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「もっと大きな夢を見ろ」【書評】カーマイン・ガロ(著)『スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション』(日経BP)

間違いない。
本書はビジネス書部門、今年前半最高の一冊。
そしてこれは技術屋の本ではなく、人生の本である。

 

【目次】

はじめに 世界は多くのジョブズ――スティーブ・ジョブズを必要としている
 第1章 ジョブズならどうするだろうか?

法則1 大好きなことをする (キャリア)
 第2章 自分の心に従う
 第3章 キャリアをシンク・ディファレント

法則2 宇宙に衝撃を与える (ビジョン)
 第4章 エバンジェリストを奮い立たせる
 第5章 ビジョンをシンク・ディファレント

法則3 頭に活を入れる (考え方)
 第6章 新しい体験を探し出す
 第7章 考え方をシンク・ディファレント

法則4 製品を売るな。夢を売れ。 (顧客)
 第8章 その異常こそ天賦の才の表れ
 第9章 顧客をシンク・ディファレント

法則5 1000ものことにノーと言う (デザイン)
 第10章 洗練を突きつめると簡潔になる
 第11章 デザインをシンク・ディファレント

法則6 めちゃくちゃすごい体験をつくる (体験)
 第12章 我々は、みなさんの成長をお手伝いするためにいるのです
 第13章 ブランド体験をシンク・ディファレント

法則7 メッセージの名人になる (ストーリー)
 第14章 企業社会最高の語り部
 第15章 ストーリーをシンク・ディファレント
 最後にもうひとつ……まぬけに足を引っぱられるな

【ポイント&レベレッジメモ】

★大好きなことをする

 みんなも、僕と同じくらいラッキーであってほしいと思う。世界は発明家を必要としている・・・すごい発明家を。君だって、そのひとりになれるんだ。自分のしていることが大好きで、そのために必要なことならなんでもしようって気があれば、君にもできる。自分はどういうものを設計したいのか、つくりあげたいのか、夜、自分ひとりでじっと考え、考え、考え続ける。それだけのことをする価値はある。絶対にある。本当だ。   <スティ‐ブ・ウォズニァック(アップル共同創設者)>

★妥協しないこと

 とりあえずレストランの雑用係かなにかになり、自分がほんとうに情熱を傾けられるものを探すべきだと思う。アントレプレナーというのは大変な仕事だからね。この仕事で成功した人と成功できなかった人を分けるものの半分は、忍耐力だと思うんだ。ほんとうに大変な仕事だからね。人生の大半をかけるんだ。とても厳しい状況になることもあるし、そこで多くの人はあきらめてしまう。仕方ないと思うよ。ほんとにきついし、消耗してしまうんだ。家族がいて会社を立ちあげるなんて、どうしたらいいか僕にはわからないほどだ。もちろんそういう人もいるんだけど、とにかく厳しいよ。かなりの期間、1日旧時間、休みなしで働き続けなければならない。大きな情熱がなければやりとげられるはずがない。どこかであきらめるはずだ。つまり、まず、情熱を傾けて正したいと思う問題やまちがい、あるいは何かアイデアがなければならない。それなしには、最後までやりとげる忍耐力が生まれないからだ。これが戦いの半分を占めていると僕は思う。

 あのとき前に進み続けられたのは自分がしていることが大好きだったからlそれ以外にありません。大好きなものをみつけてください。これは、愛する人をみつけるのと同じくらい大事です。仕事というのは人生のかなりの部分を占めるものであり、そこで本当の満足を得るためには、すばらしい仕事だと信じることをするしか方法がありません。そして、すばらしい仕事をするためには、自分の仕事を大好きになるしか方法がありません。まだみつけられていない人は探し続けてください。妥協しないこと。心がからむものはそういうものですが、みつかれば必ずわかります。そして、すばらしい関係とはそういうものですが、年を経るごとにもっともっとすばらしくなってゆきます。だから、みつかるまで探し続けてください。妥協しないでください。
<スティーブ・ジョブズ>

