ツイッター献本 #kenpon 第4弾!
熱く語られたその仕事観は、SEだけでなく日本のビジネスパーソンが生き残る道を示してくれる。
しかも時速160㎞越えの剛速球で。
【目次】
はじめに SEと日本よ、生き残れ!
第1章 ITサバイバル時代を生き抜くための7つの力
第2章 エントリー・マネジメントの失敗が組織を腐らせる
第3章 システム・エンジニアを「ビジネス・エンジニア」に進化させる方法
第4章 SEが命がけで仕事に取り組む組織のつくり方
第5章 コミュニケーション下手なSEでは生き残れない!
第6章 あなたに「ビジネス・エンジニア」を育てる覚悟はあるか?
おわりに 「日本型lTパーク」を実現するために
【ポイント&レバレッジメモ】
★インド人SE
◇インドでは最低クラスでも、日本にくれば軽々とエース級の働きをしてしまう
◇インド人SEが優秀な理由は、優秀な人がきちんとしたプロセスを経てSEになってい
るから
★日本のSEの勝機は?
◇ユーザーやクライアントの気持ちになって設計するセンス、さらにそれを完成品にすることができる能力
★「夜なきうどんと経営」
夜なきうどん屋には経営に必要な要素がすべて含まれているから、夜なきうどん屋商売ができるようなら、事業全体を大局的にみなければならない会社の幹部も任せられる。
⇒SEが目指す道
★新時代のSEに不可欠なサバイバルのための七つの力
①リーダーシップ
②コスト感覚
③営業力
④精神的ダフさ
⑤組織第一主義
⑥未来を見る力
⑦覚悟
★技術バカでは生き残れない!
また、SEを単なる「技術バカ」としか考えていない経営者の下で働いているSEは、四○代、五○代になったとき非常に困ることになる。SEの技術というのは年齢とともに右肩上がりでずっと伸びていくものではない。<中略>結局、技術バカのSEというのは、何年かしたら必ず会社の余分なコストとなって経営の足を引っ張るようになる
★エントリー・マネジメント
◇優秀さは頭のよさなどの地力と、組織への融和性の二面で見続けなければならない
◇最初から会社に合う人だけを採用すればいい ⇒ 本当に欲しいのは「命がけで働く人」
◇媚びない採用 ⇒ そこに裏表なく、一切の媚びもなく、強烈なメッセージを発信する会社があれば、はまる人には強烈にはまるのである。
◇職人意識こそがSEの成長を阻害する ⇒ SEという職種に限らず、四○歳を過ぎて求められるのは、個人のパフォーマンスではなく、集団のパフォーマンスを最大化きせるリーダーとしての力だ。
◇高給を誘い文句にするような会社はSEを人間ではなくパーツとして扱っている
人ではなくモノ扱いされて喜んでいる姿は滑稽だし、自らモノであることを選んでおきながら、モノのように捨てられる段階になって不当だと叫ぶのは、卑劣でもある。<中略>自分はモノなのか人なのかを、自分の意志で決めたほうがいい。
★「ビジネス・エンジニア」
◇日本は技術で生きていくしかない ⇒ 日本はテクノロジーの国であり、産業界の主役はエンジニアという図式は、当分変わらないといえる。
◇日本人の特性
①何かをつくり込んでいく感性
②組織戦の強さ
◇一つの技術を究めた職人ではなく、全体を俯瞰し、ビジョンを描き、そのビジョンを現実化するためのかじ取りができる「ビジネス・エンジニア」を目指せばいい。
◇自分の好き嫌いを仕事に持ち込まない
