おはようございます、一龍(@ichiryuu)です。
今日は吉田照幸氏の『折れる力 流されたほうがうまくいく』をご紹介したいと思います。
著者は「サラリーマンNEO」「あまちゃん」「となりのシムラ」「疾風ロンド」など、次々とヒット作を生み出すNHKのディレクター。
最初、その敏腕ディレクターの著者が書いたのが「折れる力」だったことがすごく意外に感じました。
しかし、読み進めていくと必ず納得できるスゴイ効用が「折れる力」にはあったのでした。
今回のエントリーではその「折れる力」の一端をご紹介します。
折れる力のポイント
★折れることで、本来の自分の持つ「未知の能力」に出会える
現状に何か不満や満たされない思いがあって、「自分を変えたい」と願っている人は多いのではないでしょうか。とはいえ、「自分を変えたい」といっても、何をどうすればいいやら・・・そんなふうに迷っている方がいたとしたら。
まずは「折れる」ことをはじめてみませんか?
僕は、自身の体験を通して「折れる」ことは、「自分を変える」ためのはじめの一歩だと感じています。
★困ったら「ま、いっか」
皆さんの仕事の上でも、不測の事態で、綿密に立てた計画がうまく進まないと、焦ることもあるのではないでしょうか?でも、僕は無理だと思ったら、そこは追いません。すぐ別のことを試します。「なぜできないんだ?」「どうにかならないのか」などとスタッフを責めたり、どうしようもないこと云々言ったりしてもしかたないので、そうしたことは一切口にしません。後ろ向きで非建設的なことでごねるよりは、「ま、いっか」といったん計画を折って、頭をさっと切り替え、別の方法を模索したほうがよいと思っていますから。
★「ま、いっか」と言えば、アイディアに幅が出てくる
「ま、いっか」というのは、理想を求める人にとっては「あきらめ」というふうにとられるかもしれません。
でも、これは、「あ、こういう方向あるか」とか、「あ、ここはこんな感じかもなー」みたいな、ある程度、決断や価値に対して幅を持たせているということなんです。ある一点を目指して、それでなければダメということではなく、このぐらいの範囲に収まればいい、という幅があれば、あらゆる局面で、さまざまな人のアイデアや意見を受け入れられます。すると、作品にも幅が出てきます。だから「ま、いっか」です。
★断られたら、自分を「折ってしまう」
(企画を断られた場合)こういう場でどうしても慌ててしまうという方は、自分を一度折ってしまったほうが、冷静になれるかもしれません。どうでもいいから、まずは相手の話を聞いてみようと。実は、相手は大抵真意を言っていないものです。「やりたくない」と言っていても、引っかかっているのは、その企画の内容ではなくて「場所」が嫌なのかもしれないし、「急に断られたけど何があったんだろう」という場合は、この企画自体ではなく、別の何かが気になっているのかもしれない。でも丁寧に相手の言うことを聞けば、相手の言葉の中にそのヒントがあるわけです。「自分が何を言おう」という気持ちから、「相手の言葉を確かめてみよう」という気持ちに変わると、大抵質問が浮かんできます。「どういうところが難しいですか?」「どういうところが気になりますか?」と。そうやって繰り返していくと、相手も考えが整理できますし、こちらも話を聞きながら次に進むための可能性の糸口が見えてきます。たとえ、それでやっぱり断られても、「今度は、その意見に合わせて企画を持ってきます」と言えば、相手にとっては、「自分の意見に対応してくれる人」という印象が生まれて、信頼関係ができやすくなります。そうしたら、次は引き受けてくれるかもしれない。不思議と自分が「折れた」ほうが相手は信頼してくれるわけです。「折れる」ことは、相手のことを認めていますよ、というこれ以上ないサインになります。人間、自分が認めてくれる人に悪い気はしないもの。決して戦ってはダメです。戦って勝っても得られるものは何もありません。「折れる」力は信頼関係を生むのです。
★「理想」は追わない、「正解」は求めない
