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さらばテレビ放送【書評】坂本衛(著)『「地デジ化」の大問題』(知的発見!BOOKS)

いよいよ明日でアナログ放送終了です!
しかしこの地デジ化への移行は政府もテレビ局も絶対に言わない”不都合な事実”が目白押し。
はたしてスムーズな移行となりますでしょうか。

一つ確かなことがあります。
テレビ視聴者が一人減ります。
それはワタクシです。

 

【目次】

はじめに  なぜ「地上アナログ終了」強行なのか
序章 2011年7月、「地上アナログ放送」を止めたら・・・   最悪のシミュレーション
第1章 そもそも「デジタル放送」とは何か  「地デジ化」で何がどう変わるのか
第2章 「地デジ化」にまつわる誤解、ごまかし、嘘  大手マスコミが報じない「本当のところ」
第3章 なぜ、「完全地デジ化」はうまくいかないのか  「テレビの原理」から読み解くカラクリ
第4章 私たちが「地上アナログ」終了延期を要求する理由  「終了延期」プロジェクトの全貌
終章  大震災でわかった国の無策、テレビの思考停止  どこへ行く?どうなる?日本のテレビ

【ポイント&レバレッジメモ】

★「高画質、多チャンネル化」という誤解

 「デジタル放送で高画質の多チャンネルになる」と誤解している人がいます。
 忘れてならないのは、高画質と多チャンネルはどちらもできるが、同時にはできないということです。地上デジタル放送で高画質のハイビジョンを流すときはチャンネル数はアナログ放送の時と同じです。標準画質映像を流すときは1チャンネルを3チャンネルの多チャンネルにできます。つまり地デジにおける高画質と多チャンネルは、一方を求めれば他方を手放さざるをえないトレードオフ、二律背反の関係にあります。

★「初めて双方向ができた」というデタラメ

「地デジのメリットの一つは、放送を双方向にできることです」
「デジタル放送の登場で初めて、放送の双方向化が可能になります」
 かつてこんなことが、テレビ局の地上デジタル放送を紹介するホームページなどによく書いてありました。<中略>
 これらは、まったくのデタラメです。メディアの双方向は、伝送路がアナログ化デジタル化には100%関係ありません。<中略>ようするに地デジによる双方向サービスは、デジタル受信機を電話回線やインターネット回線とつなぐ仕様にしたので、これまでなかった視聴者から放送局への通信ルートができる、という話にすぎません。アナログ受信機を電話回線とつなぐ仕様にすれば、もちろん同じことができます。

★「双方向」の一方向は自己負担

 テレビのリモコンで、番組のクイズに答えたり好きなものに投票したりして電話やインターネットを使ったときの料金は、視聴者が支払います。そもそも電話回線やインターネット回線は視聴者が自前で(自分で申し込み、加入料や毎月の料金を払って)維持していますから、総務省や放送局のいう「双方向」のうち一方向のコストは、100%視聴者負担となります。
 これは「双方向ができる!」などと胸を張る話ではなく、「半分あなたの回線を使って双方向をやらせてもらえませんか」と頭を下げて頼む話でしょう。
 現実問題として、ほとんどの視聴者はテレビを電話回線やインターネットにつないでおらず、双方向サービスを使っていません。

★最大の嘘「世帯普及率」のカラクリ

 地上デジタル放送をめぐるもっとも悪質な大嘘は、地上デジタル放送の「世帯普及率」と称して発表され、報道され、現在も流通している数字です。
 最新のものは、総務省が2011年3月10日に発表した「地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査」に「地上デジタルテレビ放送対応受信機の世帯普及率」として出ています。これによると対応機器の世帯普及率は94.9%で、3か月前の90.3%から4.6ポイント増加しました。調査実施時期は2010年12月で、2011年7月24日に予定されている地上アナログ放送停止(東北3県を除く)を控えた最後の調査です。
 私は、この94.9%という数字を、そのまま鵜呑みにできない底上げ数字であると断言します。2010年12月時点における現実の地デジ世帯普及率は、総務省発表より10ポイントほど低い85%前後と見ています。85%より80%に近いかもしれません。