「何をしたいか」ではなく「何をすべきか」を自分の意志と哲学に沿って導いてこそ、分厚いキャリアが築けようというものだ。
◇「プロフィット管理」 ⇒ 「利益を最大化する働き方」
どれだけの利益を会社に入れられるかだけを評価するとはっきり伝えるのである。あらゆる技術はクライアントに貢献し、自社に利益をもたらすためのツールであり手段にすぎない。利益を入れるも入れないも自分の責任だという意識が浸透すれば、危機感が芽生え、SEの働き方は自ずと変わってくる。
★組織力をより強化するには
組織にとってプラスになるなら、個人の快適さなどは二の次でかまわないのだ。
こういうと、会社では個人は幸福になれないように聞こえるかもしれないが、そうではない。組織が強くなって会社が繁栄すれば、社員もまた果実を得る。しかも、それは個人がそれぞれ自分のためを考えて働いたときよりも、はるかに大きな果実のはずだ。
◇「大和魂とは自己犠牲の精神である」 ⇒ 世界で戦うなら組織の勝利に徹すること
何としても自分たちの会社を勝たせ仲間に貢献するのだという気持ちに社員がなれば、個人技に勝るインドやベトナムのSEにも勝てるのである。
◇「リーダーシップの究極の目的は組織を勝たせること」
リーダーはいつもどうしたら組織を勝たせられるかを、優先順位のいちばん上に置かなければならないのである。「負けたけど、みんな頑張ったからよかった」といえるような人間はリーダーではない。
◇最強の組織を目指せば「終身雇用」
(プロジェクトのために寄せ集めたチームに)比べ自社で編成したチームなら、お互いに入社時から鍛錬しているので、一定以上のレベルを開発でもコミュニケーションでも実現できる。こいつは遅刻もしなければ、苦しいときに逃げもしないという絶対的な信頼もある。何より、この先もこのメンバーで会社を盛り立てていこうとみなが思っているので、仕事に対する意気込みが違うし、会社の看板を背負って開発にあたるわけだから、成果に対する執着にも格段の差が出るのも当然だ。
★プロフェッショナルは言い訳をしない
厳しい条件のときにこそ、力を発揮し会社に貢献できる人間を、真のプロフェッショナルというのだ。
★「社内テロリスト」・・巧妙に組織の内部に入り込み、他の社員を洗脳して仲間に引き入れ、秩序を乱し組織を弱体化させる。
◇「組織の水」が澄んでいれば、この手の輩は棲息できない・全メンバーが組織の勝利を第一義とし、成果にこだわり、努力を惜しまない環境には、濁った水にしか棲めないテロリストが存在する余地はないのである。
◇社内テロリスト3つのタイプ
①無気力型…周囲のテンションを一気に下げる
②主張型…行動を起こす気がないのに問題点をあげつらう
③逃避型…何かあるとすぐに「辞めたい」という
★人をギリギリまで追い込む厳しい教育は、指導するほうもされるほうも、お互いがより短期間に大きく成長する。
★「部下村」から「上司村」への引っ越し
私が提唱している理想のエンジニアは、優秀な作業員で終わるのではなく、最終的には経営幹部として会社の経営も任せられる、ビジネスマンとしても優秀な人材だ。そして、そのためには、超えなければならないハードルがいくつもある。最初のハードルは、作業員から事業や会社を運営する側に立ち位置を変え、当事者としてすべてを考えられるようになるということだ。
★上司の一番の仕事とは?
