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ダントツの商品と戦略的ブランディングが”格”のスパイラル上昇を生む【書評】氏家健治(著)『1つ3000円のガトーショコラが跳ぶように売れるワケ』SBクリエイティブ

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おはようございます、一龍です。

今日ご紹介するのは、「えっ、ガトーショコラが一個3000円もするの?」「しかも飛ぶように売れてるの?」と驚きつつ、「それはおおげさなキャッチちゃうの」と思わずにはいられないタイトルの一冊。

しかしこの本をあなどってはいけません。
目からウロコの戦略的ブランディングが学べる、本格的なビジネス書です! 

 

はじめに

甘いものが苦手で、ガトーショコラという単語すら「チョコレートケーキだったかな?」という程度の知識しかなかった私ですが、本書で紹介されている戦略がとにかく面白くて、今回ご紹介することにしました。

著者はもともとイタリアンのシェフで、パテシエではないとのこと。

ところが、イタリアン・レストランのデザートとして提供していたガトーショコラが評判となり、1本500g、1300円で販売をはじめ、1500円→2000円と段階的に値上げし、最終的には250g、3000円で販売。

実質4倍の値上げ。

しかもお店もレストランからガトーショコラ一品の専門店に。

普通ではありえない値上げ、そして”一店一品主義”への路線変更。

この思い切った舵切りには、実は著者の深く考えられた戦略があったのです。

ではそのポイントを見ていきましょう。

ポイント

★100円台でなく1000円台の数字で格上げ

 

 2000円に値上げすると商品の格が上がります。1300円から1500円にした時にも格は上がりましたが、1000円台から2000円台に変わるわけですから、今回のほうがはっきりとした格上げです。
 もちろん、上がった格にふさわしい商品力を備えていることが前提となりますが、値上げによる商品の格上げでお客さまのレベルも上がります。

★なぜ2500円ではなく3000円なのか

 

 最終的に3000円と決めたのは、2500円でも2800円でも同じ2000円台のままだと商品の格が劇的に上がらないから。ガトーショコラ1本でビジネスを展開できるほどのドラスティックな変化が起こりにくいと考えたのです。
 レストランから軸足を移してガトーショコラ1本に絞るには、2000円台を3000円台にするような”大胆な仕切り直し”が必要だったのです。<中略>
 常識的に考えると小ぶりなガトーショコラが1本3000円というのは高すぎます。しかし、だからこそ話題になりますし、「3000円のガトーショコラって一体どれだけ美味しいの?」とよりディープなチョコレート通の食指が動きます。

★「原価率3割」は都市伝説

 

 300円の商品と3000円の商品で原価率を一定にしようというのは間違い。参考にはなるかもしれませんが、原価率3割が適正価格で多くのお客様に支持されると思い込むのは明らかにおかしいです。
 原価率から値段を決めるのは、売り手側の都合しか考えていない証拠。大切なのはお客さまの満足度。極論すると、1円のモノを1万円で売って喜んでもらえるなら、お互いにとってそれに越したことはありません。

★ブランドは目に見えない”ありがたみ”

 

 ブランドが与える付加価値と安心感は、消費者の購買意欲をかき立てる源のひとつ。それは目に見えない”ありがたみ”のようなものだと思います。

★欧米高級ブランドに学ぶ

 

 美味しいガトーショコラであればあるほど、パッケージングにもこだわるべきです。食べる前から「これはかなり本格的な佇まいだ。きっと美味しいに違いない」と思わせるパッケージが理想です。<中略>
 パッケージングの参考にしているのは、ティファニー、ルイ・ヴィトン、エルメスといった欧米の高級ブランド。<中略>
 そうやって考案したのが、オリジナルの貼り箱と手提げ袋。「スイーツが入っているようには見えない」と褒められますが、それもそのはず。スイーツではなく、ティファニーのアクセサリー、ルイ・ヴィトンやエルメスの小物を入れても違和感がないものを目指して作ったからです。

★お客様とはいつも”新券勝負”

 

 手の切れるような1万円札の新券でガトーショコラ1本3000円の代金をお支払いいただいたのに、おつりの7000円をよれよれのお札でかえすなんてとんでもないこと。3000円に値上げして商品とお客様の格が上がってから、私はあらためてそう気がつきました。
 以来、新券には新券で応えるのが流儀となりました。これを私は”新券勝負”と呼んでいます。もちろん古いお札で支払っていただいた際にも、新券のおつりをお渡ししています。<中略>
 小さな工夫ですが、それも「この店は違う、本物だ」とブランド力を高める一助になっていると思います。

感想

◆評判のお店が自滅するパターン

私は飲食店経営は全くの門外漢ですので、まず「評判のお店が自滅するパターン」というのを本書で知って驚きました。

本書ではラーメンを例に説明しています。

例えば、

780円で美味しいと評判になってブレイクしたラーメン店。
でも、人気を維持するためにはそれなりのコストがかかるもの。
味をつねに進化し続けなくてはならないし、味を真似するライバル店への対策も必要。
しかし、ブレイクしてからの値上げはし辛いし、材料の質を落とせばお客が離れます。

