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ただシンプルなだけではないアップルのデザイン哲学【書評】リーアンダー・ケイニー(著)『ジョナサン・アイブ』日経BP社

2015-01-23-08-27-04

おはようございます、一龍です。

ジョナサン・アイブは私たちアップルファンにとってはジョブズに次いで神様のような方。
彼によって生み出されるアップル製品は、他社の追随を許さない卓越したデザイン性と品質で、アップルの快進撃を支えてきました。

そんな世界一有名なデザイナーの彼ですが、今回はじめて、彼の半生とそのものづくりの哲学をまとめた本が登場したのでご紹介します。

 

はじめに

ジョナサン・アイブ(愛称ジョニー)は現代で最も成功したプロダクトデザイナーといえるでしょう。

しかし華々しい活躍の割に彼は人前で話すのが苦手らしく、アップルの製品発表の場でもステージ上で生で喋ったことはありません。
いつもビデオで出演しています。
それにインタビューもほとんど受けていません。

そんな彼なので、私が知るかぎり、ジョニーに関してまとまった本は本書が初めて。

ということで今回はジョニー本人の発言を本書からピックアップして、彼のものづくりの哲学について迫ってみました。

現代最も成功しているプロダクトデザイナーはなにを考え、なにを目指して製品を作っているのか、まずはご覧ください。

ポイント

★父のクリスマスプレゼント

 

「クリスマス休暇中の誰もいない大学の工房で、一日中僕が思い描いたものを作る手伝いをしてくれるのが父のクリスマスプレゼントだった」

「昔から手作りのものは美しいと感じていた。本当に大切なのは、そこに込められた手間と心配りなんだ。いいかげんに作られたものを見くとすごくいやな気分になる」

★人生を変えたひと目惚れ

 

(Macと出会って)
「その劇的な瞬間を今でもはっきりと覚えている。作った人の気持ちが伝わったんだ」

「アップルについてもっと知りたくなったんだ。どんなふうに創業されたか、その価値観や組織構造を調べたんだ。生意気で反逆者のようなこの会社を知れば知るほど、ますます惹かれていった。創造性なんて全く気にもとめない業界の中で、我が道を行くといった感じで別の方向性を示していたんだから。アップルには信念があった。金儲けだけが目的じゃないと感じられたんだ」

★帰ってきたジョブズに

 

「スティーブが、僕らの目標は金儲けではなく、偉大な製品を作ることだと宣言したんだ。その哲学があれば、これまでとは根本的に違う判断を下すはずだと思った」

★人間味のあるデザイン

 

(iMacの開発に関して)
コンピュータ業界は「デザイン的にはおよそ信じられないほど保守的になってきた。目に見える機能にこだわりすぎている。処理速度、容量、CDドライブの性能。そこで競争するのは簡単なんだ。数字が大きいほうがいいんだから」

「でもそれでは、人間味がなくて冷たいと思うんだ。絶対的な基準にこだわると、評価しにくい特徴や売り込みにくい品質が失われてしまう。コンピュータ業界は、感情に訴えるような目に見えない特質を見過ごしてきた。だが、僕が初めてアップルのコンピュータを買った理由はそれなんだ。僕がアップルに入った理由もそこにある。アップルはただ必要最小限をやるだけでは満足できない会社だと思うから、僕はここにいる。機能と必要性が満たされていればいいとは思わない。僕は初期の製品に、隅々まで心遣いがなされていると感じた。ハードにもソフトにも、人の気づかないところに気配りがあったんだ」

★人とコンピュータの関わり方を変える

 

(iMacのハンドルについて)
「その頃はまだ、みんなテクノロジーに慣れていなかった」

「怖そうなものには、ふつう手を触れない。僕の母も怖がってパソコンに触らなかった。だから、持ち手があればつながりが出来るんじゃないかと思ったんだ。ハンドルなら触りやすい。思わず手にとってしまう。触っていいんだよ、という合図になる。それは人への従順さを示しているんだ」

「埋め込みハンドルを作るのにすごく費用がかかった。昔のアップルだったら、僕は議論に負けていただろう。でもスティーブがすごいのは、これを見て『いいね!』と言ったんだ。僕が説明する前に、彼は直感的にわかっていた。それがiMacの親しみやすさと遊び心の一部だってことをね」

「初代のMacで目指したものは、見かけか違うことじゃなく、できる限り最高の家庭用一体型コンピュータを作ることだった。その結果、形が違っていたということだ。違うものを作るのは簡単だが、いいものを作るのは難しい」

