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部下はあなたをしっかり見ています【書評】田中 和彦(著)『課長の会話術』 日本実業出版社

おはようございます、一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、久しぶりに田中和彦さんの本をご紹介。

課長がチームをまとめ、部下の力を引き出し、目標を達成していくための会話術。
全国の課長さん、必読ですよ!

【目次】
はじめに
第1章 できる課長は部下と何を話しているのか?
第2章 新しい部下を持って最初の1カ月にすべき会話術
第3章 部下のやる気を引き出す会話術
第4章 部下の成長を加速させる会話術
第5章 チームの目標を絶対に達成する会話術
第6章 言葉だけに頼らない会話術
おわりに

【ポイント&レバレッジメモ】
★最初の1カ月のコミュニケーションの質と量が、1年間の成果を決める

 部下とのコミュニケーションは、年間を通じて平均的に行なうのではなく、最初の2割の部分、いや極端な話、最初の1か月にどれくらいの時間とエネルギーを割くかによって決まってきます。1年間の成果は、この最初の1か月のコミュニケーションの質と量が決め手になると断言できます。
私の実感値で言わせていたたくと、年度の初めの1か月で、全員のメンバーと中身のある(雑談などではないということ)コミュニケーションが取れさえすれば、後の11か月は、最初にお互いで決めた確認事項の軌道修正やその都度起きたアクシデント対応などに費やせばいいだけで、組織運営は非常に楽になります。
ただし、最初のlか月は、かなりのエネルギーを費やします。1人あたりの時間数にすると、平均4~5時間は面談にスケジュールを割く感じでしょうか。10人の部下がいれば、月に40~50時間は誰かとコミュニケーションを取っている計算です。

★できる課長は4つのステップで、部下をスタートダッシュさせる
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 以上が最初の1カ月以内に行なう面談の内容になります。
また、ステップ5として、日常のフォローと軌道修正があります。これは、残りの11か月で行なうものです。いわゆるPDCAサイクル(PLAN→DO→CHECK→ACTION、つまり、計画→実行→評価→改善)の「評価&改善」というパートになります。
この4つのステップを、3回くらいの面談の中で行なっていきます。ステッブ1の「部下の理解(信頼関係構築」とステップ2の「現状の把握(課題の発見)」は、可能なら初回の面談時にやってしまうことです。
ステップ3の「全体目標の確認と個人目標の明確化」を初回にやらないのは、初回の面談に基づいて、部署の中での役割分担を決めたり、個人目標の振り分けなどの設定を考えたりする時間が必要だからです。この期間は、課長が1人で熟考しなくてはなりません。
同様に、ステップ4の「目標達成に向けての行動の明確化」にさらに時間を置くのは、いかに部下がやる気を出すかを、部下の動機や適性に基づき、考える時間が必要になるからです。
こういう流れがあって初めて部署の全員がやる気を持って目標に向かし目標達成するためのエネルギーを発揮してくれるのです。

★できる課長が持っている、「マネジメントに必要な4つの視点」

1.全体像をとらえる視点
まず、細かい部分はさておき、全体を俯瞰してみて、スタートからゴールまでのイメージを持つことが大切です。

2.状況を把握し、問題を発見する視点
多くの事実を集め、それらを整理して分類し、状況を把握していくと、どこかに「あれ?」という疑問点を発見することがあります。あるべき姿と現実とのギャップやズレが見えてくるのです。

3.物事を深く追求(追及)する視点
本質を見る視点と言ってもいいと思います。表面的、表層的な部分にとらわれることなく、物事の奥底に深く入り込んでいくことです。

4.多面的に検討する視点
これは、物事を一面的に見ないようにすることで、つねに「他に方法はないか?」と探っていく視点のことです。何かを決定しなくてはならないときに、複数の案を考え、それぞれのメリット・デメリットを比較検討してから、最終決定することなどがそうです。
また、自分の正反対の立場に立って、物事を見直すこともこの視点になります。

★部下の「やる気」のツボは、4つのタイプに分けられる
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コントローラーの人は、競争好きだったりしますから、「トップを狙え」、「あいつには負けるなよ」などの励ましが響きます。

