こんにちは、なおさん(@ichiryuu)です。
今日ご紹介するのは、
堀江貴文(著)『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』SBクリエイティブ
これってロケット開発の話?
そうだね、堀江さんがやっているインターステラテクノロジズ(IST)のロケット開発が中心の話なんだけど、読むと日本の未来と関わる大きなテーマを含んでいてなかなか面白いんだよ。
父ちゃん宇宙もの好きだもんね。
この本をおすすめするのはこんな人
- 宇宙開発やロケット産業に興味がある人
- 新しい産業やサービスを起ちあげたいと思っている人
- 進むべき進路に悩んでいる理系の学生
YouTubeライブでも紹介しています。
8:10ぐらいからです。
『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』:読書メモ
日本はロケットを打ち上げるのに最適な場所
人工衛星が利用する軌道は主に2つあるそうです。
①静止軌道
赤道上空3万6000kmの円軌道で、地球の自転周期と等しい周期で自転と同じ方向に巡るため、いつも地球の同じ面を見ることができ、通信衛星や気象衛星に利用される。
②極軌道
地球を南北に巡る軌道で、地球は東方向に自転しているため、極軌道を巡る衛星は地球の表面をくまなく観察することができる。高度は500〜800kmが多い。
というわけで今のところ、2種類の打ち上げ方向が、ロケット打ち上げの大多数を占めている。東への打ち上げと南ないし北への打ち上げだ。東向きの打ち上げは静止軌道への打ち上げで、南ないし北への打上げは、極軌道への打ち上げというわけである。
さて、ここで考えてください。
今のロケットは多段式で、使い終わった段をどんどん切り離していきますが、当然飛行経路に沿って使い終わったロケットが落ちてくるわけです。
となるとロケットを打ち上げるのに最適な場所というのは、東と南か北が人が住んでいない、海であることが一番いいということになるのですが、世界中でも日本は最適な場所となります。
日本は東側も南側も広大な太平洋に面している。太平洋には小さな諸島が散在しているがそれらを避けるようにして打ち上げを行うことは決して難しくない。つまり、日本は地形的に宇宙国家であるための最適な条件を満たしているのである。
堀江氏は言います。
日本が今後テクノロジーやインターネットの世界で勝ち抜くのは相当難しい。
しかし、
今後、日本が勝てる市場が2つある。その1つがロボテックス、もう1つがこの宇宙だ。
そして宇宙産業については、日本の地域的な優位性を十分に生かすことができるのだ。
東と南北が海という地理的条件以外に日本が有利な点はあるの?
堀江さんのISTの打ち上げ場所である北海道の大樹町はロケット工場が近いという利点もあるよ。
日本は部品の調達やロケットの組み立てでも有利なんだね。
ロケットは、自動車産業を救えるか
電動モーターはエンジンに比べるとずっと単純で、モーター製造への参入は容易。
バッテリー技術の進歩と相まって、これから10年20年のスパンで見ると電気自動車の方が内燃機関機の自動車よりも性能が良くなる可能性が高いと言います。
しかも電動モーターは内燃機関に比べ、制御しやすいという特徴を持っています。
これは自動運転車は必然的に電気自動車になるということ意味します。
このように、内燃機関を使う今の自動車と、電気自動車の特徴や使う技術、産業の構造を見ていくと、恐ろしい結論に到達する。
山のようなノウハウを血のにじむような努力で会得し、世界を席巻し、日本を支える基幹産業となった日本の自動車産業ーーその強さの根幹は燃焼を中心としたノウハウを保持するサプライチェーンにあった。
ところが、そのサプライチェーンが、電気自動車というパラダイムシフトによって崩壊するのである。
自動車メーカー自体は無くなることはないでしょうが、内燃機関に関連する部品メーカーは消滅していくことになります。
電気自動車が日本社会にもたらそうとしているのは雇用の喪失だ。
そうならないためには
一番簡単かつ確実な生き残り策は、「サプライチェーンが今保有している技術を使って新たな市場に進出する」ということだ。保有する技術とは、「燃焼に関するノウハウ」に他ならない。
つまり、ロケット産業が受け皿となり得るということです。
電気自動車の普及には大量失業という問題があるんだね
そうなんだ。そしてそれは日本の技術力の優位性の喪失でもあるんだよ。
蓄積した技術をロケット産業が吸収できる可能性が高いんだね。
ロケット産業は、これから成長する
ロケットは地球の重力に対抗して上に上がっていけるだけの大推力を発生させる必要があります。
それは電気推進系では無理で、燃焼を利用するロケットエンジンにしかできませんし、地上から宇宙空間へ、人や物を運ぶロケットの動力は、今後ともずっと燃焼を利用せざるを得ないそうです。
また、制度の面でも飛行機の場合は1903年のライト兄弟の初飛行以来、飛行機の進歩と失敗と共に並行して社会制度も整備されてきました。
しかしロケットはそこまで技術的な試行錯誤を尽くしてはいないし、社会制度もがちがちにはできあがっていない。むしろ、今から社会制度を作ろうとしているところで、今参入すれば、社会制度の整備を並行して産業を大きくしていくことができる。社会制度とともに手を取り合って学びながら、産業が成長できるのだ。
社会制度の整備を並行して産業を大きくしていくのって大変じゃないの?
