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経営者よ覚悟を見せろ!【書評】池田信太朗(著)『個を動かす』 日経BP社

おはようございます、昨日が仕事納めだった一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、ローソンの新浪社長がローソン改革10年を語った本をご紹介。

以前ビジネス番組でお見かけしたときは、「デカい人だな」と思ったものですが、身長ではなく人間としての大きさに脱帽する1冊です。

思わず「惚れてまうやろ!」と言ってしまいますよ(笑)。

 

【目次】
はじめに
第1章 試された「分権経営」  ドキュメント・東日本大震災
第2章 迷走する経営と上場の「傷跡」  社長就任前夜
第3章 一番うまいおにぎりを作ろう  「成功体験」を作る
第4章 「田舎コンビニ」を強みに転じる  「ダイバーシティと分権」の導入
第5章 オーナーの地位を上げましょう  「ミステリーショッパー」の導入
第6章 加盟店オーナーにも「分権」  「マネジメント・オーナー」の誕生
第7章 「個」に解きほぐされた消費をつかむ  「CRM」への挑戦
第8章 「強さ」のために組み替える  「BPR」の取り組み
第9章 僕が独裁者にならないために  集団経営体制と新規事業
第10章 人間・新浪剛史  その半生
インタビュー  スクウェア・エニックス和田洋一社長
 「起業家ではない経営者」という同類から

【ポイント&レバレッジメモ】

★社員に正直な経営

「『お客様のために』ということを徹底しなくちゃいけない。会社のメンツや株主など、『ご本尊を守るために』行動するような組織であってはいけない。そういうメッセージを社員たちに伝えたかった。そのためには、社員に対しても経営は『正直』じゃないと駄目なんです。特にウチは、社員が経営を信じていませんでしたから。内に信頼なくして改革は進められない。だからここは踏ん張って、とにかく正直にいこうという思いだったよね。それと、この際、行き着くところまで行った方がいいという思いもあった。危機感が醸成されるんじゃないかと」
(おにぎりへの異物混入事件について)

★ローソンの強み

「ローソンの強みは、全国の田舎にあること。都市生活者だけでなく、全国各地域のライフラインになっている。それこそがローソンの強みだ」

★多様性(ダイバーシティー)

 「東京からたまたま旅行で行って、『東京で売っているものがないんだな』って思う方もいるかもしれない。しかし、6割とか7割はそれで満たされるはずです。逆に、地方ならではの『発見』をしていただければいいじゃないかって割り切ったんですよ。地元の総菜や菓子が置いてある。『おお、いいじゃないか』『こんなのあるんだ』と思ったその『驚き』を提供することこそがうちの差別化だと思ったんですね」

★分権

 新浪は「分権」する理由をこう言う。「現場に近づけば近づくほど仮説の精度が上がる」。東京の本社が「上」、地方の支社が「下」というのではない。「地域密着」「高齢者対応」などの大きなビジョンを経営が示せば、むしろ、現場に近い支社が精度の高い仮説を立ててイノベーションを起こしていく。「手作りおにぎり」はその好例だろう。

★ビジョンと行動理念

 「ただ権限を与えて、ダイバーシティーを導入して、というのではなくて、徹底してビジョンを共有しているんです。支社、支店にどんどんチャレンジしてもらうけれど、理念は絶対共有しなきゃだめ。できていれば、ばらばらにはなりません。僕が社長に就任してから経営理念を『私たちは”みんなとクラスマチ”を幸せにします』としました。行動指針は『そこに、みんなを思いやる気持ちはありますか。そこに、今までにない発想や行動へのチャレンジはありますか。そこに、何としても目標を達成するこだわりはありますか』。つまり、何かを成し遂げようという時には、思いやりを持ち、チームワークで挑めと。常にイノベーションを求めよ、現状のまんまじゃ絶対だめなんだと。そして、やるからには何としてもやりきれと。この三つの行動基準の中で、あなたたちが正しいと思うことをやりなさいと。そういうことです」

★テクノロジーへの目配せは経営者の責任

 「最新の技術を見て、『これは自分たちのビジネスではこう使えるんじゃないか』といった閃きみたいなものは、これからのCEOのすごく重要な役割になります。むしろITとかテクノロジーはCEOの専管事項ですよ。だって、技術を制する者がやっぱり勝つんだよ。ゲームのルールを変えるから」