サポーターの人は、何より人間関係を大切にする人なので、競争を好みません。なので、コントローラーに対するアプローチはまったく通用しません。サポーターの人に響く言葉は明確で、「ありがとう」に尽きます。

プロモーターの人は、枠にはめられることを嫌います。彼らが好きな言葉は、「○○君に任せるから、好きにやっていいよ」です。

アナライザーの人は、「何でも好きにやっていいよ」と言われると、何をやっていいのかわからず、混乱してしまいます。彼らがやる気になるのは、「○○君の役割は、△△だ。頼むぞ」と、やるべきことを明確にしてあげる言葉です。

★「言っていること」と「やっていること」を、上司自らが一致させよ

「職場は、一将の影」という言葉があります。
一将とは、リーダーのことです。職場というものは、影と同じようにリーダーと同じ形になるという意味です。上司が走り出せば、職場も走り出しますし、上司が立ち止まれば、職場も立ち止まります。上司が頭を抱えれば、職場も頭を抱えます。職場のみんなにイキイキとしてほしいなら、上司自らがイキイキしていなければ、職場は望ましい状態へと変わらないのです。
上司が部下に言ったことは、上司自らが実践すべきなのです。

★部下の悩みや焦りには、5つのタイプ別に対処せよ

1. 自分探し症候群タイプ
もしあなたの部下が、この「自分探し症候群タイプ」なら、「今の部署で必要とされる存在になってから、次の段階を目指そう」とアドバイスしてあげてください。
仕事の基本的なスキルは、業界や職種の垣根を超えた共通部分が意外に大きいものです。

2.食わず嫌いタイブ
もしあなたの部署に「食わず嫌い」の部下がいたら、「つべこべ言わずにやってみろ!」と、さらに委縮させては逆効果です。むしろ「失敗しても大丈夫」と、おびえた気持ちをまずは解放してあげることから会話を始めてください。
「誰にでも、その人にとっての”初めて”があるから、成長できるんだ。自分も昔は・・・」と、課長自身の失敗談や体験談を話してあげるのも効果的です。

3.効率重視タイプ
効率のよい仕事とは、先が読めて誰にでも容易にできそうな内容です。逆に、効率の悪い仕事は、事前の勉強や多くの準備が必要になってきます。先が読めず、成功が約束されているわけではない仕事のほうに、後から振り返ると「自分の財産になった」と言えるようなものが多いのです。
「効率重視」タイプの部下に対しては、「近道だけを考えるのではなく、遠回りや寄り道、途中下車にも意味がある」と目先の損得だけではなく、長期的な視点を与えてあげてください。

4.他責スタンスタイプ
私は、愚痴や不満を言ってきた他責スタンスの部下に対しては、必ず「理屈はわかった。で、○○君はどうしたいんだ?」と、聞き返すようにしています。この言葉は、他責を一瞬にして自責に変える最強の言葉なのです。

5.出し惜しみタイプ
「出し惜しみ」タイプの部下には、指示したときに、プラスアルファの要望もつけ加えてみてください。そのプラスアルファも仕事のうちだと思わせるのです。
「どうやったら、もっと満足してもらえるかも考えてみて」、「お客さんの立場だったら、どう感じるかを考えた上で、自分なりの案を出すこと」などです。そして、そのプラスアルファに対して、きちんと評価をしてあげてください。部下が自ら出してきたものへの反応が重要です。

★「足踏み」している部下には、トップを走る社員の真似を勧めよう

 あなたの部下が、自分らしさにこだわって.足踏みしているようだったら「目標としている先輩はいないの?」と、さりげなく聞いてみてください。
もしそこで名前が出てきたら、その先輩をロールモデルとして、「徹底的にやり方とかを真似してみたら?」と促してください。
そして、「徹底した模倣の先に自分らしさが出てくるんだから、焦ることはない」と、真似することを後押ししてあげるのです。

