おはようございます、ファッションにはまったく無頓着な一龍(@ichiryuu)です。(ユニクラーですがなにか?)
さて今日は、高級ブランド服の会員制ネットショップ、GILTグループの創業物語をご紹介。
恥ずかしながらこの本を読むまでGILTって知らなかったのですが、これがかなり興味深い。
現代の成功する起業のポイントがぎっしり詰まった一冊です。
【目次】
主な登場人物の紹介
まえがき 大切なのは人間関係と実行力
プロローグ 見ず知らずの人に高級ブランドが売れた!
第1章 キャリアと友情 スタートアップまでの道
第2章 アイデアを練り上げる ギルト・グループが形になるまで
第3章 ビジネスパートナーを選ぶ 相性のよさをどこで見極めるか
第4章 タイミングを計る ビジネスを始めるには旬の時期がある
第5章 ネットワークをつくる 立ち上げに向けて準備する
第6章 eコマースの売り場を改装する ビジュアルによるブランディングの試み
第7章 資金調達はアートだ! スタートアップにふさわしいベンチャーキャピタルを見つける
第8章 バイラル・マーケティングで顧客獲得 コストをかけない画期的手法
第9章 草の根作戦 インサイダー・マーケティングと高級感の維持
第10章 優秀な人材を集める 私たちはどのように有能なチームを作り上げたか
第11章 危機をバネにする 在庫不足とリーマン・ショックを克服する
第12章 私たちらしいリーダーシップのスタイル ギルト・グループの拡大後も自分流を貫く
第13章 超成長の反動をどう乗り切るか? 疲労困憊、そしてギルト・ジャパンを立上げる
第14章 これからのギルト・グループ これからのファッションeコマース
謝辞
訳者あとがき
解説
【ポイント&レバレッジメモ】
★ビジネスパートナーを選ぶ
私たちは一緒に働くことに不安はなかった。<中略>私たちはビジネススクールで知り合った友人で、ご近所の仲良しというわけではない。お互いの職業倫理も行動力も見てきた。お互いのビジネスの読みの深さもよく知っている。一番重要なのは、一番いいときと悪いときに相手がどう振る舞うかを見てきたことだ。おかげで、スタートアップが成長過程で必ずぶつかる浮き沈みに相手がどう対処するか想像がついた。<中略>
ビジネスのパートナーシップを組むことは、ある部分結婚と同じだ。なかなか踏ん切りがつかないような結婚はやめておきなさい、と忠告する友人がいるだろう。決断できないのは、相手に何かしらの疑いがあるからだ。私の場合、互いに疑念がないことが答えだった。
★反対意見には価値がある
ギルトが急成長できたのは、大きなリスクに挑戦したから、と私たちは信じている。<中略>
私たちの場合、企業は単なる無謀なリスクではなく、挑戦すべき賢明なリスクだった。リスクをより賢明なものにしてくれたのが、スタートアップの初期段階で出会った否定的な意見だ。事業を始めるとき、先行きを危ぶむもっともらしい反対意見に出会うのは避けられない。そして実際のところ、「きっとうまく行くよ」と言ってくれる人よりも、「どうかなあ」と首をひねる人が多いほうが、計画はうまく行く。私たちは経験からそう保証する。
★スピードが重要
身を持ってスピードの大切さを知っていたアレクシスは、ほかの何よりもスピードを重視した。1990年後半から10年間のうちに、スタートアップは短期間の準備で会社を立上げ、市場でもまれながらアイデアを磨き、顧客の声を取り入れながらビジネスを練り上げていくことが標準的スタイルになった。かつてはステルスモードといって、1、2年間は情報漏洩と模倣を防ぐためにこっそり内部でアイデアをあたためるやり方が一般的だったが、それでは時機を逸してしまう。インターネットの普及はアイデア自体の価値を下げ、アイデアを実現するのに少ない時間と投資で済むようになった。テクノロジーの発達で今やビジネスの初期投資は少なくて済む。事業立ち上げまでの期間は月単位か週単位まで劇的に短縮され、爆発的成功を収めるか、それとも労多くして実り少ないか、事業の明暗を分けるのは、「タイミング」となった。
★ネットワークをつくる
人脈づくりが得意だという人ばかりではないし、人づきあいが苦手な人でも起業はできる。だが時間が勝負の立ち上げ時期には、順調に軌道に乗せられるようにアドバイスし、最初の顧客を紹介し、取引先を探す労をとってくれるような支援者を、自分の人脈リストの中に少なくとも2、3人は見つけておきたい。それができれば、ビジネスの滑り出しは上々となるだろう。後押ししてくれる人たちがいるかいないかは、どんな会社であっても最終的に成功を握る鍵となる(障害がもっとも少ない道を教えてくれる人がいれば、どれだけありがたいだろう。結局、それが何よりも重要だ)起業家は得てして資源も資本もあまり持っていない。だから、あなたのために進んでひと肌脱いでくれる人たちがいるかどうかに成否はかかっている。あなたの成功は、周囲の人たちの応援なくしてはありえない。
★投資家が評価するのはアイデアではなく、あなた自身
「起業家は投資家がアイデアに投資していると思っている。だが、ベンチャーキャピタルは人に投資しているんだ」
「成功の実績を求めるね。学業でも課外活動でもいい。蝶の収集に夢中で、世界一の蝶コレクションを持っている、とかそういうことでいいんだ。私は、何か夢中になっているものがあって、その分野で必ず成功したい、という人物かどうかを見る」(ケビン・ライアン)
★ビジュアルをおろそかにしていいものなど一つもない
