
映画から歴史的教養や雑学を学ぶ教養的映画鑑賞、21回目の今日は『天地創造』です。
この映画、古い映画ですが古さを感じさせない映像が見事です。
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はじめに:『天地創造』、これは旧約聖書の入門教材だ!
ストーリー(Amazonより)
ジョン・ヒューストン監督が旧約聖書のエピソードから天地創造に始まり、ノアの方舟に至る物語を描いたスペクタクル巨編。禁断の木の実を口にしたアダムとイブは、知恵を得た代わりに楽園を追放される。
という非常に大雑把なAmazonの説明ですが、どんなところが見どころなのか、早速おすすめポイントを紹介しましょう。
『天地創造』歴史教養的見どころ
◆旧約聖書の入門テキストとして
この映画は旧約聖書のうち、「創世記」の第22章までをできるだけ聖書に忠実に映画化した作品です。
日本人にも馴染みのある天地創造、カインとアベル、バベルの塔、ノアの大洪水、といったエピソードはまもろん、ソドムとゴモラ、アブラハムとの契約などの、のちのイスラエルにつながるエピソードも映像化されています。
旧約聖書を映像化するわけですから悪く言うと、淡々と物語が進んでいき、映画的な演出というかクライマックスでの盛り上がりといったものはなく、興味が無い人には退屈な映画かもしれません。
しかし映画から教養を得ようという当ブログのコンテンツ的にはこれほどジャストミートな映画はありません。
3時間ほどの長い映画ですが、とにかく旧約聖書の入門教材として一度は見ることをお薦めします。
旧約聖書を読むことを思えば、映画を見るほうがよほど楽しいでしょう。
◆まずは天地創造、バベルの塔、そしてノアの方舟か
さて、3時間という長い本作品ですが、やっぱり見どころは天地創造、バベルの塔、そしてノアの方舟かと思います。
天地創造の6日目に
「我々に似せて同じ形に人を作ろう」
と、土のチリで人を作るシーン。
神に近づこうするバベルの塔のシーン。
そして、ノアの方舟と洪水のシーン。

方舟に載せる動物たちの中にカンガルーがいて、「あれ、オーストラリアと陸続きじゃないのにどうやってきたんだろう」という思いが一瞬浮かびましたが、神の御業ですからそこはまぁいいでしょう。
ともかく、日本人でも聞いたことのある神話がどんどん登場してきますが、意外と細部を知らないこともあるのでじっくりと見て知識の確認と行きましょう。
◆セム的一神教の本質を知る

各エピソードは映像で楽しむといいと思います。
が、一つ理解して欲しいのがセム的一神教の本質です。
これは「十戒」や「エクソダス」でも同じですが、セム的一神教というのはとにかく厳しく、神の意志は絶対なのです。
そして神の意志に反するものは必ず罰せられます。
ノアの方舟の洪水伝説で殺されてしまった人たちしかり、ソドムとゴモラのエピソードしかりです。
そしてその極めつけがアブラハムが一人息子のイサクを生贄に差し出すシーン。
神はアブラハムの信仰心を試すのです。
こういった神のあり方は、和をもって尊しとなす多神教の我々日本人にはなかなか理解できないものです。
しかし、この価値観を理解することは欧米諸国の精神的根底を知ることにもなるとともいます。
かなり恐ろしい神様ですが、そういった意味でも本映画を見る価値はあると思います。
『天地創造』最後に個人的な感想を
古い映画で、CGのなかった時代にもかかわらず、それほど古さを感じさせない映像美が見事です。
天地創造の幻想的なシーン、ソドムとゴモラの街が破壊されるシーンなどCGの映像に慣れてしまった私たちの世代が見ても違和感なく見ることができるのは流石です。
そんな映像表現のレベルの高い映画なのですが、個人的にはやっぱり話の内容に違和感が。
これを言ってしまうと身も蓋もないのですが、神様ツッコミどころ満載じゃないかと。
全知全能の神なのに、結局失敗してノア一家以外をすべて殺してしまう。
アダムとイブみたいに1日で人間を作れるのだから、全部最初からやり直せばいいのになんて思ってしまうのは私だけでしょうか?
まぁ、信心深く正直者のノア一家が救われることで信仰心を持たせることにつながるわけですが・・・。
なんか釈然としないなぁ。
『天地創造』基本データ
監督: ジョン・ヒューストン
主演:マイケル・バークス他
公開:1966年
175分
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