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共に生きる【書評】坂本 光司(著)『会社は家族、社長は親』( PHP研究所)

長引く不況に苦しみ続けている経営者の皆様。
もしかしたら、あなたは人件費をコストと考えていませんか?

もしそうなら本書をお読みいただきたい。
きっと経営に対する姿勢が180度変わることになりますよ。

 

【目次】
はじめに
第1章 「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の会社のすごさ
第2章 障がい者は会社の戦力にできる
第3章 高齢者・女性の活用が企業戦略のカギを握る
第4章 「社員は家族」というマネジメント
おわりに

【ポイント&レバレッジメモ】
★厳しい要求は必ずしも悪ではない・・・渡邉

 授産品は総じてあまり売れません。そのため授産施設で働く人たちは、1ヶ月15000円ぐらいの給料で働いています。売れないのは、その製品に善し悪しに関するフィードバックが返ってこないからでもあります。消費者が求めているもの、いいと思うものをつくれないのです。
 だから私は授産施設の方々に、製品の善し悪しについて、かなり厳しく注文をつけます。それが将来的に、彼らの給料に反映されるからです。そのような気持ちから厳しく接することは必要で、大事なのは、どのような企業倫理にもとづき,その会社や社員に厳しくするかという気がします。

★大切なのは社員の自発性を引き出すこと・・・渡邉

 社員の真摯な訴えには,社長が責任を持ってそれを実現する。そうすれば社員は期待に答えようと,大きな自発性が生まれるのです。それが会社の成長につながったり,利益の貢献につながる。社員が自発的に「この会社をよくしたい」「現在のいい環境を維持したい」という思い出仕事ができれば,会社にとっても素晴らしいことなのです。

★「雇えるために自分たちが頑張ろう」という発想・・・渡邉

 雇うためには,そのための原資なり余裕がないとできない。例えば我が社に引きこもりの人が親と一緒に来て,「雇ってほしい」と言ってきたときです。これを叶えるには,二つのことが必要です。一つは雇う原資,もう一つはその人を職場に着かせ,戦力にするだけのノウハウです。そのためいつも言うのが,「イエスと言えるようにしよう」というものです。いつでも「イエス」と言えるために,会社の業績が一番いいときでも油断や慢心しないで,さらに努力しておくのです。
 その努力は時間をかけて働くことでなく,誰もやらないようなアイデアを考えたり,ほかではできない仕組みを作ることです。ようはブルーオーシャン戦略で,競争の激しい既存市場ではなく誰もいないところに市場をつくり,そこで優位性を保つようにする。そうすれば彼らがなにか困ったことに出会っても,「いいよ,やってあげるよ」と言えるようになります。このような目標を掲げると,社員全員がそういう発想で物事を考えるようになると思うのです。

★大切なのは,企業、親,学校、行政・・・坂本

 障害者雇用を推進するうえにおいて,重要な人は四人いると思います。一人は企業人、二人目はご両親,なかでも母親です。三人目は特別支援学校の先生,そして四人目が行政マンです。つまり企業、親,学校、行政の四つの協力が欠かせません。
 とくに大事なのが親で,うまくいくもいかないも親にかかっているケースが多いのです。私が聞いた中でも,うまくいっている会社は,父親や母親を会社の仕組みの中に巻き込んでいます。

★高齢者を大切にする会社は業績も高い・・・坂本

 これからの企業経営を考えたとき,大きなカギを握ると思われるのが高齢者雇用です。
その理由として挙げられるのが,一つは生産年齢人口の変化です。<中略>今後20年間で約1400万人減少します。一方,高齢者とされる65歳以上人口は、20年間で逆に約1000万人増加します。<中略>
 もう一つの理由として,市場構造の変化があります。<中略>高齢者が増えてくると,マーケットも高齢者を中心としたものに変わってきます。
 高齢者のマーケットを開発するのに誰が適任かというと,若者では難しいでしょう。<中略>
 高齢者マーケットが中心となる中,その商品やサービスの開発の担い手となるのは高齢者自身が一番です。<中略>
 三つ目の理由として,人々の意識の変化があります。<中略>本物の強者(仕事ができ,利他の心が強い)が、最近増えてきているのを感じます。<中略>お年寄りにもやさしく,そのためお年寄りを大事にしない会社には(本物の強者は)集まってきません。

★女性の活用が求められる時代・・・坂本

 ではその女性に対し,この社会は正しい評価をしているかというと,とてもそうはなっていません。たとえば統計上の「役職」は係長以上,つまり係長,課長,次長、部長などを指しますが,役職についている比率は男性90に対し,女性は10です。先進国でこれほど少ない国は,ほかにありません。
 さらに驚くのがその中身で,役職といっても日本の女性は大半が係長級です。10のうち大半を占め,一部に課長級がいて,部長級は皆無に等しいです。部長だけ,あるいは課長以上で比較したら,全体の5%もいかないのです。

