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人は生まれながらにして科学者【書評】内田麻理香(著)『科学との正しい付き合い方』(DIS+COVERサイエンス)

 

科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス)

科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス)

  • 作者:内田 麻理香
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/04/15
  • メディア: 新書
 

 

「人は生まれながらにして科学者(研究者)」であると、なるほど。

その証拠に本書を読んで思い出されたのは、走馬灯のように頭の中を流れてく子どもの頃の数々の悪行…いや「ミニ実験」の風景だった・・・。

 

【目次】

はじめに―――科学の物語性
初級編 科学によくある3つの「誤解」
中級編 科学リテラシーは「疑う心」から
上級編 科学と付き合うための3つの視点
あとがき―――科学技術の監視団に

【ポイント&レバレッジメモ】
★人は生まれながらにして科学好き?

 ヒトのデフォルト(基本設定)は「科学好き」
 成長期の体験の中で、科学に対するアクセルペダルに出会うか、ブレーキペダルに出会うか―――そこで「好き嫌い」が分かれると思っています。

★科学が見えなくなっている…「科学のブラックボックス化」

 まず今、身の回りにある製品は「素人」が手を出せないレベルのものになっているので、<中略> 
ICチップははんだごてなどで遊べる代物ではありません。その時点で「お手上げ」です。
つまり、私たちにとっての科学は、文字通り「触れられない」ものになってしまったのです。
 科学は私たちにとって、「高度になったがゆえに、遠くなってしまった」と。

■科学リテラシー
★知識よりも、思考が重要

科学リテラシーは、「科学的知識」「科学的思考法」に二分でき。このうち、後者の「思考法」こそが大事だということです。

★疑う心は科学の大前提…「1を聞いても0.5は疑え」

 科学リテラシーの核心を一言で言うと何でしょうか?私は、「疑う心」ではないかと考えています。

★なぜ、「疑う」ことが必要なの?

 では、なぜ科学の世界では、疑うことが重視されるのでしょうか。
 それは、あらゆる科学の仮説は「観察」でしか判断できないからです。

 

「科学」と言うと、白黒はっきりつけてくれる「わかりやすい」「すっきりする」イメージが大きいかもしれません。
 でも、実は「今のところこれが一番『正しそう』だから、これを受け入れておこう」と言う「疑い」を残した態度こそが、科学的な態度だと言えるのです。

★「なるほど」と「なぜ」のあいだに―――「?」の前には「!」が必須

 「なぜ?」に至るまでには、「すごい!」や「へえ!」などの驚きという前段階があると、私は考えています。そこであらためて、「でも…なぜだろう?」という疑問へと移る。
 つまり、何かに接したとき、まず「!」と言う感嘆符から始まり、「?」という疑問腑に進むという動きがあるのではないかということです。

「?」、すなわち疑う心は、「!」という感情とセットで、はじめて有効に機能するのではないでしょうか。

★科学的なものの考え方4つ
①答えが出せないことはペンディング(留保)する
◇科学者に必要な資質―――「運・鈍・根」

 「運」は文字通り、自然の女神がほほ笑みかけてくれるかどうかによるところが大きいということです。
 後者の「ドン」と「根」については、先ほど述べたように、「鈍感で、根気強く考え続ける」という資質、つまりボーダーラインを広くとって、問題を考え続ける忍耐力のことを指しているのだと思います。

 ◇「無知の知」

「自分の得た情報に対する解釈は正しい!」と言う無知の知が「疑う心」を消滅させてしまう。これは私の耳にも痛い話です。
「無知の知」を大事にすることが、大人にとっての「疑う心」を育てるための処方箋と言えるのではないでしょうか。

②「わからない」と潔く認める

 科学の世界では、「自然」という存在の前に、誰もが平等です。これは自然の心理を追求する理学でも、自然の法則を使って課題解決の手法を探る工学でも同じです。
 ですから、伸の科学者であれば、先輩に対してでも疑問に思えば、異を唱えることができます。逆に、後輩から来た異論も、それが正しいと思えば、たちどころに自らの誤りを認めることができます。たとえ相手が素人だとしても、真摯に耳を傾けます。

