讃岐うどん日記、第3回目である。
3回目ともなれば、そろそろ讃岐うどんの老舗であり、庶民派の有名店であり、そして麺のキャラの立ったお店を紹介せなばなるまい。
ということで、今回は豪麺で有名な山下うどんの紹介である。
しなやかな豪麺【讃岐うどん日記】山下うどん
山下うどんに初めて来たのは、もう20年近く前のこと。
「うまいうどん食わせてやるわ」という職場の先輩につれられてきたのであるが、今思えば職場の先輩にあちこちの名店に連れて行かれたのが、ワタクシのうどん巡りの起源である。
しかしこれはうどん県民にとってはあたりまえのこと。
よく、”飲みにケーション”という言葉を聞く(あっ、最近は少なくなっているようだが)けれども、お昼にうどんをすすりながら、よく仕事や家庭の相談をしたものである。
ちなみに、大きな声では言えないが、昼にうどん屋でビールを「プハー」というのも昔はよく見る光景であった。
山下うどんに最初に来たのも、そんな古き良き時代のことである。
当時は、現在の店舗(平成10年4月に移転)とは違い、もう少し北に位置していて、ワタクシの記憶では看板に大きく
「本手打ち 釜あげうどん」
と書いていたと思う。
文字通り、看板メニューは釜あげだったのである。
さて、前回ちらっと書いたが、ここで釜あげのおさらい。
うどん生地は切って、釜で茹でる。
茹で上ったものが釜あげである。
しかしこの状態ではまだ未完成。
麺を水で洗い締めてはじめてうどん玉の完成なのである。
なぜなら、水で締めないとコシがでないのである。
だから、硬い男麺が好きなワタクシは、この店の麺を経験するまで「釜あげはモチモチふにゃふにゃで食感が嫌い」だったのである。
それで、初めて山下うどんに連れてこられて看板を見て、「うわ、釜揚の店か・・・」と落胆したのを覚えている。
しかしそれは杞憂に過ぎなかった。
おばちゃんが「はいお待ちどうさん」と持ってきてくれた釜あげを(当時は一般店だった)、一口食べた瞬間、「か、噛み切れん・・・」。
釜あげでこの豪麺!
松田優作ばりに「なんじゃこりゃ!」となったのである。
ということで、今回も前振りが長かったが、現在の山下うどんについて。
まず、移転して変化したことが二つ。
一つはセルフ形式になった。
そしてもう一つが、麺が少し柔らかくなったということである。
しかしこれは味が落ちたということではない。
むしろ、美味くなったといっていい。
なんと表現したらいいのだろう。
剛を極めた結果到達する柔と言おうか、ただ硬いだけでなくしなやかさを持った豪麺なのである。
で、最近この店で必ず注文するのが”ぶっかけうどん”。
なぜならその”しなやかな豪麺”を一番ストレートに感じられるからである。
シンプルで美しい。
まだ寒いので「ぶっかけ熱いの」を注文したが、真の豪麺を経験したい強者には、夏に「冷たいの」を注文されることをおすすめする。
ちなみに、注文する時に最近は「冷や熱」とか「熱熱」とか「冷や冷や」というふうに讃岐では注文するものだと思っている県外の人が多いが、それは某宮武系のうどん屋さん他、一部の店の話である。
もちろん、他の店でもこの注文方法に応じてくれると思うが、ワタクシはこの注文方法をする地元民を見たことがない。
「熱いの」「冷たいの」で十分である。
そして、ぶっかけうどんの定義は、いずれ論じたいと思う。
話を戻そう。
この店には嬉しいものがある。
実は、ネギと天かすが自分で自由に入れることができないという、ワタクシ的に非常に大きなマイナス点があるのだが、それをカバーしているのがテーブルに置いてくれているこれ↓
自分で好きなだけ摺り下ろすのだ。
うどん県では客にネギを切らせるとか、ショウガや大根を摺り下ろさせるとかといった一種の”作業”を強いる店があるが、うまいうどんを食べるための”儀式”と思って魂を込めて摺り下ろしていただきたい。
で、肝心の麺である。
角のシャキッとした麺が、箸に連れて行かれまいと抵抗しているのがお分かりだろうか?
「私はあなたの言いなりです、どこへでも連れて行ってください」という軟体女麺とは全くちがうこの存在感。
ぜひあなたもこの麺を味わい、「なんじゃこりゃ!」と叫んでいただきたい。
山下うどん お店情報
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