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一人ひとりにビジョンを!【書評】中竹竜二(著)『部下を育てるリーダーのレトリック』日経BP社

おはようございます、一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、名門早稲田大学ラグビー部の監督をされていた中竹竜二氏の著書をご紹介。

大学選手権を2連覇した名将は、さぞや厳しい指導の猛将なのかと思いきや、意外にもレトリックを用いた選手一人ひとりの良さを引き出す指導をされていました。

”荒ぶる魂”を率いた監督の指導テクニックとは。
管理職の方、必読です!

 

【目次】
プロローグ レトリックはリーダーの必修科目である
第1章 気づきを与える言葉
第2章 部下の成長を促す言葉
第3章 チームカを高める言葉
おわりに

【ポイント&レバレッジメモ】

★「らしさ」

 そんな失敗を経て、私が何より重視するようになったのは、一人ひとりの「らしさ」だ。そして、その中でも特に強烈で、その人だけしか持たない「らしさ」を「スタイル」と呼び、それを重視することが私のマネジメント法の基本となった。
 日常の観察や個人面談を通じて、それぞれのスタイルを見極め、「らしさ」を存分に発揮させることが、メンバーの成長や成果につながると信じている。<中略>
「君が持つ『らしさ」、スタイルを生かして頑張れ」。そう激励するだけで、彼らは大きなストレスから解放され、ポジティブに仕事や役割に向き合うようになる。

★瞬間の強みを成果に変えるのが上司の役割

上司の役割とは、まず「瞬間」を切り取って、強みを自覚させること。それには本人に「『俺ってイケてる』って思える瞬間は何か?」と問いかけること。そのうえで、仕事ぶりを振り返ってもらい、「その瞬間こそ、本当に自分の強みだ」と腹に落とすこと。
「瞬間芸」に終わらせず、どうしたら成果に結びつけることができるのか、同じような強みを持つ人の活躍の例を探してきたり、その生かし方を一緒に考えたりすることも大事だ。そして、その強みを生かせるようなアサインをする。

★ストーリーに「君らしさ」はあるか

 早稲田の監督時代、毎年1年生から4年生まで、全部員と個人面談をした。そこで行うのは、先述した個々の「スタイル」の確立と、その年の目標設定。目標設定に私が使っていたのが、「VSSマネジメント」という手法である。VSSマネジメントとは、「ビジョ
ン(Vision)」「ストーリー(Story)」「シナリオ(Scenario)」の頭文字を取ったものだ。ビジョンを描き、それに向かう道のり(ストーリー)を具体的にイメージする。そして、そこで起こり得る失敗や逆境に立ち向かうために、どんなセリフや行動を仕込むかを考えるのがシナリオである。少なくともビジョン(目標)と、そこにたどり着くストーリー(プロセス)の話し合いは必須である。

★「すごい人」より「できる人」になろう

「できる人」とはどんな人か。「あの人、できる人だね」というとき、どんな人を指しているだろうか。きちんと準備して、ぬかりなく問題を片づけ、スケジュール通りに確実に成果を出す人。私のイメージはこうだ。つまり、「できる人」を正確に表現すると、「きちんと+やる人」ということになる。<中略>
「きちんと+やる」をさらに突き詰めて考えてみると、それはすなわち物事に対して真摯に向き合う態度にほかならない。つまり、「すごい人」とは際立った才能や能力に対する評価であり、「できる人」とは、仕事に向き合う態度への評価だ。
「すごい人」を目指しても徒労に終わる可能性が高いが、仕事を「きちんと+やる」態度は、努力すれば身につけられる。しかも、それは若いときのほうがいい。

★マニュアルはポリシーを伝える道具

 マニュアルによる効率化だけを狙うと、マニュアルを作った本来の目的が見えなくなりかねない。そのこと自体は、教える側もなんとなく理解しているはずだ。「マニュアル通りやってもうまくいかないことがあるよ」とあらかじめ伝える上司も多いだろう。だからこそ、その後に続く言葉が重要だ。「マニュアルは、裏を読もう」である。
 マニュアルの裏にある「Why」は何か。これを考えさせることは、今、自分は何をすべきかを常に意識する自律的な人材を育む。マニュアルとはかくも大事なものである。その存在には意味がある。その「裏」と一体で。