「スタートアップにとって一番重要なのは、プレゼンテーションよ。特にビジネスを始めたばかりのときには、そこがポイントになる。自分たちの見せ方にこそ投資したい。ビジュアル的に可もなく不可もない名刺を出して、私たちは高級品を販売していますと言うのは大問題。たとえまだ高級品市場に食い込んでいないとしても、差し出す名刺は思わず相手が目を見張るほどすばらしいものにすべき。強烈な第一印象を与えることにお金を使わなくてはならない」<中略>
ブランドを確立するためには、消費者の目に触れるすべてが重要になる。サイトのビジュアルはもちろん、名刺、パッケージからカスタマーサポートのメールの文章まで細心の注意を払うべきだ。リアは、ビジュアルをおろそかにしていいものなど一つもないと主張した。
【感想など】
400ページ越えのとにかくボリュームたっぷりの本でしたが、ゴールデンウィークの連休をつかって読破しました。
というと大変だったように聞こえますが、実際は面白くてどんどん読んで、しかも付箋貼りまくり。
あまりに気になるポイントが多過ぎて、今回の【ポイント&レバレッジメモ】ではどこをピックアップするかかなり悩みました。
が、ここはやはりスタートアップに関連したポイントだろうと、絞りに絞ってピックアップさせていただきました。
でも当然本書の魅力はこれだけでは伝わりません。
本書は、高級ブランド服のネットショップ、GILTグループの創業物語です。
ただ、これまで世に登場した有名企業の創業物語とはひと味違った内容となっています。
まずその最たる特徴は、チームで創業している点。
これまでは、例えば、孫さんとか三木谷さんとか誰か一人カリスマ起業家が、艱難辛苦を乗り越えて・・・ってイメージのものばかりでした。
それに実際世の中では、友人が集まっての起業というのはあまりうまく行かないというのが定説(?)になっていますよね。
それがこのGILTは主要メンバー5人(後にCEOとして加わる人がいますが)がお互いの弱いところをカバーしあい、それぞれの強みを活かした絶妙なチームワークで創業します。
まずここが奇跡的。
しかもAmazonの書景では帯がないのですが、5人のうちの主要メンバーのアレクサンドラとアレクシスがめちゃ美人!(どっちがどっちなのかわからないのですが)
いまだに社員も二人を間違うらしいですが、こんなにそっくりな美人が創業者なんて、さらに奇跡。
しかもこの二人が何と言いましょうか、お二人ともすごく優秀な上に互いに補い合い、まさに”二人で一人”なのです。
まるで西郷と大久保、いや劉備と孔明。
今でも私たちはパーティーやディナーに一緒に出席し、アメリカ・ファッションデザイナーズ協議会にもひとつのチームとして出る。一緒にいることで自己紹介が楽になり、知り合いには必ずどちらか一方が挨拶する。二人一組は効率がより——それは確かだが、それだけではない何かがある。一緒にいることで、私たちは自信がわき出てくる。お互いに支え合える。どんなことでも二人一緒だと楽しくなるし、それ以上にお互いの能力がより発揮できる。私たちの友情の本質は、一緒にいることでお互いの能力も精神状態も向上させるところにあり、それがギルトを成功に導いた。
しかも驚愕なのは成功した後も、この関係がうまく行っていること。
まだ起業からそれほど時間が経っていないとはいえ、創業メンバーが離脱していくことはよくあることなのに、それがこの会社の創業者にはない。
ちょっとこれは珍しいパターンだと思います。
その要因は、アレクシスが一度起業に失敗した経験から、すごく慎重に創業チームの人選をしていることにあるのでしょうが、いかにチームの夢とか志を同じ方向で維持できるか?
何を最重要な価値とするのか?そのための方策は?といったところをぜひ注目して読んでいただきたい。
(ただ、これだけ似ていて美人な二人を見ると、これは特殊な例で、”運命”といった何かを感じずにはいられないのも正直なところですが)
さて、もうひとつ。
これまで何冊か起業物語を読んだことがありますが、今までに読んだものと決定的に違っていると感じたものにそのスピードがあります。
とにかく起業のスピードがアップしている!
本書中に引用されているのですが、
「アイデアを製品化し会社をつくるまでの過程は、かつて長い時間をかけて歩くトレッキングだったが、今や多くの人たちにとってダッシュで走り抜く短距離走になった」(ニューヨーク・タイムズ紙2011年5月)
この短距離走というスピード感を本書ではすごく感じます。
松下幸之助さんが電球のソケットをつくって売ったとか、本田宗一郎さんが自転車にエンジンをつけたとか、そんな時代とはまったく違う。
先出の孫さんや三木谷さんの時代と比べても、もはや隔世の感がある。
テクノロジーの進歩で、昔の起業のスピードが徒歩の旅なら、本書のような現代の起業はまさにロケットです。
インターネットの普及はスタートアップ時のコストを劇的に下げたけれど、その分アイデアの賞味期限を非常に短くしている。
これからの起業家は、資金面で低くなったハードルを全速力で走りながら超えて行くような感覚になるのでしょう。
ちなみにこの圧倒的なスピード感が本書では伝わってくるので、400ページ越えのボリュームをまったく感じさせず、最後まで走ってしまいます。
今後ますます進歩するであろうIT環境のなかで、スタートアップを目指す方には、本書は現在のところ最新の起業教科書という位置づけでしょう。
しかもチームで起業するという特殊なところも参考になるはず。
起業を考えているならぜひ!読んで損はありません!
本書は日経BP社編集者の中川様より献本していただきました。
ありがとうございました。
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