(↑書影がバックに溶け込んでしまった)
業務や組織の改善はスタートが重要だったのか。
そこに目を向け、いかに改善していくか。答えがここにある。
【目次】
第1部 うまくいかない改革
1.本質的な目的を追求しないと失敗してしまう!
2.昨日もそうしたから、今日もそうしようは正しい? 他
第2部 改革成功の4原則
1.うまくいかない改革を分析してみると
2.本来あるべき目的とは何かを追求すべき 他
第3部 改革成功の4原則
1.「目的・ねらい」を達成するための対策の検討
2.「目的・ねらい」を実現するための実行計画具体化 他
第4部 改革成功の4原則
1.コミットメントとは「これをやります」宣言
2.日本のコミットメントの実態は? 他
第5部 改革成功の4原則
1.対策実施の成功要因
2.対策徹底実施報告の例
第6部 価値目標思考の実践のために
1.価値目標思考を実践するための道具 丸い三角形を使う
2.丸い三角形の事例
【ポイント&レバレッジメモ】
★目標と目的の違い
一般的に、目標は目指す条件のことを言います。何をするかも目標ですし、納期についての目標は納期目標、品質に関する目標は品質目標、費用についての目標は費用目標です。これに対して、目的は実現しようとする成果、別の言い方では目指す成果を指します。目的にも目標があります。ゴール目標という言い方がそのことを表しています。
★改革実現のためのリーダーの心構え(抜粋)
①改革を実現するには、トップが前面に出て責任を持って行うと明言しなければならない。つまりは覚悟を示す必要がある
②トップが直接中堅クラスのリーダーを指導していく
★日本人特有の連続思考
◇「うまくいかない改革」の要因はすべて「あるべき目的が見失われている」ということ
◇日本人の思考方法の特徴は、その基本に連続思考があることだと思います。連続思考は、飛躍思考に対するものです。着実に、こうだからこうと筋道を追って考えていく思考法です。
◇連続(思考)社会では、今日は昨日の続きで、明日も今日の続きなので、新しいことはほとんど起きません。 → 目的が自明なので目的を意識しない社会。
◇「前例・みんな主義」・・・少し新しいことだとこれは何のためにするのだろうと考えるのではなく「前例はどうなっているか」とまず調べます。また、連続社会は、相互の関係を維持するムラ社会でもありますから常に仲間を意識します。何かをするときに「みんなはどうしているのだろう?」と周りを気にするのです。 → 仲間はずれになりたくない気持ちと、みんなと同じことをしていれば安心という意識が背景にある。
★価値目標という視点で考える
◇価値目標とは
1.何かをしようとするときの、好ましい状態を示す
2.好ましい状態だから関係者の動機付けになる
3.その世界、または案件の中で、個別の行動を方向付けする
4.人によって、組織によって好ましいと思う状態は異なるから一本化しないと力にならない
★適切な目標設定
第1ステップ 目的とねらいを分けて考える
第2ステップ ねらいを価値目標で決める
第3ステップ ねらいを具体化する
第4ステップ 目的を具体化する
★実行計画具体化
◇有効な対策を検討する方法は「目的・ねらい」を明確にすること
◇5W2Hで具体的な改革計画
①Why 目的・ねらい
②What 課題
③Where 対象範囲
④How 対策
⑤When 実現時期
⑥Who 実現体制
⑦How much 実現費用
★コミットメント
◇改革にとりかかる前に関係者に対して「これをやります」と宣言、つまり「コミットメント」する。
◇コミットメントの効果
①自分を追い込む ②他人を巻き込む ③ゴールを示す ⇒ 関係者全員が、その案件について強く意識し、改革が達成しやすくなる
◇改革の場合にコミットメントすべきこと
①改革の目標(目的とねらい)の明示 ②改革実現の道筋の提示 ⇒ 改革の実行
★対策実施の成功要因
◇改革成功の4原則
①自己責任で実施する
②チームで取り組む
③具体的な作業計画を作成する
④的確な進捗管理を行う
【感想など】