大変だとは思うけど、ルールメーカーになることができるからメリットも大きいよね。
ロケット産業って先行者利益を得られる分野なんだね。
日本政府は、大型宇宙計画に補助金を出して、サプライチェーンの転換を進めるべきだ
ロケット産業を短期間で一気に立ち上げる方法はわかっている。アメリカがすでに行って成功しているからだ。スペースXという会社は、アメリカの国の政策に乗ってあそこまで大きくなったのである。
で、アメリカはどんな国策をとったかですが、それは民間の力に頼って貨物輸送船とロケット開発に大規模な補助金を出し、完成した輸送船はNASAがISSへの貨物輸送用に使用するというものでした。
これを民間の立場から簡単にいうとこうなります。
「開発資金を国が出してくれる。出来上がった製品も国が買い上げてくれる」
この政策によってアメリカのロケット産業はスペースXに代表されるように一気に活気付きました。
この成功を参考にするならば、日本がとるべき政策は以下のようになります。
- 国が巨大な計画を立ち上げること。そしてそれは今までにないロケット、つまり燃焼のノウハウを必要とする宇宙輸送システムに対する大きな需要が長期間にわたって発生する宇宙計画である必要がある
- 宇宙輸送システムの開発に巨額の補助金を一気につけること
- 国は技術には口を出さず、あくまで大口のサービス購入者として振る舞うこと
「金は出しても口は出すな」だね。
日本の政府がこんな思い切ったことができるかというのが一番ネックだね。
特に官僚はなにかと制限をつけて自分たちの権益を確保しようとするからね。
政府が昔で言う「旦那」になれるかどうかだね
再利用というプロパガンダには騙されないぞ
だから僕はクラスターで、ロケットエンジンを量産効果が出るくらいまで大量生産して使い捨てる方が、アプローチとしては簡単だし。技術的にも簡単だし。価格低減効果は高いと思う。再利用は、メンテナンスコストも、すごいかかるし。安全率とかも高くせざるを得ないし。
でも何より、僕は技術的な陳腐化の方が怖いんです。再利用しようとしたからスペースシャトルなんて結局オービターを6機しか作れなかったわけでしょう。再利用するより使い捨てと大量生産でどんどん改良していったほうが良いと思うんですよね。再利用だと、何回も同じものを使うから、改良と性能アップが止まっちゃう。
世の中ではリサイクルがいいことみたいな風潮になってるけど、ロケットを使い捨てにするのってどうなの?
僕もこの考えには目から鱗だったけど、言われてみたらそのとおりなんだよね。
ロケット産業を商業化するためにコストを抑えるのと、技術開発を進めるという一挙両得なのは大量生産使い捨てなんだよね。
1年に1000機ロケットを作る時代が来るかな
『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』:まとめ
とにかく夢を語れ
以上、『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』の気になったところを読書メモとしてシェアしました。
が、なんか日本にとっていかにロケット産業が重要で、やり方次第では世界的な産業になりますよという点ばかりを紹介してしまいいました。
本当はサブタイトルに「空想を現実化する僕の方法」とあるように、本書は突拍子もない、普通の人は無理だと判断するような「空想」でも、こういうふうにしたら現実化しますよという「起業ノウハウ本」なんですよね。
だから読み進めると随所に、
「俺は必要なことしかやらない。逆に必要なことならなんだってやる!!」
どんな状況でも、なにかを実現したいと思えば、できることはあるし、前に進むことはできる
まず、動く。動いて試して考える。考えたらまた動く。
「本当の失敗は、失敗したことで何も得られなかった、という状況だ」
といった、起業家や夢を現実にしようという方にはとても参考になる言葉とともに実際の経験が散りばめられています。
なので、とんでもない目標を掲げている方はぜひ読んでみてほしいのです。
とくに、そういった方が知りたいのは「とっかかり」の部分ではないでしょうか。
この本では、日本人が、しかも民間人が宇宙開発とかロケットを作ろうと思っても、どうしたらいいかわからないなかで、夢を現実化していく過程が語られています。
その「とっかかり」を見つける方法は、結局あちこちで夢を語り、仲間を見つけ、試行錯誤するというものでした。
「ロケットを作りたい」と言ったら、たとえ堀江さんであっても、「なにをアホみたいなこと言うてんねん」って流されることの方が多かったでしょうね。
でも、そこを諦めずに夢を語り続けるわけです。
結局それしかないということなんですが、あのホリエモンでもそこからスタートするわけですから、無名の夢老い人であるあなたのある意味自信につながるんじゃないかと思います。
宇宙は技術立国日本の有力な選択肢の一つ
さて、上記の通り本来は夢を現実化する方法が本書のテーマであるはずなのですが、どうしてロケット産業に関する部分ばかり読書メモに取り上げてしまうのか。
それは本書で堀江貴文さんがロケットについて熱く語るからです。
その熱が伝わってくるんですよ。
堀江さんの著書はわりとクールな印象のものがほとんどなのですが、この本は熱いです。
その著者の熱に絆された訳ではありませんが、この本には日本の将来に関わる大きな示唆が2つ含まれています。
一つは、日本が立地や技術力という点でロケット産業に非常に有利であること。
もう一つは、まもなくやってくる産業構造の大変革の受け皿としてロケット産業が有力であること。
さらにいえば、今なら間に合う。
今やらなければ日本は技術立国の地位を失う。
大袈裟ではなく、ロケット産業に国運がかかっているといってもいい内容なのです。
今はコロナで大変な時期ですが、アフターコロナの日本では思い切った経済の立て直し策が必要になるでしょう。
そのときに選択肢の一つとして、ロケット産業を選べるかどうか。
政府の手腕というかセンスが問われる場面ですね。
そして、センスが問われるのは政府だけでなく国民も同じです。
おそらく、もし政府がロケット産業に経済支援をすることに決定したら、多くの国民が「なんでそんな無駄なものに税金を使うんだ!」という反応をするでしょうね。
技術立国日本を維持したいなら、本書を読んでみることをお勧めします。
夢を熱く語れば物語が始まる
著者プロフィール
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。インターステラテクノロジズ株式会社ファウンダー。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。東京大学在学中の1996年、23歳でインターネット関連会社の有限会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から05年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙立候補など既得権益と戦う姿勢で注目を浴び、「ホリエモン」の愛称で一躍時代の寵児となる。2006年、証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、懲役2年6カ月の実刑判決。2011年に収監され、長野刑務所にて服役するも、メールマガジンなどで獄中から情報発信も続け、2013年に釈放。その後、スマホアプリのプロデュースや、2019年5月に民間では日本初の宇宙空間到達に成功したインターステラテクノロジズ社の宇宙ロケット開発など、多数の事業や投資、多分野で活躍中。
引用:『ゼロからはじめる力』
『ゼロからはじめる力 空想を現実化する僕らの方法』:もくじ
はじめに
第1章 なぜ、僕は宇宙を目指すのか ISTは正しいことしかしない
第2章 ゼロから始めたロケット打ち上げへの道 やりたいことがあれば、経験は関係ない
第3章 MOMOとZERO、僕らのロケットが目指すところ 宇宙に行かなきゃ意味がない
第4章 自動車産業の次に日本を支えるのは宇宙産業しかない
第5章 日本は宇宙産業で世界をとれるか
あとがき ISTは世界有数のロケット企業になる
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