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平藤 喜久子(著)『いきもので読む、日本の神話』東洋館出版社【本の紹介】いきものの視点から伝わってくる古代日本の自然の豊かさ

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おはようございます!

今日は日本の神話にまつわる本をご紹介。

平藤 喜久子(著)『いきもので読む、日本の神話』東洋館出版社

この本、古事記や日本書紀など古代日本の神話や記録に登場する動物にスポット当てた本なのです。

まずは少しだけ読書メモをシェア!

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平藤 喜久子(著)『いきもので読む、日本の神話』:読書メモ

★亀 神は亀に乗ってやってくる

 ホオリの子を妊娠し、産む時期が近づいてきたトヨタマビメは、地上へ戻っていた夫の元で出産をすべく、海の中からやってきます。その時トヨタマビメが乗ってきたのが大きな亀でした。トヨタマビメは海辺で無事に出産をしますが、その時「ワニ」の姿になっているところ夫に見られたために、子どもを置いて海へと帰っていってしまいます。そしてトヨタマビメを送ってきた亀が、霊石亀石(宮崎県日南市鵜戸神宮)となったと伝えられるようになりました。水陸両棲の亀は、神様の乗り物のイメージを持たれていたのかもしれません。

ちょうど背中が人が乗るのに良い形状だし、ゆっくりと進むスピードも良かったんじゃないでしょうか。
マグロだと人が乗れるぐらいの大きさはあっても、160kmで海の中を泳がれたらたまりませんもんね。

★馬 こじれた神たちの犠牲に

 ある時アマテラスが機織女たちに機織をさせていると、スサノオは、その建物の天井に穴を開け、尻の方から皮を剥ぐという逆はぎにした斑のある馬を落としました。天井からそんな馬が落ちてきたのですから、現場はパニックです。機織女の1人が、機織に使う道具で陰部を打ってしまい、亡くなりました。
 皮を剥いだ馬、そしてそれによって引き起こされた機織女の死。アマテラスはあまりの出来事に、恐れをなし、天の石屋に閉じこもってしまうことになります。そして世界は暗闇に包まれて、大混乱がもたらされることになるのです。

本書でも書かれているように、馬は権力の象徴。
戦時には重要な”兵器”にもなる馬は、おそらく権力者の館に大切に飼われていたことでしょう。

それにしても、馬を天井に持ち上げるなんて、スサノオの怪力ぶりは凄まじいですね。

★イルカ イルカはごちそう

 のちに応神天皇となる皇子のホムダワケが、越前を訪れたときのことです。夢にイザサワケという神が現れ、「わたしの名をあなたと取り替えよう」と言います。ホムダワケが神の言う通りに名を替えることを承諾すると、神は「明日の朝、浜に来てみなさい。名を替えた記念の贈り物を差し上げましょう」といいます。皇子が浜に出かけてみると、そこには一面に鼻の傷ついたイルカが。イザサワケの神が食料としてくださったのだと思い、その神に感謝を込めて、食事を司る神という意味で「御食津大神みけつおおかみ」と呼ぶことにしました。しかし、イルカの血のにおいが臭かったので、その土地は「血浦」と名付けられました。それがのににツヌガそして現在の敦賀になったといいます。

今でも五島列島などではイルカ漁が残っていますね。
僕は食べたことがないですが、古代においては貴重なタンパク源だったのでしょう。
イルカを食べる文化が古代からあったことがこの逸話からわかります。

★なまこ 神をも恐れぬ得体のしれなさ

 アメノウズメは、海に住む大小さまざまな魚たちに、「お前たちは天の神の御子に仕えるか」と問います。魚たちはみな「お仕えしましょう」と答えますが、ただなまこだけが何も返事をしませんでした。そこでアメノウズメは、「この口は返事をしない口だ!」と言って、小刀でもってその口を裂いてしまいました。そのため、今でもなまこの口は裂けているといいます。

ちょっとアメノウズメはひどいですね。
なまこなんて喋らないでしょう(笑)。
神様は大人げないなぁ。

★セキレイ 神カップルに小づくり指南

 イザナキとイザナミが、お互いに「なんて素敵な男性なんでしょう」、「なんて素敵な女性なんだろう」と声を掛け合いながらも、どうしたらいいかわからずにいると、そのセキレイが飛んできて、首と尾を揺り動かしました。その様子を見たイザナギとイザナミは、まねをし、性交の術を知ることになりました。

この逸話が日本の神様の特質をすごく物語っていると思います。
日本の神様は他の一神教の宗派の神のように、全知全能ではないのです。
イザナキとイザナミは性交の術を知らなかったんですね。
神様も知らないことがある。

だから、神様は事あるごとに集まって相談したり議論する。
これこそ、和の精神の起源ですよ。

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平藤 喜久子(著)『いきもので読む、日本の神話』:感想

◆古代の自然の豊かさ、人間との密接な関係

本書では、古事記、日本書紀、風土記といった古代の史料に登場する動物とそのエピソードにスポットを当てた本です。
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ひとつひとつのエピソードがコンパクトに纏められていて、イラストと出典も明記されています。

 

僕は古事記が好きで何度も読んでいますが、この動物を切り口にする視点は初めて。

確かに古事記には多くの動物が登場します。
神の使いであったり、何かの予兆であったり、様々なパターンがありますが、そこから伝わってくるのは、古代の日本の自然の豊かさ。
(イメージとしては伊勢神宮の境内のような原始の森)

そして、自然と密接に結びついて生きていたということ。

古事記や日本書紀がどこまで実際のエピソードを含んでいるのかはわかりませんが、そのバックボーンには1万年近い縄文時代の文化的積み上げもあったでしょうし、その後に渡ってくる弥生人も自分たちの文化を背負っていたでしょう。

古代エジプト文明のような巨石建造物はないですが、森林と穏やかな気候で培われた文化は自然との共存の文化でもありました。

他国の神話よりも質量ともに高い我が国の神話の深みはそういったバックボーンがあればこそだと思います。

◆あの動物がいない!?

さて、数々の動物が登場する古事記や日本書紀ですが、人間に近い動物として代表的なあの動物が登場しません。

猫です。

僕も本書で初めて知ったのですが、猫は平安時代にネズミ対策で連れてこられたんですね。
そうか、紙の文化とともに猫は重宝されたわけだ。

それにしても、犬は縄文時代から人ともに生活しているのに、猫がいなかっただなんて。

これはかなり驚きでした。

こういった雑学が得られるのも本書の魅力かと。

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本書は室田 弘 様からご恵贈いただきました。
ありがとうございました。

目次

はじめに
第1章 陸のいきもの
第2章 水のいきもの
第3章 空のいきもの

関連書籍

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2 COMMENTS

管理人

室田様。
こちらこそありがとうございました。
古事記はもともと好きですが、こういった切り口の本は初めてで楽しませていただきました。

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