★未来へのコミットメントと考える・・・渡邉
 

(「企業とお客さま」の関係)でdはなく「企業とファン」の関係にする。ファンというのは,リピーターになります。口コミで広げてもくれます。
 ではファンは,どうすれば獲得できるかというと,「この会社に感動した」という体験を持ってもらうことです。その感動は,普通の会社ではやらない、本当に細かい部分での気づかいに触れたときに生まれると思うのです。そうした気づかいは傾向値として女性のほうが遥かに優れています。それが女性を登用する大きな理由の一つです。

★社員とその家族の幸せに軸足を置く・・・坂本

 「企業経営とは,会社に関わりのあるすべての人々の永遠の幸せを実現すること」

 主に対象とすべきは”5人”と考えています。
 1人は社員とその家族、2人目は外注先やいわゆる下請け企業の社員,3人目は顧客,4人目は地域社会ならびに地域住民,5人目は株主です。中でも大切なのは,やはり自社のために馳せ参じてくれた社員と,その社員を後ろで支援してくれる家族だと思うのです。究極的にいえば企業経営とは,社員とその家族の永遠の幸せを実現するための活動なのです。そう考えたとき,社員やその家族に危害を加えるのは,経営に名を借りた犯罪行為と言っても過言ではありません。

【感想など】
本書は、先日紹介した

参考記事:社員こそ宝【書評】坂本 光司(著)『日本でいちばん大切にしたい会社3』( あさ出版)

の著者である坂本光司先生と、アイエスエフネット代表取締役渡邉幸義氏の対談本です。

坂本先生については説明不要だと思いますので,渡邉氏についてだけ少しご紹介します。
ITサービスの会社を経営されているのですが,「十大雇用」のスローガンを掲げており,その十大とは、ニート・フリーター,障がい者、育児や介護従事者、引きこもり,シニア、ボーダーライン(軽度な障がいで障がい者手帳を不所持の方)、DV被害者、難民、ホームレス、その他就労困難者の雇用に取り組みつつ利益を上げ続けている方です。

このお二人の対談ということで、内容的には障がい者はじめ、就労困難者の雇用問題からはじまって、シニアや女性雇用についてまで、およそ今の世の中で”弱者”とされる人々の雇用と企業経営についてかなりディープなやりとりが繰り広げられています。

あまりに内容が濃いので【ポイント&レバレッジメモ】に書き出す部分がきりがないほど。

さて、詳しくは本書をお読みいただくとして,本書を読んで気がついた点を。

ワタクシ先日『日本でいちばん~』の書評を書いたときも思ったのですが,表題にある「会社は家族 社長は親」という考え方。

これは21世紀に生き残る企業の哲学なのではないかと。

本書中に登場する

「社員とその家族の永遠の幸せを実現する」

という言葉。

これこそが究極の企業の経営目的、存在目的だと思うのです。

バブル以後,ゆっくりゆっくり20年もの時間をかけて、変わってきた人々の価値観。
昨年の震災で一気にその変化が加速されたとワタクシは思っています。

坂本先生もおっしゃっていますが、利他の精神がこれほど浸透した時代はなかったんじゃないかと思うぐらい世の中が変わってしまいました。

お金儲けが第一の目的、社長の目標を達成するのが第一の目的、そういった目的のためには社員を機械か家畜のように扱う会社というのはもう終わりだと思うし、終わらせないといけない。

ではどんな会社が求められるのか?

この変革の時代に生き残る企業の姿とはと考えたときに、この本は答えをくれると思うのです。

本書を読んでみると、最初は障がい者雇用やシニア雇用の問題などがメインテーマのように見えてしまうのですが、実はこの本は100%、これからの時代の経営指南書なのです。

先日読んだ某大学の先生の本もそうでしたが,世の中には強欲資本主義時代の成功体験が抜けない人によって書かれた経営書やビジネス書がまだまだ主流を占めています。

でも、それが通用した時代は,実はとっくに終わっているということに気がついてほしい。

投資家マインドとか、リスクを背負ってとか、もう時代はそうじゃない。

究極のキーワードは”利他の精神”。
そこにリターンが生まれる時代が始まっています。

あなたは、旧来の”武器”を手に戦いますか,それとも本質的で新しい”利他の精神”で共に生きますか?
答えはこの中にあります。

本書は(株)アイエスエフネット社の沖様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】
<本書内で紹介・引用されている本>

 

誰もがニートになりうる―。正社員雇用のチャンスが減り、労働環境が悪化の一途をたどる現代の日本で、若者たちはどう生きていけばよいのか。「自立の呪縛」から、親と子はどうすれば一歩を踏み出せるのか。“自分探し”を切り上げて、社会と折り合いをつける生き方とは―。「ニートが“働く意欲のない若者”というのは誤解」と断言するニート経験者が贈る、現場発の最終処方箋。

 

本書は、組織やそのスタッフの方々に、サービスの重要性を訴え、その具体策を示した。著者たちが全国各地の小売店やレストラン、ホテル、旅館、テーマパーク、役所、工場、そしてタクシーや電車に乗車した折、実体験した感動的サービスや感動的文化、更にはチョットいい気分になったサービスを七十事例取り上げ、紹介している。

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