おはようございます、商店街には子どものころの思い出がいっぱいの一龍(@ichiryuu)です。
さて今日は、地域活性のプロフェッショナル、久繁 哲之介さんの新刊をご紹介。
ワタクシの地元の商店街もシャッター街となっていますが、本書を読むとその原因がなるほどと思います。
と、同時に地域再生の方向性も見えてきます。
地域活性化に頭を悩ませている行政と商店主さん、耳が痛いと思いますが必読です!
【目次】
はじめに
第1章 レトロ商店街の罠
第2章 キャラクター商店街の罠
第3章 B級グルメ商店街の罠
第4章 商店街を利用しない公務員
第5章 意欲が低い商店主
第6章 再生戦略1「シェア」で、雇用・企業を創出
第7章 再生戦略2「地域経済循環率」を高めて、第一産業と共生
第8章 再生戦略3趣味を媒介に「地域コミュニティ」を育成
参考書籍
おわりに
【ポイント&レバレッジメモ】
★まちおこしと、商店街活性化は評価軸が違う
要するに、まちおこし(観光振興)と商店街活性化を混同しているのです。
この混同こそ、全国の商店街が未だに活性化できない大きな理由です。すなわち「地元市民のために、生活インフラ機能を強化して、リピート客を増やす」べき商店街の活性化施策が必要なのに、お門違いの「まちおこし(観光振興)の施策」をかぶせているのです。
ビジネスが持続・成長するには「一見客でなく、リピート客を創る」事が基本です。商店街の活性化も、レトロ化で一見の観光客を狙うのではなく、地元市民がリピート客になってくれる施策を考えるぺきです。
★地域密着が、商店街再生の鍵
商店街の再生施策に奉来顧客が.商店主を含む地一域住民と一ゆるやかに繋がる」場所と機会を創りだす取組こそ最も注力すべきですが、あまり実践されていません。なぜでしょうか?
現役オヤジ世代の多くは多忙を理由に「日常の買物をしない、すなわち商店街を利用しない」し、職場等に仲間がいるから「話し相手が居なくて困る事もなどのでしょう。
一方、リタイア世代は何か理由をつくって外出しないと「話し相手が居なくて困る」人が少なくありません。理由として最適な行動が日常の買い物であり、商店街はその最適な場所と位置づけると、商店街再生の方向性が見えてきます。
このように、顧客の気持ちやライフスタイルを理解する意欲がないまま、現役オヤジ世代だけで商店街活性化を計画すると、えてしてレトロ化など非日常的な施策にばかり目を奪われる罠に陥ってしまいます。
★地域経済循環率を高める商品開発
取組の表面だけを見ると「水木しげるロードだからできる特殊なこと、奇抜なこと」と感じてしまうかもしれません。取組の本質を説明するので、表面の模倣ではなく、本質の応用を実行しましょう。
最初の取組は「地域経済循環率を高める」ことに本質があります。地域経済循環率とは、地元での消焚が地元に循環する割合を言います。<中略>地域再生は「売上額」の向上でなく「地域経済循環率」の向上が鍵となります。<中略>境港は、まぐろの水揚げ量が多いことで有名です。地域経済循環率を高めるには、まぐろを中心に地元食材をキャラクター関連商品として開発・販売する取組が有効です。そこで開発されたのが「鬼太郎まぐろラーメン」です。
★「地域経済循環率、起業、地域コミュニティ」の相乗効果
B級グルメ商店街をつくるには、本章の冒頭で示した「地域経済循環率、起業、地域コミュニティ」の3つを連携し
て高める取組が有効です。こちらの模範モデルは、宇都宮鮫子や今治やきとりです。
どの地域も、様々な地域資源を有しています。しかし、各地域資源を連挑できない地域が非常に目立ちます。なかには、各地域資源の関係者が利権を保持しようとして、各地域資源が「競合、共食い」状態にある地域も少なくありません。
この観点から私は、今治モデルを高く評価しています。評価基準を分かりやすく整理しましょう。
①3つの取組「地域経済循環率、起業、地域コミュニティ」が連携し、好循環を生む。
