ペルー共和国の首都リマにあるラファエル・ラルコ・エレラ博物館。
その名は南米随一の遺物収集家の名を冠しています。
4万点にのぼる彼の収集品をベースに、さらに息子のオイレがコレクションを加えてできた博物館。
ここはペルー北海岸からの出土品の宝庫です。
【今号の一押し】
アジア文化圏とは全く違う中南米の出土遺物は、どれもわれわれの興味引き起こすものばかりですが、今号では何と言ってもこの絢爛豪華さに目がいってしまいました。
13~15世紀半ばまでペルー北海岸で権勢を誇ったチムー王国の王が、儀式に臨む際に身につけていたものと考えられています。
16世紀にアンデスを訪れたスペイン人は
「王は金の神輿に乗り、金の鎧と斧に身を固めた護衛にかしずかれて街を練り歩く。ある畑では土は金ででき、金のトウモロコシが実っていた・・・」
という記述を残しているそうです。
さすがに畑やトウモロコシが金というのは誇張ですが、この遺物を見れば、この記述がまんざら誇張のし過ぎではないことがわかります。
それにしても、鉄器製造の技術はなかった地域ですが、これほどの金加工技術が発達していたのは驚きです。
おそらく、腕のいい金属細工の職人たちが多数いたのでしょうが、その技術はチムー王国が征服したシカン王国から継承したもののようです。
これを見たスペインの征服者が黄金の輝きに魂を奪われたのもわかる気がしますが、この豊かさが征服者の欲望に火をつける結果となり、文明が滅んでしまうことになろうとは。
豊かさ故に滅びるなんて、歴史とは皮肉なものです。
次号はヨーク国立鉄道博物館です。