★独裁者にはならない

 「改革というのは何年もやっちゃいけないんです。できれば一年。本当に長くて二年ですよ。リストラは最初にやりましたけれど、その後は現場のモチベーションをどう上げるかということに費やしてきたんですよね。その結果、『自ら考える』ことのできる組織に育ってきたのなら、モードを切り替えていかなきゃいけない。僕は強いリーダーシップがある半面、やっぱりこうだと思ったことを引かずに、がーっと上から落とすというのをやる。次のボスはそういう『独裁者』タイプじゃない方がいい。すごく感じたんです。『やばいな』と。『このままいくと自分で作ったものを自分で壊すな』と」

★ミッションで動く会社を目指す

 「・・・僕はずっと、社長の顔色を見るんじゃなくて『ミッション(使命)』で人が動く会社にならないと駄目だと思っていました。支社制度、支店制を入れたのもそのためです。『誰か』に考えることを委ねてしまうんじゃなくて、ミッションを達成するためにどうすればいいのかを自分たちで考える組織になる。ミッション・オリエンテッド(ミッションを原動力に)に会社を変えていくということです。それがしっかりと定着して、現場に『上の誰か』に従うんじゃなくて自分たちで『考える力』が備わって、僕じゃなくても『ミッション』がしっかりしていれば動く組織になったということです。・・・」

【感想など】
本書はローソン社長、新浪剛史氏へのインタビューや取材をもとに書かれたローソン再生の10年の歴史書です。

ですので、今回の【ポイント&レバレッジメモ】では、新浪社長のインタビューの中にこそポイントがあると思い、新浪社長の発言を中心に気になった部分をピックアップしました。

本当に本書には、企業とは、組織とは、そしてリーダーとはどうあるべきかといったたくさんの学ぶべき点が盛りだくさんなのですが、それらに触れる前にまず言っておきたいことがあります。

ワタクシにとって「コンビニといえばローソン」ということ。
別にお世辞ではありません。

たぶん東京などの都市部の方にはわからないだろうと思いますが、本書内でも「田舎コンビニ」と書かれているように、地方の田舎に行けば行くほどコンビニといえばローソンなのです。

業界最大手は、本書でも目標であり壁でもあると表現されているセブンイレブンですが、ワタクシの住む四国にはまだセブンイレブンは1店舗もありません。

なのにテレビ放送エリア(香川と岡山がワンセット。岡山にはセブンイレブンがある)の関係でCMだけは流れていて 、あのおなじみのコピー「近くて便利」を聞くたびに、「どこがやねん!」とツッコミを入れ、なんか「田舎者」と言われているようで嫌な感じがしておりました。

さすがに最近ではファミリーマートやサークルKサンクスなど、複数の系列の店舗が建ち並ぶようになりましたが、コンビニといいつつ夜は閉まっている田舎の雑貨屋レベルの店しかなかったコンビニ黎明期から、いち早く田舎でも店舗展開してくれたのがローソン。

だからワタクシにとってコンビニの原体験はローソンだし、今でもコンビニといえばローソンなのです。

さて、田舎者のローソンへの思いはこれぐらいにして、本書の内容。

読みどころ満載の本書ですが、まず読んでほしいのは前半部分。
新浪氏が三菱商事から出向し、ローソン社長に就任してからの改革の過程です。
ここは読み応え十分。

一般的に自らビジネス書を書く、あるいはビジネス書の題材となる経営者はざっくり別けると2つのタイプになると思います。

すなわち、ゼロからスタートして成功した起業家か、創業者かどうかは関係なくて経営不振を立て直した社長の2つです(たまにジョブズのように起業家であり再建者という人もいますが)。

そして、たいていの場合、前者は読んでいてワクワクするのですが、後者は胃が痛くなるという・・・。

本書も胃が痛くなる方です(笑)。

起業、創業の物語は豪快なエピソードや痛快な失敗談を織り交ぜながらも目標に向かって一致団結、懸命に走り続けているうちにここまで来ました!という青春ドラマのような雰囲気があるもの。

しかし経営不振企業の再建物語は、リストラ、あきらめと怠慢の雰囲気、進まない意識改革、抵抗勢力との戦い、追い討ちをかける失態・・・等々、読んでいて「うわ、もし社長を命じられたら絶対俺はムリ」と思ってしまう。

