おはようございます、給料を現金手渡ししていた頃が懐かしい一龍(@ichiryuu)です。
さて今日は、これまで斬新な視点を与えてくれる”働き方本”を出版されてきた木暮太一さんの本をご紹介。
お題は「給料」。
これまで賃金に関して、サラリーマンが信じてきたものががらっと覆ります。
ずっと「安月給」の人の思考法
【目次】
序章 会社が「社員食堂をただ」にする本当の理由
第1章 なぜ、成果を出しても給料は上がらないのか
第2章 給料の「高い会社」と「低い会社」に別れるワケ
第3章 なぜかお金が増えない「安月給」の人の思考法
第4章 給料を上げるための13の質問
最後に伝えたいこと
【ポイント&レバレッジメモ】
★給料は、あなたを働かせるのに必要なコストで決まる
「労働力をつくるのに必要な生産コスト」とは何でしょうか?
人が働くには、その仕事をする体力と知力(知識・経験)が必要です。<中略>
労働者として働いてもらうためには、食事をして、睡眠(休息)を取って、再びエネルギーを満タンにしてもらわなければなりませんね。このときにかかるコスト(食費、睡眠のための住居費など)は、労働力をつくるのに必要な「生産コスト」です。<中略>
(仕事に必要な)知識や経験を身につけてもらわなければなりませんね。このときにかかるコストや労力(学費・研修費・勉強時間など)も労働力をつくるのに必要な「生産コスト」です。
そして、これらの「労働力の生産コスト」を積み上げたものが、そのまま労働力の価値になり、それが基準となって、あなたの給料が決まっていくのです。
★報酬とは「雇い続けてもらえること」
使用価値が上がれば、その商品を欲しいと思う人が増えます。一般の商品で考えれば、使用価値が上がれば、消費者に選んでもらえます。そして、継続して買ってもらえます。これを労働力で考えると、
「労働の使用価値があれば(その人が優秀で、起業に利益をもたらせば)、起業に選んでもらえる、継続して雇ってもらえる」となるのです。<中略>
労働者として優秀になり、起業に利益をもたらすことで得られるのは「雇い続けてもらえること」なのです。給料が上がることではないのです。2倍の成果が出せるようになっても、給料は2倍にはなりません。そういうものなのです。それが資本主義経済における給料です。
★日本企業はすでにたくさん給料を払っている!?
労働分配率とは、稼いだ利益のどのくらいを労働者に払っているかを示す比率です。
この労働分配率、日本では、1960年以降、ずっと上昇傾向なのです。つまり、稼いだ利益を労働者にどんどん支払っているのです。
さらに現在、経済産業省のデータでは、労働分配率は70%を超えています。稼いだお金の7割以上を労働者の人件費に支払っているということです。これはアメリカ、イギリス、ドイツと比較してみても、一番高い値です。<中略>
すでにこのような状況ですから、「もっと労働者の給料を上げろ!」と叫んでも、高価は限られそうです。
★会社が給料を上げられない2つの本音
[企業の本音1]ビジネスのリスクが格段に上昇しているから
現代では、ベンチャー企業をつくってビジネスを始めても、わずか数年でその多くが廃業に追い込まれます。<中略>また、今年はうまくいっていたとしても、来年どうなるかわからない、5年後にどうなるかなんて見当もつかない、というのが実態です。<中略>大企業でも同じです。いまや名だたる大企業が巨額の赤字を計上しています。倒産寸前の企業も多いです。このような状況で、経営者は、社員の給料を軽々しく上げるわけにはいきません。[企業の本音2]一旦上げたら、なかなか下げられないから
給料は一度上げたら、なかなか下げることができないのです。労働者だけでなく、経営者もそれをよく知っています。だから、一時的に売上げが伸び、利益が上がっても、従業員の給料を上げられません。上げたくても上げられないのです。
★働き心地がいい会社の2つの条件
[条件1]社員の数が増えている
社員が増えているということは、その会社の人数が増えているということで、組織が大きくなっていくということです。組織が大きくなれば、それだけポストも増えますので、そのポストに就ける可能性も高まるのです。[条件2]中途入社(転職社)が多い
転職社は、少なくとも1社、別の会社を経験し、「他の会社」のやり方を知っています。前の会社のいい点は、今の会社にも導入しようとします。またいまの会社で非効率な仕事や無意味な仕事があれば、「前の会社ではこのようにやって、効率てきだった」と経験を生かして、改善することができます。これが大事です。
中途入社が少ない会社では、自分たちのおかしいところを指摘してくれる人がいません。
★安月給の人の8つの思考法(抜粋)
・「社員食堂が安い!」と喜ぶ
労働者が明日も働くのに必要な経費が少なくなれば、労働者の価値が下がり、給料を下げることができます。・就業規則を読んだことがない
その企業の人事制度や給与体系を調べて、どういう構造になっているのか、落とし穴はないか、などは自己責任として確認するべきです。・「会社の経費で落ちるか」をいつも気にしている
「経費精算」に慣れてしまうと、あなたは自分でお金を「投資」できなくなります。<中略>仮に自分の将来のために必要なものがあっても、「これは経費で落ちないから買えない」と考えるようになってしまうのです。
★給料を上げるための13の質問(抜粋)
・カネを稼ぐ「外向きの仕事」をしているか?
