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株式公開の鐘をならすのはあなた【書評】藤野 英人(著)『「起業」の歩き方』 実務教育出版

おはようございます、大会社の社長より気ままにフリーランス生活の方が向いている一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、起業を考えている人にぴったりな1冊をご紹介。

著者の藤野英人さんが創業に関わった3社を例に、スタートアップアから上場までの裏側を生々しく解説する本書。
経験者ならではのアドバイスがぎっしり詰まった本書は、きっと起業家にとって本当に知りたい情報を伝えてくれること間違いなしです。

 

【目次】
はじめに
第1章 スタートアップ 信頼できる仲間とともに起業のタネを蒔く
第2章 アーリーステージ 会社の方向性を定めビジネスを拡大させる
第3章 ミドルステージ 起業としての形を整え、ピンチを乗り切る
第4章 レイトステージ 出口戦略を固め、新たな「入口」へ突き進む
起業する前に読んでおきたい本
おわりに

【ポイント&レバレッジメモ】

★起業パートナーを選ぶ基準

 私か自分自身の経験や周囲の話を聞いて得た結論は、結局のところ起業のパートナーは”いい人”がどうかが大事であるということです。いい人とは、「起業家自身の人生や仕事に対する価値観と近い人物である」ことと、「人格的に信頼できる人物である」ことの2つを意味します。

★備品はできるだけ買わない

備品をダダでもらうことの3つのメリット
 備品をダダでもらうメリットは、何と言ってもコストがかからないことです。例えボールペン1本でも、チリも積もれば結構な出費になり、スタートアップ期の財務を圧迫しかねません。無料でまかなえる物はどんどん活用すべきです。
 将来に渡って、社員のコスト意識を高める効果もあります。創業当初にたくさん買い物をした企業は、その後もずっと「気軽にお買い物してもいい文化」が生まれてしまいます。特に大企業出身者は、コスト意識が低い傾向があるので要注意です。<中略>
 2つ目のメリットは、社員がサポーターの存在を認識するきっかけを作れること。ほしい備品リストを手にあちこちから備品を集めると、色やデザインがバラバラで統一感のないオフィスになるかもしれません。しかし、不統一な備品たちは、それだけ多くの方々が応援の気持ちを少しずつ分けてくださったという勲章です。<中略>
 これに関連して、3つ目のメリットは応援者を増やすことです。あなたが起業すると聞いて「応援してあげたい」と思った人が複数いたとしても、お金を出資するほどの行動に出られる人はなかなか現われないものです。ですが、不用品がほしいというリクエストに対しては、気軽に応えたくなるのではないでしょうか。

★起業に向いている性格とは

「起業家に向く性格とは?」と問われてまず浮かぶのは、「変化に強いこと」です。信頼も実績もお金もないベンチャー企業は、周囲の評価によって環境が激変することが日常であり、常に変化の大波小波にさらされています。そういった変化に対してあまり抵抗なく耐えられるタイプの方が、起業に向いていると言えるでしょう。もっと言えば、変化を楽しむくらいの度量があるとベターです。<中略>
 もう1つ、起業して成功するために不可欠な資質があります。それは、「甘え上手」という資質です。知りたい情報がある時に、臆せず「教えてください」と周囲を頼れる力。困った時に正直に状況を説明し、「助けてください」と請える力。<中略>
 頭を下げるのはダダで税金もかかりません。会社のためであればいつでも頭を下げられる。ここぞという時に、弱音を吐いて応援してくれそうな人をつかまえられる。そんな根性のある人が起業には向いています。

★足りない資金の工面法

 幾ばくかの貯金があったとして、それでも目標の金額に届かない場合はどうしたらいいか。方法は1つ、かき集めます。つまり、出資のお願いをするのです。
 では、誰から調達するかという問題ですが、これは”訴えられにくい順”で考えるとわかりやすいでしょう。万が一、調達したお金を返せない事態(言いにくいですが、会社か破綻した時ですね)になっても訴えられるリスクが低い、刺されるリスクか低い関係性の相手に相談しましょう。人生において人間関係のトラブルをいかに少なくするかは重要ですから、よく考えて相手を選びましょう。具体的には、次のような人たちになるでしょう。
〈出資をお願ししたし相手候補~訴えられにくい順~〉
1.起業メンバー(特に自分)
2.親
3.兄弟姉妹
4.親戚
5.元上司
6.学生時代の恩師
……などなど
もし「身内にお金の相談をするなんて、みっともない」と思うとしたら、あなたはまだ本気とに言えないのではないでしょうか。格好つけていたら起業家は務まりません。

★信頼のないベンチャーの印象アップ術

 私が勧めているのが身の周りに自分の「応援団」を作ることです。「私にお金を出してください」といきなりお願いしても100人中99人は躊躇すると思いますが、「私のことを応援してください」というお願いはぐっとハードルが下がります。
 では、具体的にどう応援してもらうかというと、その人のお金ではなく”名前”を借りるのです。例えば、あなたが営業ツールとして使う会社案内のパンフレットやホームページに、「私も応援しています!」というメッセージを名前付きで入れさせてもらいます。名前を借りることで、あなたが応援に値する人物であることを保証してもらうのです。その方が社会的信用の高い人であればあるほど、その効果は高くなります。