★先に進もうとすれば、置いていくものが出る

 

(iMacにフロッピードライブがないことに関して)
「フロッピーの件でアップルとして答えることはできない。だが、僕個人はこう思う。先に進もうとすれば、置いていくものが出る。誰がなんと言おうと、フロッピードライブは、古臭い技術だ。批判は承知しているが、全身に摩擦はつきものだし、進化が段階的に起きるとは限らない」

★デザインと差別化

 

「デザインを差別化の手段だと思っている人が多すぎる。全く嫌になるよ。それは企業側の見方だ。顧客や消費者の視点じゃない。僕達の目標は差別化じゃなくて、これから先も人に愛される製品を作ることだとわかってほしい。差別化はその結果なんだ」

★本当のリスクとは

 

「確信を宿命とする企業では、革新しないことがリスクなんだ」

「本当のリスクは、安全策を安全だと思い込んでしまうことだ。スティーブにはアップルのルーツに立ち戻るにはなにが必要か、アップルの魂を表現するにはどうすればいいか、新しいものをデザインし、作り出すにはどんな組織構造にしなければならないかが、はっきりと見えていた」

★未来のアイデアを出すのはデザイナー

 

(iBookの開発に関して)
「フォーカスグループはやらない。アイデアを出すのはデザイナーの仕事だから」
「明日の可能性に触れる機会のない人たちに、未来のデザインについて聞くこと自体が的外れだよ」

★製品のストーリー

 

「デザインのはじめ、目標を定めようとする段階では、製品のストーリーについて語り合う。つまり、製品をどう見るかを話し合うんだ。その製品に何を感じるか、物ではなく感情について話し合う」

「このデバイス(iPhone)自体がすごく斬新で、初期の段階から、『驚き』や『魔法』をテーマにしたストーリーがぴったりだと感じられた」

★ジョブズ亡き後のアップルにて

 

「僕の望みはただデザインし、ものを作ること。それだけだ」

「好きなことを見つけられれば素晴らしい。だが、それを仕事にして没頭できる人はなかなかいない」

★ジョニーの究極の目標

 

「デザイナーのくせにこんなことを言うのはおかしいけれど、デザイナーがこれみよがしにしっぽを振っているような製品を目にすると、いやになるんだ。僕の目標は、シンプルなもの、持ち主が思い通りにできるものだ。デザイナーが正しい仕事をすれば、ユーザーは対象により近づき、より没頭するようになる。たとえば、新しいiPadのiPhotoアプリにユーザーは我を忘れて没頭し、iPadを使っていることなど忘れてしまうんだ」

感想

 

◆ジョブズとは対照的な天才

ジョブズ復帰後のアップルの成功と快進撃から、ここ数年(特にジョブズが亡くなってから)アップルやスティーブ・ジョブズに関する本がブームとなったのはみなさんご承知の通り。

特にジョブズはそのカリスマ性と波瀾万丈な人生が良くも悪くも強烈な光を放つため、本を読んでいてもとにかく面白い。

そういった刺激的な”アップル本”に慣れ親しんだアップルファンが本書を読んだ時、おそらく物足りなさを感じることと思います。

それはジョニーの人柄や人格からくるものでしょう。
控えめだし、デザインの世界ではエリート街道を歩んできた人なのでドラマチックさはありません。
しかし彼は確かに天才なのです。

彼を評して、「ジョブズあってのジョニーだ」という人も数多くいます。
けれど、それはある意味では当たっていると思いますが、ある意味でははずれていると私は本書を読んで確信しました。

ジョニーはジョブズという太陽に照らされて輝く月ではなく、自らも輝きを放つ恒星であることは間違いありません。

ただ、ジョブズとはあまりに違う、異質な恒星なのです。
言うならば、”天才エリート職人”。

銀細工職人でデザイン教育者でもあった父の英才教育を受け、大学生の時にはすでに注目を集めていた、その道の王道を歩んできた人なのです。

ですので、ジョニーとジョブズという2大恒星がタッグを組んだ時、輝きが倍増し、アップルの快進撃が始まるです。

もちろんジョニーという恒星の光を最大に引き出したのはジョブズの手腕と言えますが。

◆ストーリーから考える

さて、今回本書ではジョニーの発言はもちろん、プロダクトに関わった他のデザイナーたちの発言も多く掲載されています。

アップルの「デザインが優先されるものづくり」の姿勢は、他のどんな製造業でも真似できるものではないでしょうが、ものづくりの根幹の部分は、本書に参考になるところがふんだんに掲載されていると思います。