・「ワーク」と「ライフ」をバランスさせていいのか?
・自己アピールをしているか?
・「拡大再生産」を取り入れているか?
(詳しい内容は本書で確認してください)
【感想など】
これは衝撃の内容でした。
そもそも給料の額はどうやって決まっているのか?
普段、給料に対して文句を言っているくせに、根本的なところをあまり考えたことはありませんでした。
まぁ、なにか基準というか、計算式のようなものがあるのかなぐらいにしか。
それに、頑張って業績を上げれば給料も上がると信じ込んでいました。
おそらく多くの方がそう考えていたのではないでしょうか。
ところが著者がおっしゃるには、
「給料は、あなたが明日も働くために必要な経費で決まる」
「出した成果」ではなく、「生活費(明日も働くために必要な経費)」「経験で形成される基礎力」
で、決まるとのこと。
つまり給料というのは我々労働者を働かせ続けるための”維持費”。
車で言えば、ガソリン代や整備費のようなものだというのです。
『資本論』をもとに解説してくれていて、戸惑いながらも納得させられました。
おそらく賛否両論あるでしょう。
また、使用者の立場からは「うちはそんなつもりで給料を払っていない」という意見も出そうです。
ただ、労働者として
1 商品には、「価値」と「使用価値」がある
2 需要と供給のバランスがとれている場合、商品の値段は、「価値」通りに決まる
という資本主義の原則は絶対に押さえておいたほうがいいでしょう。
給料が2倍、3倍とは上がっていかなくても、大切なのは自分をコモディティ化させず、価値を高め続け、職を維持することですから。
では、給料を上げるにはどうしたらいいかということですが、その辺のことも本書は示唆にあふれています。
まずは就職の段階で業種を選ぶということ(それを言われたら今更なんですが・・・)。
業種によってあきらかに給料の上限に違いがあります。
工場などの大きな設備投資が必要な会社は給料が安くなる傾向があるし、参入障壁が高い業界は給料が高い。
また、業界によって「だいたい給料はこれぐらい」という賃金の幅が決まっています。
仕事ですから「やりたいこと」をやるのがいいでしょうが、給料だけを考えるなら、事前にその業界の賃金がどれくらいのレベルなのか、どの辺りまで上がるのかを調べてみるのが重要です。
また、サラリーマンで給料が上がる要因のひとつは”出世”です。
【ポイント&レバレッジメモ】でもピックアップしましたが、人数が増えている会社、つまり成長している会社に入れば、それだけ給料が上がる可能性も高くなります。
そういう戦略もありかなと。
いずれにしても、われわれ月給取りは、一部の完全歩合制の営業マンやあるいはスポーツ選手のように業績によって給料が倍々では伸びないもの。
でも、そんな労働環境、賃金環境の中でも、給料を上げるための戦略はいくつかあります。
ワタクシも福利厚生には目がいっても、就業規則を読んだことはありませんでした。
が、本書を読んで「学ばないものは損をするシステムが資本主義」(勝間さんの言葉だったかな?)という言葉を思い出しました。
「仕事はお金だけではない」というのもわかりますが、お金は大切。
そこはシビアに見ていきたいですね。
それに、我々が給与体系に詳しくなればなるほど、使用者も改善を余儀なくされるわけですから。
サラリーマンなら読んでおいて損はない、といより読まないと損をするかもしれない1冊。
本書はアスコム編集者の黒川様より献本していただきました。
ありがとうございました。
【関連書籍】
著者の既刊本を紹介。
最新刊です。
本書は、経済ジャーナリストの著者が、シリーズ1900万部を突破した大人気漫画『カイジ』を、「お金の教科書」として読み解いた一冊です。
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マルクスと金持ち父さんが教えてくれた“目指すべき働き方”
私は、大学時代に経済学の古典『資本論』と、お金の哲学を扱った世界的ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』を深く読み込むことで、その後の人生が大きく変わりました。実はこの2冊は全く同じことを言っています。それは、資本主義経済の中で私たち“労働者”が必然的に置かれている状況についてであり、そこから考え始めることで、どういう「働き方」を選択すればラットレースに巻き込まれず、幸せに暮らしていけるかがよくわかるのです。今の働き方に疑問を持っているのであれば、転職や独立、ワークライフバランスを考えても意味はありません。しんどい働き方は、もっと根本的なところから考え、変えていかないといけないのです。
【管理人の独り言】
その業種が給料が上がるかどうかも大切ですが、環境や時代の変化のなかでその業種が生き残れるかどうかも重要なところ。
それを知るのに昨年ベストセラーになったこの本が超オススメです!
特に就活前の学生さんは本書を読んで進むべき道を考えてみてはいかがでしょう。