おはようございます、LINEは一瞬だけ使ったことがある一龍(@ichiryuu)です。
さて今日は、今一番勢いのあるSNS、LINEを提供する会社、NHNについて書かれた本をご紹介。
LINE誕生の秘話から、アイデアの生まれる会社の環境づくりまで興味深い一冊です。
【目次】
NHNの哲学と実践が教えてくれるもの〜翻訳者のはしがき
本書を読む前の基礎知識
Section1:LINE誕生後のNHN
Chapter1:危機は音もなく訪れる
Chapter2:LINEの誕生で世界が変わった
Chapter3:LINEがもたらした新たな地平
Section2:LINE誕生前のNHN
Chapter4:グーグルも舌を巻いた迅速な意思決定と組織づくり
Chapter5:生活の中での新たな価値を提供するブランド戦略
Chapter6:ユーザーとともに歩む、未来に向けた経営哲学
巻末資料 NHNを巡る人と企業
【ポイント&レバレッジメモ】
★イノベーションとは「How」を発見すること
「革新とは、What(「何に」)に対する革新ではありません。革新の90%はHow(「いかに」)についての革新です。以前やっていたことをよりよくすること。それをできる人がイノベーターです。インターネット産業のトレンドを先駆けて知ることなど実は必要ないんです。任された仕事を通じてユーザーのニーズを的確にとらえ、どうすればそれを満たせるか、悩み抜いて実行すること。そこから企業の競争力が生まれ、勝負が決まるのです」
★「場」も「サービス」も提供する二重構造
LINEは二重(two-track)戦略を取っている。プラットフォームを運営していくため、当然、外部からのゲームや様々なコンテンツ、サービスなどの提供を認めるが、自社でもゲームやサービスを開発し、LINEを通じて提供する。いうなればNHNは、自分たちがつくったプラットフォームで他社と競争するという道を選択したわけだ。
★「完璧なプラットフォーム」を創出する
NHNは検索事業に続き、モバイルのショッピングでも、NHNのサービスを通じて人と人とを結びつけるネットワークの極大かを狙うだろう。いったん検索事業を押さえれば、やれることの可能性が一挙に増大する。検索とショッピングという両軸を通して現金を循環させられるようになり、ゲームとSNSを通して多くの人を集められるようになる。
つまり、モバイル上であらゆることが可能になる”完璧なプラットフォーム”を創出できるのだ。
★秘書も通さず、ホットラインでつながり合う経営陣
集団と言えば、気の合う精鋭メンバー同士だからだろうか?
実は、そうなのである。NHNの戦略委員会のメンバーは会社の中枢に存在する役員でもあるが、それ以前に親しい同僚であり、激しい競争の場でともに戦ってきた戦友だ。ビジネス以前に人間的なつながりと信頼関係が築かれている。仕事をしながら培ったのではなく、もともとそういうメンバー同士が集まってNHNをつくったのだ。「会社で何か起こるたびに首脳部がすぐに集まることを特に変だと思ったことはありません。秘書も通さず、お互いのホットラインですぐに集まり、話し合って決定している。考えてみたら、あまりほかの会社では見られない光景かもしれませんね。でも、これこそがNHNの強さの源泉だと思います」
★働きやすい環境整備が経営陣の仕事
「IT産業では、スタッフのアイデアが事業の基盤になります。スタッフが会社の財産であり、快適な仕事環境づくりが生産性向上に直結するのです。スタッフの独創的な発想と闊達なコミュニケーション環境のためには、今後も投資を惜しみません」
★肩書きに縛られない組織が理想
チェ・フィヨン代表が常に「人事が万事」というほどに、NHNは人事に気を配る。
NHNにおける人事の第1原則は本人が最も得意なことをやらせること、つまり、技術開発者に管理職の仕事はさせないということだ。第2原則は、肩書きよりも任せた分野で専門家になることを求め、そうすることで本人自身が熟達し、生き残れる環境をつくることだ。「肩書きに縛られると、個人の専門的な能力より地位にこだわるようになってしまうからです。役員になった途端、頂上にたどり着いたと満足するような人間にはならずに、自分の専門能力を磨き続ける人が多い会社に私用という意味で、自分独自の分野を開拓することの重要性を強調しているわけです」
★「ユニークなサービスは、ユニークな職場生活から生まれる」
自社ビル移転前のNHNの盆唐本社9階には、NHNにしかない特別なスペースがある。それはカフェテリアなのだが、NHNのスタッフが自由に休憩し、来客を迎える場所として活用されている。めずらしいのは、スタッフが自由に打ち合わせをするスペースと接客スペースが隣り合わせになっていることだ。
あえてふたつの場所を分ける理由がないというのがNHNの考えだ。<中略>おしゃべりがディスカッションに発展することもあれば、サービスの話しをしながら新しいアイデアが浮かぶこともあるだろう。スタッフ同士の会話から、多くの新規サービスや優れた事業メディアが生まれると、NHNは固く信じているのだ。
