今日はかなりシブメの本をご紹介します。
かつて鉄鋼王と称され、一代で財を築き、その富をさまざまな慈善事業で世の中に還元していったアンドリュー・カーネギーの自伝です。
ナポレオン・ヒルの本で少し彼の生きざまを知って以来、ずっと自伝を読んでみたいと思っていまして、最近ようやく読むことができました。
そして
「一流とはこういう人を言うのだ」と感動。
これは必読の本です!
【目次】
序文
編集者のノート
1 両親と幼少時代
2 故郷の生活とアメリカ
3 勇敢な母と私の就職
4 最初の図書館
5 電信局にて
6 鉄道に職を奉じて
7 ペンシルヴァニア鉄道会社の主任となる
8 南北戦争時代
9 橋をつくる
10 製鉄所
11 本社をニューヨークにおく
12 モルガン商会との取引
13 鋼鉄時代
14 世界一周の旅
15 馬車の旅と結婚
16 製鉄所と働く人たち
17 ホームステッド工場のストライキ
18 労働の諸問題
19 『富の福音』
20 教育振興基金
21 平和のために
22 M・アーノルドと他の友人たち
23 英国の政治的指導者たち
24 グラッドストーンとモーレー
25 スペンサーと彼の弟子
26 政界の友達
27 ワシントンの外交
28 ヘイ国務長官とマッキンレー大統領
29 ドイツ皇帝に謁見する
【ポイント&レバレッジメモ】
◇・・・このようなごく些細なことに、人間の運命を決める最も重要なことがかかっているかもしれないのである。一つのことば、一瞥、あるいは声の調子が、個人だけでなく、国家の運命を決めることになるかもしれない。どんなことがあっても、つまらないと言って片付けてしまう人は大胆な人である。・・・<中略>・・・青年たちは、いわゆるつまらぬことによく、神々の最高の贈り物があるのを憶えておくべきである。
◇成功を目指して奮闘を続けている青年が人生の競争場裡で警戒しなければならないのは金持ちの息子や、甥や、従兄弟ではない。むしろ事務所の掃き掃除からはじめる少年の中に「ダークホース」としての強力な競争相手がいるので、用心した方がよいであろう。
◇何か新しいことを学ぶ機会があるなら、それをとらえて逃さず、自分の知識を試してみるということは大切である。
◇高い地位にある人に個人的に認められるということは、青年にとって人生の闘争にすでに半分、勝ちを制したことになるといってよいであろう。少年はみな、自分の仕事の領域を超えて、なにか大きなことを目指すべきである。なにか上司の目にとまるようなことをやるべきである。
◇貧しい人ほど人の好意を心から感謝し、その感激を素朴な形であらわすのである。百万長者はいつか適当なお礼ができるであろうが、貧しい働く人たちにしてあげる思いやりのある行為こそ、本当に何十倍も酬いられることの多いものなのである。
◇他人の指図の下にあるうちは誰も必然的に狭い世界に押し込まれていることになる。大会社の社長になったところで、人間は自分の主人公となるのは至難である。もちろん、自分が株を独占していれば、問題は別である。もっとも有能な社長でさえ、事業については何も知らない重役会や理事会、それに株主によって縛られているのである。
◇株式市場のめまぐるしさにまどわされている人は、健全な判断力を失うのである。酒に酔ったと同じ状態になるので、ありもしないことを信じ込み、あると思ったものも、みなないということになる。相対的にものを見ることができないし、また将来の見通しがゆがめられてしまうのである。もぐら塚が山に見え、山がもぐら塚と見える。理性の判断によらなければならぬ結論に、何の根拠もなく一足とびに突入してしまう。相場に気を奪われているので、冷静に考えることができないのである。投機というのは寄生虫で、それ自体に何の価値もないものなのである。
◇人間の苦悩の大部分は想像のなかにあるだけで、笑って吹き飛ばしてしまえるものが多い。河に来るまで橋を渡る必要はないし、悪魔に出会うまでお早うとあいさつすることもない。取り越し苦労は愚のいたりである。こつんと頭をぶたれるまで、すべてうまくいっているので、ぶたれたからと言って、十中の八、九までは予想したほどひどくなかったかもしれない。賢い人は徹底的な楽天家なのである。
◇「一つの籠に手持ちの卵をみんな入れてはいけない」という諺とは逆の方針を取ることにしたのであった。私は「良い卵をみんな一つの籠に入れて、その籠から目を離さない」というのが正しい方針だと、決意したからであった。