★課長が「本気で目標を達成したい」と思わなければ、部下も絶対そう思わない
組織が変化するときは、じょじょにではなく一気に変わるものです。国を揺るがす革命が起きるプロセスでは、ある臨界点が来ると、民衆全体が変化を求め、自発的なデモが各地で起きて一気に世の中が変わると言います。企業の組織もしかりで、ある臨界点にさえ達すれば、その後は、自発的、加速度的に変化が起きるのです。
重要なのは、その臨界点まで、リーダーがひたすら信じて、あきらめずに、語りかけ続けることなのです。それは、部下との我慢比べであり、組織が変化する臨界点までの我慢比べでもあるのです。

★低めの目標を申告する部下を、その気にさせる方法

 人が成長するときというのは、少し無理目名目標にチャレンジしたときなのです。<中略>
つまり、ギリギリ頑張って無理をすれば何とか届くような目標を設定できるかどうかが、課長の手腕というわけです。
私が、低めの目標を設定する部下に対して、いつも使ってきた殺し文句は、「今の○○君に要望しているわけじゃない。3年後の姿を想像した上で、要望しているんだ」というものでした。
成長を前提として、高い目標を期待するのです、これでやる気を出してくれた部下は少なくなかったです。

★課長は、空気を読むのではなく、空気を作る人

「空気を読む(KY)」という言葉が流行ったことがありました。場への配慮は、もちろん必要ですが、誰もが「察する」コミュニケーションばかりしていると、何も前に進んでいかないことになります。とくに課長が空気ばかり読んでいては、職場は、疑心暗鬼の雰囲気が充満します。
空気は読むものではなく、作るものです。そして、いい空気を作ることができるのが、その組織の中でのリーダー、つまり課長なのです。
空気を変える力は、挨拶の中にあります。
たとえば、暗く沈んだ雰囲気の集団に対して、誰かが気持ちのいい挨拶をしてみると、挨拶の力で一気に場の空気が変わります。
周囲の雰囲気が変わって、いい空気が生まれてくるはずです。いい空気が生まれると、いいことが起きてきます。その循環こそが、成功のカギなのです。

★部下は、あなたの「本音と本気」を見ている

 ずばり部下が見ているのは、上司であるあなたの「本音と本気」です。<中略>
部下は、「建前と手抜き」な上司に対してに信頼を置きませんし、ついて行こうとも思いません。逆に、どんなときでも「本音と本気」で接してくれる上司には、いくら厳しいことを言われても、ついて行こうと思ってくれます。
部下との会話においても、上司はつねに「本音と本気」が試されていると考えて間違いはありません。

【感想など】
◆課長は悩み多き世代
著者の田中和彦さんはこれまで当ブログでも御著書を何冊か紹介してきました。

年齢で言えば40歳ぐらい、役職で言えば課長クラスにあたる層の人なら、非常に共感できる内容の本を多く執筆されています。

今回ご紹介する本書は、前作の

www.s-ichiryuu.com

と、同シリーズのあたるのか(?)、全国の悩める”課長”にあてた内容ですが、特に部下との会話術を中心とし、リーダー論にも踏み込んだものとなっています。

とかく管理職は大変ですが、特に課長というポジションは仕事が難しいのではないでしょうか。

年齢的にも40代のバブル世代と部下のロスジェネ世代はジェネレーションギャップが激しいですし、阿吽の呼吸が成り立たないシーンが多いと思います。(これはワタクシも実感しています)

また、価値観の多様化もチームをまとめる上での障壁となっていることでしょう。

きっと、「課長(係長)になってみたけど、ヒラの方がよっぽどよかった」と思っている方も多いはず。

そんなあなたの大きな悩みの一つがチームが成績を残すために部下とどんなコミュニケーションを取っていったらいいのかということではないでしょうか?

