会社再生コンサルタントの熱い戦い!
明日美の活躍、読んで痛快。そして会社再生の裏舞台の一端も垣間見れます。
【目次】
プロローグ 温泉旅館とデコボココンビ
第1章 山本屋の経営危機と忍びよる影
第2章 整理屋・雨月との対峙
第3章 山本屋 夏の陣!
第4章 新たなキャンバスを求めて
第5章 再生計画実行完了!
エピローグ 明日美と雨月。新たなアダムとイヴ
【感想など】
今回は【ポイント&レバレッジメモ】はお休み。
というのも紹介する本書が小説形式のビジネス書だから。
ポイントまとめてるうちにストーリーまで紹介してしまいそうで、いつものウチのフォーマットではちょっと紹介しずらいワケです。
そのかわり後ほど自分自身のメモ代わりに【気になるフレーズ】を抜き出したものを書いておきますのでご参考までにお読みくださいませ。
で、早速感想なのですが。
小説形式のビジネス書や自己啓発書というものはアメリカではポピュラーなものらしく、日本でも翻訳されたもので、良書が多く見受けられます。
ワタクシがすぐ思い浮かぶのはこのシリーズかな。
そして日本では多分この本が火付け役だったのではと思います。
この本以降、日本でも小説形式のビジネス書が市民権を得て質量ともに向上してきたような気がします。
例えば
は人気シリーズになっているし、最近では
といったところが注目されました。(←ワタクシ未読です。スンマセン)
こういった小説や物語形式のビジネス書のいいところは、楽しんで読めるところ。
例えば 『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』 なんかはかなり分厚い本ですし、おまけにワタクシ自身製造業じゃないし、在庫管理もしたことないけど、知識がなくても面白くて一気に読んでしまいました。
ビジネス書の場合、主題は問題解決ですから、たいてい解決不可能そうな難題があって、それを解決していく過程でなんどもドンデン返しがあり、難題に立ち向かう個性豊かな登場人物の笑いあり涙あり、そして恋ありの人間模様でさらに引き込まれていくパターン。
本書もまさしくその王道を踏襲しています。
ただ、扱うテーマが、債務超過に陥った老舗旅館『御宿山本屋』を舞台にした“会社再生”といった、今まであまりビジネス書の表舞台には出てこなかったテーマだったことがとても新鮮。
そもそも、「会社再生」というと、数年前の少し景気が良かったころに盛んに行われていたM&Aとか、「お金のプロ中のプロの…」と言っていた〇〇ファンドとか、外資のハゲタカなどといったどちらかというネガティブなイメージを持っている人が多くないでしょうか?
実はワタクシもその一人。
その点に関して著者はあとがきで
小説形式にしたのは、会社再生実務をわかりやすく解説することで、経営者の皆さんをはじめとした多くの読者に、「再生」に対するイメージをポジティブにとらえていただきたいと思ったからです。
と述べていますし、考えてみれば、小説形式のビジネス書の定番ストーリーが「難問解決」であるならば、「会社再生」という題材はまさしくドンピシャ。面白くないはずがありません。
ただ、上記引用の続きには
したがって、分かりやすさを重視するため、専門用語の解説やテクニカルな部分は無理のない範囲で簡略化してあります。
とのことでしたが・・・。
ワタクシには正直申し上げて、キビシー状況でした。
「デューデリジェンス」「DES(デット・エクイティ・スワップ)」「サービサー(債権回収会社)」等など、ん~ワカラン。
そういえば新聞ニュース等でよく聴く「民事再生法」についても実は詳しくそのシステムを知らなかったんだなぁと反省。
こういったところは登場人物のセリフで説明するだけでなく解説が欲しかったかなぁ。
まぁ、分からなくても楽しめるストーリーなんですけどね(←オイ!)
