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「出藍の誉れ」にいたる「道」【書評】久保 憂希也・芝本 秀徳(共著)『頭の回転数を上げる45の方法』(Discover21)

会計本で有名な久保憂希也さんとプロセスデザインのスペシャリスト、芝本秀徳さんがタッグを組んだビジネス思考本。

全く土俵の違う異色コンビの競演ですが、なかなか質実剛健テイストに仕上がっております。

これはぜひフレッシュマンに読んでいただきたく、ご紹介します。

 

【目次】
まえがき

 心構えを知る
 基礎を鍛錬する
 問題に取り組む

 先を読む
 作戦を立てる
 常識を疑う

 次元を上げる
 場を読む、人を知る
あとがき

【ポイント&レバレッジメモ】
■今回はフレッシュマンのために「守」からピックアップしました。

★当事者意識を持つ

 なぜ当事者意識が大事なのか。それは、「思考を停止させない」ためだ。それは、「思考を停止させない」ためだ。他人のせいにする、上司のせいにする、会社のせいにする。他責にするのは簡単なこと。しかしそれは、自分の責任を放棄していることに他ならない。
 他責にすれば、その瞬間から、自分で何も考えなくなる。人のせいなのだから当然だ。「誰かが考えて処理しろよ」というわけだ。しかし、こんな考えで仕事が先に進むだろうか。<中略>
 当事者意識を持ち、自分の責任で仕事を進める人間になろう。そのためには次の三つを実践するといい。

1. 自分に問いかける
  「自分にもっとできることがあったのではないか」

2. 他部署の仕事を率先して請け負う
  コントロールできる仕事の領域を物理的に増やすことは、もうあとには引けなくなるのだから、当事者意識を醸成するのには最高だ。

3. 悪いことは自分のせい、良いことは他人のおかげ
  悪い結果と良い結果で、その都度考え方を切り替えることができれば、当事者意識としては最高レベルといえよう。

★知識を身につけながら実践をつむ

 知識は、車の片輪。ではもう一方の片輪は何かというと、実際に仕事をするという実践だ。<中略>知識と実践の両輪がそろってはじめて、自分が思った方向に運転することができる。
ではどうすれば仕事ができるようになるのか、2点挙げておく。

1. 直感や経験を磨く
  仕事に必要なのは知識だけではない。他の重要な要素として、直感と経験が必要だ。<中略>また、人は経験からしか学べない。より多くの経験をすることで、知的運用能力を磨き、仕事ができる人になってゆくのだ。

2. やったことがないことをやる
  「やったことがないことをやる」からいいのだ。やったことがあることばかりやっていて、人間は成長するだろうか。成功体験であろうと、失敗体験であろうと、どちらも貴重な経験に違いない。

★KKD(勘・経験・度胸)も重視する

 「勘」「経験」「度胸」のうち、基本となるのは「経験」だ。「勘」も「度胸」も経験から生まれるからだ。<中略>本当の生きた知識、つまり実際の問題を解決できる知識は、経験をしなければ手に入らない。その理由はいくつかある。
第一には、「経験していないと、自称と知識の紐づけができない」<中略>

次に、「経験していないと、何が大事なのかわからない」<中略>

最後に、「経験していないと、そこに書かれていないことがわからない」<中略>

 つまり、知識は「経験」があってこそ活きるということだ。そして経験だけに頼る弊害は「知識」で補っていく。この相補関係があってはじめて、「知識」と「経験」が意味ある「経験値」となるのだ。

★型や基本を重視する

 ものごとに取り組むときには、「できることは『守』しかなく、『破』と『離』は結果に過ぎない」ということを常に意識しておかなければならない。では、「守」に取り組むにためには、具体的にどのように取り組めばいいのか。

1. 原典にあたる
  どんな分野にも「型」がある。そして「型」を学ぶためには原典にあたることだ。

2. 自分の仕事の基本について考える
  仕事は常に「お客様のためにやっている」ということを認識すること。お客様が何を求めているのかを徹底的に考えること。ビジネスの基本は常に「お客様」にあるのだ。