こういう人気店のジレンマに陥って、潰れていく飲食店は少なくないそうです。
なるほど、流行っている飲食店にはこんな悩みがあるんですね。

◆商品と客と価格のスパイラル上昇

さて、そんなジレンマをかかえつつも、値上げとブランド化に成功した著者の手法は、異業種でも興味深く、参考になる点が多いと思います。

長らくデフレ下の環境にあったため、たとえ商品に自信があろうとも、味や機能やデザインがグレードアップしようとも、値上げというのは恐怖心をともなうもの。

そんな中で値上げを見事にやってのけた過程が本書の読みどころの一つなのですが、簡単におさらいすると

値段と量(重さ)      材料

1300円 500g  「エクストラ・ビター」カカオ分61%
  ↓
1500円 250g   同上
  ↓
2000円 250g  「カライブ」カカオ分66%
  ↓
3000円 250g  「アラグアニ」カカオ分72%、「カルピス特選バター」

最初の値上げは200円アップとはいえ、容量が半分になったので、実質2倍以上の値上げ。
その後は500円、1000円と大胆な値上げとなっています。

最初から比べると容量半分で値段は倍以上。
実質4倍以上の値上げとなります。

非常に興味深いのは、この過程での著者の考え方でした。
値上げでこれまでのお客が離れていくことを恐れていない。

商品の”格”が上がれば、お客の”格”も上がる。
たとえこれまで贔屓にしてくれたお客様が離れていっても、かならず格の高いお客様の支持を得られると確信して実行していて、実際にそうなっているのです。

もちろん、その裏には商品に対する絶対の自信があるわけですが、商品がいいだけで

 値上げ → 材料のグレードアップ → 高い格の客の支持 → 値上げ ・・・

というスパイラル上昇が自然と形成されるわけではありませんよね。

そこには単に、値上げして質のグレードをアップするだけでなく、さらに踏み込んだ戦略がありました。

◆特別感の演出

それが特別感の演出。
”ストーリー”といってもいいでしょう。

そこでしか買えない一店舗主義。
特別な日に特別な人に送っても恥ずかしくないパッケージング。
そして3000円という値段の話題性と高級感。
もちろん味は超一流。

こういった一つ一つのピースを組み合わせて、その結果、”総合力”でダントツの特別感を築き上げていっているのです。

けっして「いいモノをつくれば、いい値段で売れる」という考えで留まっているのではないのです。

◆市場ニーズの特集性を突く上手さ

そしてもうひとつ感じたのは、スイーツやお菓子市場の特殊性を突く上手さでした。

スイーツやお菓子の市場には、”手みやげ”の需要があります。
そして”手みやげ”には”格”があります。

例えば、職場で休憩時間や残業のときにちょっと甘い物を食べたくてお菓子を持ち寄る場面ってありますよね。
その時に3000円のガトーショコラはまずあり得ません。
数百円のどこででも売っているありふれたものになるはずです。

しかし、何かのお祝いパーティーとか記念日に、しかもその相手が上司とか師匠筋にあたる方だった場合の手みやげを想像してみてください。

安いものでは絶対ダメでしょう。
だからといって高すぎるものも変ですよね。

3000円という値段とその格というものが絶妙だと思いませんか?

手みやげという市場には、値段ごとに感じる”格”と需要が存在します。
3000円のガトーショコラが必要とされる場面が必ずあるのです。
この市場の特殊性を上手く突いているなと本書を読んで強く感じました。

コンビニスイーツのようなお手軽感を狙うのか、あるいは高級路線で特別感を狙うのか。
戦略はそれぞれだと思いますが、本書のガトーショコラは後者の典型的な成功例でしょう。

あなたの商品を特別な商品にする方法を探しているなら、業界は違っても必ず参考になる点が本書にはあると思います。

昔、ソニーの会長が、「いい物を、いい値段で」と言っていましたが、消費者にとっても安いだけがいい訳ではありません。

いい値段を払うことで、本当にいい物と出会う機会もあるのが消費者にとっても幸せなことだと思います。

ぜひ、あなたの商品を特別な物に育ててください。

◆実食!

今回、献本していただくにあたって、実はそのガトーショコラも一緒に送ってくださいました。

私が仕事から帰ると、「本が届いているよ。冷蔵庫に入ってるから」という意味不明なことを言うので、なんだろうと思っていたらガトーショコラじゃないですか!

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このゴールドのリボンの箱、たしかにジュエリーが入っていそうな雰囲気。
しかも、手提げ袋もセットで送っていただきました。

それにしても本書と比べてもらえると分かると思いますが、このガトーショコラ、小さいですね。

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高級感があるこの袋も特別感を演出してくれています。

さて、肝心のガトーショコラ

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確かに見た感じ小さい。

一瞬、「これが3000円って高いなぁ」と、正直なところ食べる前は思いました。
しかしこの考えは食べてみると吹き飛びます。

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さて、普段スイーツとは全く縁のない私ですので、本書にも登場する3種類の食べ方を素直に試してみました。

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「常温で」「冷やして」「温めて」の3種類の食べ方。

これが本当に面白くて、同じガトーショコラなのに本土が違うと全然味わいが変わるのです。

私の特にお気に入りは「温めて」ですね。

このトロトロ感は初めての味わい。

レンジで10〜15秒温めることをおすすめしていますが、ちょっと溶け出す7、8秒ぐらいでいいかも。

本書は、西恵理様より献本していただきました。
ありがとうございました。

目次

はじめに
第1章 なぜ4倍値上げしてもお客様が増えるのか?
第2章 今よりも高く売る!ブランドの育て方
第3章 ブランド力の伝え方
第4章 ”ありがたみ”を形にするサービス部ランディング
第5章 究極の1品ビジネス
第6章 スペシャリティ(看板商品)の磨き方
第7章 ダントツのネット活用術
第8章 どん底だから勝機は見えてくる
第9章 正しいチャレンジのしかた
おわりに

関連書籍

本書内で紹介されている本。

 

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