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本と寄り添う【書評】奥野 宣之(著)『「処方せん」的読書術』 角川書店

おはようございます、二頭のワンコと戯れるのが最大の癒しな一龍(@ichiryuu)です。

発売から少し間が空いてしまったのですが、我らがオッ君こと奥野宣之さんの最新刊のご紹介。

もう読書術本はお腹いっぱいというあなたも、独特の奥野ワールドに目からウロコですよ。

 

【目次】
序章 生きづらい時代だから本を読む
第1章 不安をしずめる読書術  鎮痛剤
第2章 前向きな気持ちを起こす読書  気付け薬
第3章 折れない心を作るための読書  栄養剤
第4章 自分を取り戻すための読書  体質改善
第5章 もっとメンタルに効かせるための工夫
あちがき

【ポイント&レバレッジメモ】

★古典は「心を強くする本」の大本命

 古典は「心を強くする読書」の大本命です。遠くの国の何百年も前の人の言葉に、なだめられたり、勇気づけられたりした。このような体験は、同じ文化圏や時代の人の言葉に感じ入るときより、強く印象に残ります。
 遠い世界に友人を得たような気になる。<中略>

 古典が、心に効くもうひとつの理由は、膨大な時間の流れを意識させてくれるからです。
 何百年も前にこういう人がいて、今この世界がある、という実感が持てる。
 自分の人生も、長い歴史の一瞬の出来事にすぎないのだと考えると、「不安に感じていることも、大したことではない」と思う。どんな感情のぶつかり合いだって、トラブルだって100年後にはもう、跡形もないでしょう。

★「メンヘル文庫」

 その一番上の区画が「メンヘル文庫」と呼んでいる区画です。
 メンヘルとはメンタルヘルスの略。<中略>ここには30冊ほどの、わが「ベストメンヘル本」が鎮座している。
 戦争体験のノンフィクションもあれば、カウンセラーの書いた心理学の本も、評伝もエッセイもマンガもある。他人が見れば「これがなんでメンタルヘルス本なの?」と言うでしょう。
 しかし、それでいいのです。
 僕は、なぜこの本がこの区画にあるかわかっている。この辺りに視線を移すだけで、あの名文やあの人のエピソード、あの名ゼリフが胸の奥からドット噴き上ってくる。いよいよ危ない、というときにはそこから本を取り出して読みます。

★落ち着きたいときは文庫本を1ページ書き写す
 

イライラしたり焦ったりして、いよいよもう全力で壁でも殴ろうかと本気で考えるようなとき、僕には、最後の手段があります。
 それは、本を書き写すことです。
 心を落ち着けたい場合、本当は瞑想した入りすればいいのかもしれませんが、教えてくれる人がいないとなかなか難しい。だから、ごく単純に「字を書き写す」という方法をとっています。一昨年は、毎日、文庫を一ページずつ書き写して、結果的に文庫を丸一冊書き写しました。

★自己啓発書は「栄養ドリンク」と思え

 自己啓発書とは、たとえば、「三日で性格が変えられる」とか「人生がうまくいく!」とか「年収が10倍になる!」とかいった本のことですね。<中略>
 僕も愛読書の中に自己啓発書が何冊か入っています。
 「人を元気にする」という目的をはっきり持ってつくられているぶん、自己啓発書は即効性がある。その効果は認めて、すぐにテンションを上げたいときに使えばいいのですね。
 ただ、僕は自己啓発書の中でも「成功」という言葉を連発する本には、近づかない方がいいと言っておきたい。「社会的に成功しろ」というメッセージが世の中を悪くしていると思っているからです。

★歴史は学ぶより楽しむ

 司馬(遼太郎)は、歴史の中にいる素晴らしい人たちとの出会いを楽しんでいます。
 現実で出会う人だけでなく、歴史の中でも好きな人を探してみる。ずっと気になっていたお店に入ってみたり、参加したことのない飲み会に顔を出してみたり、新しい体験を求めて旅に出るようなことにも似ています。
 歴史とは、学ぶものではなくて楽しむものです。
 事実を学ぶより、かつていたすばらしい人を味わう。このような態度でないと、「はげましたり、なぐさめたり」してくれる人には、出会えません。

★手帳に「今日開いた本」をメモする

 僕は「ライフログノート」というなんでも書くノートに、その日に読んだ本をできるだけメモしています。「読了した本」ではなく「今日読んだ本」です。だから、10日ぐらい同じタイトルが並ぶこともあれば、何ヶ月かぶりに同じタイトルが復活することもある。一日で読了すれば、一回しか書かれないことになります。<中略>
このノートをパラパラと見返すと、読んだないようを思い出すことができます。
 最近どんな本を読んだか、記憶への定着がよくなる。
 それに、ノートにはそのときに考えていたことや手がけていた仕事のことも書いてあるので、「あのときはこの本を読んで救われたなあ」ということも思い出す。<中略>
 大切なことは、本棚以外にも、気軽に読書体験をふり返ることのできるような「リマインダー」を持つことですね。

【感想など】
ノート術で有名な奥野さん。

実は関西ブロガーのなかでは有名な読書家でもあります。
それもかなりマニアックな・・・。

そんな奥野さんの読書術本ですから、これまでいろいろな種類の読書術を読んできたワタクシですが、本書はかなり個性的な奥野ワールドが展開されています。

本書のタイトル「処方せん」的とは一体どういうことか?