3. 徹底して基本に取り組む
  徹底して基本に取り組むうちに必ず「気づき」が生まれる。「こうすれば別のことにも使えるのでは」「こういうやり方をすれば、もっとうまくできるのでは」という発見があるのだ。この段階に至れば「破」といえる。

★とにかくやり始める

 「やり始めることで『やる気』が出る」のであって、やり始める前にやる気がないのは当然なのだ。
 また、「やり始める」前には、とにかく考える時間を作らないことが大切だ。「次は何をしようかな」などと考えているうちに興味は他に写ってしまい、結局仕事には手をつけられなくなってしまう。頭に考えるヒマを与えず、とにかく「やり始める」ための仕組みを作ってしまうことだ。
 具体的には、次のようなアプローチがある。

1. 習慣の力を利用する
  頭にヒマを与えないということは、ある条件が成立したら、すぐに始める習慣を身につけるということ。「やろう、やろう」と思う前に、条件が成立したら自動的に始めるのだ。

2. 場所と仕事を紐づけする
  場所と仕事を紐づけしてしまえば、やる気がなかったとしても、その場所に行きさえすれば、自動的にその仕事を始めることになる。

3. 時間と仕事を紐づけする
  時間と仕事を紐づけすることもできる。午前中はこの仕事、午後はこの仕事というように、時間帯によってやる仕事の種類を決めておくのだ。

★時間の制約をかける

 仕事ができる人を見ていると、うまく「時間の制約」を利用していることがわかる。ただ時間を設定すればいいというわけではないのだ。ポイントは3つある。

1. 「速く、かつ正確に」を意識する
  いつでも正しい判断をするためには、常に「急ぎ」モードでいることだ。急な判断を求められる状態を「デフォルト(当たり前)」にしてしまうのだ。そうすることで、頭はそれが普通の速度だと思うようになる。

2. 負荷をかけすぎない
  「できるかできないか、五割の確率」よりも少しだけゆるい設定にすることだ。

3. 徐々に負荷を上げていく
  最初は1時間でしていたことを、次は55分で、その次は50分でと、スピードを上げていく、つまり頭への負荷を上げていくのだ。そうすれば頭の回転数も上がっていく。

【感想など】
本書は、当ブログではお二人とも著書を紹介したことがある、久保憂希也さんと芝本秀徳さんの共著です。

本書のどの部分を誰が担当したのかというのはわからないのですが、本書全体に武道の雰囲気が醸し出されているのは多分あの方の影響かと・・・。

その詮索はさておき、ワタクシも武道経験者ですので、このテイストは大好きですし、本書全体を通して、非常に腑に落ちる内容でした。

さて、本書について語る前に、まず「守」「破」「離」について説明しておかなければならないでしょう。
なぜなら、本書は「守」「破」「離」の3つの発達段階にそって進められているからです。

武道に限らず「技芸」にはすべて「格」というものがあります。

道を学ぶ者は、先ず正しく師の教えに従い、師の形を学び、その形の「格」に至ることを目標にして、我流にならないよう戒めて修練しなければなりません。

この「格」に至ることを「守」といいます。

書道に例えると、「守」というのは楷書を正しく書くことです。

次に、楷書が立派にかけるようになったなら、はじめて自分の特質を加えて、行書を書いてもいいという段階になります。この段階が「破」にあたり、楷書がかけることを条件として、それを法にかなう範囲で崩しても良いということになります。

さらに上達して楷書行書ともに、自由にこなせるようになったら、草書を書いても良いという段階に入ります。すなわち「離」の段階です。

ただし、注意してほしいのは、元の字とは離れてしまってはいるけれども、決してでたらめではなくて、楷書から発した、法にかなう、正しい格に入った字であれば、書いても良いということです。