ともかく、明日美と雨月のラストシーンから
「これはもしやシリーズ化するのでは」と思わせるエンディング(←言っていいのか?)でしたのでまだ新刊ほやほやなのに早くも次回作も期待したいと思います(笑)。
この分野に興味のある方、経営者の方にお勧めの1冊。
本書は青月社の 秋山由紀子(@akiyamay) 様から献本していただきました。
ありがとうございました。
【気になるフレーズ】
「阿修羅だ。何面もの顔を持ち、それでいて強く、不況という悪魔たちから恐れられる存在でなくてはならない。単なる債務整理や事業継続に主眼を置いたコンサルティングなんて必要ない。経営者の犠牲の上に会社が再生しても、それは新の会社再生なんて言えないだろ?俺が目指しているのは、『経営者の再生』つまり、現在の経営者による経営継続なんだ。真の意味での再生とはな、会社や事業の再生だけじゃなく、経営者とその家族を含む人生の再生なんだよ」
「会社を再生するには優先順位が大切なんです。それを間違えると再生のチャンスを逃してしまいますからね。再生を目指す会社にとって、デューデリジェンスはとても重要なプロセスなんですよ」
「私たちはこう考えています。すべてを守ることができればそれに越したことはないけれど、今の山本屋の経営状況ではそれは難しいわ。だから守る資産と捨てる資産を選別したうえで、不良債権の処理を急ぐ債権者と協力し合って債務を圧縮しようと」
「つまり、資産を分類するんです。ここだけは譲っちゃいけないという資産を残すために、あえて犠牲になってもらう資産を選ぶ」
「ええ。第二会社方式とは、過剰債務を抱えて経営難に陥った会社が、例えば収益性のある事業を会社分割や事業譲渡で切り離し、ほかの会社(第二会社)に継承させて、不採算事業は旧会社に残したまま清算することで事業の再建を図る手法を言います」
「期限の利益と言うのはね、決められた期日までは債務を返済しなくてもよい、代金の支払いを請求されないなど、期限が到来していないことで債務者が受ける利益のことを言うの」
「はい。セール&リースバック方式とは、例えば今回のケースでは社長の自宅を任意売却で売ることにします。売却代金を抵当権者である江南信金に返済することで債務は圧縮されますよね、だけど、全くの第三者に売却してしまうと引き続き山本家が自宅として使用することはできませんよね?」<略>「…ですから、売却後も使用したり、買い戻したい場合には、親せきや知人などで協力してくれる人を見つけるんです。協力者であれば任意売却後に物件を賃貸で借りたり、数年後には買い戻すことだって可能になります。この手法がセール&リースバック方式です」
「銀座ってね、魔性の街とかなんだとかいろいろ言われるけど、最終的には本音のぶつかり合いなのよ。本音をぶつけて削って削って、角をすり減らして丸い球になっていく。自分を守るためだったら、いつまでもとがった部分は残ってしまうけど、心の奥底でつながった者同士は、丸い球となって重なるのよね」<略>「結局はそこだけなのよ。計算とか欲望を持って銀座で生きている人もいるけど、その人は一瞬の花火のように散って終わるわ。銀座の美しさとは、継がれていく美しさなの。本音を継いであの竹のように空へ伸びていく美しさなの」
「そうだ。あまねく答えはいたって単純シンプルなものだ。複雑に考えようとすれば、自分のつくりだした迷路にはまって抜け出せなくなる。迷路の答えなんて、実は簡単なルートだったりするものだろう?」
「わかりました。DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、債務を株式に交換することです。収益と比較して債務が過剰となっている会社に対して実施される再生手法の一つなんです。DESを実施した場合の債務者(会社)のメリットは、有利子負債を削減することで金利負担がなくなり、同時に弁済義務がなくなることから財務内容の改善が図れるんです。一方で、債権者にとっては、貸倒引当金を設定してある債権であれば、株式を保有することで資金回収の可能性も残されている。単に債権放棄を行うよりも将来の点で収益期待が持てる事なんです」
「だけどさ、本当にふーんなんだもん。未来が闇って、未来に色はついてないでしょう?だってまだこの世に存在していない時間なんだから。過去はすでに色が付いているから、そこに上塗りして別の色に変えればいい。それだけのことなんじゃないの?」