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ハーマン・メルヴィル著『白鯨』【読書メモ】西欧にも鯨肉食の文化はあったようだ

映画『白鯨との闘い』を観たのをきっかけに、ハーマン・メルヴィル(著)『白鯨』を読んでみました。
 
いろいろ印象的なシーンが登場するのですが、なかでも驚いたのが鯨肉を食べるシーンでした。
西欧人も鯨肉を食べることがあったのですね。

 

『白鯨』の読書メモ

 

★鯨のステーキ

『白鯨』には2等航海士のスタッブがクジラ肉を食べるシーンか登場します。

スタッブのセリフから

「ステーキだ、ステーキだ、夜食にはステーキだ!おい、ダグー!ちょいと船縁をまたいで行ってな、おれに尻尾のところを一切れ切ってきてくれ!」

 

「このステーキは焼き過ぎだと思わんか?それにおまえはこいつを叩きすぎたんだ。柔らかすぎるぞ。鯨のステーキは硬くなきゃうまくねえって、オレがいつも言ってるだろうが?<中略>」

 

 「<中略>明日だがな、司厨、あのでっけえ魚の脂肉切りが始まったら、おまえは忘れずにそばにいて鰭の先を切り取れ。そいつは酢漬けにするんだ。それから尻尾の先だが、こいつは塩漬けだぜ、司厨。さあ、もう行ってよし」

 

 「司厨、明日の晩は夜半直に立つからな、夜食にカツレツを出してくれ。わかったな?<中略>朝めしには鯨団子だぞーーー忘れるな」

欧米の捕鯨は脂を取るだけが目的で、肉は食べなかったと教えられてきましたが、これを読むと食べることもあったんだということがわかります。

しかも調理方法もいろいろあったようです。

★料理としての鯨

さらに『白鯨』には、鯨(海豚を含む)料理に関する記述があります。

記録によれば、3世紀前に背美鯨の舌がフランスで非常に美味なものとして珍重され、大いに高値を呼んだという。

『白鯨』が書かれたのは1850年頃ですから、3世紀前といえば1500年代。
フランスではフランソワ1世からアンリ4世にいたる時期でしょうか。

ヘンリー8世の時代には、宮廷のある料理人が、海豚のバーベキューに添える絶品ともいうべきソースを考案したことで立派な褒美をもらったそうだが・・・

ヘンリー8世は同じく1500年代のイギリスの王様。
この頃のヨーロッパ人は鯨類を食べたのでしょうか。

さらに驚くのはこの記述

海豚は今日にいたるまで上等な食べものとされている。この肉を玉突きの玉ぐらいの大きさに丸め、スパイスを利かせて上手に味付けすると、海亀か仔牛の肉と思い違いするほどだ。

海豚を食べていた?

メルヴィルの記述は本当なのでしょうか。
あと、抹香鯨の脳みその料理についての言及もありました。

★鯨を食べることに関して

ただし、上記のように鯨の料理に関する記述がありますが、本書が書かれた当時の欧米人は鯨類を食べないのが一般的だったようです。

その理由としては

人間がおのれの灯火の糧になる動物をさらにおのれの体の糧とし、その上、スタッブのように、その灯火のもとで食うとは!諸君はそう言われるかもしれない。たしかにこれはいかにも野蛮なことに思われるだろうから・・・

といったように、野蛮な行為と考えていたからというのが理由のようです。

なので

近ごろでは、鯨の料理を口にするのはスタッブのようなもっとも偏見の少ない人間だけである。

偏見のない人間だけが食べると。
ですが、メルヴィルの面白いのは、人々が鯨類を食べない理由に実際的なものも上げていること。

鯨を食べることを陸の人々が嫌悪の目で見るらしいのは、必ずしもそれがあまりにも脂っこすぎるからだけではなるまい。

肉が脂っこいと。

給食に鯨肉を食べた世代としては脂っこいというより固い印象のほうが強いのですが、これは食べる部位によるのでしょうか。

感想など

僕が読んだのは集英社ギャラリー『世界の文学』第16巻 アメリカ1に収録されている幾野宏訳のものです。

上下2段組で530ページの大著。
読み進めるのに苦労しましたが、1800年代前半の捕鯨の様子が非常によくわかり、産業史の歴史的資料としても読むことができます。

スタッブが仕留めた鯨に関して、どのように捕鯨してそれを解体し脂を採取したかが詳細に書かれています。

また、映画『白鯨との闘い』のモデルとなったエセックス号の事故に関しての記述もあります。

今回特に印象的だったのは鯨肉食に関する記述でした。
現在の捕鯨を取り巻く環境を考えると、西欧では鯨肉食の文化はないのかと思っていましたが、メルヴィルの記述が本当だとしたら、かなり昔から鯨類を食べるということはされていたようです。

ただし、あくまで珍味というか贅沢品としてのようで、一般大衆の食文化ではなかったようです。

本書では2等航海士のスタッブが鯨肉ステーキを食べるシーンが登場しますが、これもあくまで新鮮な肉を食べることが困難な船上という特殊な環境での事のようです。

実際、脂を採取したあとのクジラの死体は遺棄しています。
あくまで西欧の捕鯨は脂を採取することが目的です。
(日本だとあますところなく使うのですがね)

ですが、西欧人も鯨肉を食べることがあったというのを知って意外な気がしました。

今入手しやすいのはkindle版も出ている岩波文庫(上中下3巻)と角川文庫(上下2巻)のものでしょうか。
特に角川のものはkindle版がオトクな価格です。

メルヴィル
KADOKAWA / 角川書店
2015-06-20


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白鯨との闘い(字幕版)

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