世界の博物館、第44号はアクロポリス博物館です。
有名なパルテノン神殿のあるアクロポリスの南東の麓に2009年に新築移転したこの博物館は、古代ギリシアの都市国家アテネの美しき遺産を伝える博物館です。
【今号の一押し】
ギリシア文明の芸術性の高さは今更言うまでもありませんが、この像はアルカイック期の典型的な彫刻でありながら独特の個性を持っています。
まず、コレーとは「若い娘」を意味します。
(ちなみに若い男性像は「クーロス」)
そして、ペプロスというのは羊毛でできた長衣でアテネを含むアッティカ地方の伝統衣装です。
このコレーはアクロポリスにある神殿の一つ、エレクテイオンの近く、地表3~3.5mのところから、14体見つかったもののひとつ。
一体誰が何の目的で埋めたのか?そもそもコレーの用途は何なのか?
はっきりしたことはわかっていません。
しかし、何とも言えない魅力をたたえています。
その表情はまさにアルカイックスマイルそのもの。
唇の両端がわずかに上がっていて静かな微笑みをたたえ、そして、わずかに髪や瞳、唇に制作当時の色彩が残っているのもこの像の魅力を際立たせています。
この博物館には他にもアルカイック期の傑作彫刻群が展示されています。
しかも、自然光のもと360度あらゆる角度から鑑賞できるように展示を工夫しているそうです。
ところで、今何かとお騒がせなギリシアですが、ワタクシは10数年前に訪れたことがあります。
当然このアクロポリスにも登り、2千数百年前の人類の英知に驚嘆したものですが、しつこくつきまとうお土産売りの売り子さんや、街全体を覆う暗くて貧しい雰囲気にちょっとうんざりもしました。
でも、こんな素敵な博物館ができているのならまた行ってみたくなりました。
今度行くとしたら、財政破綻してギリシアがEUから切り捨てられ、ドラクマが復活、しかし貨幣価値が暴落していて超円高ドラクマ安の時がギリシア旅行の狙い目かなと、真剣に考えております。
次号はトリノ・エジプト博物館です。