★エバンジェリストを奮い立たせる

 「マックの起動時間がスティーブは気に入らなくて・・・同僚のデザイナー、ラリー・ケニョンにこう言ったんです。『このマシンをいったい何人の人が買うかわかっているのか?何百万人だぞ?起動時間を5秒短くできたらどうなる?毎日、5秒かける百万もの違いになる。50人分の人生に相当する時間だ。5秒の短縮で50人分の命が救えるようなものなんだ』と。こう言われたら効きますよ。そして、起動時間を短くすることに成功したんです」
<マツキントッシュのデザインチームにいたアンディ・ハーツフェルド談>

 「私たちは世界を変えたいと考えており、その想いで夢中になっていました。野心的なビジョンがなければイノベーションは生まれません。アップルのビジョンは、普通の人々にコンピューターを提供して世界を変えることです。我々が生みだしたいと思っていたのは、世の中で実際に使われる製品です。ゴリアテと戦うダビデの気分でした。みんな、一丸となってミッションに突きすすんでおり、だからこそ、会社にとってベストな選択ができたのです」
<アップルで採用担当をしていたシャロン・エイビー談>

★「優れた芸術家はまねる、偉大な芸術家は盗む」

 「つまり、人類がなしとげてきた最高の物に触れ、それを自分の課題に取り込むということです。ピカソも、『優れた芸術家はまねる、偉大な芸術家は盗む』と言っています。我々は、偉大なアイデアをどん欲に盗んできました。マツキントッシュがすごくいいものになった理由は、ミュージシャンや詩人、アーティスト、あるいは動物学や歴史の専門家が開発にあたっていたこと、また、彼らがたまたま世界屈指のコンピューター研究者でもあったことにもあるのです」  <スティーブ・ジョブズ>

★その異常こそ天賦の才の表れ

 最後に、ブランドとしてのアップルについて、また、それが我々にとって何を意味しているのかについて話をしよう・・・アップルのコンピューターを買う人というのはちょっと変わっていると思う。買ってくれた人は、この世界のクリエイティブな側面を担う人なんだと思う。仕事をしているだけではなく、世界を変えようとしている人々なんだ。手に入るかぎりのシールを使い、世界を変えようとしている人々なんだ。そういう人のために僕らは製品をつくっている。常識にとらわれない発想をして、アップルの製品をずっと買い続けてくれている人々のためにいい仕事をしたい・・・そう我々も考えているんだ。今日、ここで見聞きしたことはその第一歩だとみなさんに信じていただけたらいいなと思っている。自分はおかしいんじゃないかと思う瞬間が人にはある。その異常こそ天賦の才の表れなんだ。そういう人のために僕らは製品をつくっている。  <スティーブ・ジョブズ>

★自分たちが欲しいものを把握する

 大衆文化がどうこうという話じゃないし、人々をだますという話でもない。欲しくないものを欲しいと思わせるという話でもない。僕らは、まず、自分が欲しいものは何なのかを把握する。そして、同じものを多くの人も欲しがるかどうか、きちんと考えることがアップルは得意なのだと僕は思う。僕らはそのプロなんだ。だから、次にブレークするのは何だと思う?って社外の人に尋ねたりしない。ヘンリー・フォードも同じことを言ったらしいよ。「何が欲しいかと顧客に尋ねていたら、『足が速い馬』と言われたはずだ」ってね。   <スティーブ・ジョブズ>

★重要なことに集中する

 手順があると効率的になります。でもイノベーションというのは、ホールで立ち話をしたときとか、いいアイデアが浮かんだからと夜中の10時半に思わず電話をしたときとか、あるいは、それまでの考え方を打ち破る何かに気づいたときとかに生まれるのです。かつてないほどクールなモノを思いつき、ほかの人の意見を聞きたいと数人に集まってもらったりしたときに生まれるのです。1000ものことにノーと言う必要もあります。まちがった方向に進まないためにも、また、やりすぎないためにも。新しい市場への参入についてもよく考えますが、このような否定によって本当に重要なことにピントを合わせられるかどうかという形で考えるのです。   <スティーブ・ジョブズ>

