世界の博物館、第27号はナポリ国立考古学博物館です。
ここには、街全体がタイムカプセルに入り、そして現代によみがえったあの遺跡の出土品が展示されています。
【今号の一押し】
ナポリトいう町は8世紀にナポリ公国としてビザンティン帝国から独立して以来、イタリアのなかで独自の歴史をたどって来た地域。
その地にあるナポリ国立考古学博物館の収蔵品はイタリア名門貴族ファルネーゼ家の収蔵品も素晴らしいのですが、やはりこの博物館の目玉はこちらでしょう。
「アレクサンドロス大王のモザイク」
ナポリの南東約23kmに位置するのが、79年のヴェスヴィオ火山の噴火で一夜にして埋もれてしまったポンペイ。
1748年に発掘調査が開始されるまで、約1700年間タイムカプセルに街全体がすっぽり埋まっていたため、ローマ時代の貴重な資料を今に伝えてくれる世界でも例のない遺跡であることは有名です。
そのポンペイ随一の富豪、ファウヌス家の談話室の床に敷かれたモザイクが、このアレクサンドロス大王のモザイクです。
遺跡の方にはレプリカが展示されています。
こんな見事な装飾の床の上で生活していたなんて、豪華ですね。
世界史の教科書や資料集に必ず出てくるこのモザイクですが、画面左で兜をかぶらず馬に乗り、槍を持っているのがアレクサンドロス大王、画面右中央で戦車に乗り退却していこうとしているのがアケメネス朝ペルシャの王、ダレイオス3世。
通説ではBC333年のイッソスの戦いを描いていると言われています。
実際の戦闘をそのまま描写したものではないことは言うまでもありませんが、この絵はちょっと不思議な構図になっています。
それは敗者であるダレイオス3世が目立ち、主役であるアレクサンドロス大王が脇役であるかのような配置となっているのです。
そのあたりの理由については本署の解説をお読みください。
さて、古代ローマ時代は自宅の壁や床を美しく飾り立てるのが習慣だったようで、ポンペイの遺跡からは色あせること無く当時のままの壁画やモザイクが発見されています。
こちらは同じくファウヌス家で発見されたモザイク画。
ウツボやタコや伊勢エビ等々、ポンペイの食材の豊富さがうかがえます。
そしてこちらは三美神のフレスコ画。
三美神とは、ゼウスの娘で「優雅」「美」「喜び」の化身。
後にキリスト教芸術にも影響する題材ですが、こういった官能的な絵画がリビングなどに飾られるのはごく一般的なことだったそうです。
ポンペイの人々はじめ、ローマ時代の人々は、快楽や性におおらかだったんでしょうね。
次号はドイツ博物館です。