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絶対に、この本に書いていることをそのまま真似しないでください【書評】向谷匡史(著)『ヤクザの必勝心理術』文庫ぎんが堂

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おはようございます、一龍です。

今日ご紹介するのは、心理術・交渉術・説得術のテクニック本ですがタイトル通りちょっと怖い系。
 
このテクニック、使うかどうかは別にして、対策用に知っておいて損はないかと。
 

 

はじめに

ヤクザの心理術・交渉術といえば映画やドラマで見る、組織力をバックにして、暴力をつかって理不尽で強引な要求を通すというイメーですよね。

それもある意味当たらずとも離れていないと思いますが、実際には暴力を使わずに要求を通していくことがほとんどのようです。

まずはそるテクニックの一端を御覧下さい。

修羅場で勝ち抜くポイント

★”断る理由”によって立場が逆転。その交渉は勝率80%

 

 実は”断りの理由”に噛み付くのはヤクザが最も得意とするところなのだ。
 たとえば、ホステスを口説くとする。
 「どや、店がハネてからメシ食いに行こうか」
 「ごめんなさい、今夜は用事があるんです」
 「そうかい。じゃ、いつならいいんだ」
 まさか,この先一年はふさがっているとは言えず、「来週でしたら」と答えざるを得なくなるという次第。「断るための理由」は諸刃の剣で、論破されてしまえば断る理由がなくなるということでもあるのだ。
 だから相手が「断る理由」を口にしたらしめたもの。ヤクザ式でその”理由”を潰し、退路を断って追い込んでいけばいいのである。

⇒ 下手な言い訳や安易な断りの理由は、つけ込む絶好のチャンス。逆に断る場合は、理由を言わずに「イヤです」の一点張りが鉄則だ。

★”ベンツ男”と”国産中古車男”  信用は「見た目」で決まる

 

 「金は無うてもええんや。あるように見えれば、それはあるのといっしょや。財産、なんぼあるか聞く奴、おらへん」
 お金があることと、あるように見えることとは、相手に与える心理的効果は同じ・・・関西ヤクザの某氏が喝破する人間心理である。
 人脈も同様で、「あの人は顔が広い」と思えば人は集まってくる。人が集まればそれが評判になり、本物の人脈になっていくのだ。

⇒ お金はなくても、あるように見えれば、あるのと同じ・・・。だからヤクザも、演技派は無理してでもベンツに乗り、高級スーツを着て見栄を張る。しょせん、人は見かけに騙されるものだ。

★相手に「羽振りのよさ」を推測させる”小さな演出”

 

 たとえば、カタギと寿司屋に行ったとする。
 「ウチもこのところ忙しくてね」と、あれこれシノギを自慢してみせるより、「板サン、飲りなよ」と鷹揚に言ったほうがはるかに効果的だ。
 板前に一杯奢ったところでいくらもしないのだが、鷹揚な態度はフトコロの豊をイメージさせるからで、人間は自分が推察したことに対しては無条件に信じ込むからである。<中略>
 ヤクザはこの心理を知り尽くしているから、”小さな演出”と少ない予算で最大効果を上げようとするのだ。

⇒ 羽振りがよいところに金も人も集まるのは世の常。内情は火の車でも、羽振りをよく見せれば同じこと。ちょっとした演出で相手に推測させれば勝ち。

★交渉の口火はハッタリで。わざと難航させて好条件を勝ち取る

 

 「てめえ、二度と運転できねえように、腕を落とせ」
 バーンとカマシを入れた。
 「そ、そんな・・・」
 「お前の腕、一本いくらだ」
 「・・・」
 「よし、一億で勘弁してやる」
 「い、一億!」
 腕を落とせ、と脅かし、さらに非現実的な金額を吹っかけたのである。
 払えるかどうかは関係ない。一億円と聞いて、慰謝料は容易ならざる額になるとオヤジは腹をくくるだろう。
 それでいいのだ。
 そして、脅したりすかしたり、何度か交渉するうちに、酒屋の資力から、二千万円が限界だろうと察した。
「あんたの誠意に免じて、二千万で手ぇ打ったろやないか」
「ハハーッ、ありがとうございます」
 オヤジは平身低頭で感謝するという次第。

⇒ 最初に無茶な要求で脅し、相手の状況(資力)を見極めながらソフトランディングさせる。相手も安堵する、巧妙な交渉術だ。

★震え上がらせ、安堵させる妙 「ボケ&ツッコミ」の交渉術

 

「何ィーッ!待ってくれやと!このガキ、死にさらせ!」
「兄貴、アカン!」
「どかんかい!自分で死ねへんのやったら、ワシが殺てもうたろうやないか!」
「兄貴、アカン!殺てもうたらアカン!」
 弟分が叫んで必死でむしゃぶりつき、債務者は震え上がって部屋の隅で凍りつく・・・これがヤクザ式「ボケ&ツッコミ」の”追い込み術”である。
 ツッコミは地でやればいいから簡単で、ポイントはボケ役。身体を張った演技で獰猛なツッコミ役を止めておいてから、「兄貴にあんじょう話したるさかい、あんたもええ返事したりいな」
 親身になって諭せば、債務者は”首振り人形”になる次第。

