本を耳で読む Amazon Audible 30日間無料体験キャンペーン実施中

インターネットマスターの座を巡る新たな戦いのゴング【紹介】ルーク・ハーディング(著)『スノーデンファイル』日経BP社

IMG_5764

おはようございます、一龍です。

今日は昨年「まるで映画のようだ」と世界を驚かせると同時に、「やっぱりそうだったのか」とも感じさせたであろうエドワード・スノーデンの一連の事件に関するノンフィクション本をご紹介。

事件の真相を知ることができるのはもちろんですが、読めばこの事件が新しい秩序構築の始まりであることがわかると思います。

はじめに

本書はエドワード・スノーデンの一連の暴露事件を、彼を一貫してサポートしてきた英国紙『ガーデアン』との関わりを含めて、ガーデアン特派員のルーク・ハーディング氏が書いたノンフィクション本です。

IMG_5902

事件のあらましは、CIA(中央情報局)とNSA(国家安全保障局)の局員であるスノーデンが、NSAと協力関係にあるGCHQ(英政府通信本部)とによる個人情報および各国要人や大使館からの情報収集について暴露したというものです。

もう少し詳しく知りたい方はこちらのWikipediaのページをどうぞ。

さて、この事件は今後の世界のあり方に対して、おおくの示唆を含んでいると感じました。
私が感じたことをポイントとしてピックアップしつつ感想などを書いてみたいと思います。

ポイント&感想

★プライバシーは存在するのか?

「発言や行動のすべて、会って話をする人すべて、そして愛情や友情の表現の全てが記録される世界になど住みたくありません」

と、スノーデンはこの暴露事件の動機の一端を語っています。

それには私も同意します。

けれど、本書を読むと、そもそもプライバシーなどというものが存在しているのか?あるいは存在しているとしてもそれを守ることは不可能ではないのかという疑問がわいてきます。

特に情報通信に関しては、昔の手紙の検閲というような手間隙のかかる時代ならいざ知らず、ほとんどの情報通信が電子データでやりとりされる今日、情報通信の監視はテクノロジーの進化とともにますます容易になっていきます。

Gメールに表記される広告をみても、それが実感できるでしょう。

本書でも語られていますが、iPhoneの登場は情報収集をますます容易にしました。

私たちには今後、テクノロジーが進化すればするほど、プライバシーと引き換えに便利さを手に入れる生活をしていくのだと覚悟しなければならないことをまずこの本から知るべきでしょう。

★アメリカはけっして個人主義の国ではない

まあ、そうはいってもやはりプライバシーは守られることにこしたことはない、というのは当たり前です。

私もそうあってほしいと願っています。

しかし、この感情は万国共通ではないようです。

特に、当のアメリカ国民の反応には日本人は注意すべきでしょう。

スノーデン自身は国家よりも個人が尊重されるべきだという純粋な正義感から行動したようですが、多くのアメリカ人が彼と同じ考えではないのです。

アメリカ人は個人主義のイメージかあり、実際そうなのですがそれはあくまで平時の話。

とくに国家の安全が脅かされるような有事の際には一瞬で全体主義に変貌する、というのが国柄です。

この傾向は9.11以後のものではなく、建国以来ずっとそうです。

おそらくスノーデンの勇気ある行動は賞賛する人もいるでしょうが、多くの人が「でも国家の安全のためなら仕方がない」と納得してしまうでしょう。

一時的なスキャンダルで終わっしてまうのではないでしょうか(政府はそうはいかないでしょうが)。

そんな価値観の国に自浄作用を求めても無駄でしょう。
アメリカは絶対に情報収集をやめることはありません。

★国による温度差

本書で面白いと感じたのは監視されていた側の国の反応のでした。
それぞれ温度差がかなりあります。
そこに国民性をみてとれます。

例えばNATO加盟国でもフランスは鷹揚というかあきらめというか、とにかく反応が薄い。
「かってにやってろ、俺たちには関係ねえよ」って感じでしょうか。

しかし、ドイツは強い反発を示しています。
同盟国であるのに監視されていたわけですから、「冗談じゃねえ!」というのがまともな反応でしょう。

口では「あなたのこと信じているよ」と言っている彼女が、だまって彼氏の携帯をチェックしていたようなものですから。

では同じく同盟国でありながら監視されていた日本はというと・・・

全然反応がない。
おそらく銀座の高級寿司店でもこの話題は出なかったでしょう。

お人好しというか、危機感が欠如しているというか。

★新しい秩序の構築

しかし、スノーデン・ファイルが登場したことで情報通信分野であらたな秩序構築の動きが出てきていることも確かです。

例えば南米ブラジル。
米英だけがインターネットの情報を牛耳る現状を変えていこうと声をあげました。

意外なところからの反応だなと感じますが、ともかくスノーデンの行動が次のステップにつながったということです。

「情報を制する者が世界を制する」。

あらたな「インターネットのマスター」の座を巡って、良くも悪くも今後果てのない国家間の争いが続いてつくのだと思います。

スノーデンの事件はその戦いの始まりを告げるゴングだったのかもしれません。

本書は日経BP社、東城様から献本していただきました。
ありがとうございました。

目次

推薦のことば
序文
プロローグ  ランデブー
第1章 The True HOOHA
第2章 市民的不服従
第3章 情報提供者
第4章 パズル・パレス
第5章 男との対面
第6章 スクープ!
第7章 世界一のお尋ね者
第8章 際限なき情報収集
第9章 もう楽しんだだろう
第10章 邪悪たるべからず
第11章 脱出
第12章 デア・シットストーム!
第13章 「押し入れ」からの報道
第14章 おかど違いのバッシング
エピローグ  故国を追われて

関連書籍

1 COMMENT

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA