こんにちは、なおさん(@ichiryuu)です。
今日ご紹介するのは、
池上彰(著)『なんのために学ぶのか』SBクリエイティブ
とうちゃん、学校の勉強ってなんか役に立つの?
めちゃくちゃ役に立つよ。
それに学ぶって楽しいよ。
勉強って大変そうに見えるけどなぁ。
何か楽しいんだろう。
この本をおすすめするのはこんな人
- 学校の勉強に意味を感じられない人
- この春から大学生になる人
- 社会人になって、もう勉強したくない人
『なんのために学ぶのか』:読書メモ
「大人になればわかるよ」
私が中学3年生の時、高校受験の勉強に疲れ、母親に「なぜ勉強なんかしなければならないのか」と問いかけました。母親の答えは、「大人になればわかるよ」でした。
こういうシーン、だれでも経験あるんじゃないですか。
でも大人になっていないから意味がわからない。
池上彰さんも「答えになってない!」と憤ったそうですが、実際に大人になるとわかるんですよね。
日々の暮らしや仕事のうえで、学生時代に学んだことが、どれだけ生きていることか。とりわけ中学校の教科書を開いてみると、「これだけの知識を習得していれば、大変な知識人だ」と痛感します。それほどに中学校の教科書はよくできているのです。
特に義務教育の期間に習う内容は、本当によく精査されていて、社会人として生きていく上で必要最小限の知識や学問的基礎を盛り込んでくれています。
ただ、その最小限というのがかなり多いのが難点ですが。
いずれにしても、「もっと勉強しておけばよかった」と思うのは、大人に共通することなんですよね。
本当に大人にならないと実感できないのが辛いところ。
でも、「学校の勉強なんてなんの役にも立たない」っていう大人も多いよ。
そういう人は、役に立つレベルまで勉強していないか、役に立っていることに気がついてないんだよ。
どっちにしても、勉強が足りない人だね。
ああ、きつい一言
分かりやすい説明は数学のおかげ
「学校の勉強は役に立つ」といっても、実生活で数学なんか使うことがあるのかという疑問はやはりあります。
そういうとき、「数学的思考」は必要だという説明をよく聞きますが、数学が重要な例として池上彰さんはこんなことを書かれています。
私は以前、「わかりやすい説明ってなんだろうか」と一生懸命考えていたら、「あっ、これは因数分解だ」と気づいたのです。ニュースを解説するときに、様々なややこしいことを、まず共通のものを取り出してそれを外に出してから、残ったものを括弧でくくるという形にすれば、わかりやすく説明できるのです。
なんと、池上彰さんの解説の分かりやすさは因数分解が元だったのですね。
これ以外に対数の例も書かれています。
無味乾燥に見える数学も、それが世の中でどのように応用されているかを知ることで、もっと楽しく学ぶことができるようになるのではないでしょうか。
結局、学問はツール。
役に立てるか立てないかは本人次第ですが、そもそもツールを持ってなければその魅力もわからないんですよね。
だからやっぱり勉強って必要です。
数学って役に立つんだね。
池上さんといえば今日本一わかりやすい解説をする人。
まさかそのベースが因数分解だったとは驚き。
貧しくてもお金がなくても勉強はできる
最近日本でも教育格差が問題視されています。
本書では貧困と勉強についての一つの例として、『風をつかまえた少年』を紹介しています。
この本は、アフリカの最貧国の一つマラウイの少年、ウィリアム・カムクワンバ君が学費が払えなくて中学校に行けなくなったけれど、図書館で物理学の本から発電機の仕組みを学び、廃品のガラクタから風力発電装置を作るというお話。
彼はその後、国の教育省から認められ、学校に復帰。
そのごアメリカの大学に留学を果たしました。
日本においては、
最近は全国どこでも図書館が作られていて、基礎的な勉強だったら図書館で本を借りて読めばいくらでもできる。しかもお金もかからない
わけですから、
日本では、親の年収が子供の学力に影響するとして教育格差が問題になっています。実際にそれを示すデータもあります。しかし貧しいから勉強ができないんだと言ってしまうと、これはちょっと違います。大事なのは、勉強したいという本人の気持ちと、貧しくても利用できるような教育環境やきっかけを大人がきちんと用意することではないでしょうか。
立派な少年だね。
昔、日本も貧しかった時代に、こういう苦学生の話はいっぱいあったんだよ。
いつの時代でもどんな環境でも、本人のやる気次第なんだ。
今は図書館以外にインターネットもあるし、もっと勉強できる環境が整っているよ。
学生とは、自ら学ぶ生き方をする人間
「生徒」と「学生」の違いがわかるでしょうか。
中学・高校は「生徒」と呼ばれますが、それは先生からさまざまなことを教わる立場なので生徒と呼んでいるのです。
なので、教わる内容も例えば教科書は文部科学省の検定を通った教科書に限られます。
これは
誰が見てもこれは間違いないという内容を教わるのです。どの科目も、教科書は学問の世界でこれだけは間違いないとされていることを精選して載せています。
ということは「ここに書いていることは本当だろうか」と疑う必要がなく、そのまま暗記してりかいすればいい。
ですが、
大学教育はこれとまったく違います。大学における「学生」とは、自ら学んでいく生き方をする人間のことです。
大学で使うテキストは担当する教官が選びます。
なので、その内容が学会の主流でないかもしれないし、主流であったとしても数年後には間違いだったということもあり得ます。
大学とはそういうところです。授業で習うことがすべて正しいと思い込んだら大間違いです。一生懸命勉強したのに実は間違いでしたということが、後から起きるかもしれない。あのとき勉強したことは一体なんだったのかということになりますね。
大学で学ぶときは、このスリルとサスペンスがたまらなく楽しいのです。
大学での勉強は「この人はこう主張している。だけど本当だろうか?」と「すべてを疑う」姿勢が必要。
そうやって自分の頭で考えてその人の説が正しいかどうかをよく検討してみる。
これが本当の「学ぶ」ということです。
この本当の「学ぶ」をしているからそこ大学生を「学生」というのです。
父ちゃんも「すべてを疑う」姿勢で勉強してたの?
僕は世の中を疑って、酒ばっか飲んでたな。
一気飲み全盛時代だもんね。
一人ひとりの独立が国家の独立を保つ
本書の第4章 読書が好き 良い本との出会いは人生の宝 では、池上彰さんが大学時代に読んだ岩波文庫をはじめ、以下の本が紹介されています。
・ショウペンハウエル『読書について』
・吉野源三郎『君たちはどう生きるか』
・福澤諭吉『学問のすゝめ』
・カント『永遠平和のために』
・文部省『民主主義』径書房
・出口治明『人生を面白くする本物の教養』幻冬舎新書
これらの中で、僕が学生さんに前読んでほしいと思うのが福澤諭吉の『学問のすゝめ』です。
福澤諭吉のいう「学問」とは、いわゆる「教養のための教養」とは違う実学でした。
実学と言うと、すぐに役に立つ学問のことが思い浮かびますが、福沢が言う哲学は、決して実用一点張りの技術の事ではありません。日常生活に役立つ知識や技術にとどまらず、地理学、究理学(物理学)、歴史、経済学、修身学などを身につけるべきだと言っています。
明治初期の時点で既に科学的知識や思考が大切だとして、広く国民にこれらを学ぶよう勧めていることに驚かされます。そして、こうした学問をあらゆる国民が学ぶことによって、一人一人が独立し、国家も独立を保つことができると述べています。
その背景にあったのは、列強諸国の圧力で、ウカウカしていると国が危ないとい緊迫感がありました。
今の日本人は平和ボケしていてまったく緊迫感がないですが、すぐ近くに脅威となる国があるという点で、明治の頃より状況は悪くなっているかもしれません。
一人ひとりが学び、独立することが、国の独立につながるという発想をぜひこれからの学生は持ってほしいと思います。
一人で独立して生きていけるようになるために勉強する。
何のために学ぶかの答えはそれだけでもいいと思う。
『なんのために学ぶのか』:まとめ
「なんのために学ぶのか」の答えはその人の人生次第
「なんのために学ぶのか」。
この問いはおそらく過去から現在、未来永劫まで繰り返されるのではないかと思います。
池上彰さんのお母様の答え、「大人にったらわかる」のように、時間が経ち、ある程度人生経験を積んでいかないと学ぶことの重要性はわからないですよね。
僕もどちらかというと勉強嫌いだったから、学校の勉強が本当に苦痛でした。
ただ、好きな科目だけは苦にならない。
僕の場合は「世界史」がそれだったんですけど、もう楽しくてしょうがないんです。
何か一つでも興味が持てるものに出会えると、勉強に対する姿勢は劇的に変わるものです。
それはさておき、その好きで一生懸命学んだことも、その後の人生の何に役立つかと問われたら、もしかしたらなんの役にも立たないかもしれないし、時間の無駄になるかもしれない。
その後の生き方次第なのです。
でも、今、中高校生で勉強する意味がわからないという生徒にぜひ知ってもらいたいのは、学ばない人生より、学ぶ人生の方が圧倒的に楽しいということ。
「知るは楽しい」のです。
未知のものを知る、理解するときの喜び。
これこそ人間が他の動物と違う人間らしいところだと思いませんか。
その楽しさを追求することは、人間らしく生きる一つの方法だと思うのです。
「学ぶことは、決して人に盗られることのない財産」
そしてもうひとつ。
本書の最後の章には
「学ぶことは、決して人にとられることのない財産」
という言葉が登場します。
フィリピンのスラム街出身の先生の言葉ですが、学ぶことは人生を変えるためのツールを手に入れることであり、そのツールは一度手に入れると誰も奪うことはできない自分だけの財産となるのです。
また、たとえ進学や就職のための学びだったとしても、その中に学びの楽しさを見出すことはできます。
若い人たちにはぜひ「財産」を築いて欲しいと思います。
なんのために学ぶのか、悩んでいる方に本書は何かしらの回答を与えてくれると思います。
ただ、答えはやっぱり自分で見つけないといけないんですけどね。
学びの楽しさ伝導書
著者プロフィール
池上彰(いけがみ・あきら)
1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、NHKに記者として入局。様々な事件、災害、教育問題、消費者問題などを担当する。1994年4月から11年間にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。
わかりやすく丁寧な解説に子供だけでなく大人まで幅広い人気を得る。
2005年3月、NHKの退職を機にフリーランスのジャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍など幅広いメディアで活躍。名城大学教授、東京工業大学特命教授など、9大学で教える。
『なんのために学ぶのか』:もくじ
はじめに これからを生きるあなたたちへ
1章 勉強が好きじゃなくてもいい―おもしろいことが一つあればいい
2章 どうして勉強しなくちゃいけないの? ―学校で学ぶということ
3章 失敗・挫折から学ぶ―こうして「池上彰」ができあがった
4章 読書が好き―よい本との出合いは人生の宝だ
5章 生きることは学び続けること―なぜ、私が学び続けるのか
おわりに 一緒に「知の宇宙」に旅立とう
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