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ともかくやってみろ【書評】片瀬 京子・田島 篤(共著)『挑む力 世界一を獲った富士通の流儀』 日経BP社

おはようございます、中学生のときは先輩の持っていたFM-7に夢中だった一龍(@ichiryuu)です。

今日ご紹介するのは、富士通の8つのプロジェクトを題材にしたリーダー論。
最近元気のない日本企業ですが、この本からは日本企業の持つ大きな武器が読み取れます。

 

【目次】
はじめに
第1章 絶対にNo.1を目指す スーパーコンピューター「京」
第2章 覚悟を決めて立ち向かう 株式売買システム「アローヘッド」
第3章 妄想を構想に変える すばる望遠鏡/アルマ望遠鏡
第4章 誰よりも速く 復興支援
第5章 人を幸せにするものをつくる 「らくらくホン」シリーズ
第6章 泥にまみれる 農業クラウド
第7章 仲間の強みを活かす 次世代電子カルテ
第8章 世界を変える志を持つ ブラジル/手のひら静脈認証
寄稿 外から見た富士通
おわりに
解説 野中郁次郎

【ポイント&レバレッジメモ】

★スーパーコンピューター「京」

「富士通の根底に、DNAというと大げさかもしれないですけど、新しい技術、未知の世界にワクワクしながら挑戦するという気概があると思うんです。池田敏雄さんの時代に、先が全く読めないコンピュータービジネスの事業化に社運を賭けて挑戦したのも、ある意味で無謀ですよね。でも、やるという決断ができた。それが今も受け継がれているんです。」
次世代テクニカルコンピューティング開発本部 本部長代理 伊藤広樹 氏

★株式売買システム「アローヘッド」

「でも、自分で言うのも変ですけど、このプロジェクトでリーダーを張れる人が、そんなにたくさんいるとは思いません。育てていくしかないのかなと思っています。私も、育てられた方ですから。場面を与えてもらえ、経験を積ませてもらえた。そうさせてくれる人が、たくさんいる会社です」
金融ソリューション本部 東証事業部シニアディレクター 三澤猛 氏

★すばる望遠鏡/アルマ望遠鏡

石原は、社内で使う資料に「妄想を構想に、構想をかたちに」という文言を書き込んだ。当時、富士通は「夢をかたちに」という言葉を使っていた。それを意識した。
「夢=妄想とは言いませんが、特に今回は、そのままかたちにするのは難しいだろうと思いました。その間には、構想が必要だろうなと」
テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部 科学システムソリューション統括部シニアマネージャー 石原康秀

「人間なんてしょせん、新しいことは何もわからないわけです。だから、今までの経験、積み重ねで判断をしていくんだと思うんですよね」
将棋や囲碁と同じだと考えている。打てる手は、山ほどある。では勝つために、そのうちどれを選ぶか。
「そのよりどころになっているのは、経験、それから、この人はこうしていったという知識の集大成ですよね。情報をたくさん集めて、取捨選択できるようになる。それが、プロジェクトマネジメントだと思います」
テクニカルコンピューティング・ソリューション 事業本部 本部長代理 瓦井健二 氏

★復興支援

「実践あるのみ。理屈なんて後付けです。考えてから行動するのでは遅い。行動しながら考えて、実践知を得るしかありません。そうしながら実績を作れば、必ず報われます。逆に、こういった非常時に、やらなかったらどうなりますか。富士通はお金がないと動かない会社だと思われてしまう」

「これは自分たちの仕事じゃない、と決めてしまわずに、何でもやる。そうやって人を巻き込む。僕は、ソリューションを手がけるうちの会社には財産があると思っています。それは、日々、新しいことを提案する力です」
ソーシャルクラウド事業開発室 事業開発統括部 シニアマネージャー 生川慎二 氏

★次世代電子カルテ

「富士通の行動指針に三現主義というものがあります。これが成り立つのは、そこにチームがいるからです。お客様を含めて、自分を支えてくれるチームがいる。このチームにいろいろと聞くことで、”三現”を知ることができるのです。
三現主義とは、現場・現物・現実を直視して行動するという原則を指す。
富士通システムズ・ウエスト ヘルスケアシステム本部 第3システム事業部 甲野義久

★ブラジル/手のひら静脈認証

「海外で働いている我々としては、絶対にコスモポリタンになってはいけないと思っています」
コスモポリタンとは、国家の枠にとらわれない、世界主義を信奉する人のことだ。世界主義者、国際人などの訳語を当てることが多い。
「どこかに軸を持たなければならない。その軸とは、私にとっては日本人であること、そして富士通の社員であることです。富士通自体も同じだと思います。アメリカ企業ではないし、ヨーロッパ企業でもないし、ブラジル企業でもない。我々は日本の企業である富士通という会社なのだから、まずはそこにプライドを持つことです」
富士通ブラジル社長 西口一成 氏