★来客テーブルの横に社員用スペースを設置した理由
NHN本社のつくりを見ると、スペースを厳密に区切るよりは、すべての面で「ミックスする」という考え方が強調されているのが感じ取れる。たとえば、働く空間のすぐ隣に休憩室があり(=働く空間と休憩スペースのミックス)、来客とのミーティングスペースにはスタッフの休憩スペースが用意されている(お客さまとスタッフのミックス)という具合だ。
「特別な日、特別な場所で顧客と接するのではなく、日常の中で行うようにしました」 NHN BXDセンターのセンター長であるチョ・スヨンはそのように説明する。
【感想など】
LINEの急激なユーザー増は皆様ご承知のところ。
最近では初対面の方と連絡先交換をするときに「LINEやってますか?」と聞かれることも増えました。
個人的には、残念ながらLINEは使っていません。
iPhoneにアプリをダウンロードして登録もしてみたものの、ちょっと覗いてみただけですぐに退会してしまいました。
なんか、昔お付き合いのあった方々の名前がずらっと出てきた瞬間、怖じ気づいてしまいました。
でも、そんなワタクシの横で娘は楽しそうに使っています。
なんとなくおじさんはFacebook、若者はLINEという棲み分けがある感じがしますね。
さて、こんな急激にユーザーを拡大し続けているLINEを提供しているNHNですが、この成功の裏にはいったいどんなヒミツがあるのか気になりますよね。
今回は3つほど挙げたいと思います。
まず、NHNの考える理想の社員像ですが、イ・ヘンジ取締役会議長のこの言葉が如実に語っていると思います。
当たり前の仕事で革新を図れる人こそが本物のイノベーター
NHNが提供するのはインターネットサービス。
そこにはいつもユーザーがいて、ユーザーの要望やのぞみがあって、ユーザーに寄り添うカタチで新しいサービスを提供しなければならない。
ということは、そこに求められる革新は、今目の前にあるサービスをより良くしていくこと。
かつて、アップルがiPhoneやiPadのような”誰も見たことがない”ようなデバイスを提供して、ユーザーの想像を超えた驚きを提供した”革新”とは方向性が違います。
その方向の革新ができる社員とは、”当たり前の仕事で革新がはかれる”人なのですね。
2つ目は迅速な意思決定。
迅速な意思決定と言うと、ワタクシはスティーブ・ジョブズを思い浮かべてしまうのですが、
「メンバーを力で圧倒するような経営者が賞賛されるのは間違っている。メンバーのみんなが出した結論、みんなの合意を尊重できる人物が優れた経営者なのだ」
とイ・ヘンジが言っているように創業者で歩かれはカリスマタイプのリーダーではないそうです。
では、どのような集団で意思決定をするのかですが、NHNの面白いのは取締役会以外に戦略委員会という機構があるそうで、事実上そこが意思決定機関。
そして、この戦略委員会のメンバーは【ポイント&レバレッジメモ】でもピックアップしたように、何かあればすぐにお互い連絡を取り合い、集まって話し合う体制ができている。
しかも、そのベースとなるのは委員会のメンバーがもともと仲の良い同僚だというのです。
このフットワークの軽さと、風通しの良さ。
日本の大企業はスピード感がないとよく聞きますが、ここは参考にしたいところです。
最後に、カフェテリアの話しが登場します。
来客用のスペースと社員用のスペースを分けていないカフェテリア。
「それって、セキュリティ上大丈夫なの?」と、ちょっと心配にもなりますが、こういう考えから行われているそうです。
インターネットを使う人は誰もがNHNの顧客だからにほかならない。検索であれゲームであれ、NHNのサービスは事実上、世界中のすべての人を相手にしているとみなすことができる。だからこそ、顧客とは日常的に接していなければならないとNHNは考えるのである。
お客様と直に接する機会を大切にする。
これはお客様に寄り添って常にサービスを改善し続ける企業にとって非常に重要なこと。
しかし、部署によってはお客様と直に接することがないのも事実。
会社の中にお客様と直に接することができる空間があるというのは、大きな強みになるのだと思います。
実際、有名なIT企業の中にも、「これってお客のこと本気で考えてる?」と疑ってしまうようなサイトの設計をしているところも多々見かけます。
その企業の中だけで完結してしまうと、どうしてもユーザーの望むものから離れしてまうもの。
ユーザー体験を本気で考える企業だからこそ、LINEのヒットがあったのは間違いないと思います。
本書には他にも、専門に特化した人事を徹底するといった企業環境のヒントがたくさんあります。
これからの時代に大きく伸びる企業とはどういうものか。
ぜひ参考にしてください。
本書は実業之日本社、酒井様より献本していただきました。
ありがとうございました。