例えば、音楽。
そのときに応じた音楽を、無意識のうちに選曲して聞いていますよね。

ウェイトトレーニングのときはロッキーのテーマ。
静かに物思いに耽りたいときはクラッシック。
失恋したときにはユーミン。

という感じでTPOに会わせて、そして自分の好みに応じて、人それぞれオリジナルBGM集を持っていると思います。
(ちなみにワタクシは、手術の前にK-1のテーマソングを聞いてから手術室に向かったことがあります)

そしてそれは人によっては映画かもしれないし、特定の場所かもしれないし、スポーツでエネルギーを発散することかもしれない。

もしかしたら、お酒に逃げるかもしれない。

ともかく、人それぞれ、落ち込んだときのカンフル剤、怒り心頭のときの鎮静剤となる何かを用意していると思います。

それが、本だったらどうだろうか?
というのが本書なのです。

本書では一貫して「心を強くする読書術」ということがテーマとして語られていますが、「読書は最高のカウンセラー」と言っているように奥野さんにとっては読書が心の支えだったんですね。

そういうと、「落ち込んでるときに本屋さんになんかいかないよ」とか、「イライラしてるときに落ち着いて本を読めない」という人も多いと思います。

そういう人は思い出してみてください。

映画を見て落ち込んでた気分が高揚したとか、やる気が出なかったけどモチベーションが上がったとかって経験ありますよね。

ワタクシ思うのですが、こういう効果を期待して読書をするのって、映画を見るのと非常に近い気がします。
映画も読書もフィクション、ノンフィクションに関わらず、仮想体験をしているのです。

その仮想体験の中で、他人の不幸に癒されたり、ヒーローになって使命感に燃えたり、外国に行ったり、過去や未来に言ったり。

仮想体験の中で、本来の自分に戻っていく。
そのための方法としては、映画を見るよりずっと読書は手軽だと思います。

さっと書棚に手を伸ばし、パラパラっとページをめくって読みはじめる。
べつに最後まで読む必要もない。

例えば自分の好きな一章、あるいは一節だけでもいい。
もっと言えば、その本の背表紙を眺めるだけでもいい。

そういう読書術をしませんか?というのが本書なのです。

さて、最後にあらためて本書を読んで思ったこと。

それは、「読書ってもっと自由でいいやん」ということ。

巷にあふれている読書術は
「楽しむための読書」「知識を得るための読書」「ノウハウやスキルを学ぶための読書」
のためにはどうしたらいいか?がメイン。

そのためにはあれを読め、これを読め。
あるいは、3色ボールペンだ、付箋だ、読書ノートだ、アウトプットだ・・・

だけど、それだけが読書じゃない。
もっと軽快で、それでいて泥臭い、そんな読書でもええんちゃうの。

そして読書はもっと自由でええやん。

万人に効く薬がないように、万人に効く本は何のだから。

本書はアップルシード・エージェンシーの宮原様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】
本書内で奥野さんがお薦めしている本をいくつかご紹介

★不安をしずめるためのオススメ書籍

 

ルーアンの新聞に「日曜語録」として連載されたのを皮切りに、総計5000に上るアランの「プロポ」(哲学断章)。「哲学を文学に、文学を哲学に」変えようとするこの独特の文章は「フランス散文の傑作」と評される。幸福に関する93のプロポを収めた本書は、日本でも早くから親しまれてきたもの。

★前向きな気持ちを起こすためのオススメ書籍

 

戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。

★折れない心を作るためのオススメ書籍

 

女王バチのために黙々と働く働きバチや、列を成して大きな荷物を運ぶアリたちに共感を覚えた経験は誰にもあるはず。しかし実際に観察すると、アリもハチもその7割はボーッとしており、約1割は一生働かないことがわかってきた。また、働かないアリがいるからこそ、組織が存続していけるというのである!これらを「発見」した著者による本書は、アリやハチなどの集団社会の研究から動物行動学と進化生物学の最新知見を紹介。人間が思わず身につまされてしまうエピソードを中心に、楽しみながら最新生物学がわかる科学読み物である。生命の不思議に感動すると共に、読後には社会・会社・家族などへの考え方が少しだけ変わる、ラクになる。

★自分を取り戻すためのオススメ書籍

 

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

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