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人は自分を知ってもらってはじめて動く【書評】叱りゼロプロジェクト(編)『「叱らない」で部下を育てる技術』 日本能率協会マネジメントセンター

おはようございます、今年のゴールデンウィークはのんびり読書三昧だった一龍(@ichiryuu)です。

さて長い連休を終えて今日から通常業務の方が多いはず。
5月というのは、ちょうど時期的に新入社員の様子が分かってきた頃。そして研修を終えて”実戦配備”される頃でもあります。上司・先輩としては指導したり、「叱る」こともあるでしょう。
ということで、今日は上司・先輩の皆様に呼んでほしい一冊をご紹介。

タイトルのとおり、「叱らない」で部下を育てる技術でございます。

【目次】
はじめに
序章 なぜ、うまく叱れない上司が増えているのか
第1章 「叱る」ことにまつわる8つのジレンマ
第2章 「叱る」をやめると部下がぐんぐん動き出す!
第3章 「叱らない」からうまくいく!3つの解決策
第4章 「叱らない」でできる!部下を認めて伸ばす20のルール
おわりに
巻末資料

【ポイント&レバレッジメモ】

★もう「叱らない」で部下が育つ!3つのステップ

ステップ1 感情と事実を分ける  自分をコントロールする習慣をつける
上司のメッセージが正しく伝わり、部下の行動変容につなげるためには、部下に対して客観的な事実を伝えることが大切です。つまり、部下の失敗を指摘したり、注意を促す際に、「何が問題で、どのように改善する必要がある」ということを「事実」と「行動レベル」で示すことです。<中略>そこで意識したいのは、感情と事実を分けて考えるという習慣です。

ステップ2 部下のことをよく見る  部下を知り、信頼関係を構築する
部下とのコミュニケーションで気をつけたいのは、部下の話しにきちんと耳を傾けることです。<中略>聞き上手になるための基本は、部下の話しをとりあえず最後まで黙って聞くことです。途中で反論したいと思っても、それをグッとこらえて、いったんは腹に収めます。反対や否定的な意見を述べたいなら、部下が話し終えた後で述べるようにします。

ステップ3 ゴールを示す  部下に伴走し、未来へナビゲートする
改善策は、部下の問題やミスの原因を洗い出すことで自ずと見えてきます。<中略>
また、「なぜミスが起こるのか」の「なぜ?」をくり返して、根本的な要因にまで掘り下げることができれば、より具体的な行動レベルでの改善策を導き出すことができます。<中略>
業務レベルに置ける改善策を提示するだけでなく、本人が仕事を通じて目指したい姿や、どんな未来を手に入れたいのか、といったゴールイメージを部下と共有することも大切です。

■「叱らない」でできる!部下を認めて伸ばす20のルール(抜粋)
★改善要求は「I(アイ)メッセージ」で伝える

Iメッセージとは、「私(I)」を主語にして伝えることです。部下のミスを指摘したいとき、「あなたの行動について、私はとても残念に思っている」のように、「私はこう感じている」「私はこう思う」といった表現で伝えます。部下は自分の行動が上司を不快な気持ちにさせていることを知ると、「申し訳ないことをした。行動を改めよう」と素直に思うのではないでしょうか。

★期待していることを伝える

 日頃から部下との信頼関係を築いておくことはもちろんですが、厳しく指導するのは期待の裏返しであることを伝えることも大切です。部下に注意を与える際には「あなたのことを大事に思っているから指摘するのですよ」とひとこと添えるだけでも、部下への気づかいが伝わります。

★行動レベルでプラスのストロークを与える

 あなたは普段、部下と接するときに、肯定的な関わり方を意識していますか?
なぜこんな質問をしたのかというと、肯定的に関わり続けることで、肯定的に関わり続けることで、部下との人間関係をスムーズにし、部下を成長に導くプラスのエネルギーを引き出せるからです。
この「肯定的な関わり方」のことを、私たちは「プラスのストローク」と呼んでいます。<中略>部下と会話する際には、相手の顔を見ながら、相手の話しにあいづちを打ち、笑顔で、相手に届く声ではっきりと話すようにします。また、部下の気づかいや一生懸命な仕事ぶりに対して、それを当たり前のことだと捉えるのではなく、「いつもありがとう」「ご苦労様」と感謝屋根嫌いの一言を添えると、何気ない日々の会話をプラスのコントロールに転換できます。

★「ほめ日記」でプラスのエネルギーを引き出す

 部下の小さな変化に気づいたり、部下に対して肯定的な関わり方をするには、部下のちょっとした変化や成長に気づく力、つまり観察力や発見力が必要です。
それを高めるために上司のみなさんにおすすめしているのが、「ほめ日記」をつけることです。ほめ日記とは、「自分をほめる日記」のこと。<中略>
部下をほめるならともかく、なぜ自分をほめるのかと不思議に思う人もいるでしょう。しかし、ここでは「自分をほめる」ことに意味があります。自分をほめることで観察力を高めることももちろんですが、自分に対して肯定的な気持ちを身につけることができます。

