世界の博物館、第31号はプノンペン国立博物館です。
カンボジアの首都プノンペンに建つこの博物館は、アンコール朝のコレクションが秀逸。
インドとも日本とも違う仏教美術、ヒンドゥー美術はカンボジア独自の世界を構築している。
まさに人類の至宝です。
【今号の一押し】
アンコール朝の石像を数多く収蔵するこの博物館でも、ひときわ目を引くのはこの像でしょう。
その名の通り、この像は裁判を司る地獄の神ダルマラージャ・ヤマ天、すなわち日本でいう閻魔大王の石像です。
もともとアンコール・トムの都城内にある、俗称「ライ王のテラス」に安置されていたバイヨン様式の像です。
一糸まとわぬ姿で、しかもウエストラインなど非常に柔らかい表現で女性を思わせる体ですが、お顔は気品にあふれています。
アンコール朝最盛期の王でアンコール・トムを築いたジャヤヴァルマン7世(在位1181~1218頃)か、その息子がモデルではないかと言われています。
そう言われると、この漂う気品も納得いきますね。
ちなみにヤマ天はインドの古い土着の神を起源としており、ヒンドゥー教と仏教の両方で神として信仰されているそうです。
あの世でお会いできるのかなぁ。
さて、こちらはジャヤヴァルマン7世の座像。
瞑想する姿だと言われています。
こちらも瞑想する王の頭部。
精悍で慈悲深い王の内面がよく表現されている。
確かに上のヤマ天と見比べると似ていますね。
次号はロイヤル・ティレル古生物学博物館です。