◇私たちがなにが自分に最も適し、またできるかを知らず、一芸の達人として安心して、愉快にその道を進むことをしないのは、愚かなばかりでなく、まことに残念である。
◇「神の国は汝らのうちにあり」というキリストの言葉が、私にとって正し意義をもたらしたのである。天国は、過去にでもなく、また将来にでもなく、現在、ここに私たちのうちにある。私たちのなすべきすべての務めは、この世に、また現在にあるのであって、未来にあるものをのぞんで、それを捉えようとあくせくするのは、無駄であると同時に、また何の収穫もないのである。
◇生活環境や自然の法則のうちには、私たちの目には何か間違っているとか、あるいは不合理で、また無慈悲だと思われるものがある。しかし、それにもかかわらず、その多くは美しさとやさしさをもっている。我が家と言うのものはたしかにその一つで、その様相とか所在は問題にならない。至上の神は、その啓示を一つの民族や国家に限らなかったというのは、まことにしあわせであった。あらゆる民族は、その成長の現段階に適応した神の使命を授かったのである。知られざる大きな力は、なにびとをも忘れてはいないのである。
◇アメリカが世界の市場で競争する場合、一つ大きな利点は、この国の製造業者が最良の国内市場をもっているということである。これによって、彼らはすみやかに資本の回収が期待できて、余剰生産品を有利に輸出できる。輸出による値段は、生産原価をかろうじてまかなうだけでもさしつかえないのである。最良の国内市場をもつ国家は、ことに製品がアメリカにおけるように画一化しているときには、やがて海外の生産業者を打ち負かすことができる。
◇雇い主にとって自分の下に働く人たちが十分の収入を得て、確実な仕事をもっているということは大切なことで、自分の利益になるのである。・・<中略>・・高い給料も大変結構ではあるが、確立した不断の仕事と比べたら問題にならない。
◇三交代の時代が来るのは疑う余地がない。私たちが進歩するにつれて、労働時間は短縮されるべきである。八時間制になるであろう。八時間働き、八時間ねむり、八時間を休養と娯楽にというのが理想的なのである。
◇資本家と労働者との間におこる争いのうち賃金問題は半分も占めていないのを、私は信じて疑わない。雇い主側が、従業員を正しく理解し、彼らの労を感謝し、親切に扱おうとしないことが、原因となっているのである。
◇「神々は巣を張るために糸を贈ったのである」
◇私たちは宇宙の法則のもとにあるのであるから、もくもくとして頭を
垂れ、うちなる良心の裁きにしたがうべきで、なにものをも求めず、なにものをも恐れず、ただ自分の務めを一途につとめ、現在も、また死後にもなんの酬いも求むべきではない。
◇自分に対して最も忠実であること、これが究極的には私たちの救いとなるのである。
◇英帝国の地方自治体はまことに健全で、また最高の人物によってよく治められているということである。一般の大衆の投票がこれだけ賢明に、良識をもって使用されているところは、今日の世界にイギリスだけだと言っても、少しも言い過ぎではない。この有権者の健全さが、英帝国の基盤となっているのである。
【感想など】
アンドリュー・カーネギーがどんな人かを知らなくても、カーネギーホールの名は聞いたことがあるのではないでしょうか。
その他、“カーネギー”の名を冠した公共施設がアメリカには多数あるそうですが、ワタクシも世界史の授業で“鉄鋼王”で大富豪だったと習ったぐらいしか知識はありまえんでした。
そんなワタクシが彼に興味を持ったのは、初めて読んだ自己啓発書で、何十回と読み返すほど衝撃を受けた
がきっかけでした。
ここに登場するのがすでに大富豪となり、老齢の域に達しているアンドリュー・カーネギーでした。
印象深いのが、カーネギーが若いヒルに、成功者やこれから成功するであろう人々に取材して成功者の共通点やノウハウを体系化すること、いわゆる“成功哲学”をまとめる仕事を無給でやってくれないかと頼むシーン。
これがなかなかの名シーンで、カーネギーのポケットの中には時計があって1分以内にイエスと答えなければ不合格にするつもりだったのだそうです。
幸いヒルはこの試験に合格。
のちに前述の本を出版、大ベストセラーとなって、その後出されるさまざまな成功本に影響を与え、自らも大富豪となるのです。
つまり、
カーネギーが成功しなければヒルも彼の本も世に出ることはなかったわけで、
ヒルの本が世に出ていなければ“成功本”もなかったわけで、
“成功本”がなかったらワタクシは仕事して家帰って飯食って寝るだけのただのオッサンで、ブログを書いていることもなかったわけで(←無理やりこじつけ)
