タイの首都バンコクにあるバンコク国立博物館はかつての副王の宮殿を利用した施設。
ここには13世紀の独立国家創設以来、熱く信奉されてきた仏教美術の展示を中心に、ヒンドゥー教美術、タイ工芸品などが展示されています。
【今号の一押し】
「微笑みの国タイ」という言葉を象徴するかのようなゆったりとした表情とフォルム。
タイ国独特の表現が癒しを与えてくれます。
1238年頃、タイ族による初の独立国家であるスコータイ朝が興った。
この仏像様式はそのスコータイ朝において大きく発展していった様式です。
手を振っているように見える左手は、実は、開く直前の蓮のつぼみの様な形で施無畏印(恐れを取り除き安心させる印)を結んでいる。若い像の鼻を洗わしているとされる右手とともに、しなやかで繊細な印象を与える。薄い衣の裾が歩みに合わせて揺れているような表現も、気品にあふれている。卵形の輪郭、切れ長の目、肉髻(頭頂部の盛り上がり)の上に火炎型頂飾(ラッサミー)を置くなど・・・
といったところがスコー対様式の仏陀像の特徴です。
しかしこの日本の仏像では見たことがない「遊行」という姿態。
一体どんな意味がこめられているのか。
それがよくわからないらしい。
一説には、死期を悟った釈尊が最後の旅に出て様々な在家信者たちの能力に合わせて教えを説いて歩いたということから、人々に寄り添うありがたい姿を現したという説がある。
その一方、自らを産んで7日目に亡くなった母、麻耶夫人に説法するため須弥山の頂上に登った釈尊が、梵天、帝釈天に伴われて人間界に戻る階段を下りてくる姿を描いたもの、という説もある。
どちらにしても一所不住を貫いた釈尊の生きざまを表現するのに、”歩く”姿ほどふさわしい表現はないのではないか。
そんな気がします。
次号はイスラエル国立博物館です。