★自責の意識をもつ

 部下のせいでこうなったと考えるのではなく、「上司である自分に何かできることはないか」と考えてみるのです。つまり、部下に責任があると考える「他責」から、自分が主体となって、自分の責任で行動しようとする「自責」への視点の転換です。<中略>自責に意識をもつことで、自分の働きかけ次第で事態を好転させられる可能性を手に入れることになります。<中略>
部下は、自分が責められているわけではないとわかれば、言い訳をしたり、嘘をついたりといった保身に走る必要もなくなります。

【感想など】

「叱る」のって本当に難しいですよね。
叱るほうも叱られるほうも、気分のいいものではありませんし、場合によっては部署全体に嫌な雰囲気が漂ったりします。

できれば叱りたくない、叱らずにすめばいいのですが、そういうわけにもいきません。
見過ごせば大きな損失となって帰ってくることになります。

ワタクシはこれまで幸いに部下や後輩を「叱る」必要性はほとんどありませんでした。
たいていの場合、「こうしたほうがいいよ」とか「これはあの人に相談してみるといいよ」といった、教えたりアドバイスを与えることがほとんど。

やる気も能力もワタクシ以上の人ばっかり(笑)だったので、「叱る」必要がありませんでした。
唯一叱ったのは、仕事から逃げている年上のおじさま部下2人。

この方達は何を言っても糠に釘だったので、しまいにはワタクシも諦めましたが・・・。

さて、幸いにも「叱る」ことをせずにうまく業務がすすめばいいのですが、実際の現場はそうはいかないほうが多いでしょう。

でも上司が叱り飛ばすスタイルの部署がうまくいっているとはとても思えません。
そういう部署も経験したり、傍目で観察したことがありますが、業務が滞りなく遂行されるだけで、クリエイティブさは無いし、部下の精神的鬱屈はたまる一方。

この上司が通用するのは毎年同じ仕事をこなせばいいだけの部署だけでしょう。
もちろんそういう部署はこれからの日本には皆無となるでしょうが。

上司のタイプはいろいろあっていいと思います。
べつに社交的でなくてもいいし、無口でもいい。

先頭を切ってすすむタイプでも、一歩後ろから見守るタイプでもいい。

ただ、本書を読んで強く思ったのは、上司と部下の間に「信頼関係」が築けているかどうか、その1点にかかっているということ。

その根底は「この上司ならついていっても大丈夫だ」と思ってもらえるかどうかだと思います。

これ、すごく難しいことですが一つ思うのは、佐々木常夫さんが”志”と表現されたような、なにか一本芯をもつ上司で、仕事ぶりからそれを感じる人であるかどうか。

本書では「自責」という言葉が登場しますが、まさしくこれは上司としての覚悟をもつということ。
ここがスタートラインだと思います。

そして、もう一つ。

人は自分を知ってくれている人のために働く、ということを常に忘れないように。

「この人は自分の技術を評価してくれている」「今までの努力を認めてくれている」と思えるからこそ、例え厳しく叱られたとしても「ついていこう」と思うもの。

日頃から「認める」「ほめる」「まかせる」のセットを部下にあたえ、でも何かあったときの「責任」は自分が引き受けるというスタンスを実行し続ける。

結局古いタイプかもしれませんが、「責任は俺が取る!」といえる上司かどうか。
そこで、叱っても部下がついてくるか、あるいは叱らなくても部下が伸びるかは決まってくるのではないかと思います。

その点、ワタクシはまだまだ覚悟がありませんが・・・。

ただし、本書を読まれる上司・先輩の方々にくれぐれもいいたいのは、「叱る」ことが悪いことではないということ。
「叱らない」のは理想ですが、「叱れない」人は管理職につく資格がないと思います。

くれぐれもその点をお間違えないように。

なお、本書の巻末には 職場や世代別の『叱る』ことにまつわる意識調査のデータ が掲載されています。

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「ゆとり世代」とか「バブル世代」とか、世代でひとくくりにするのは嫌いですが、このデータを観るとやっぱり世代別に顕著な傾向があるのかなと思ってしまいます。

まぁ、ゆとり世代は「ほめて伸ばす」ことを求めているようですが、これからは世代に関係なく認めて褒めて伸ばすスキルが上司には求められるんじゃないでしょうか?

本書は日本能率協会マネジメントセンター、木村様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】

上司としての心がまえを学びたいならこちらがオススメ。

参考記事:

志を旅せよ!【書評】佐々木常夫(著)『これからのリーダーに贈る17の言葉』( WAVE出版)

【管理人の独り言】

本記事中でも触れましたが表面的な理想の上司像にはこだわらなくていいと思います。

たとえば、野村さんが活躍したときは野村さんが、星野さんが活躍したときは星野さんが理想の上司ランキングトップになりました。
このお二人、まったく正反対の監督さんですもんね。

で、今は誰が理想の上司一位か知っていますか?

なんとイチロー選手です。
上司というイメージは全然ないし、あれほどストイックな方が上司となったら部下は大変なんじゃないかと思うのですが・・・。

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