点の積み重ねが作品にリアリティを生むだけに、かなり残念な点だ。



脚本が破綻している2つの理由


上記のような細かい点を容認したとしても、そもそもの脚本が破綻している。


まず、我が国の領土を不法占拠しようとする国が、カレドルフという架空の国で、フィリピンの北東あたりにある島国という設定。

かりにそういう国があったとして、はたして建国から3年程度の国家が、ロシアの最新鋭戦闘機ミグ35を60機搭載した空母を中心とした機動艦隊を所有できるのだろうか。(ちなみにミグ35は高性能な割に非常に安い機体だ。日本のF-35とは値段が一桁違う。)

100歩譲ってそういう国があったとしよう。
その位置にある国が小笠原諸島から西に400kmの海上にあると設定した波留間群島・初島(これも架空の島)を取りに来るのか? 地政学上ありえないのではないか。

これはやはり原作通り中国が尖閣諸島を占拠しようとする脚本でないと成り立たない。
また、太平洋に出たがっている中国なら架空の初島を占拠というシナリオでもリアリティを持たせることができる。

まぁ、大人の事情があるのだろうが。



もう1つ脚本が破綻していると感じるのは、この紛争の終結を国連軍の仲裁がなしたことだ。
しかも常任理事国5カ国がそろって戦いの舞台に割って入り、水戸黄門の印籠よろしく国連旗を揚げてみせた。

このラストシーンを見た時、僕はもう嘲笑するしかなかった。

「そなことあるわけないやろ」と。

日本人の平和ボケと国連崇拝ここに極めりだ。




映像は頑張った方ではないか


つらつらとここまでこの作品をこき下ろしてしまったが、良かった点も語っておく。

まず、CG表現がわりと頑張っていたと思う。
もちろん、ハリウッドの水準からは程遠いが、一時期の邦画よりはかなり進歩した。

また、F-35はヘルメット内に映像が映る仕組みになっているがその表現もなかなかよかった。

あと、俳優陣もいい演技だったと思う。
個人的には「撃てっ」ではなく「いてまえ!」と命令を出す関西弁の艦長が気に入った。



国防の現場にこれだけ危険を強いる憲法9条って一体何?


さて、いろいろと問題のある作品ではあったが掲げているテーマは大きい。

ちょうど憲法改正が争点になりそうな選挙が近づいている。

ここで多くの日本人に国をもまるためにはどうしなければならないかを考えてもらいたいし、この作品がそのきっかけとなればいいと思う。

この作品では、領土を不法占拠されても、空自の偵察機が撃墜されて戦死者がでても、防衛出動命令を出し渋る総理が描かれているが、これは異常な国である。

しかも、現場の自衛官も「やらなければやられる」という場面においても引き金を引くことを躊躇し、できるだけ敵の戦死者が出ないような配慮をする。

こんな軍隊もあり得ない。
自らの命を危険にさらして敵の生命を守ろうとしているなんて。



また、本作品では安保で守ってくれることになっている米軍が戦闘に登場しない。


いぶき艦長は言う、『自衛隊が誇れるのは、戦後1名の戦死者を出していないことではなく 1名の国民の戦争犠牲者を出していないことである』

日本国憲法が誕生した時と、我が国を取り巻く安全保障上の環境は大きく変わっている。
現に海を越えて他国を侵略できる能力とその意志を持った国がすぐ近くに存在している。

もしほんとうに国民の生命と財産を守ることを考えるなら、ここで憲法9条がこの国を守ってきたのが幻想だということをこの映画を見て感じてもらえたらと思う。


「力無き正義は無力なり」




原作はこちら








 


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