★「夢」はいらない

 多くの人が「夢を持て」「夢は大事だ」という。しかし、本当にそうだろうか。私は「夢はいらない」と、いつも言っている。その代わり、「ビジョンを持とう」と。
 夢とビジョンはどう違うか。私の定義だが、夢になくて、ビジョンにあるものがある。それは「現時点」である。
 夢は単に、「ああなれたらいいな」と、夢想するものだ。そこにリアリティーは求められない。一方、ビジョンは、同じ「ああなれたらいいな」と考えることだとしても、「今」という起点がある。今という起点には、自分の置かれている状況、持っているスキル、能力などの認識が含まれる。すると、ビジョンと何がかい雛しているかが明らかになる。そのかい雛を埋めていくのが、「ストーリー」と「シナリオ」である。

★正論は小声で言おう

「正論は小声で言おう」とアドバイスする。
 正論には刃が潜んでいる。正論は正しいからこそ、言われた相手は自らを恥ずかしく思うし、自分を守ろうとする。だから、拒絶される。
 人前で間違いを指摘されて恥ずかしいと感じる気持ちは、若者でも、40代、50代でも同じだ。1対1のときに話す、「こんな考え方もある」と真っ向から否定しないなど、正論を吐く場合には、相手への配慮が欠かせない。

★スキルは「点」、スタイルは「線」

 私はよくスキルは「点」であると説明してしる。点のスキルは、そのスキルが発揮できる瞬間にしか役に立たない。逆に第1章で説いた「スタイル」は「線」だ。スキルを含めた点が線で結ばれた,とき、初めてどんな場面でも力を発揮できるようになる。
 言い換えれば、勝てる組織が持っているのは勝てるスタイルであり、成果が出せる人が持っているのも、成果が出せるスタイルだ。
 「仕事のな力で突き抜防た成果を出そうと思ったとき、どんな考え方、習慣、振る舞いが大切なのかを考えよう」と部下を促すといい。「成果が出せる自分」は、どんなあいさつをするだろう。会議前にはどんな準備をするだろう。会議ではどんな発言をするだろう。忙しいとき、疲れているとき、どんなふうに人と接するだろう……。完壁な「誰か」の真似をしようということでは決してない。人によってスタイルは必ず異なる。

★君の「本番」は何だ?

 スポーツには「本番」である「試合」がある。試合に勝つことを目標として練習が行われる。本番でどうすれば成功できるかを考え抜き、その結果を練習に落とし込んでいく。それが指導者の役割である。
 では、企業の現場はどうか。試合(本番)と練習は分かれていない。OJTを大切にする企業では、すべての瞬間がトレーニングと位置づけられている。それを否定するわけではないが、すべてをトレーニングととらえたら、その成果は何に表れるのだろうか。
 私は仕事にも試合と練習という意識を持ち込むことが大切だと考えている。「マッチメーク」で部下に経験を積ませ、ここぞという「勝負どころ」を設定してやらなければならない。

★未来の自分と話しをしよう

 失敗を振り返る目的は未来をいかによくするかを考えることにあるはずである。しかし、実際には「振り返り」というと、「ああすればよかった」「こうすればよかった」と過去にやってしまったことの回顧だけになりがちだ。これは最悪である。未来の話をするにしても「次はこうしたほうがいいよね」というレベルで止まっては、意味がない。そこに欠けているものは何か。未来のゴールと失敗した今をつなぐ視点である。

【感想など】
◆オーラは必要ない
著者の中竹竜二さんは早稲田大学ラグビー部の監督として2007年度から2年連続で全国大学選手権を制覇した方。

本書はラグビー部の監督として、選手を育てた経験をもとに、ビジネスの現場で部下を育てているビジネスパーソンへ人材を育てる方法を説いた内容となっています。

そしてこの内容が驚くほど秀逸。
これは今の若者を育てるのにもっともぴったりで、効果が高い指導方法ではないかと思ってしまいました。

その方法を端的に表しているのが、タイトルにもあるように”レトリック”ではないでしょうか。

著者ご自身では、自分のことを”史上最もオーラのない監督”とおっしゃっています。

もちろん謙遜も含まれているのでしょうが、いまだに体罰問題が発覚するように、スポーツの世界の指導に”恐怖”はありがち。
ビジネスの現場でもパワハラという言葉があるぐらいですから、これは人を育てる場合の本質的な問題です。

ところが著者はオーラ(威厳や風格)といったある種の”恐怖感”で指導していくのではなく、レトリックを使って選手を導いていくスタイルです。

実際のところこういう指導ができる人にはオーラなどというものは必要ないのでしょう。

◆レトリックで導き、引き出す

ここでレトリックについて

レトリック(rhetoric)とは、古代ギリシアに始まった効果的な言語表現の技術であり、日本では「修辞学」と呼ばれる。歴史を振り返れば、皇帝、武将などが必ず学ぶ教養科目の1つだった。側近の部下はもちろん、時に民衆や一兵卒にもわかりやすく物事を伝え、納得させ、人を動かすことが重要だった彼らにとって、必須のスキルだったのである。

