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「想い」あるところにそれは届く【書評】鹿毛康司(著)『愛されるアイデアのつくり方』 WAVE出版

おはようございます、「お父さんの服が臭い!」と娘にいわれてへこんでいる一龍(@ichiryuu)です。(いやほんと、シャレにならん)

さて今日は、あのCMをつくった方の本をご紹介。

誰もが知っている、そして一目見たら忘れられない「愛される」CM。
その誕生にはさまざまなドラマがあったのです。

 

【目次】
はじめに
プロローグ 少年が歌い出した瞬間
第1章 「奇策」こそ王道だ
第2章 とことんお客様と向き合う
第3章 アイデアが生まれる「場」をつくる
第4章 アイデアとはドラマである
エピローグ あの空のくものように
あとがき

【ポイント&レバレッジメモ】

★「自由に考える」をはき違えるな

 自由こそ、アイデアを生む———。
 よく耳にする言葉だ。
 しかし、自由の意味をはき違えてはいけない。
 「条件」や「制約」を踏まえた戦略ももたずに、野放図に考えることが「自由」なのではない。それは、ただやみくもに歩きまわるに等しい。そこに生まれるのはアイデアではなく、単なる思い付きに過ぎない。
 まず、自分の足元をしっかり見つめたうえで、どこを目指すのかを明確にする。つまり、戦略をもつ。そして、その目的に向かってどう進めばいいかを考える。このときに、あらゆる束縛を解き放って、自由にならなければならないのだ。
 それこそ、本当の「自由」だ。
 戦略なきところに、アイデアなし。
 これこそ、アイデア発想の第一歩なのだ。

★「奇策」こそ王道だ

 当時、この「連続ドラマCM」は、業界では「奇策」と囁かれたものだ。
 しかし、僕に言わせれば「奇策」などではない。 
 業界の多くの人が常識にとらわれて「思考停止」になっているから、「奇策」に見えるだけではないのか?
 自分の「武器」を最大限に活かす。
 そうすれば、常識を踏み越えることはできる。
 それは、むしろ、アイデアで勝負する人間の「王道」ではないか。
 そして、それこそが、少ない予算しか持たない”弱者”がとるべき戦略なのだ。<中略>
 実際、その後、「連続ドラマCM」は奇策ではなくなった。皆さんも、いくつかの「連続ドラマCM」を思いつくはずだ。しかし、もっとも大きなメリットを享受できるのは、最初に常識のウラをかいた「先行者」である。
 だから、僕はいつだって「常識」を見つけたら胸が騒ぐのだ。
 なぜなら、そこに「突き抜けたアイデア」があるからだ。

★現場に行け、五感を研ぎ澄ませよ

 僕は、いつも自分に言い聞かせている。
 資料やレポートを見たくらいで、「お客様を理解した」なんて思い上がってはいけない。
 ちょっと本を読んだり、ちょっと勉強したくらいの、ヤワな調査手法をなぞるだけで、「相手を知る」ことなどできやしない。「好きな女の子」の本当の気持ちを知ることなどできやしないのだ。
 なかには、使っている「調査手法」が最新のものであることを自慢するような人もいる。完全にピントがずれている。「現実」はそんなに甘くない。「お客様を理解する」ことは、表面上の手法だけで歯が立つような生やさしいものではないのだ。
 だから、現場に行け。
 現実に触れろ。
 そして、五感を研ぎ澄ませて、お客様の声を全身で感じるのだ。

 

★「お客様と同じ目線はもてない」と肝に銘じる

 会社のなかで働いていると、お客様と自分の「目線」がずれていってしまう。そして、自分で思っている「自分」と、お客様から見た「自分」がかけ離れていってしまう———。
 頑張れば頑張るほど、お客様との「乖離」が生まれるパラドックス。そして、企業を取り囲む人々の優しさが生み出す「落とし穴」。その恐ろしさは、今も僕の心から消えない。<中略>
 企業人は、絶対にお客様と同じ「目線」をもつことはできない———。
 逆説的かもしれない。
 しかし、自らの無力を自覚するからこそ、なんとかお客様の「目線」に少しでも合わせられるように努力をするのだ。その謙虚な気持ちをもつことこそが、せめて僕らにできることなのだ。
 そして、僕は、何度もこのことを自分の心に確認しながら、エステーのCMをつくってきたのだ。

★「お客様が常に正しい」と考える

 実は、「上から目線」になっているかどうかを判断する方法がある。一生懸命考えたコピーが、お客様に否定されたときの自分たちの反応を見ればいい。もしも、否定された時に反発心を感じたら、それは「上から目線」になっている証拠。否定されたときに、「自分が間違えたんだ」と思えたら「上から目線」にはなっていないと言えるだろう。
 「常に、お客様が正しい」と思い続けられるかどうか、それが勝負なのだ。
 お客様にすり寄るのではなく、向き合うとはこういうことだと思う。

★「想い」×「企画」×「制作」

 「想い」×「企画」×「制作(撮影・編集)」
 この公式の3つの要素「想い」「企画」「制作」の各段階において、総勢数十人のスタッフがそれぞれの立場でかかわるわけだ。注意していただきたいのは足し算ではないということ。CMづくりはかけ算なのだ(おそらく、すべての仕事がそうだ)。つまり、どこかが「ゼロ」だと、すべてが「ゼロ」となってしまう。そんな、きわめてデリケートなものなのだ。
 コトを起こす(=CMをつくる)ために、もっとも重要なのは「想い」だ。そして、その「想い」とは、企業がどのような姿勢で広告を打つのか、どのような姿勢でお客様とコミュニケーションをとるのかという「大きな軸足」にほかならない。

