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共に生きる社会を!【書評】渡邉 幸義(著)『美点凝視の経営』 致知出版社

おはようございます、一龍(@ichiryuu)です。

さて、今日は当ブログでも何度か紹介してきたアイエスエフネット代表の渡邉社長のの新刊のご紹介。
著者の本は読むたびに「すごいなぁ」と思ってしまうのですが、今回は「えっ、それをやるのですか!」という驚きも。

【目次】
はじめに
プロローグ
第1章 障がいは”個性”
第2章 障がい者雇用の現実
第3章 障がい者雇用実現のために
第4章 障がい者雇用は会社と親の二人三脚
第5章 障がい者たちからもらったプレゼント
第6章 雇用を作ることこそ私の使命
第7章 新しい働き方を創って行く
第8章 私の夢
エピローグ  再び「一人一秒のプレゼント」

【ポイント&レバレッジメモ】

★大切なのは理と利のバランスをとること。そのために休まないことにしました。

 私が障害者を雇用しながら、いつも思うのは理と利のバランスです。
つまり理想と利益のバランスをとることです。障がい者を雇用しながらきちんと利益も出す、きちんと社員に給料を出さなくてはいけないのです。<中略>
会社を活かすために障がい者を傷つけてはいけないし、会社を殺せば障害者の雇用も奪ってしまいます。大切なことは彼らにやりがいのある仕事をしてもらいながら、利益も出すこと。それが理と利のバランスだと思います。

★障がい者雇用の新しいピラミッド
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 障がい者雇用の現状は下から四段目までです。数字で言うと、就労できない人が実に95%を占めています。職業訓練を受けている人は2%。つまり働けているのは3%に過ぎないのです。
工賃で働いている人は2%です。「工賃」はいわゆる授産施設と言われるところで支払われるもので、国や地方自治体からの援助があります。<中略>

「最低賃金」から「やりがいのある仕事」にステップアップするには、本人の強み、個性、得意なことを生かした仕事を見つけなくてはいけません。
それには時間がかかるので、企業はなかなかやろうとはしません。企業は即戦力となる人間から雇うということが大原則になっているのです。ましてや障がい者の訓練には健常者より時間がかかることが多いのです。
しかし私は考え方次第ではないかと思うのです。
大学生の新卒者の離職率が3年で30%にものぼります。それなりの給料を払っていても3年やそこらで次々とやめていかれるよりは、障がい者の最低賃金で2年間、自分にあった仕事を見つけ、訓練して身につけてもらう。そしてその人二何十年と働いてもらったほうが本人にも会社にも素晴らしいことではないかと思うのです。

★障がい者だって主役=スターになれる

 私は最近障がいについてこのように考えるようになりました。人間誰でも得手不得手がある。その振れ幅が大きいとそれが障がいと認定されるのです。ただ、障がい者に関してはネガティブなところばかりを見て、”得手”の部分、”天才的な能力”を発掘する努力を怠っているような気がしてなりません。
この部分を見つけ、伸ばすことができれば、大勢のスターを作り出すことが可能だと思っています。

★新卒者も上から目線ではなく、同じ目線で採用するのがあるべき姿

 上から目線でまるで商品を選ぶように、人を選んでいくというのは人間を壊していきます。学生がかわいそうです。<中略>
私は「会社とは昼食を食べに行くレストランと同じだ」という話をよくします。
「カレー屋さんに入って、ここには寿司はないのかって怒る人はいない。寿司を食べたいなら寿司屋に行きなさい」と。当グループでは障がい者雇用や二十大雇用をしています。それが自分の求めているものと違うなと思ったら入らなければいい。カレー屋ではなく寿司屋に行けばいいのです。つまり別の会社に入ればいいのです。何しろ会社は二百万社以上あるのですから。

★ドラッカーの逆を行くビジネスモデルで雇用を作り出す

 じっくり考えた末に出た結論は、当グループの大義はネットワーク・エンジニアを育てることではなくて、雇用の創造なんだというものでした。障がい者も含めてより多くの人の雇用を創造するためには、ネットワーク・エンジニアを育てることだけにこだわっていては無理なのです。人によって、障がいに応じて仕事を作っていかなくてはいけない、「選択と集中」ではなく「さまざまなところに広げ」なくてはいけないのです。
私は雇用創造のために、世界の経営学者ドラッカーの理論の真逆をいくビジネスモデルを追求しようとしています。