★「志は高く、頭は低く」

 プライドが高いから、頭を下げられないという人は社長に向きません。その程度のプライドではガラスのように脆いことでしょう。真のプライドを持つ人は、他人に頭を下げるくらいでは揺るがない自信や信念を持っています。
「志は高く、頭は低く」
これこそが、社長のあるべき姿だと私は思っています。

★成功する起業家の条件

 私は多くの起業家を見てきましたが、成功している起業家に共通する強みは「お金をつかむ時に力を発揮する」ということです。お金をつかむのは、原則2つの機会しかありません。それは、お客様になっていただいてお金を頂戴する時と、資金調達を行う時です。上場に成功した多くの先輩経営者は、すべてこの2つの機会で力を発揮
してきた人たちなのです。

★販売戦略のための4つの心得

販売戦略を考える上で、常に念頭に置いておきたいのが次の4カ条です。
・1円でも多く売り上げること
・1円でも安く仕入れること
・1日でも早く資金を回収すること
・1日でも遅く支払うこと
これは販売戦略に限らず企業経営全般に言える心得で壁に貼っておいてもいいくらいです。なぜなら、会社のお金を枯らせないことが社長の仕事だからです。

【感想など】
◆起業家に向いている人とは
著者の藤野英人さんは投資家、ファンドマネージャーとして活躍され、現在は自社レオス・キャピタルワークスで取締役・最高運用責任者として活躍されている方です。

本書では、自分で創業した会社をはじめ、起業にかかわった次の3つの会社
レオス・キャピタルワークス
ウォーターダイレクト
ケンコーコム

を実際の例としてあげつつ、起業の各ステップ、スタートアップからはじまり、アーリーステージ、ミドルステージ、そして上場するレイトステージまでのポイントをわかりやすく解説してくれています。

特に本書の魅力は現場の生々しさ。
そして著者が本音で語っているところ。

その包み隠さない生々しさが面白過ぎて、ポイントが多すぎるので、【ポイント&レバレッジメモ】では、最初のスタートアップからアーリーステージの一部まででピックアップを自主ストップさせていただきました。

上場までのすべてのポイントを知りたい方は本書に直接あたってみてください。

さて、世の中では「起業した会社の10年後の生存率は1割」とよく聞きます。

そんな厳しい状況下でも一国一城の主を目指し、独立起業をする人がいるわけですが、成功する(生き残る)1割と、失敗する9割の起業家ではどう違うのか?

成功する起業家に共通する資質は何なのか?

その点にまず興味がひかれました。

◆情熱だけではない
本書の巻頭にこういう一節が登場します。

「起業したいと考えているのですが、私はするべきでしょうか?」
このよこうな質問をする人に対して、出雲社長は「やめた方がいい」と説得するそうです。悪いことは言わない。いまの会社で頑張りなさい。起業は大変だよ、と。それには大いに共感しました。なぜなら、私もそのような人には起業を勧めないからです。むしろ徹底的に止めます。

人に止められたら企業を止める。
その程度の意志と情熱しか持っていない人は現在の仕事を続けるべきだというのは納得できますよね。

本気で人生をかけて勝負に出る人は、誰が止めてもやりますよ。
それだけの意志の強さと情熱がなければ成功しないでしょう。

おおよその成功する起業家に必要なもののイメージは、「情熱」とか「行動力」、もうちょっとかっこ良くいうと「志」といったところだと思います。

ただ、本書で面白かったのは、成功する起業家の資質はそれだけではないというところでした。

例えば「甘え上手」
創業に必要な備品を周りの人におねだりする。
困った時に教えを請う。
支払いをちょっと待ってもらう。
 等々

「愛嬌」と言ってもいいでしょうか。
成功するには「運」も大きな要因となると思います。

起業家の創業話や自伝などを読むと、「この人は持っている」と思わせるエピソードが必ず登場します。

その典型パターンがピンチが訪れた時に誰かが救いを差し伸べてくれたというもの。

「運」や「チャンス」は人が運んできます。

愛されるキャラクター、無理をお願いしても「しょうがないなぁ」と思わせる甘え上手。
本書では”人とつながる力”と表現されていますが、そういった資質が実は「お金」よりも強い武器になるのですね。

◆お金にまつわる生々しさ
とはいっても、起業において「お金」が最重要課題であることにはかわりありません。
本書でもスタートアップから上場まで、終始登場するのが「お金」の問題です。