③人に聞くのを恥ずかしいと思わない

子どもの「なぜなに攻撃」を眺めていて、いつも連想するのは「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という諺です。
 そもそも、子どもは「聴くことを恥」とは思っていません。それが彼らの強みだと、私は思っています。

④失敗から学ぶ

今回は初級編から中級編のメモです。

【感想など】
本書はDiscover21社から新しく創刊されたDIS+COVERサイエンスシリーズの第一弾、3冊のうちの1冊です。

サイエンス系の新書ということでブルーバックスの様な、“中高校生向きだけどコアなテーマの科学本”をイメージしていたのですが、その期待はいい意味で裏切られました。

内田麻理子さんの著書である本書は、特定の科学技術について触れるのではなく、“人間は科学技術とどのようなスタンスでつき合っていくべきか”といった、かなり社会派なテーストの本となっております。

その社会派テーストの部分は、今回割愛した「上級編」がなかなか読みごたえあるので、ぜひ実際に本書をお読みいただくとして(←オイッ!)、とにかく本書には楽しませていただきました。

ワタクシがまずこの本に惹かれたのが、「人は生まれながらにして科学者(研究者)」という著者の科学と人に対する基本スタンス。

これには激しく共感。

ワタクシ、今でこそ完全に文系人間ですが、何をかくそう著者の言う“子ども時代の「ミニ実験」”やりまくったくちでして、それもかなりの破壊王でした。

親父のラジオを分解したり、虫眼鏡で何でもかんでも焦がしてみたり。

水道のメーターがどうやって回ってるのか知りたくて、メーターを石でたたいて割ったら水が噴き出したのであわてて土をかぶせて埋めて逃げたこともありました。(←これバレてませんでした。もう時効だろうと最近親父に話したら「お前やったんか!」の一言で終わってしまった 笑)

生き物も大好きで、虫や魚は捕まえてきては図鑑で調べてたから結構名前知ってたなぁ。
そうそう、テレビ番組も「野生の王国」を毎週食い入るように見てました。特に好きだったのはクストー探検隊とサバンナのライオンの狩りのシーン。

そんなワタクシは中学卒業までは理科大好き、実験大好きだったのですが、高校に入って授業についていけず・・・。

結局、化学も生物も物理もダメ、唯一ワタクシでもなんとかなったのは地学だけ。
(だから宇宙ものは今でも好き)
高校の理科の授業がワタクシの場合ブレーキペダルになってしまいました。

ですが、今でも科学好きでサイエンス雑誌を立ち読みしたり、サイエンス番組やネイチャー番組を子どもと一緒に見たりします。

こないだもBSで龍馬伝の後にやってたサイエンス番組で、すし職人がどうやってシャリがふわふわになるように寿司を握っているのかを科学的に解析していたのですが、にぎり寿司一つとっても、職人の技に科学的アプローチすると、シンプルな食べ物なのに奥が深い。

これはかなり面白かったです。
やっぱり人間は不思議なことが好きなんですよ。

それから、これも本書を読んで気づかされたことですが、“日常生活は科学に満ちている”
特に、子どもと一緒にいると「なぜなぜ攻撃」を受けますが、それに答える時、「私たちの生活は科学に満ちている」ということを実感させられることがたくさんあります。

例えば、息子と一緒にお風呂に入っていると
「なんでお風呂の中では体が浮くの?」「湯気は雲といっしょなの?」

それから、キャッチボールをしてるときには
「カーブは何で曲がるの?」「球が伸びるってどういうこと?」等々

これ全て説明できますか?