本書もまさしくその範疇で、ダイエー時代の負の遺産にどっぷり毒されたローソンに三菱商事から出向して来た新浪氏の10年に及ぶ戦いが記されています。

でもこの”戦記”は、長い長い閉塞感に窒息しそうな日本企業にとって非常に貴重な記録となるのではと思います。

というのも、諦念や経営に対する不信など本書で紹介されている改革前のローソンの雰囲気は、多かれ少なかれ現在の日本企業が広く共有している空気だと思うのです。

その新浪社長の改革ですが、読んでいるといくつかのキーワードが見えてきます。

「正直」
本書では社長就任間もないころに発生したおにぎりへの異物混入事故に際して、お客様へも、社員へも情報をオープンにするという姿勢で臨んでいます。

「まかせる」
「うまいおにぎりを作ろう」と、新商品開発を始めますが、開発の玄人を徹底して排除した素人のプロジェクトチームに開発をまかせています。

「現場主義」
お客様に一番近い存在である各店舗に大幅に権限を委譲しています。

こういったキーワードから見えてくる新浪社長の改革の根底に流れるのは、社員と店舗オーナーへの信頼、信じるということ。

社員の能力を信じる。
各店舗オーナーの手腕を信じる。

これってありきたり、あるいは経営者としては当たり前のことと思われるかもしれません。

でも実際これができている経営者って少ないと思います。

というのも、どんな経営者もこの「信じる」ということが大切なのはわかっているのですが、実際にやろうとすると結構怖いし忍耐力のいること。

「最終責任は自分がとる」という覚悟がなくてはできませんからね。
それに社員というものは、ちょっとした経営者の迷いや不安な心情を敏感に感じ取るもの。

「あの人、口ではカッコいいこと言ってるけど、いざとなったら・・・」、と感じる上司のもとでは本気で仕事に取り組めませんよ。

そういう意味では新浪社長の改革の一番のキモの部分となったのは、新浪社長が

「退路を断つ」

という決断をしたことかもしれません。

数年で親会社に帰っていく社長では、どんなに改革をしようとしても、「うちで成績を残してキャリアアップの材料にするんでしょ」って白けてしまうもの。

そういった猜疑心を払拭するには、三菱商事から籍を抜き、ローソン社長として退路を断つという行動が、社員にとっては何よりの決意表明だったと思います。

「ああ、この人は本気だ」「この人はこの会社に骨を埋める気だ」と感じ入ればこそ、社員は奮い立つのです。

本当にこの社長、大きな人だなぁ。

企業内の「個」を奮い立たせて、地域の「顧客」と向き合う「個店」を作り上げる

それで実際、ローソンはどう変わったのか?

その答えは、本書巻頭の東日本大震災にさいしてのローソンの対応がまさにこの10年の改革の成果を物語っていると思います。

本当に強い組織かどうかは、危機に際してわかるもの。
この10年で、ローソンは着実に”戦う集団”に変貌しています。

そして後半はローソンの未来。

IT技術に対する積極的な導入と活用、そして人材育成。
王者セブンイレブンとは違った独自の路線で勝負を挑むローソンの今後が楽しみになります。

さて最後に、
実は来年、セブンイレブンの四国進出が決まっています。

うちの近所ではセブンイレブンに鞍替えするというローソンも登場しています。

果たして全国一律、均質のサービスのセブンイレブンが勝つのか、あるいは地元密着オリジナルなサービスのローソンが勝つのか?

消費者としては競争してくれるのは嬉しい限り。
ただ、心情としては「ローソンがんばれ!」なんですよね。

新浪社長の手腕をれからも注目して行きたいと思います。

本書は日経BP社様より献本していただきました。
東城様、瀧尾様、田村様、そして担当編集者村上様、ありがとうございました。

【関連書籍】

 

愚直なまでの「革新」によってコンビニという業態を築き上げたセブン‐イレブンはどこまで強いのか。創業時のエピソードやFCの指導現場、セブン銀行の独自戦略まで、ベテラン流通記者による渾身の書き下ろし。文庫化に際しPB商品開発の最前線、ATMの進化や省エネ事情などを加筆。

 

ロールケーキ、おにぎり屋、からあげクン……。三菱商事出身の新浪剛史氏がローソン社長に就任して8年、「砂漠で梨をつくるような思い」で社内、またコンビニエンスストア界にイノベーションを起こしてきたその足跡をたどり、今まで多く語られなかった「新浪イズム」と「ローソンの行方」を探ります。新浪氏が働く男女の悩みに答えるアエラ人気連載「新浪剛史のビジネス元気塾」も再録します。

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