②2つの料理ごとに「勝てない土俵では戦わないⅡ勝てる土俵を探すか創る」戦略が明確で、客層や時間帯という集客要素が「連携・補完」関係にある。<中略>やきとり店は、Bー1グランプリがブームになる以前から「夜、地元市民にとって、地域コミュニティの場」になっていました。<中略>焼豚玉子飯は地域で埋もれていたし、B−1グランプリで「勝てる料理」なので、B−1グランプリへ出場しました。その結果、焼豚玉子飯を出す飲食店は「昼、観光客を集客する場」になり、起業により店舗数の集積が進むにつれて「地元市民にとって、地域コミュニティの場」という機能も強化されてきています。
このように、今治モデルが上手く回る基本は「地域経済循環率が高と取組に起因しています。具体的に言うと、地元で養鶏する「鶏の肉を、やきとり」で使い、「鶏の卵は、焼豚玉子飯」で使う扉で非常に効率良く地域経済彼環率を高めています。
地元の食材を活かす料理で、地元の人材が起業する店だから、地元市民が集いたくなる「地域コミュニティの場」に進化するのです。
★商店街を利用しない公務員
商店街の再生を実現するには、商店街が「安さ、便利さ」とは違う魅力的な価値基準を、顧客と協働しながら創出することが必要です。公務員が地域再生および商店街再生を少しでも考えているならば、その協側に積極的に関わる当事者意識が強く求められます。
にもかかわらず、東京から招いた講師との懇親会でさえ、職員食堂で「安く、便利に」済ませる公務員の行動は「モラル欠如」と言わざるをえません。
★シャッター商店街は、節税策に使われる金融商品
節税は固定資産税と相続税の双方で可能ですが、ここでは本質を具体的に説明できる相続税の話をします。事業用宅地(店舗兼住宅)を事業承継する場合の相続税は、事業用宅地400㎡までが評価額を20%に減額して優遇されます。たとえば、評価額3億円の土地400㎡を相続人1人が相続する場合、他の相続案件や借入金がないと仮定して、事業用宅地とそれ以外の相続税額を比較してみましょう。
事業用宅地の場合は、3億円を別%に減額した6000万円は基礎控除内となり相続税が免除されます。一方、青空駐車場など更地や賃貸オフィス等の優遇措置がない土地の場合は、7900万円の相続税が課せられます。 商店主が高齢者の場合や、地方都市など高い賃料を期待できない立地の場合、賃貸用店舗等への建て替え投資の意欲は湧かず、必然的にシャッター商店が選ばれます。
両者にこれだけ大きな差があると商店主が一子供が跡を継いでくれな肱(後継者がいない)」ことを理由に、商いを放棄する時、投資を行って不動産オーナーになるか、節税目的でシャッター商店主になるかでどちらが得かを天秤にかけます。<中略>
高齢化と地方経済停滞が進むなか、シャッター商店街が増え続ける本当の理由は「商店街が節税策に使われる金融商品」という特性にあるのです。
自治体が、こうした認識をもたずに、シャッター商店街のシャッターを開けるために、再開発事業など多額の公共事業を実施し続けている現状には、首をひねりたくなります。
★商店街の再生は「顧客を増やすこと」、そして「交流戦略」
商店街の再生は「顧客数を増やす、顧客単価を上げる」施策のどちらが重要でしょうか?<中略>
私は、戦略を「効率、高級、交流」の3つに分けて、商店街は交流戦略を推進すぺきと主張しています。
交流戦略は「人の繋がり、コミュニティの強さ」を活かした顧客づくりです。大企業は効率を得意とするが故に模倣が難しく、交流戦略は「大型店やコンピニと差別化」ができる個人商店に最適な戦略と位置づけることができます。
★重要なのは「何をやるか」ではなく「顧客目線」
商店街の取組で最も重視すぺき視点は「何をやるか」ではなく「顧客目線か」です。商店街の取組で失敗している事例は、自治体や商店主が商店街再生のために「何をやるか」
という視点で議論を始めています。商店街再生のためという販売者側の視点から出発するから、顧客目線を意識できず、成功事例と言われる候補から「簡単そうな、何かを探す罠」に陥ってしまうのです。<中略>
顧客や地元市民の声を聞きながら「顧客・地元市民が主役として、自分のコトとして関与できる取組」が、商店街の再生に繋がるのです。
【感想など】