いやぁ、時代も国も違うけど、人間ってつながってるなぁ(遠い目)
冗談はこれぐらいにして
さすがに叩き上げで大富豪にまで上り詰めた方の自伝、示唆に富み読み応え有ります。
上記の【ポイント&レバレッジメモ】をお読みいただいても分かるとおり、
言及する範囲の広いこと広いこと。
前半は純粋に立身出世物語として楽しむことができます。
勤勉、倹約、寛容といった古き良き時代のアメリカの成功者に共通するキーワードが読み取れます。
しかしこの三つのキーワードって時代も国も違っても成功するための普遍の真理だということが改めて考えさせられます。
そして中盤はある程度成功してますます事業を大きくしていこうとする実業家としての顔が中心。
ここはカーネギーならではの一流の考え方がいろいろ垣間見えて面白い。
例えば株式投資については
自分の会社にかかわる株以外は持たないというルールを自分で決めており、キャピタルゲイン目的の投機については
投機というのは寄生虫で、それ自体に何の価値もないものなのである。
と、一刀両断。
また、
「良い卵をみんな一つの籠に入れて、その籠から目を離さない」
という考え方は経営者としての姿勢を端的にしかも深くあらわしているのではないでしょうか。
さらに後半は慈善活動について言及されているのですが、
立身出世→大富豪→慈善活動で世の中に還元
という成功者のモデルスタイルをつくったのがカーネギーだったんですよね。
最近ではビル・ゲイツとバフェットが慈善活動団体を立ち上げたのが有名ですが、
“金持ちは金持ちの責任を果たす”という気風があるのはアメリカの美徳だと思います。
日本では某洋酒メーカーが音楽ホールやミュージアムで社会還元しているのが有名ですが、
個人の資産でとなるとなかなか思い浮かびません。
政府が若者にお金を使わない国ですから、ここは企業や大金持ちの方に頑張ってもらいところなのですが・・・
さらにこの本の魅力的なところをもうひとつ
それは、歴史好きにはたまらないと思われる場面が随所にあるところ。
イギリスのグラッドストン首相やドイツ皇帝も登場したりするのですが、
ワタクシ的にはリンカーン大統領に関する記述が印象的。
静的な顔は本当に醜かったが、何かに感動したり、面白い話をしているときには知性の光を放って、顔全体が輝き、私はこのような美しい顔をいまだどこにも見たことがない。彼の態度は自然であったからいつも立派であった。誰にでも何となく親切で、思いやりの言葉をかけ、事務所の給仕にさえも、同じようにふるまった。彼の他人に対する態度には差別がなかった。
リンカーン氏のように自分をあらゆる人たちと同じ立場において親しみの城をあらわす、こんな偉大な人物を私は今までに一度も見たことがない。ヘイ長官は「リンカーンさんの十社になることはできない。だれでも友達にしてしまうから」と言われたが、実にその通りなのであった。彼は最も完全な民主主義者で、ことばに、行為に人間は平等であるということを表しているのであった。
リンカーンに関する記述を読んでいて思い出したのですが、数年前たまたま私が住む地域に交換留学生でアメリカの女子高生が来たことがありまして、少しお話する機会がありました。
その時
「最も偉大な大統領は誰だと思う?」という質問に即座に「リンカーン」と答えたんですよ。
そのあと「ブッシュは?」ときいたところ、
外人がよくやる両掌を上に向けてあげるポーズをしながら「最悪!」と日本語で答えました。
「アメリカの女子高生って政治家に関してもしっかり意見をもっているんだ」と感心しました。
日本の女子高生に「最も偉大な総理大臣は?」とか「麻生太郎ってどうよ?」ときいたらどんな答えが返ってくるのでしょうかね。
高校生が政治家や政策についてしっかり意見が言えるようになると、この国も少し変わるのかもしれません。
色々好き放題書きましたが、
成功を目指す方、会社を経営する実業家から、大金持ちになったけど今後の人生の目標を失っているプチ不幸なお金持ちの方にまで、
人間の生き方の一つの至高のモデルを教えてくれる一冊
オススメです。
【関連書籍】
【管理人の独り言】
とりあえず今週末のセミナーに向けて、間に合わせでブロガー名刺をつくってみました。
しかしシンプルすぎて面白くない。
そこで
で見つけたミニクラフトパンチでちょっと遊び心を
ワタクシよく「犬っぽい」と言われるので・・・、ちょっと遊び過ぎ?
ちなみにこのパンチの絵柄名は “ラッキー”
名刺交換させていただいた方に“ラッキー”が訪れますように。