世界の博物館、第14号はメトロポリタン美術館です。
アメリカにありながらエジプト文明の展示の内容の濃さは圧巻です。
【今号の一押し】
リード文で書いたように、エジプト文明の特に新王国時代の展示が質量ともに圧巻なのですが、ワタクシはあえてこちらを押したいと思います。
「クーロス」
「クーロス」とはギリシア語で「少年」の意味。
美術史においてはアルカイック期に作られた裸体の若い男性像を指します。
正面を向いて直立、左足を半歩前に出した姿勢で、両手は拳を握って側面にまっすぐおろしています。
この様式はエジプトの影響で、生きている姿を現すファラオ立像はまったく同じポーズで表現されます。
(ちなみに腕を正面でクロスしてるのは、死んだ状態を表します)
この「クーロス」と対になるのが、着衣の女性像である「コレー」。
二つとも非常に素朴な表現様式の彫刻です。
が、この二つの様式がすべての原点。
後に見事なギリシア彫刻へと発展していき、その技術はガンダーラへ伝えられ仏像彫刻へと繋がり、やがて日本へも伝播してくるのですから、「クーロス」の左足の一歩は彫刻史の最初の一歩なのかもしれません。
巻末には古代エジプト3000年の足跡をまとめてくれたコーナーもあります。
次号はニューデリー国立博物館です。