★シンプルを追求すると個性が生まれる

 「製品をいじりすぎないということです。いじりすぎれば複雑になり、それはつまり、終わりを意味します。何をどうすればいいのか、誰にでもはっきりわかるような話ではありません。なにせ、いろいろ取りのぞくことがポイントだったのですから。おもしろいのは、そのシンプルさから、やりすぎというくらいのシンプルさから、そのシンプルさの表現から、とても個性的な製品が生まれるという点です。個性的であることを目的としたわけではありません。個性的なだけのものなら簡単につくれますからね。シンプルを追求して追求した結果、個性が生まれる。そういうことなのだとわかったとき、おもしろいなと思いました」<ジョナサン・アイブ>

★スティーブ・ジョブズ流でアィデアを売り込む7つのガイドライン
 1 「うっそー!」な瞬間をつくる
 2 3点ルールを守る
 3 ステージを共有する
 4 ヒーローと敵役を導入する
 5 ビジュアルに考える
 6 ツイッターに書けそうなへッドラインをつくる
 7 製品を売るな。夢を売れ。

★まぬけに足を引っぱられるな

「まわりの意見に惑わされ、自分の内なる声を見失わないでください」  <スティーブ・ジョブズ>

 まず、自分を信じること。迷っちゃだめだ。世の中、それこそ大半の人、出会う人、全員といってもいいほど多くの人が、白か黒かという考え方しかできない。どんなものなのか想像できないってこともあるだろうし、過去にこういうのがいいんだって話を誰かから聞いていて、そこに含まれていないアイデアだからってこともあるだろう。こういう人たちに足を引っぱられちゃダメだ。みんな、そのとき常識とされている見方しかしないってことを忘れちゃいけない。過去に見たり触れたりしたものしか理解できないんだ。これは先入観とか偏見とも言えるもの、発明というものと決定的に対立する偏見なんだ。  <ウォズニアック>

【感想など】
いやー、まいった。
質といい、量といい、これは上半期最高のスゴ本ですよ。

本書は

 

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン

  • 作者:カーマイン・ガロ
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2010/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

の続編に位置づけられる本で、前著も2010年ビジネス書大賞で第7位となるなど非常に好評価でした。

が、残念ながらワタクシ前著を読んでいなかったので、いずれ読んでみようと思っていたら早くも本作の登場。
しまった、と思いつつも

本書は前著と互いに補完する関係にある。本書はコミュニケーションの重要性が中心となっているが(まわりの人を巻き込めなければイノベーションに意味はない)、その内容は、いずれも、スティーブ・ジョブズがこれまでガイドとして活用してきた法則を徹底的に分析するものだ。この分析結果を活用すれば、仕事でも人生でも、自分の可能性を最大限に発揮できるようになるはずだ。

とあるように、プレゼンテーションよりももっと人生の深い部分で影響を受けそうだという点で、本作は十二分に読み応えありまくりでした。

そもそも、ワタクシはApple信者ではありませんでした。
バブル世代のワタクシは、タイミング的にAppleⅡが登場したころはまだ子供だったし、中高生の頃にマッキントッシュが出たものの、まわりの友達はみんなFM7ユーザー。

さらに、就職したのは、アップルからジョブズが追放されていたころで、もはや昔のような人気もなく、アップルを使っているのは一部の熱狂的なマニアか、デザイン系の仕事をしている人ぐらいでした。

それに、ちょうどマイクロソフト社がウインドウズを出した頃でしからね。
職場もWinPCでしたし、Apple製品は一生縁がないと思っていました。

ところがですよ、2008年の夏にiPhone3Gに飛びついたのが、ワタクシにとって最初のApple製品との出会い。
それ以後、気がつけば我が家には子供と嫁さんのiPodが3つ、そしてワタクシのiPhoneとiPadが存在していて、もはやこれなくして生活できない状態になっています。