本書にはその答えが示されています。

◆最初の1カ月が勝負
昇進、あるいは新しい部署に異動など、いろいろなパターンがあるでしょうが、チームを成功へ率いるのに一番重要な時間が最初の1カ月です。

本書を読んで驚きましたが、著者は最初の1カ月で一人当たり4〜5時間かけて面談をしているのですね。

これはすごいです。

80:20の法則を例に説明されていますが、とにかくチームを率いた最初の段階で徹底して面談をして、お互いを知り、納得して目標を設定していくことに全力を尽くす。

これがその後の結果に大きく影響するそうです。

ワタクシの今までの経験には、上司とのこんな濃密な時間はなかったです。
春と秋に30分ずつ程度、目標や現状の問題点を報告して終わり。
(今年の春は、あまりの人事にかなり文句言いましたが)

たいてい、なんの意味も見出せないまま、年中行事のように消化していました。

まぁ、だからこんな出来の悪い部下のままなわけですが、もし本気で変えたいなら、課長はこれだけの手間隙をかけなければならないのでしょう。

◆「上、3年で下を知り 下、3日で上を知る」
この手間隙をかけていないというのは、すぐに空気として伝わってきます。

本書では、「上、3年で下を知り 下、3日で上を知る」という中国のことわざが登場しますが、本当にそのとおり。

いい事を言ったり、素晴らしい目標を共有しようとする上司はこれまでに何人もいましたが、「あっ、この人は本気だ!」と思えた上司はほんの数えるほどしかいませんでした。

むしろ、「あんた、言ってることとしてることが違うやん」という「言行不一致」な人ばかり。

もしあなたが課長なり係長なり自分のチームや部下を持っているのなら、もう覚悟を決めるしかありません。

「言行一致」させるとともに、「一貫性」を持つこと。
これは最低限のリーダーとして守らなければならないことでしょう。

でなければ、すぐにメッキがはがれてしまいます。

リーダーと認められていないリーダーほど滑稽でかわいそうな存在はありません。
(たまにそれすら気がついていない人もいますが。)

そういえば昔、職場全体の会議で、ある案件の報告があったとき、「それ私聞いてないよ、報告ないのおかしいやないか」と怒りだした中間管理職がいました。

その案件は、さらに上の上司には報告されていて了承済みでした。
会場からは失笑が聞こえ、みんな腹の中では「知らんのはあんただけやがな」という雰囲気。

こういうのって本当に哀れですよね。

◆どんな問題も会話でしか解決できない
さて、本書を読むと課長の大変さに気が重たくなる人もいるかもしれません。

実際にいろいろな価値観を持つ部下を束ねて目標を達成していくのは大変なことです。

ただ、どんな問題でも解決できるわけではないけれど、問題を解決する方法は部下との会話しか方法がないということをしっかり胸に刻んでください。

人間同士ですから相性もあるでしょうし、立場の違いもある。
けれど、それを埋めて同じ目標に進んでいくには会話しかない。

「部下は上司の気持ちを察するものだ」「これくらいは言わなくても分かるだろう」といった考えは、この際キッパリ捨てるべきです。

◆部下を知る。現場を見る。思いを伝える。
最後に、「俺は口べたで部下と話すのは苦手だ」という方へ。

本書にマネジメントとは

「極論すれば、知る、見る、伝えるです。
部下を知る
現場を見る
思いを伝える
に尽きると思いますよ」

という一節が登場します。

ワタクシは思うのですが、人間って自分を知ってくれることがすごく嬉しいものです。
自分を知ってくれている人のためなら一生懸命働こうと思うものです。

なにも、上手な褒め言葉はいらないのです。

よく現場を見に来てくれて、働いている姿を知ってくれている。
どんな成果を出したかを知ってくれている。

もっと言えば、名前や出身地や家族のことやパーソナルなことを知ってくれている。
たったこれだけでも嬉しいことです。

ナポレオンは将兵の名前を覚えて、一兵卒でも名前で呼んだと聞いたことがあります。
雲の上のような存在の人が自分の名前を覚えてくれているなんて感激ですよね。

本書は社長と平社員の関係を書いた本ではありません。
毎日顔を合わせる同じ課の課長と部下の会話術です。

部下をもっと知ろうという気持ちがあれば、きっと関係は良くなります。
ぜひ、今日から部下を知る努力をしてみてください。

そして、本書を参考にチームを作ってみてはいかがでしょう。

本書は日本実業出版社編集者の滝様より献本していただきました。
ありがとうごさいました。

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