◇調査の問題点(抜粋) 高齢者世帯250万を無視

 総務省調査による地デジの「世帯普及率」は、そのまま鵜呑みにできない底上げ数字である。そう断言する第二の理由は、80歳以上だけで構成される世帯を調査対象から外していることです。外した理由はこうです。
「80歳以上の高齢者に調査票への記入という負担を強いることになるため。体力的な問題や判断力なども含めて負担が大きすぎるから、対象から外した。政府による調査事例全般を見ても、そうしている例が多いので参考にした。調査の継続性という意味でも、当初のやり方を変更せずに続けている」(総務省情報流通行政局放送技術課)
 80歳以上だけの高齢世帯が、地上デジタル方法に対応する(テレビを買ってアンテナ工事をするかCATVに申し込む)負担のほうが、調査票への記入という負担より大きいことに気づかない馬鹿バカしさ。これが総務省という役所がやっていることです。

★「家電エコポイント」で得なのはメーカーだけ

 「たとえばエコポイントやエコカー補助金です。これは家電や自動車メーカーといった巨大企業に対する補助金です。自動車や大型テレビなどを買いかえない人を含む国民大衆から集めた税金で、買える人にだけ補助金をつけ、大企業製品の売れ行きをよくするのですから、所得の再分配の逆なのです。しかも新規需要の喚起につながらず、需要を前倒しにするだけ。おまけに、大型でエネルギー消費が大きい高額製品ほど補助金が高いのは、エコロジーの逆です。そんな政策を民主党政権がなぜ採用しているのか、私には理解できません」  榊原英資(著)『世界同時不況がすでに始まっている!』p151

★視聴者だけが関与しない計画の成算

そもそも、なぜ地上デジタル放送をやるのでしょうか?
推進者の思惑別に一言ずつ言えば、まず総務省(旧郵政省)は「電波の効率利用」を図りたいから、やります。
地デジで、テレビが使う電波の帯域を整理すれば空きが出ます。通信事業者に使わせれば、新しいビジネスやサービスが生まれます。同時にテレビ電波も効率利用や高度利用ができ、高画質・多チャンネル・移動体受信など新しいサービスができます。総務省も仕事や予算や所管先や天下り先が増えて大いに結構。一石何鳥にもなります。
放送局では、NHKがせっかく世界に先駆けて開発したのに鳴かず飛ばずで、しかも伝送方式がアナログだったため時代遅れの烙印を押されてしまったハイビジョンを、今度こそ絶対に普及させたいから、やります。
民放は、投資がかさむわりに、地デジで広告収入が増える見込みがないので、積極的にやる理由はありません。しかし、ほかのみんながやるといい、アナ・アナ変換の資金も国が出すという話になったから、やります。
メーカーは、新しい高価な機器が売れるから、やります。
しかし、「やります」と積極的な三者だけが集まって相談し、唯一放っておかれたのが視聴者国民大衆です。これが最初の、そして決定的なボタンのかけ違いでしょう。

【感想など】
いよいよ地上アナログ放送の終了が明日の正午となりました。
いや~、楽しみですね~。

何が楽しみかって?
もちろんテレビ番組じゃありません。
ワタクシはあまりのテレビ番組の低レベルさに、数年前からほとんどテレビを見ない生活をしておりますので。

じゃあ一体何が楽しみかって、それは地上アナログ放送の終了でどんな混乱やクレームが起こるのかという、非常にネガティブな楽しみなのです。

おそらく明日の正午からテレビを視聴できない世帯が日本中で数百万世帯誕生することになるでしょう。
その人たちがいったいどんな反応をするのか?

一応誤解のないように言っておきますが、ワタクシは地デジに反対しているわけではありません。
どんな分野でも、技術の進歩に従って変化していくのはあたりまえだし、そうあるべきだと思っています。

問題なのは、アナログ放送を完全に終了してしまうことなのです。
しかも国民不参加の場でそれを決めてしまっている。

これに関しては怒りすら覚えます。

はっきり言って、これは民主国家のやるべきことではない!
もっといえば、人権侵害です。

「人権侵害は言いすぎですよ」と思われるかもしれませんが、1789年に採択されたフランス人権宣言がわかりやすいので引用します。

「第十七条 所有は不可侵で神聖な権利であるので、法的に示された公的必要性が明白にそれを要求する場合や、公正で優先的な保障の条件の下でなければ、何人も私的使用を奪われえない。」