確認するが、管理職のいちばんの仕事はあくまで成果を上げること。現場の不平不満を聞いたり、環境を整えたりすることはときに必要だろうが、それはあくまでも最大限の成果を出すための手段であり、目的ではない。現場のエンジニアから、さすがにお前は話がわかるとおだてられれば悪い気はしないだろうが、そこでブレて作業員の視点に戻ってしまったら、管理職としての存在価値はない。
そもそも、優秀だから管理職に抜擢された人間が、優秀でもなく組織全体のことも考えていない末端の人間の意見を尊重するのは理屈に合わない。管理職なら仕事に対する信念と実力をもって、現場を統率していろといいたい。
★現代社会においての「道徳」は、「オープン」と「フェア」を徹底すること
不誠実な対応によって失うものが一一つある。一つは「信用」、もう一つは嘘をつき続けることによってつくられてしまう、自分自身の「人格」または組織自体の「社格」だ。
★経営者は常に「人工衛星」であれ
部下の最高の状態を常に引き出そうと思うと、上司の自分が暗い顔をしているわけにはいかない。リーダーとしての役割を演じ続け、無理をして平常心とやる気に満ちあふれた姿を演じているうちに、気がつけば私の意識は空の高みを突き抜け、大気圏外に出て落ちてこなくなった。離着陸がある飛行機では駄目なのだ。あたかも「人工衛星」のように、高みに舞い上がったやる気が生涯落ちてこない人間にならなければ、リーダーたる資格はない。人に影響など与えられないのだ。
自分の感情にしたがえば、やる気は上下せざるをえない。自分の使命感に殉じ、理性でリーダーを演じるのだ。五年も演じ切ればそれが本物になる。
【感想など】
とにかく“熱い”本でした。
こういう若い社長さんがいるうちは、日本もまだまだ大丈夫かな、などと考えつつ読ませていただきました。
本書はタイトル通り主役はSE。
SEの方とそれほど付き合いがあるわけではありませんが、ワタクシのSEという職業に対してのイメージもだいたい本書に書かれているとおりで、正直言って、いいイメージはありませんでした。
「35歳くらいで使い捨て」とか、
「PCあるいは技術オタク」とか、
そして仕事はただひたすら納期まで徹夜でコード書いてるイメージかなぁ。
SEの方、ごめんなさい。
でも実際、ワタクシの知ってるSEの一人は、まだ20代前半の青年ですが、ほとんど外に遊びに行くこともなく、職場にほとんど泊まり込みで仕事して、夏でも日に当たらないから青白い顔をしています。
また、別の一人は30歳前に過労でダウン。切り捨てられるように退職して公務員に転職しました。
しかし、本書を読んでいて、こういったイメージとは違う一人のSEの方を思い出しました。
もう10年近く前のこと。
ワタクシの職場に新しいLANシステムを導入することになり、システム構築のために一人で派遣されてきたSEの方。
歳は当時もう50歳を過ぎておられて、細身で長身、髪はロマンスグレイ。
物静かで知的でいつもびしっとスーツを着た紳士然とした方でした。
1か月くらい職場にずっといて、一人で黙々と仕事をされていましたが、時々休憩と考え事をまとめるためにノート片手に喫煙室でタバコをくゆらせておられました。
当時のワタクシの職場には休憩室を兼ねた喫煙室(たばこ部屋と呼んでました)がありまして、ワタクシはタバコを吸わないのでタバコの臭いが気になるのですが、そこへ行くといろいろ情報が入ってくるし(女性職員にとっての給湯室みたいな感じ)、ソファーで休憩時間に本を読んだりしてました。
で、ワタクシが読んでいる本のことや、仕事のことや、男性しか入ってこない部屋でしたので女性には聞かれてはマズイ話等々、自然とお話するようになりました。
その時とにかく驚いたのは、このSEの方の知識の豊富さ、博学ぶり。
その頃のワタクシはよく歴史ものの本を読んでいたのですが、すごく詳しいし、音楽好きの同僚とは70~80年代の音楽の話で盛り上がるし、政治、経済、グルメなどなど、もちろんPCやITの話はお手の物。
そういえばある時はサンダーバードの話を熱く語り合いました(笑)
サンダーバード1号はF14トムキャットが出る何年も前に可変翼機として登場したとか、サンダーバード2号は胴体に揚力があるから翼が小さくても実際に飛行可能だとか。
サンダーバードをご存じない方はこちらをどうぞ
ただ、今思い返せばこのコミュニケーション能力が彼のフリーのSEとしての強い武器だったんだと本書を読んで気がつきました。