★「成功」を捨てたとき、アイデアは生まれる

 「捨て去るのは惜しい」。この真理の裏側にあるのは何か?僕は、「すがるような思い」だと思う。モノをつくったり、コトを起こすとき、僕らはどうしたって不安になる。<中略>
 では、何にすがろうとするのか?そのひとつが「手法」だ。成功した「手法」を踏襲すれば、成功確率は高まるはず。誰だってそう考える。そして、それはある程度正しい。ただし、そこには重大な「落とし穴」がある。お客様が見えなくなるのだ。<中略>
 さらに重要な問題がある。
 「手法」を踏襲し続けていると、チームが考えなくなるのだ。<中略>でき上がった「手法」の枠の中で考えているときには、お客様との会話はない。厳しくいえば、「手法」の方程式にあてはめて「作業」をしているにすぎない。<中略>
 だからこそ、「手法」を捨てなければならない。

【感想など】
まず最初にお断りしておきますが、本書はいわゆるアイデア発想法のハウツー本ではありません。

読んでいただければわかりますが、単なる”アイデア本”とは一線を画する、一段高く深いレベルを語ろうとする”アイデア本”なのです。

それは、著者自身が「はじめに」で

「愛されるアイデア」とは、頭の中で考え出すものではない。「愛される」ためには、その前提としてお客さまとのコミュニケーションがあるからだ。つまり、お客さまと「心」で会話をし、「目線」をあわせ、お客さまの心に届くアプローチの仕方を考え出さなければならないのだ。

ただし、そのやり方は、「手法論」として語ることはできない。それは、お客さまと向き合う「心」のつくり方の問題だからだ。

と、語っていることでわかります。

そう、この本はアイデア発想のための「心」のつくり方本なのです。

したがって、今回の【ポイント&レバレッジメモ】では、著者のアイデア発想法のヒントとなりそうなところをピックアップしましたが、これをそのまま真似ただけでは著者のような”突き抜けた”作品はできないと思います。

実際、本書で中心的に話の材料として語られているミゲル君の消臭力CM。

このアイデアは朝目覚めたときに降りてきたものです。
数人の少年が歌っているイメージが脳裏に鮮明に浮かんだそうです。

確かにあのCMは、”突き抜けている”どころではなく、別格だと思います。

ワタクシはテレビを観ないので、CMも全然知らないのですが、偶然子どもがテレビを観ているときにミゲル君のCMが流れたのをちらっと観ました。

ただそれだけですごいインパクト!
「これって何だろう?」と疑問に思いつつも、完璧に頭に残りました。

決して、ブレインストーミングとか、市場調査など、テクニックからでは生まれないCMだと思いませんか?

これは「神様からのプレゼント」なのかもしれません。

では、本書を読んでも再現性はないのか?と、思われるかもしれません。
そんなことはありません。

すばり、読み取ってほしいのはお客様と向き合う「心」、つまり「想い」なのです。

先ほど、「神様からのプレゼント」と書きましたが、著者の鹿毛さんに「プレゼント」が届いた、つまりアイデアが降りてきたのは偶然ではないと思います。

それは「想い」のあるところに届けられるのだと思うのです。

チャンスは準備のできている人に訪れるとよくいいますが、アイデアもそうなのだと思います。

実は著者の鹿毛さんは、エステーに務める前に、雪印乳業に務められていました。
そこであの、雪印食中毒事件を経験されています。

ワタクシもあの事件は鮮明に覚えています。
危機対応のまずさもあって、すさまじい連日マスコミの猛バッシング。

もちろん、事件を引き起こした会社に責任はあるのでしょうが、これほどいとも簡単にブランドが崩れ去るのかと恐怖すら感じました。

そのときのお客様対応の経験から、著者は真にお客様と向き合うとはどういうことかということが、まさに骨身に沁み込んでいるのです。

ですから、東日本大震災という国家レベルの危機に直面したときに、何をお客様に届けるのか?と考えるベースとなる「心」ができ上がっていたのです。

ではこの「想い」は、危機的な経験をしなければ得られないのか?

これは難しい問題ですが、危機的な経験、いわばショック療法がなくても日々の生き方、考え方を見つめ直すことで積み重ね、完成(完成がないかもしれませんが)できるのではないでしょうか。

その考え方や、自分を見つめ直す方法を本書から読み取ってもらいたいと思います。

最後に本書を読んで感じた、アイデアの生まれる条件のようなものをちょっとだけ。

2つ大切な条件に気がつきました。

1つは「想い」を共有できる素晴らしいチーム。
そしてもう一つが、「志」を持った社長(上司)です。

いくら「想い」があっても環境が整わなければ形にはなりませんからね。

そして、こういった環境を鹿毛さんが引力で引きつけたのも、雪印での経験あってこそかもしれません。

となると、雪印での経験こそが「神様からのプレゼント」だったのかもしれません。

突き抜けた、そして愛されるアイデアを生み出したい方へ。

本書はWAVE出版、編集者の田中様より献本していただきました。
ありがとうございました。

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