破綻した時に”訴えられにくい順”で資金調達を考える。
「支払いは1日でも遅く、入金は1日でも早くお願いする」
資金に余裕がないなら知恵で勝負せよ

などなど、経験者ならではのお金にまつわる記述が登場します。

起業間もない会社の場合体力が極端にないだけの話しで、大きな会社に成長したとしても、基本的には資金がショートしたらアウト!というのはかわりありません。

経営は資金をまわし続けるゲームのような一面があり、経営者の大きな役割が資金をまわし続けるとこ。

しかしこれが、非常に難しいことなので、起業した会社が生き残る確率が1割という結果になります。

この部分に関しては心して読まれることをオススメします。

◆IPOをしたい人にも
今回のブログ記事では、本書後半の上場に関する部分は割愛させていただきました。

が、上場に関してもキーとなる幹事証券会社や監査法人の選び方や付き合い方に関する記述も参考になると思います。

野村や大和ほどではありませんが、SMBC日興証券やみずほ証券なども上場実績の高い証券会社です。実績を挙げたい小さな証券会社から声がかかることもあると思いますが、あまり実績のないところと組むと、やはり上場に至らないケースも多いようなので要注意です。
 またこれはあくまで私の印象ですが、銀行系よりも証券系の会社の方が上場に関して熱心に取り組んでくれる文化があるように感じます。

こういったことは、経験者でないとわからないですよね。

また、上場後の株価との付き合い方や上場後の様々な誘惑への対処法までもが書かれいるのも秀逸。

ワタクシなどは想像もつきませんが、上場企業の経営者となった瞬間から世界が変わるようです。

お金のあるところにはいろいろな人や誘惑が集まってきますが、反社会的勢力もその中に含まれるとのこと。

ここまで読むと、起業家として成功することって本当に幸せなんだろうか?とか、面倒くさいことがありすぎるなぁとか思ってしまうかもしれません。

冒頭で申しましたが、多分そういう人は起業には向かないのでしょうね。

もしあなたが起業を考えているなら、本書をまず1読。
そのうえで、「それでもやりたい!」と思えたらぜひ自分の道を歩んでいただきたい。

きっとその道中のガイドブックに本書はなってくれると思います。

本書は実務教育出版社、佐藤様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】

本書巻末に 起業する前に読んでおきたい本 としてリストアップされている本をご紹介

◇起業家関連

 

チームDeNAは、なにもそこまでフルコースで全部やらかさなくても、と思うような失敗の連続を、ひとつひとつ血や肉としてDeNAの強さに結びつけていった。とてもまっすぐで、一生懸命で、馬力と学習能力に富む素人集団だった。創業者が初めて明かす、奮闘の舞台裏。

 

ネットバブル崩壊、業界の低迷、再びのネットバブル。絶頂の中、発生したライブドア事件、親友・堀江氏の逮捕、株価暴落、そして社長の退任を賭けて挑んだ未知の領域…。その時、起業家は何を考えていたのか?抱えた苦悩と孤独、そして心に沈めてきた想い。焦り、嫉妬、不安、苛立ち、怒り、絶望―。すべての真相を、今ここに。魂をゆさぶる衝撃の告白。

 

世界で初めて「ミドリムシの屋外大量培養」に成功し、ダボス会議「ヤング・グローバル・リーダーズ」にも選出!全世界待望の「地球を救うビジネス」とは?―。

 

新規大卒者の50%が女性となってから30年が経過したにもかかわらず、いまだにアメリカの政府や企業のリーダーの大多数は男性です。つまり、社会生活に大きな影響を与える決定において、女性の声が平等に反映されにくい状況が続いているのです。この問題は、日本ではより顕著です。なぜ女性リーダーが生まれにくいのでしょう?その原因はどこにあるのでしょう?フェイスブックのCOOが書いた全米大ベストセラーの話題作。その「一歩」を踏み出せば、仕事と人生はこんなに楽しい。

◇企業論関連

 

著者は20年間にわたって、スモールビジネスを対象にした経営コンサルティング活動を行ってきた。アドバイスしてきた企業は25000社にも及ぶ。本書はその経験を生かし、職人の視点からスモールビジネスが失敗しがちな原因を分析。そのうえで、成功するためのノウハウを明かした本で、それが全米でもベストセラーになった大きな要因だろう。

 

本書は、世界中の数多くのビジネススクールで、ベンチャーに関する講義の基本書として使われており、本書で展開されている起業のアプローチは、すでに世界中の起業家、ベンチャーキャピタリスト、投資家、ビジネススクールの大学院卒業生を成功へと導き、高い評価を受けている。

 

キャズム越えは成功事業の悩みキャズムの前にジャングルがある!製品開発に対する市場開発。市場作りにも研究開発手法があった。シリコンバレーで8社のハイテクベンチャーに従事し、いくつものベンチャーを自身で成功に導いたシリアルアントレプレナーによるベンチャー立ち上げ方法論の集大成。スタートアップがキャズムに到達するための実践的手法、新規事業立ち上げのHow toをステップバイステップで詳細に解説。

 

思い込みは捨てて、顧客から学ぼう!「構築‐計測‐学習」というフィードバックループを通して、顧客も製品・サービスも生みだし育てるシリコンバレー発、注目のマネジメント手法。

◇ベンチャー・キャピタリスト関連

 

日本は本当に「起業家に冷たい国」か?人気ブログiSOLOGUEの磯崎哲也が教える成功する会社の作り方。

 

DeNAをブレイクさせたカリスマ投資家が説く起業の難問と克服法。成功する起業家の条件・アクションとは何か?300億円以上儲けた投資家が具体的に喝破。

 

会社設立から株式公開そして、出口戦略まで起業家に欠かせない実践知識を総合的に解説。

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