僕について言えば、目的を持っても理想は持たないです。理想は自分の頭の中にあるものです。でも、プロセスのなかで必ず変容していきます。それなのに当初の理想を持ったままでいると、常にそこと比較してしまうので、結局その「理想」からは出られなくなってしまいます。実際にはもっと面白いものが出てきているかもしれないのに、もったいないことだと思います。さらにその「理想」を実現したところで、他人の「理想」とは違う可能性もあるから、頑張ってそれをなしとげたところで、他人はまったくそう見ていない可能性もある(モテるかも、と考えて筋肉を鍛え、完璧な体にしたところで、「気持ち悪〜い」って言われて終わるケースありますよね)。だから、基本的には「目的」に向かって「目の前」のことだけしか考えません。正しい道は結果ではなく過程にあるのだと思います。
「個性がない」と言われるのは、正解だけを求めているからだと思います。だから何かを発見するために、僕は折れながら、また曲がり角にも折れていきながら、自分の「理想」や「目的」を越えていこうとしているのだと思います。
感想
エントリー冒頭部分で書いたように、本書の著者である吉田照幸さんはNHKにおいて数多くのヒット番組に携わってこられた方。
テレビをほとんど見ない僕でも聞いたことのある番組タイトルがずらりと並ぶわけですから著者がいかにスゴイ方かがわかります。
「あまちゃん」にいたっては、社会現象と言ってもいいほどの人気でしたものね。
そういった敏腕ディレクターのイメージというと、妥協を許さず、自分の思い描く作品に近づけるために自分の意見をゴリゴリと押し通す精神的にマッチョなリーダーを僕は勝手に想像していました。
ところが実際には「折れる力」を駆使するというではありませんか。
しかも著者が「折れる力」を発揮するのは仕事の場面だけではありません。
例えば本書の巻頭には
「折れる」対象として、僕の体験を交えながら、次の3つをあげました。・環境・・・会社組織の制約、想定外のトラブル、問題・他人・・・仕事やプライベートの人間関係・自分・キャリア・・・経験、プライド、自我、承認欲求、短所
この姿勢って本当に衝撃で、なぜなら、尖ったものを作り出す人って、スティーブ・ジョブズのような妥協のなさ、こだわりの強さを持った人だっと思っていたからです。
そして同時に、いろいろな人の意見を取れ入れると、できた製品は結局陳腐化するものとも思ってもいました。
ところが著者は、
他人の意見を取り入れれば入れるほど、「個性がある」と言われる
また、
「自分以外の全員が言った意見は、迷わず採用」
「迷ったら聞く」
で、本書を読んでいて正直軽く戸惑いを覚えたものですが、でも読み進めていくと著者の言わんとするところが納得できるようになるんですよね。
一番共感したのは、主義主張を押し通して、戦って勝っても得るものはないという著者の考え方でした。
これは本当に僕も経験上そう思います。
自分の主義主張を押し通すということをやっちゃうと、だれも巻き込めなくなるんですよ。
で、結局仕事の効率もクオリティも落ちてしまう。
で、ひらめいたのが、つまり「折れる力」とは、「巻き込み力」ではないかと。
多くのスタッフを巻き込めれば、当然より良いアイデアが出る可能性を高まります。
それを見極める目は必要ですが、いいものができる確率が上がるわけです。
本書でも書かれていますが、自分の理想が一番とは限らないのです。
もしかすると「折れる力」は、あなたを飛躍的にジャンプアップさせるメソッドなのかもしれません。
もしあなたが、職場でどうもうまくいかないなぁと感じているなら、オススメ。
本書はSBクリエイティブ様からご恵贈いただきました。
ありがとうございました。
目次
はじめに
第1章 「折れる力」がすべてを救う
第2章 「環境」に折れると、おもしろいアイデアが出てくる
第3章 「他人」に折れると、仕事で認められる
第4章 吉田流 折れて人間関係をうまくいかせる方法
第5章 「経済・自分」に折れる
第6章 やっぱり折れてはいけないこと
おわりに
関連書籍
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