そう、すっかり虜。

そして次にPCを買い替えるときには、機種はわかりませんが間違いなくマックとなる見込み。
もはやワタクシも完全にApple信者です。

で、どうしてApple製品はこれほど人を惹きつけるのか?
また、人を惹きつける製品がどうしてできるのか?
これをずっと知りたいと思っていました。
おそらくワタクシと同じ疑問を持つ人沢山いるはず。

その答えが本書にはギュッと濃縮されて詰め込まれています。

まず、イノベーションとは何か?という点ですが、本書では

「イノベーションとはものごとの新しい進め方で、よい方向の変化をもたらすもの」である。暮らしをよくするものと言ってもいいだろう。

イノベーションは発明と混同されることが多い。このふたつは、互いに補完する関係にあるが大きく異なるものだ。発明とは、新しい製品やプロセスの設計・開発・構築を意味する。イノベーション(変革)は創造的なアイデアからスタートし、最終的に、発明やサービス、プロセス、手法などに至る。発明家になれる人は限られているが、イノベーターには誰でもなれる。

としています。

「イノベーターには誰でもなれる」、このひと言、本当に勇気づけられます。

そして、ここが本書が秀逸な点なのですが、

本書で解説分析しているAppleの、あるいはジョブズのイノベーションとは、なにもメーカーの製品開発や技術革新だけが参考になるものではなく、あるあゆる仕事、あらゆる職業人としての生き方、もっといえば人生、生き方そのものをデザインしたい時の有効な方法を知るのに役立つところ。

まさにジョブズのイノベーションの法則は、人生の成功法則そのものです。

その点をあげるときりがないのですが、例えば前提条件。
「仕事を好きになる」もしくは「好きなことを見つける」ということ。
寝食を忘れ、無給でもやりたいと思う物に出会い、それに情熱を持って取り組める人はかなり成功の確率が高くなるというのは成功法則でも定番中の定番。

ジョブズにとってはコンピュータだったわけですが、これはジョブズ自身が言うように“幸運な出会い”だったことでしょう。
ワタクシ達はそこまで夢中になれるものに出会うことの方が稀。

だからいい歳になっても「自分探し」なんてしてる大人がいるわけで・・・。
そういう人たちには、「いつまで夢見とんねん。目の前の仕事に集中しろよ!」と言いたくなるのですが、本書を読んでちょっとスタンスを変えることにします。

みなさん、妥協せず探し続けましょう!(笑)
そしてワタクシはもう少しブログに集中してみようかと・・・。

それから、ワタクシが一番勉強になったのが“シンプルさが個性を生み出す”という点。
Apple製品の魅力はシンプルさ。

そのシンプルさを追求する姿勢も、我々の人生、ライフデザインに応用できるのではないかと本書を読んで強く感じました。

あれもこれもと機能を追加して高性能をうたう携帯と同じように、私達はいろいろ“使わない機能”を背負い込んでいる。
そして、みずから背負い込んだものにがんじがらめになり、身動きができないまま人生を終える。

もっとシンプルに生きることが他者と違う人生を創造することにつながる。
それを学べたのが今回大きな収穫でした。

ついでながら、このブログももっとシンプルにしようかと。
そもそも、このダラダラ長い文章はいかがなものか。
きっとジョブズ流に言えば“まぬけ”な書評ブログなんでしょうね(恥)。

最後に心にガツンときたジョブズの言葉を。

「人生を左右する分かれ道を選ぶとき一番頼りになるのは、いつか死ぬ身だと知っていることだと私は思います」
「時間は限られています。他人の人生を歩んで時間を無駄にしないでください」
「ハングリーであれ、分別くさくなるな」

すべての“人生のイノベーター”

 

スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション

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本書は日経BP社の東城様から献本していただきました。
ありがとうございました。

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