◆古き良き時代は、今は昔
著者の久繁さんは地域再生プランナーをされていて、地域再生のプロフェッショナルな方。
その著者の書かれた商店街再生についての本書は、「そこに触れていいんですか?」という本質をズバズバ突いています。
そもそもワタクシの住んでいるうどん県にも各市に商店街がありました。
が、ご多分のもれず酷い状況です。
丸亀市の商店街は商店街の入り口に立つと、向こう側の出口まで誰もいないのがわかるという”商店街貸し切り状態”が珍しくありませんし、坂出市の商店街も飲食店以外はほとんどシャーッターが降りています。
観音寺市にいたっては、商店街のシンボルであるアーケードがなくなり、商店街という雰囲気すら感じられません。
ワタクシが子どものころは土曜の夜ごとに催し物があり、それに連れて行ってもらうのが楽しみでした。
あのにぎわいを経験し、古き良き時代を知っている世代としては寂しい限りです。
◆意欲も能力もない公務員と商店街主
なぜこんなふうに商店街が衰退してしまったのか?
著者は
商店街が衰退する本質は「公務員など商店街支援者と商店主の多くに、意欲と能力が欠けている」ことにあります。
と結論づけています。
なかなか手厳しいですが、ワタクシもそれには納得。
まず行政側ですが、そもそもこういった街を再生するといった大きなプロジェクトを、マーケティングや地域経済の素人である行政が音頭をとっていること自体おかしいんじゃないかと思います。
餅は餅屋。
それこそ、著者のようなその道のプロを招聘して全権を任せ、企画立案させるべきでしょう。
そしてそれがうまくいき、税収が増えたならば、税金から惜しみなく報酬を払えばいい。
うまくいこうがいくまいが、結果が関係ない公務員に大きなプロジェクトを任せるのはもうやめたらどうでしょうか。
そして、一番の原因は商店街主。
ワタクシは冷たいようですが、もう商店街は必要ないと思っています。
丸亀市などは駅からお城の方面に抜ける非常にいい場所を、死んだような商店街が占拠していますが、いっそすべて更地にして再開発した方がいいとさえ思っています。
我が家は、休日によく家族でイオンショッピングモールに出かけます。
利用された方は気がつくと思いますが、あの専門店がずらっと並んでいるショッピングモールって、現代版の商店街ですよね。
ぶらぶらと歩いているだけでも楽しいうえに、ときどきお笑い芸人さんのライブがあったりして、田舎ではなかなか見れない催し物もやってくれます。
でもその裏側では熾烈な売上げ競争を課されています。
どの店も売上げを伸ばすため、お客様に足を運んでもらうために必死です。
その必死の営業努力を商店街からはまったく感じられません。
もう、小売り商店が軒を連ねているだけの商店街は存在意味がないのに。
◆観客参加型の劇場
といっても、たいていの場合、駅前などの街の一等地を占めているのが商店街です。
このままシャッター街のままにしておくと、本書に登場する歓楽街になってもらっても困ります。
なんとか再生してもらいたいものですが、本書で著者が主張する再生案は非常にシンプル。
商店街が「モノを売りたい」なら、先に「顧客がしたいコト」を用意しましょう。
まさしくこれだと思います。
もはや客は買い物だけをするために商店街に来ませんよ。
そこに自分がしたいことがある、会いたい人話したい人がいる、学びたいことがある・・・
要するに自分の居場所がそこにあるから来るのです。
その成功例として本書後半には数例の商店街が紹介されています。
商店主には怖いことかもしれませんが、「モノを売る」という考えをを一旦捨ててみてはどうでしょう。
何をすれば人は集まるのか?顧客は商品以外の何を求めているのか?
そこからスタートしなければこのまま自然消滅するだけでしょう。
自分の所有しているスペースを、お客様が主役の舞台、劇場にする覚悟と発想の転換を期待したいものです。
本書は著者の久繁様より献本していただきました。
ありがとうございました。
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