ここへ到達してはじめて、「出藍の誉れ」、すなわち一派を起てることができるということです。

ビジネスで言うと、独立起業。
あるいは独立しなくても、その人がいなければ困るというセルフブランディングの完成というところでしょうか。

今回、【ポイント&レバレッジメモ】では、本書の「守」の部分からのみピックアップさせていただきました。

その理由の1つ目は、時期的にもうすぐ新社会人デビューの頃だからということ。
この本はぜひともフレッシュマンに、それも入社するまでに読んでもらいたい。

そして理由の2つ目は、私自身の経験上、「守」の段階が一番大切だと思っているからです。

なぜなら、現実の世界では 「守」→「破」→「離」 というふうに順調に進むことの方が稀で、例えば「守」→「破」(異動でリセット)「守」→「破」(新プロジェクトに抜擢)「守」→「破」(管理職に出世)「守」→「破」・・・
と言った具合に「守」の段階が圧倒的に多い。
長い社会人人生でも特に長時間を占めるのは「守」の時間、一生勉強なのですよ。

これを読んだ入社前の新人さんは「一生勉強なんて嫌だ」と思うかもしれません。
でも、「守」を徹底的に経験することは、「出藍の誉れ」への一番の近道なのです。

それに「守」の部分は、いわば基礎基本の部分。
ピラミッドで言えば底辺にあたるところで、よく言うでしょ、「底辺が広ければ広いほど高いピラミッドができる」って。

正直に言うと、確かに本書タイトル「頭の回転数を上げる」という観点からすれば、本書後半の「離」の部分が、「ああ、そういう風に考えるのか」と、非常に参考になるし面白い。

これはいわゆる「術」の部分で、「術」とは「技」の活用法です。

「技」も「術」も、魅力的なんですよ。

世に出回るビジネス書にはこの「技」や「術」を集めたハウツー本があふれていて、私たちはついつい楽にテクニックだけを手に入れてしまおうと、ビジネス書に飛びついてしまうのですが、そういう人は結局「技」のコレクターに陥りがち。

実際の武道の世界にもこういう人が必ずいます。
他流派の技も含めて本当にいろんな技を知っていて、しかも器用にこなす。

でも、こういう人が本当に強いかと言えば決してそうではなかったりします。

実は、実戦で強い人に”技のデパート”と呼ばれる人は滅多にいません。

磨き抜いた、ずば抜けて切れる得意技を2、3種類持っている、という人がほとんどです。

ケンカでもルールに則った試合でも、武術とか格闘技でとにかく早く強くなりたかったら2つか3つのコンビネーションを徹底的に練習すること。
そして一本一本の突きと蹴りをとにかく磨き上げること。

地味で楽しい練習ではないですがこれが強くなる一番の近道です。

これはビジネスの世界でも同じだと思います。
あれこれ”仕事術”に惑わされず、ひたすら愚直に目の前の仕事をやり続けることで実戦力が身につくのです。

ちなみに私の師匠からは「技というのは、一つの技を3000回練習してようやく1回実戦で成功するぐらいのものだ」と教えられました。

最後にもう一つ

本書中に登場する名言・格言の一つ

千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす。 宮本武蔵

これも武道の世界ではよく聞く言葉です。

「千日」とは約3年。
3年間一心不乱に稽古をして、ようやく「鍛錬」の「鍛」ぐらい、つまり「まあまあ形になってきたな」というレベルであるということを示唆した言葉です。

「石の上にも3年」という言葉もあるぐらいで、3年という期間は何かを会得するためのマジックナンバーなのだと経験からも思います。

昨今、不況続きで労働環境が悪いということもありますが、就職してすぐに辞める若者が多いことは嘆かわしいことです。
「本当に自分がやりたいことではなかった」とか「もっとやりがいのある仕事がしたい」とか色々現実の職場では思うことはあるでしょうが、せめて仕事を覚えて周りを見渡せる余裕ができるまでは続けてほしいものです。

それが必ずあなたの力になるのですから。

「鍛錬」の「鍛」のレベルに到達する前に辞めてしまったら、それはもう0に等しい、何もなかったのと同じなんてもったいないじゃないですか。

全てのフレッシュマンに。
そしてうかうかしていられない先輩諸君へ。

本書は著者の一人、芝本様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】
<本文中で紹介・引用された本>

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