我が家にはアナログのブラウン管テレビが3台ありますが、これらは明日の正午に、テレビの価値がなくなります。
これはワタクシの個人の資産が合法的に消滅する、つまり所有権の侵害です。
(会計的には減価償却が終わっていて資産価値はないのですが・・・)

そして、その法的根拠には「公的必要性」が全くありません。
デジタル放送になっても、番組の質が向上したり、国民生活が便利になったりすることは何一つないのですよ。

さらにこのデジタル放送移行による、アナログテレビの価値消失には「公正で優先的な保証」はありません。

何をどう考えてもおかしいんですよ。

で、ワタクシはこれを機にテレビを見るのを完全にやめようと思いました。
アナログテレビを捨てて、完全にテレビのない生活をしようと家族に提案しました。

ところが、子供たちの猛反撃にあい、しかも妻がそれに同調。
恐妻組合員一龍はミッドウェー海戦の連合艦隊のようにあえなく撃沈。

さらに、「絶対新しいテレビは買わんぞ!国家権力に負けてたまるか!」と固く誓っていたワタクシでしたが、「テレビ買わなあかんやん!」「エコポイントあるうちに買わな損やん!」と攻勢を強める妻の勢いに、仕方なく機械音痴の妻に隠していた、HDレコーダーがデジタル放送に対応していて、これをチューナーにすれば引き続き見ることができるという事実を暴露。

結果、もったいないから新しくテレビは買わず、HDレコーダーをチューナーにして今使っているテレビを壊れるまで使おうという妥協案が成立することになりました。

これで、我が家の地デジ化をめぐる戦いは一応の終結を見たかに思えました。

ところが。

すでに地デジを見ている人は知らないかもしれませんが、先日来、アナログ放送では「アナログ放送終了まであと○○日」という大きなテロップが画面左下に登場したのです。

これでワタクシ完全に頭にきました。

すごい邪魔なんです。
西日本に住んでいるワタクシにとっては、ちょうど天気予報が見えない位置。
もちろん字幕も読めません。

さらに、このテロップ、CM中は消えるんです。
この事実からわかることはただ一つ。

テレビ局にとってお客様は視聴者ではなく、CM料を払ってくれるスポンサーなのだということ。

ワタクシ、民放各社に問いたい。
あなた方が受け取るCM料はもともと視聴者が払う商品価格に含まれているものですよ。
そして、あなた方の商品は番組でしょ。その商品の画面に大きなテロップをずっと映しているのはどういうことなんですか?
と。

ファンクショナルアプローチ的に問えば、あなた方の放送や存在は「何のため?だれのため?」

ということで、明日の正午、アナログ放送終了の歴史的瞬間をワタクシ、見ようと思っています。
そして、それをもってワタクシのテレビ視聴は終了です。

その後の混乱状況についてはネットでチェックしよう。
「アナログ放送終了でテレビが見れなくて困っている世帯がこんなに出ています!」なんて放送は絶対しないだろうから。

本書はイースト・プレス社、畑裕介様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【おまけ】
絶対放送しないと言えば節電もその一つ。

「熱中症で死亡者も出ているのでクーラーは使いましょう。そのかわり、生活にあってもなくても関係ないテレビを消せばいいですよ」とは絶対、口が裂けてもテレビ局は言わないだろうな。

もしこれをいう番組があったら、ワタクシは拍手喝さい。
その放送局だけは一生見続けると思います。

【関連書籍】

【管理人の独り言】
ちょうどディスカヴァーさんから関連したテーマの本が出ているのでご紹介。

アマゾンの内容紹介より

地上アナログ放送停波、広告費激減、ソーシャルメディアの台頭、スマートTV登場etc.これらは日本のテレビや映画をどう変えるのか?―財務的な源泉であった広告収入に頼れなくなる今後、日本の映像ビジネスはどうなっていくのか。スマートフォンやタブレット端末の登場は映像コンテンツの流れをどう変えるか。ソーシャルメディアの台頭によって私たちのメディアとの接し方は変わるのか。コンテンツを生みだしてきた“クリエイター”はどこへいくのか。メディアビジネスを熟知する気鋭のブロガーによる、渾身の論考。

あの佐々木俊尚氏の推薦とあれば、期待できそうな一冊です。
タイムリーなのでこちらもどうぞ。

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