【感想など】

今日紹介したのは、当ブログでもすでに何冊か紹介しているアイエスエフネットの渡邉社長の新刊です。

この渡邉社長を含め、日本理化学工業の大山会長や、『日本でいちばん大切にしたい会社』の坂本先生が示す経営スタイルこそ、21世紀型の経営、企業のあり方でなければならないワタクシは常々思っております。

社員を大切にするとともに、障がい者雇用を積極的に行う会社。

こういう会社が世の中にどんどん増えていって、多数派になった時、世の中は変わるんじゃないかと。

というか、変えなければならない。
そして世の中も、こういった会社をもっともっと評価するように価値観を変えていってほしいものです。

さて、本書内でも書かれていますが、現在の日本の障がい者雇用の状況は本当にお寒い状況というしかありません。

障がい者雇用のゴールである一般企業での就職は1%程度。

しかも企業は軽度の身体障がい者、つまり知的には健常者と変わりなく、精神的にも健康で、身体機能の一部にハンデをもつだけの人をまず雇用しようとします。

また、企業としては法定雇用率の1.8%さえ守っていればいいというのが本音でしょう。

したがって、雇った障がい者を戦力として育てようとはなかなかしないもので、たいていの場合は、簡単な作業を割り当てる程度です。

これではやりがいのある仕事で充実感を得るとか、ましてや自分が主役になる、そのためにスキルと経験を積むなんてことはまず無理だと思います。

ましてや一般企業就職の手前の段階の授産施設は、就職とは似て非なるもの。
基本的に授産施設では障がい者はお客様ですので、そこでの作業は自立のための訓練とかある種のスキルを身につけるためのトレーニングなど、次のステップへ進むためのものではありません。

しかもそこで払われる賃金は本当に微々たるもの。
とても自立を目指せるようなものではありません。

ワタクシには身近に、障がい者の子どもをもつ先輩がいるのですが、その人がいちばん心配しているのは養護学校を卒業してからのこと。

そして最終的には、自分たち夫婦が先立ってから後、この子がどうやって生きていくかということ。

これは、すべての障がいを持つ子の親が共通してもつ心配点です。
そして、親たちの願いは、

「自分で食べていけるだけの給料を払ってくれて、一人一人の障がいに対応して面倒をみてくれる会社があったら・・・」

そのためには福祉だけでは限界があります。
やはり企業が障がい者雇用に真剣に取り組む、そしてそういう企業が増える。
これしか方法はないでしょう。

もちろん、正規社員としての採用を目指すなら、それは障がい者にとっても厳しさを要求されることでしょう。

障がい者本人も保護者にとっても意識のシフトが必要かもしれません(もしかするとここがいちばんのネックかもしれません)。

しかし、この渡邉社長のような取り組みをする会社が増えていき、障がい者雇用に対する企業と、それを取り巻く環境が変わってくれば、障がい者本人と保護者に意識も大きく変わり、相乗効果で現状改善のスピードが上がっていくこととワタクシは信じています。

さて、

それにしても、渡邉社長の本は読むたびに考えさせられること、ビックリさせられることが多い内容です。

特にこの方のエネルギーというか、バイタリティーというか、この超前向きな行動力とマインドはどこから湧いてくるのか。

創業してわかったことが一つあります。
「人のためになることで、解けない課題はない」ということです。
考えて考えて考え抜けば、どんなことでも必ずできると思っています。
事実、これまでさまざまなことを実現してきました。
そして将来、必ず形にしていきたい夢がまだたくさんあります。

第8章 私の夢 はこの一文で始まりますが、ここで語られる渡邉氏の夢がすごい。

・障がい改善のための教育

・障がい者雇用の処方箋を作りたい

・障がい者の営業を百人作りたい

・アジアの国にも障がい者雇用を広げたい

おそらく今後出版される著書で、これらの夢が現実になっていく過程を知ることができると思います。

特に障害改善のための教育は多くの本人・親御さんが待ちわびているものでしょう。

本来これは国がやるべきことですが、レベルの低い暴走文部科学大臣に任せていてはいつになっても始まらないと思いますので(得意技が不認可ですから)、ここは渡邉社長に期待したいと思います。

そして我々は渡邉社長のような変革者や、その会社を応援することで世の中を変えていくお手伝いをしませんか。

その動きがいずれあるレベルを超えたとき、この国は急速に変わると思います。
20年後、50年後の子どもたちのために。

本書は株式会社アイエスエフネット、沖様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】
同著者の既刊書を掲載しておきます。

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