⇒ なだめ、すかしは交渉の基本テクニック。これをボケとツッコミの二人で演じれば効果抜群。

★失敗したときに価値が問われる”災いを転じる”事後処理術

 

 失敗をビッグチャンスにする若い衆に共通するのは、次の三つである。
 第一に、ドジを踏んだらすぐ謝りに行く。気が重いからといってグズグズ引き延ばしていると、上の人間は、ドジを踏んだことよりも、謝りにこないことに腹を立てることを知っているからである。
 二番目は、言い訳をしないこと。「なぜドジを踏んだか」という言い訳は、裏を返せば「自分は悪くない」という主張にほかならないからである。だから言い訳は”火に油”。さらなる怒りを買うことになる。
 三番目は、「お許しください」と詫びるのではなく、「もう一度チャンスをください」と言った意味の言葉を使う。なぜなら、「チャンスをください」という言葉は「関係の継続」が前提になっているからだ。

⇒ 「すぐ謝りに行く」「言い訳をしない」「名誉挽回のチャンスを請う」・・・この3行動で真価を発揮する。

★失敗した者にケジメをつけさせる魔法のひと言 「それで、どうする?」

 

「フムフム、なるほど、そうなのか」 怒鳴らないで聞き役に徹して相槌を打ちつつ、それで?それで?と追い込んでいくのだ。
「・・・ですから、お客さんの誤解なんです」
「なるほど。それで?」
「ですから、誤解を解けばいいかな、と・・・」
「なるほと。それで?」
「ええ、ですから、ボクが出向いてお客さんに謝って・・・」
自分がどうすべきか、部下のほうから言わざるを得なくなるというわけである。<中略>
頭ごなしに怒鳴りつければ、部下は自分に非があっても反発する。しかし、「それで?」と問われ、自分で口にした結論には従うというわけである。

⇒ 言い訳をさせて、「それでどうする?」と畳みかけることで、相手に何をすべきかを思い知らせることが、一枚上手の部下操縦法だ。

感想

◆虚実の皮膜

まず最初にお断りしておきますが、私は暴力団組織を肯定する者ではありません。

また、本書のテクニックをそのままで使うことは、絶対にしないほうがいいと思います。
もし会社内やビジネス上取引相手との交渉ごとで使ったら、おそらくあなたは信頼を失い、長い目で見れば大損することになると思います。

ではなぜ当ブログで紹介したか?

その理由の一つ目は彼らの手口を知っていて損はないと思うからです。
私は幸いこの業界の方とトラブルになったことがないのですが、知人には大変な思いをした方が何人かいます。

その中にはうまく交渉して、言いなりにならなかった人もいます。

著者が本書冒頭で

 ヤクザが命がけで培ってきた実践ノウハウを、私は本書で<ヤクザの必勝心理術>と名づけた。ビジネスの場で活かすもよし、恋愛に応用するもよし。<ヤクザの必勝心理術>を通して、対人関係の極意が「虚実の皮膜」にあることを知っていただければ幸甚である。

と書いていますように、彼らの心理戦の基礎にあるのは「虚実の皮膜」なのです。

先に挙げた、言いなりにならなかった人はこれを知っていました。
オラオラ脅し文句を並べても、絶対に手は出さないことを知っていたのです。

私たちは「虚」を「実」と見てしまって、ついつい言いなりになってしまいます。

まずはその辺のことをしっかり知ってもらいたいと思い、本書をとりあげました。

◆イメージ戦略は参考にすべし

そしてもう一つの理由。

それは彼らのイメージ戦略が参考になるということです。

誤解しないでほしいのですが、べつに怖いイメージをつくれと言っているのではありません。

お金のあるところへお金は集まる。
人脈のある人のところへ人は集まる。
仕事のあるところへ仕事は集まる。   等々

ようするに”にぎわっている”ところには、色々なものが集まってきます。

ならば、それを演出すればいいじゃないかということです。
その参考になるテクニックが本書で紹介しているヤクザの”演出”なのです。

以前ご紹介したこちらの本

放送作家の野呂さんの本ですが、この中に、中古のベンツに乗り、忙しそうに振る舞い、売れっ子の雰囲気を醸し出したというはなしが登場します。

すると、不思議と仕事がまわってきたのだとか。

野呂さんは自営業ですが、こういう演出はサラリーマンだって真似していいと思います。

寿司屋で「板さんも一杯やりなよ」のように、お金をかけずに”にぎわってる感”を出すような方法もあるわけです。

仕事ができる感じを演出するのも工夫次第だと思うんですよね。

といったことを考えながら読むとかなり参考になるネタ満載の本書。

くれぐれもそのまんま真似だけはしないでくださいね。

本書はイースト・プレス社様から献本していただきました。
ありがとうございました。

目次

はじめに この「ヤクザの心理術」を身につければ、どんな「修羅場」でも冷静に対処できる!
第1章 反論を100%封じ込める! [ヤクザの論理術]
第2章 「強い自分」を巧みに演出する! [ヤクザの説得術]
第3章 相手の心を手玉に取る! [ヤクザの交渉術]
第4章 どんな”修羅場”も一発逆転! [ヤクザの問題解決術]
第5章 言うことを聞かない相手を一喝! [ヤクザの人心掌握術]
参考文献

関連書籍

同著者の既刊本を紹介しておきます。

 

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