映画から歴史的教養や雑学を学ぶ教養的映画鑑賞、20回目の今日は『大統領の執事の涙』です。
この映画、公民権運動の流れを知るのにとてもいい映画でした。
タップできる目次
はじめに:『大統領の執事の涙』公民権運動の歴史をざっくり知るならこれ!
ストーリー(Amazonより)
綿花畑の奴隷として生まれたセシル・ゲインズは、見習いからホテルのボーイとなり、遂には、ホワイトハウスの執事にスカウトされる。
キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争・・・
アメリカが大きく揺れ動いていた時代。セシルは、歴史が動く瞬間を、最前で見続けながら、忠実に働き続ける。
黒人として、そして、身につけた執事としての誇りを胸に。
そのことに理解を示す妻とは別に、父の仕事を恥じ、国と戦うため、反政府運動に身を投じる長男。
兄とは逆に、国のために戦う事を選び、ベトナムへ志願する次男。
世界の中枢にいながらも、夫であり父であったセシルは、家族と共に、その世界に翻弄されていく。
彼が世界の中心で見たものとは?
そして人生の最後に流した、涙の理由とは―
歴史教養的見どころ
◆実話に基づいた大統領執事の物語
本作品の主人公はフォレスト・ウィテカー演じるセシル・ゲインズという黒人でホワイトハウスに務める大統領執事です。
このセシルには実在のモデルがいるそうです。
その人はユージン・アレン。
1950年代から1980年代にかけて約30年、8人の大統領の執事を務めています。
もうこれだけで「教養的映画鑑賞」の視点から見る価値ありです。
それなのに、ホワイトハウスを舞台にした実話に基づいた話をベースに、複数のテーマが非常にうまく絡んで進行していく所が見事!
その「ホワイトハウスの裏舞台」意外の大きなテーマが公民権運動の流れです。
◆世界の中枢ホワイトハウスの裏舞台、各大統領の個性が面白い
ホワイトハウスといえば好むと好まざるとにかかわらず、世界の中枢であることに異議はないでしょう。
本作では、アイゼンハワー → ケネディ → ジョンソン → ニクソン → レーガン と、5人の大統領がスクリーンに登場します。
この歴代大統領の個性を非常にうまく表現されていている。
特に面白かったのがウォーターゲート事件で騒がれて、酒浸りになって悩んでいるニクソン大統領。
さもありなんって感じです。
そして、映画「レオン」でジャン・レノがものまねした歩き方そのままで登場してくるレーガン大統領。
ちょっとやり過ぎでは?とも感じますが(笑)。
また、ホワイトハウスは大統領の家族も住んでいるわけで、大統領家族の描写も興味深い。
例えばケネディ大統領のジャクリーン夫人の買い物好き、レーガン大統領のナンシー夫人の気さくな人柄など、ファーストレディーの描写も注目したいところです。
こういったシーンは現実には絶対テレビなどで流れないところ。
世界最高の権力者であるアメリカ大統領の人間臭い姿が見れるのはこの映画の魅力の一つでしょう。
◆公民権運動の流れがわかる
さて、なんといっても本映画の一番の見所は公民権運動に関するシーン。
はっきり言ってこの一本で公民権運動の流れがざっくりわかります。
そもそもの映画のスタートが衝撃的。
1926年のジョージア州の綿花農場で黒人奴隷のことして成長したセシルが、雇い主に母を慰み者にされ、目の前で父を殺されるシーンから始まります。
それ自体衝撃的ですが、もっとショックだったのが、当時のジョージア州では白人が黒人を殺しても罪に問われないということ。
リンカーンが奴隷解放宣言をしてから半世紀以上経っているのに、黒人を取り巻く現状は実質何も変わっていないのです。
そしてその後セシルは成長してホワイトハウスで働くようになるのですが、そこからは長男ルイスの社会活動を通して公民権運動が語られていきます。
フリーダムライド運動、血の日曜日事件、ブラックパンサー党などなど。
また、当然ながらキング牧師やマルコムXも登場します。
これらの活動や指導者のカラーも日本人には馴染みが薄いものですが、本映画を見ると雰囲気が伝わってきます。
中でもキング牧師はやはり「人物」だなと思わされました。
それは白人に仕える父に反発するルイスに、執事として仕え黒人の能力を証明していることも立派な活動だと諭すシーン。
ややもすると過激な活動に走りがちな若者たちを見事に指導しいるところが伺えます。
アメリカの黒人差別の根深さと、差別に対する活動の歴史をぜひ本作品で知ってほしいと思います。
最後に個人的な感想を
後から知ったのですが、本作品にはビッグなスターが登場しています。
例えば
セシルの母親役にマライア・キャリー、アイゼンハワー役にロビン・ウィリアムズなど。
言われなければ全然わからない!
すごいなぁ、特殊メイク。
基本データ
監督: リー・ダニエルズ
主演:フォレスト・ウィテカー
公開:2013年
132分
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