それらの中で私がまず「ほう!」と思ったのが「製品のストーリーから考える」というものでした。

その製品を手にした時、ユーザーはなにを感じるのか。
そこをスタートに製品をデザインしていく。

そしてこれは単に製品をデザインしているという域にとどまらず、ユーザー体験をデザインしていくということなのです。

つまり「感動」をデザインするということ。
もちろんそこには総合的なサービスも含まれてきます。

よく、アップルの新製品が発表されたときにデザインを色々批判する人や性能について「〇〇の方がスペックは上」と言ったりする人がいますが、こういった批判が全く的外れで意味がありません。

なぜなら、すべてのユーザー体験を総合的にプロデュースするのがアップルのものづくりだからです。
この点については日本のメーカーももっと学ぶべきところがあると思います。

◆親しみやすさ、遊び心

さらにもうひとつ。

本書中に「人間っぽい」という言葉が登場します。
これは本当に意外。

アップルのデザインはとにかくシンプルさを追求するというイメージが有りました。
なので余計なものは一切無くしていくというふうに思っていたのですが、その基本姿勢の中でも「遊び心」とか「親しみやすさ」を大切にしているということを今回本書で知りました。

たとえばジョニーが最初にアップルで関わったマッキントッシュではフロッピードライブがモニターの下にあって人間の口のようで親しみやすさがあったという記述があります。

また、ジョブズも「人間っぽい」ということが親しみやすさにつながるとわかっていたようです。

iMacのハンドルもそうですが、製品と人間とのふれあいに気を配ったり、こういった次元のデザインというのは日本の工業製品ではちょっとお目にかかれない(私が気がついていないだけなのかも)。

たとえばいつも思うのですが、テレビのリモコンがボタンが多すぎてよくわからない。
一番人間が製品と触れ合う部分なのに使いづらいとはどういうことなのか。

なにか「おまえこの機能もわからないのか」とバカにされているような気になります。

ただ、最新の機能を追求したり、高性能を追求しているだけの製品がまだまだ多いのはやはり真のユーザー体験を第一にしたデザインができていないことの証明だと思います。

◆アップルの総合プロデューサーとして

ユーザー体験を第一にした製品づくりの参考になるのが本書の魅力であり、ぜひ日本のメーカーさんには参考にして欲しいところですが、最後に今後のアップルについて。

ジョブズ亡き後もアップルの好調ぶりは続いています。

ジョニーはハードだけでなくソフトもデザインし、経営こそクック氏が担当していますが、製品に関してはジョニーがすべての責任を負っているという状態になっています。

しかしこれまではiPhoneにしてもiPadにしてもiMacも、ジョブズ在命中に開発された製品のブラッシュアップが続いていて、ジョブズの遺産で会社が成り立っているといったイメージを拭い去ることができませんでした。

それがようやく今年アップルウオッチの登場でジョブズ亡き後に開発がスタートした製品が登場します。
ジョブズから離れ、さらなる発展へうごきだすアップルに注目したいと思います。

そのカギを握るのはやはりジョニー。

もはや一デザイナーではないジョニーの真価が問われるのが今年からです。
おおいに期待したいと思います。

本書は日経BP社、東城様から献本していただきました。
ありがとうございました。

目次

日本語版序文
主な登場人物
まえがき
1 生い立ち
2 イギリスのデザイン教育
3 ロンドンでの生活
4 アップル入社
5 帰ってきたジョブズ
6 ヒット連発
7 鉄のカーテンの向こう側
8 iPod
9 製造・素材・そのほかのこと
10 iPhone
11 iPad
12 ユニボディ
13 サー・ジョニー
謝辞
守秘義務と情報源
注記

おまけ

この本、とにかく一目見て関心しました。

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装丁が美しい。

そして凝っているなぁと思ったのが表紙を外したとき。

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往年のiBookを思わせる”白”なのですよ。

更に表紙をめくると

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シルバー一色。

黒、白、シルバー。
この三色ってアップル製品を象徴していますよね。

編集者さんの狙いなのか?

で、本書も我が家の”アップル棚”に収まるのですが、そこで気がついた。

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どの本も黒、白、そしてシルバーだ(笑)。

関連書籍

今日ご紹介した本とぜひ合わせて読んでください。

 

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