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歴史と軍隊は究極の組織論とリーダー論を教えてくれる【書評】鈴木博毅(著)『戦略の教室』ダイヤモンド社

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おはようございます、一龍です。

今日ご紹介するのは、鈴木博毅氏の『戦略の教室』。

人類3000年の歴史の中で学んだ「戦略」を2時間で学べる優れ本です。

はじめに

書店のビジネス書コーナーにいくと、古今東西の古典から仕事のハウツー本まで様々なビジネス書が並んでいます。

それらの本には必ず何かしらの「戦略」が書かれています。

とくに歴史や古典、そして定番とされるビジネス書は”必読の書”とされるものが多いのですが、本のがずが多い上に内容が難しいですよね。

今日ご紹介する『戦略の教室』は、古今東西の様々な「戦略」をわかりやすく解説してくれている超お得な1冊です。

まずはその一端をピックアップ。

古典から学ぶ戦略のポイント

★「小が大に勝つ」孫氏の兵法

1.張り合うことで敵が疲弊するポイントを攻める
2.相手の強みとは違う場所で勝負する

張り合うと疲弊するポイントを攻める。相手の強みとは違う場所で勝負する。敵にしてみれば「最もイヤな攻撃」です。戦略の始祖とも呼べる孫武の手法は、相手のある競争を前提とした戦略として、えげつないながらも極めて効果的だと言えるでしょう。
「小が大に勝つ」には、大が反撃を躊躇する手段が小に不可欠です。相手ものんびりこちらの活動を眺めているだけではないからです。大は元気な小が伸びることを阻止すべく必ず動きます。「小が大に勝つ」には、孫氏の二つの戦略が極めて重要になるのです。

★アレクサンダー大王が短期間で巨大帝国を築いた「三つの突破力」

1.定石を別のアプローチで攻略する
トップのビジネスをそのまま真似ても、トップを追い越すことはできません。先行者を超えるには常識や固定観念を破る、別のアプローチが必要なのです。

2.部下を挑戦させ続ける強いリーダーシップ
大王が兵士を挑戦させ続けた3つの方法
1自ら強烈な克己心を発揮し先陣を切って戦う
2さらに先の未来を周囲にイメージさせる
3逃げ場を先になくしてしまう

3.統治規模を拡大するための工夫
大王の3つの統治拡大策
1味方を生み出す提携関係
2圧倒的な優位や権威を広める
3解放者の旗印を掲げる

大王は、武力で圧倒しながら、負けたペルシャ人たちを差別的に扱わず、統治機構に組み込まれて上手く味方に引き入れました。さらにペルシャの圧政から諸部族解放する「解放軍」を自任したことで、大王の軍を歓呼して迎えた都市もありました。
「圧倒的な優位や権威」の誇示と、「味方を生み出す提携関係」は、現代のフランチャイズビジネスで、本部が広大なエリアに加盟店を募る姿に酷似します。また多くのサービスや製品は、何らかの形で顧客を解放する点をアピールしています(冷凍食品は主婦を食事の手間から”解放する”商品として開発された)。

★ニコロ・マキアヴェリの「正しい目標」を掲げて人を動かす

「人が現実に生きているのと、人間がいかに生きるべきかというのとは、はなはだかけ離れている。だから、人間いかに生きるべきかを見て、現に人が生きている現実の姿を見逃す人間は、自立するどころか、破滅を思い知らされるのが落ちである」

「加害行為は、一気にやってしまわなくてはいけない。そうすることで、人にそれほど苦汁をなめさせなければ、それだけ人間の恨みを買わずにすむ。これに引きかえ、恩恵は、よりよく人に味わってもらうように、小出しにやらなくてはいけない」

マキアヴェリと『君主論』の趣旨は、人も組織も、国家さえもタテマエでは動かない、ということです。

ビジネスで『君主論』を使う場合、典型的なケースは次のようなものです。

・組織と人を動かし成長させる「正義」を掲げ、指導力の基礎とする
・いままで地位が安泰だと思いのんびりと過ごした人たちに「あなたの地位も安泰ではない!」と告げて発奮させる

「君主は自ら仕掛けよ」とはマキアヴェリの言葉ですが、現代ビジネスでも、非常であっても正しい目標を掲げなければ、人と組織は動かせないことが多いのです。
何もしないリーダーに統率力はありません。正しい目標を掲げることは、時に厳しさと映りますが、組織に指針を与え、目標へ動かすため必要なことなのです。

★ナポレオンの凡人を最強兵力へと変える仕組みづくり

ナポレオンが欧州を席巻した原動力は、大きく3つありました。
1.フランス革命で国民の「当事者意識」が高まった
人間の自由と平等を掲げたフランス革命は、フランス人が「自ら祖国のために」戦い、決死の覚悟で勇敢に戦闘を行いました

2.大軍を出現させた「国民徴兵制度」の導入
徴兵制度で他国が想像できないほどの巨大な兵員を手に入れた

3.師団をさらに改善した「軍団制度」の遠征力と機動力
複数師団を機動的に活用する戦術

2000年前の戦争の歴史は、現代のビジネス組織の運営と似通った点があります。危機的状況においても、リーダーの効果的な目標設定によって社員のモチベーションを極限まで高め、各人、各部署、各チームが素早く連携できる仕組みをつくることで逆境に負けない強大な組織を生み出せると、歴史は教えてくれています。