そういえば、このタバコ部屋でのヨタ話の中で、我々の仕事上で不便な点や新しいシステムにはこういう機能があったらいいなといった要望を、システム構築に生かすべく自然な会話の中で吸い上げておられたようです。
そして、実際完成したシステムをワタクシの上司は「契約以上のことをやってくれた」と評しておりました。
まさに本書で著者が日本のSEが生き残る勝機としてあげた日本人の特色
ユーザーやクライアントの気持ちになって設計するセンス、さらにそれを完成品にすることができる能力
を実践していた方だったんですね。
(ちなみに、「それはできません」ときっぱりワタクシの上司に言ってるシーンも見たことがあります。ただのイエスマンではなかったようで、そういう出来ないことは出来ないとはっきり言うところも信頼される理由だったのかもしれません。)
そりゃそうですよね、あとから聞いた話ですが、この方は若いころにSEとして独立して以来、ずっとフリーのSEとして生き残ってこられた方。
技術的に高いものを持っているのはもちろんですが、個人が腕の良さだけで大手相手に生き残れるはずはありません。
普段の会話からクライアントの要望を引き出して、かゆい所に手の届いたシステムを構築する。
その丁寧な仕事が新しいお客と仕事を呼ぶ。
そういった技術力と営業力を兼ね備えた方だったのです。
さて、本書ですが、著者の篠田庸介さんの
資源のない日本は、昔もいまも、そしてこれからも技術で食べていくしかない。つまり、エンジニアこそが国をけん引する役目を果たさなければならないはずだ。そして、そのなかでもコンピュータやネットワークという、すべての産業のカギをにぎるシステムを開発するSEには、もっとスポットライトが当たらなければおかしいし、そうなるような産業構造に変えていかなければならないのである。
という考えのもと、これから必要とされる(生き残れる)SE像が熱く語られています。
ちょっと求めるもののハードルの高さに驚く部分もあり、またきつい表現もしばしば見受けられましたが、全体として論じられていることは至極正論だし、なにもSEに限った話ではなく、日本のビジネス界が抱える共通の問題に対する解決策のテーゼとして広く異業種のビジネスパーソンに応用できるものであると思いました。
特に SEは「ビジネス・エンジニア」に成長していかなければならない という考え方はワタクシも納得。
専門職の技術者(ある意味職人)でありながら、マネジメントができるようになれ!という主張は確かに厳しいもので、「俺は定年まで技術者でいたいんだ」とか「現場で、最前線でやっていきたい」という方も多いことでしょう。
しかし、人間は人生のステージで変わり続けるもの。ビジネスのステージでも同じこと。
例えばプロ野球に例えればわかりやすいと思うのですが、
一選手 → チームリーダー → コーチ → 監督
と、もしその世界でいたいなら自分自身が進化し続けなければなりません。
「生涯一捕手」といっていた野村さんも、
一捕手 → プレイングマネージャ、そして今や球界きっての“名将”となられたのがよい例でないかと。
さらに言えば、技術者でも営業さんでもあるいは経理担当の事務方でも職種をこえて共通だと思うのですが、末端の仕事は代わりがいくらでもいるもの。
もちろんその仕事も重要なのですが、一番難しく、一番価値ある仕事はそれら末端で働く人たちをマネジメントし、大きな目標に向かって動かす仕事ではないかと最近ワタクシもようやく気付きました。
(若いころはこれに気づかず、上司によく文句を言ったものですが…)
言葉は悪いのですが、兵隊の代わりはいくらでもいます。
日本人がやりたがらないなら外国人を安く雇えばいい。
でも、高い位置から仕事を俯瞰してチームを動かし、組織に利益をもたらす人材というものはそうそういるものではありません。
不況が続いているとはいえ、我が国の経済力はまだまだ周辺国に比べれば群を抜いて高い。
日本人より安い賃金で、日本人の何倍も働く外国人労働者が日本市場を羨望のまなざしで見つめている現状の中、日本人は「変わらないことのリスク」を再認識するべきではないかと思います。
そういった緊張感を与えてくれ、日本のビジネスパーソンに生き残る道の一つの答えを示してくれる一冊。
SEだけでなく、広く業種をこえて読んでほしい本です。
本書は日本実業出版社編集部の滝 啓輔様から献本していただきました。
ありがとうございました。
【関連書籍】