本来、本書は組織や業務の改善を任されたプロジェクトリーダーのために書かれた本ですが、のほほんと生きているワタクシにもいくつか気づきを与えてくれました。
その一番大きなものが
「目標」と「目的」の違いをはっきりすること。さらに「目的・ねらい」を明確にすること。
普段あまり意識せずに使っている単語、「目標」と「目的」。
ここをさらに細分化・明確化することが改善への最初のスタートだったんですね。
さらに「本質的な目的を追求する」ということ。
本書第1部はこれでもかといううぐらい具体的な改善失敗例が掲載されています。
ワタクシ的には正直ここが一番面白かったです。
ずーーと読んでいるとすごくネガティブになってしまうのですが、「あるある」とか「そうそうウチもおんなじ」なんて思わずつぶやいてしまって。
特にハッとさせられたのが最初に出てくるミズノの水着の例。
ミズノは「泳ぎやすさ」や「見栄え」といった選手の要望を完全に満たすことを「目的」としたため、「勝つ」という選手の「本質的な目的」を研究したレーザー・レーサーに負けてしまいます。
お客さまの望む「解決策」を鵜呑みにして、その実現を考えるのではなく、お客様の新の「目的・目標」を探求してその実現を考えなければならないのです。
選手の嫌がる要素(締め付けなど)を取り入れてでも真の「目的」を探究する。
この発想かなり難しいですよね。
でもこれをやっていかなければ生き残れないのでしょう。
で、どうしてこういった発想が難しいのかと関連して、気づきをいただいたのが
「日本人特有の連続思考」というもの。
ワタクシ基本的に単純な「農耕民族論」や「狩猟民族論」には懐疑的なんです。
なぜかというと、地球上に完全な狩猟民族ってほとんどいないから。
どんな民族・部族でも原始的な略奪農法ぐらいはやってますからね。
(完全な狩猟民族と言われたイヌイットでさえ、地球温暖化の影響でグリーンランドで羊を飼う牧畜をやっているというニュースにはびっくり。)
しかし著者の
連続思考の権化である稲作を中心とした農耕生活と、純粋培養された文化圏の二つのバックグラウンドが「目的」を考えない社会を生み出している
という考えはかなり納得。
だいたい皆が同じようなことを考え、逆にちょっと変わった発想をすると「出る杭は打たれる」社会では、なかなかビックリするようなアイデア、「飛躍思考」は出てこないでしょうね。
グローバル社会で戦っていくための日本人の根本的な問題はここなのかもしれません。
最後に、目的やねらい、問題点なの度の関係をわかりやすく「見えるか」するツールとして「丸い三角形」が紹介されています。
最近マインドマップがもてはやされていますが、こちらの「丸い三角形」はシンプルで使い勝手良さそうです。
興味のある方はご一読ください。
ゴマブックスの柳ヶ瀬 肇様から献本していただきました。
学びの機会を与えていただき感謝します。
【管理人の独り言】
本書P.119
「ゴーン社長が車はまけて売るものではない。当社の車の良さをアピールしなさい、といわれるのです」
ゴーン社長の発言に感心し、納得してその車を購入することに決めました。こうしてゴーン氏の改革の意識が隅々まで行きわたり、日産の値引きが常態化して安易になっていた営業慣行にもメスが入れられたのです。
と、日産の改革事例が紹介されていますが、末端は様子が違うようで。
昨年10月にそれまで乗っていたミニバンが白煙をあげてストップ。
それで車探しにあちこちのディーラーを回っていたのですが、日産さんは最初からどんどん値引き!
もうね、こちらが恐縮してしまうぐらい。
しかしワタクシも基本どSなもんで、車も気に入ったし「決めよっかな」と思ったときに、
「もう一声で、今日、はんこ押します」と言ってみました。
するとセールスさん「店長と相談してきます」といっていったん退席。
額に汗浮かべながら帰って来て、「10万引かせてもらいます。」
ワタクシここでさらに追い打ち。
有料引き取りだった廃車のミニバンを「下取りしてほしいなぁ」
もうすでに青ざめているセールスさん、また店長と相談してきたあと
「5万で引き取らせていただきます。」
契約成立!
もう、日産大好きです。