ワタクシはなんとなくしか説明できませんが(笑)、上記の質問はすべて科学分野の内容。
浮力であったり、気体と気圧の関係であったり、流体力学であったり。
本気で説明しようと思ったらかなり難しいですよ。

それで、ちゃんと答えてやれなくても、せめて少しでも子どもの科学への関心のアクセルペダルを踏んでやれるような父親でいたいなと思って、こっそり夜にググってみたりしています。

自分自身の勉強にもなりますしね。

まぁ、目の付けどころを変えて身の周りを見渡せば不思議なものはいっぱいあって、「科学技術のブラックボックス化」が進んでいるとはいえ、自分で仕組みが理解できるものもまだまだ沢山ありますよね。

化学式も物理の公式もわからないけど、「なんでだろう?」とか「どうなってるんだろう?」という「疑う心」をもつことと、実際に自分で「調べる」「観察する」「実験する」といった姿勢は歳をとっても無くしてはいけないものだと痛感させられました。

本書でも「疑う心」の重要性を繰り返し説いていますが、まず物事に対して「関心」がなければ「疑う心」は発生しません。そして、「関心」(「好奇心」と言い換えてもいいと思います)を持つことが「視点を変える」第一歩になります。

そしてさらに大切なのが、「鈍感で、根気強く考えつづける」という科学者にとって必要な資質。

科学者とは

「分からないことを頭に置いて疑いつづける」ことを楽しんでいる人たち

だそうですが、何も科学者が特別な思考法をしている人たちと言うわけではありません。

「科学的思考法」は、ぜひビジネスパーソン、そして日本国民全員が見習いたいところです。

現在の様な不況、閉塞感の下にあっては、根本的な解決方法よりも、とにかく即効性のある経済政策や何らかの生活支援に飛びついてしまいがちですよね。

本当の原因は何なのか?この先どうするべきなのか?腰を据えて考えつづけるべき問題にもすぐに答えを出そうとする。

これはある意味危ないことでもあります。注意注意。
(もっとも首相は基地問題に関しては腹の中で科学的思考を続けてらっしゃるようで、すぐには答えをお出しにならないようですが…、さすが首相!)

そして、この傾向は個人の人生についても言えるんじゃないでしょうか。

本書を読んで「科学的思考」に触れ、自分の人生へ対する姿勢の参考にしてみるのもよいのではないでしょうか。

その時はこちらも併せて読むことをオススメ
自己自問の方法としても使えますよ。

 

ワンランク上の問題解決の技術《実践編》 視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ

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  • 作者:横田 尚哉
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2008/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

もちろん、純粋に科学好きの方は、各章のコラムで科学ネタも満載ですので楽しめるはずですよ。

“チョコレートの媚薬効果”はワタクシも「あると思います!」(←詳しくは本書で!)

文系人間も得るところ大な1冊。
もう一度子供のころを思い出して、今度は子供と一緒に「ミニ実験」をやるチョイワルガキ親父になりませんか?

 

科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス)

科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス)

  • 作者:内田 麻理香
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/04/15
  • メディア: 新書
 

 

本書はDiscover21編集者の三谷祐一様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】
内田麻理香さんの作品

 

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  • 作者:内田 麻理香
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/01/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
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  • 作者:内田 麻理香
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/12/20
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  • 作者:内田 麻理香
  • 出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ
  • 発売日: 2009/05/25
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2 COMMENTS

睦五郎

[太字]楽しかったです![/太字]
私も実験の子供だったので
どれだけのものが犠牲になったことか・・・。
この本の感想だけでレポート用紙2枚は
超えそうですね。
こういう内容が3冊分で、しかもこれから
ぞくぞく増えるんですよ。
なんて楽しいんでしょうか?
私は普段はドけちと言われていますが
本代だけは惜しみなく投入しています。
理解のある家族で助かっています。
本棚7つ分ですからね・・・。
ではまた他の2冊分の書評待っていますね。

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一龍

睦五郎 様
こういう本、楽しいですよね。
学校の授業はつまらなかったのに、大人になってサイエンス本読むとどうしてこんなに楽しいんだろう。
他の2冊の書評もですか?
ん~読んでから考えます。とりあえず楽しく読ませてください。

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