★リデル・ハートの間接的アプローチ

 間接的アプローチとは
敵が十分備えている正面への攻撃を避け、備えが薄い部分を攻撃する、あるいは間接的に相手を無力化する方法を選ぶこと。
ハートは戦争の原則を一言でいうなら、「弱点に対する力の集中」だと述べています。<中略>
この発想は戦争のみならず、ビジネスでも十分に応用が可能です。
規模の大きい企業ほど、製造、仕入れはコスト優位性があるものです。大手企業や全国チェーンに対して、中小企業が価格で競争することは、レニングラードにやみくもに突撃するドイツ軍に似ています。敵の防衛が一番充実している「低価格・低コスト」に突撃せず、別の個所を攻めなければ勝てません。
消費者の心理も同じです。自分用の買い物では低価格品しか買わない人が、子供のためや可愛いペットのためには高額な買い物をしてしまうことがあります。
競合他社でも、消費者心理が相手でも「弱点に対する集中」こそ効果があるのです。

感想

◆古典との橋渡し

ビジネス書コーナーに置かれている本は多岐にわたりますが、読むと非常にいいと言われている本でも「どうビジネスに生かしたらいいの?」という本もたくさんあります。

私がその代表格だと思うのが『孫子』。

世界最古の兵法書として、また読み物としても文句なしに面白いのですが、いざこれを現実のビジネスに生かそうと思うと何をどうしたらいいかわからない。

「戦わずして勝つ」ことを至上とされてもそんなことはできないわけで、はてと悩んでしまいます。

同じようにアレクサンダー大王やナポレオンから我々は何を学ぶのか。

本書では教養のレベルではなく、実践の学問として学ぶポイントを列挙、解説してくれています。

最初に登場して来る『孫子』でも、「俺のフレンチ」を実例に孫氏の兵法がどのように当てはまるのかを解説(詳しくは本書で確認を)。

「なるほどね」と目からウロコでした。

◆組織論、リーダー論は軍隊から学ぶ点多し

本書では歴史上の人物が登場するのは最初の2章ぐらいまで。

後半はドラッカー、コトラー、あるいはマッキンゼーなど、聞き慣れた評論家、研究者、会社が登場します。

これらの説く戦略を一通り読み込むだけでも相当価値があると思いますし、本書自体が『ビジネス戦略事典』として活用するに値する本だと思います。

ただ、インパクトがあるのはやはり冒頭部分。

実際に軍隊を動かし、引っ張っていったアレクサンダーやナポレオンたちでしょう。

なぜ彼らに惹かれるのか?
それは軍隊は究極の組織だからです。

敗北は死を意味し、国家が滅びるリスクを負う軍隊というのは、勝つことが至上の目的としてはっきりしており、そのために一人ひとりが何をしなければならないか、誰にどんな責任があるのかもはっきりしています。

命令も絶対であり、ミッション達成のために犠牲を厭いません。

いわば究極の”組織”。

その組織を率いるリーダーもまた、非凡な才能を求められます。

だからこそ現代の我々は、彼らがどう戦ったのか、どう率いたのか、勝つために何をしたのかを学ぶ意義があります。

ただ、ビジネスシーンとは次元が違いすぎるので、本書のような橋渡しをしてくれる本が必要なのです。

◆アレクサンダーはブラック企業の経営者?

さて、最後に印象に残ったところを。

それはやっぱりアレクサンダー大王に関してですが、

「安楽な生活は奴隷にふさわしく、厳しい生活こそが王者にふさわしい」

といった言葉を残しているぐらいですからかなりストイックな方ですね。

彼はマケドニアの王子だったとはいえ、若干20歳で国を継ぎ、短期間で大帝国を築き上げた方。

企業にたとえればベンチャー企業の創業経営者といったところでしょう。

部下を徹底的に煽って全速力で走らせるその手腕は歴史上トップかと思いますが、一歩引いて冷静に見ると部下の幸せを考えないで働かせるだけ働かせるブラック企業の経営者ですよ。

どこまで行ってもキリがない目標設定、常に上を目指すゴールのないエンドレスな遠征はいずれ組織を疲弊させます。

その結果、大王はどうも毒殺されたようです。

最近ブラック企業の経営者が叩かれていますが、歴史上の人物から学ぶ分は華やかな成果の部分だけでなく、影の部分にも目を向けてほしいですね。

ということで、古今東西3000年の「戦略」がこの1冊で学べる超お得本です。

本書はダイヤモンド社、市川様から献本していただきました。
ありがとうございました。

目次

はじめに
第1章 勝敗を分けるリーダーシップ戦略
第2章 戦況を決定づける軍事戦略
第3章 生産力を最大化する効率化戦略
第4章 組織の限界を突破する実行力戦略
第5章 突出した成果を出す目標達成戦略
第6章 ライバルに勝利する競争戦略
第7章 問題を解決するフレームワーク戦略
第8章 強い組織をつくるマネジメント戦略
第9章 ルールを変えるイノベーション戦略
第10章 新たな生態系を生み出す21世紀の戦略
おわりに

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本書参考文献より

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