ワタクシの世代では、「仕事は自分で盗め」と言われたものです。
そしてその気風はスポーツの世界でも同じでした。
ワタクシはある武道を習っていましたが、丁寧に教えてくれる中にも、「自分自身で習得せよ!」「一を学んで十を知れ!」という暗黙の了解がありました。

非常におおざっぱなくくりですが、バブル以前は一億総中流階級とか大衆社会と言われ、ベースになる物事の価値観や考え方が似ていたから、それでもよかったのかもしれません。

ですが、時代は変わりました。

 日本の企業は「暗黙知」を信頼しすぎるのだと思う。「背中を見て学べ」はその最たるものだ。言わなくてもわかるというのは幻想にすぎないし、人材の多様化が進むなかで、同じ組織にいる人の価値観も1つではなくなっている。
 そうしたチームを束ね、部下を成長に導くために、きちんと伝わる言葉、心と体を動かす言葉を駆使しなければならないときが来ている。

と著者が語るように、今の若者にはもはや古い指導スタイルでは伝えきれないのではないでしょうか。

ワタクシ自身、若手を指導した時に、あまりにもなんでも「教えて、教えて」の”教えて君”だったのに辟易したことがありますが、それはワタクシの中に「仕事は自分で盗むもの、いちいち先輩に聞くな!」というのがあったから余計そう感じたのでしょう。

もしあなたが、若手指導で同じような経験があるならそれは指導者・管理職として危険なサインです。

本書を読んで新しい世代にあった導き方、気づかせ方を身につける必要があります。
でなければ、あなた自身もあなたのチームも育たないということに陥るかもしれません。

◆人を育てるということ

気づかせ、導き、引き出すといった方法とそのポイントは、豊富な具体例とともに本書でしっかる解説されているので、直接それにあたっていただくとして、本書を読んで感心させられたのは「育てる側はどうあるべきか」、ということでした。

本来、人を育てるというのは相当恐ろしい責任が伴うことです。

生まれながらにして、一流と三流がいる。そう言い切ってしまうのは、残酷に聞こえるかもしれないが、努力だけではどうにも越えられない壁が現実に存在する。もちろん、人格のことではなく、スポーツ、学問、芸術など、ある一面を切り取ったときの話だ。
とはいえ、単純に一流の才能を持っていれば、だれでもすごい人になれるというわけではない。育て方を間違うと、その才能は開花せずに終わってしまうこともある。

一人の人間の人生を担うことにもなるのが指導者の立場。

ですが、スポーツの世界でも、ビジネスの現場でも、指導者・管理職にはどこか慢心というか驕りといったものを感じることがあります。

確かに人には能力の差があります。

そして現場で求められるマフォーマンスを発揮できない、そのレベルに到達できない人はそれまでの人として切り捨てられていきます。

それが資本主義社会といえばそれまでですが、

かつての価値観なら、本人の責任で、それはしょうがないこと、当たり前のこととされていました。
でも、本当にそれでいいのでしょうか? 

指導者・管理職はそう切り捨てる前に、自分自身が導けること、まだ引っ張ってやれることがあったのではないかと考えるべきではないでしょうか。

自分が見ている部下は、その人のほんの何割かでしかありません。
「こいつ使えないな」と諦めるのは、その人の人生を諦めることだと考えてほしい。

そのためにも、自分の立場を常に戒める姿勢と考え方が必要だと思います。

著者は本書で

私は、「人を育てる」ということに、常におこがましさを感じている。それは自分が微力であることを理解しているからだ。監督時代、私が練習で選手を見ていたのは、1日に2時間程度。残りの躯時間は、それぞ
れの選手が家族や友人と違う空間で違う時間を過ごし、何かに心を動かされたり、影響を受けたりする。選手が急に成長したとしても、それが監督の指導によるものだと過信してはならない。選手の気持ちの動きやモチベーションの高低をすべて把握しているなどと思ってはならないのである。

と、人材を育成するにあたっての心がまえを述べています。

これこそ人を育てる者が、レトリックよりも先に身につけるべき考え方でしょう。

本書で展開される著者の選手を導くレトリックはもちろん素晴らしく、「なるほど、こう言えばいいのか」と頷かれることと思いますが、そのレトリックを使う人間としてぜひ読み込んでほしいのは、著者の指導者としての心がまえの部分でした。

ぜひ、その根底の部分から読み込んでほしい、非常に深い一冊です。

本書は日経BP社編集者の村上様より献本していただきました。
ありがとうございました。

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