【感想など】
本書は「挑み」、そして「成し遂げる」にはどうすればいいのか? をテーマに据え、富士通の8つのプロジェクトを題材にして、

困難なプロジェクトを現場で率いたリーダーたち。当然のごとく、次々と難題が持ち上がる。
その局面でリーダーたちは

どのような「思い」を抱き、
どのような「意識」を持ち、
どのように「行動」したか、

これらを解き明かすことにより、具体的かつ実践的に、成し遂げるためのポイントを導き出すことを試みた。

本なのです。

したがってワタクシも、今回の【ポイント&レバレッジメモ】では、「富士通の企業文化」や「リーダーの考え方」が垣間見られる「言葉」を中心にピックアップしてみました。

ところで、昨今の日本企業の元気のなさは皆さん感じておられるでしょう。

先日この本を紹介した折も

日本全体の停滞感を書いたところです。

参考記事

 

www.s-ichiryuu.com

 

対照的に、ファンのワタクシでもちょっと過剰じゃないかと思えるほどAppleの革新性と絶好調ぶりがもてはやされています。

そのため、本書をいただいた時に、ものすごく失礼なのですが正直にいうと、「今さら富士通ですか?」「なぜに富士通?」と思ってしまたことを白状します。

いや、富士通だけでなく、今の日本企業から学ぶ点が果たしてあるのか?

その答えは本書を読めばわかります。

まだまだ日本企業から学ぶ点はある!
自分たちの強みを再確認する必要がある!

そもそも一般消費者を対象とした製品を作るアップルと、専門性と特殊性が非常に高く大規模な開発プロジェクトに挑む会社を比較することが間違いなのです。

なるほど、AppleはiPhoneやiPadなど、革新的なデバイスを提供することで世の中を変えましたが、富士通の場合は一般消費者にはわかりにくいが、もっと大規模で”社会インフラ”に近いものを開発することで世の中を変えるというまったく違うアプローチをしています。

そして今回本書を読んで、まず強く感じたのが、大規模なプロジェクトをチームを組んで成し遂げるという点は、日本人の、あるいは日本企業の最も得意とする分野なのではないかということでした。

そのためにリーダーを経験から学ばせて育てるという社風が強く感じられました。

そして、「経験」「実践」「三現主義」といった単語が随所に見られます。

徹底した現場主義と、その現場で鍛え上げられる人材。
これが富士通の、あるいは日本企業の強みなのでしょう。

本書巻末には野中郁次郎先生の解説があります。

野中先生は「実践知のリーダーシップ」をとれるミドル世代が日本企業を支えているとして、その6つの能力をつぎのようにあげています。

実践知に基づいてリーダーシップを発揮するための6つの能力
1 「善い」目的をつくる能力
2 場をタイムリーにつくる能力
3 ありのままの現実を直視する能力
4 直感の本質を概念化する能力
5 概念を実現する政治手腕
6 実践知を組織化する能力

詳しくは本書に当たってもらうとして、ここでワタクシちょっと思い出したことがあります。

以前当ブログで紹介した

参考記事

 

www.s-ichiryuu.com

 

この本の中で

 「体験的学習」で一時的に勝利しても、成功要因を把握できないと、長期的には必ず敗北する。指標を理解していない勝利は継続できない。

とありました。

指標とは戦略のこと。

日本人のかつての成功は、体験的学習による察知で「成功する戦略(新指標)を発見している」ことによるのだと。

そしてこれは弱点でもあって、偶然の成功体験にしがみつくと、指標が変わっても対応できなくなる。
ちょうど、Appleのような革新的な製品を出し、市場のルールまでも変えてしまうと日本のメーカーが太刀打ちできなくなったのがいい例です。

果たして日本流の徹底的に経験主義でいくのがいいのか、あるいはAppleのように最初からルールの変更まで視野に入れて戦略的にいくのがいいのか。

一つの答えが先ほどの”実践知”にあるような気がします。

実践知の定義を

「共通善(Common Good)の価値基準を持って、個別のその都度の文脈のただ中で、最前の判断(judgment)ができる行動を伴う知識」

と野中先生はされていました。

この中の、”共通善”こそが、日本流で欧米企業と戦う武器となるのではないでしょうか。

自社の利益のためだけでなく、社会価値に基づいた善い目的を作り、それにしたがって物事を判断し実行できること

東日本大震災のときにこれを指標とし、有形無形の支援をした日本企業。
共通善というのは日本人が持つDNAみたいなものなのではないでしょうか。

欧米企業のような戦略が苦手なら、思い切って自分たちの得意なもので徹底的に勝負したらどうなるのか。

この先の結論はワタクシにはわかりませんが、一つ確実に感じることがあります。

それは、市場のルールは変わっても、人の心は変わらないということ。
共通善に基づいた経済活動を徹底して続けることを戦略として戦うことこそが、長い目で見れば日本企業の大きな強みとなるのではないでしょうか。

日本人、日本企業にとっては当たり前のことを徹底してやり続ける。
また、それを実行できるリーダーを育てる企業文化とノウハウが富士通はじめ、日本企業にはある。

それを本書から学んだように思います。

本書は日経BP社、東城様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【管理人の独り言】
そうそう、書いていて思い出した。

文中で引用したこの本

この元ネタとなったのが

この本なのですが、この本の執筆陣のお一人が野中先生なんですよね。

必読ですよ!

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