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栗田正行(著)『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』明治図書【本の紹介】まだまだ教師個人レベルでできることはあるが・・・

栗田正行(著)『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』明治図書【本の紹介】まだまだ教師個人レベルでできることはあるが・・・
この記事を高校の先生が読むと、仕事への取り組み方が根本的に変わり、効率化が進んで、余裕と時間が生まれるかもしれません。

こんにちは、元高校教師のなおさん(@ichiryuu)です。
今日ご紹介するのは、
栗田正行(著)『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』明治図書

ニケ
ニケ

父ちゃん、学校の先生の働き方にはいろいろ言いたいことがありそうだね。

なおさん
なおさん

あるある、いっぱいある。
今回ばかりは毒舌になるよ。

アンジュ
アンジュ

おっ、ついに本性を発揮するのか?

この本をおすすめするのはこんな人

この本をすすめるのはこんな人
  • もっと効率よく働きたいと考えている先生
  • 教師になりたてで働き方がまだ確立されていない新人先生
  • 教師になろうと思っていて、実際の教師の仕事がどんなものか知りたい人
ご貸与品
この記事は、著者の栗田正行先生から本書をご恵贈いただき作成しています。

『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』:読書メモ

栗田正行(著)『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』明治図書

できる教師の「3条件」を意識する

著者によると仕事ができる教師は次の3つのことを意識しているとのこと。

できる教師の「3条件」
  1. わからないことは人に「すぐ聞く」
  2. 仕事の進め方が「確立」されている
  3. たまに「じゃましづらい雰囲気」のときがある

1つ目のわからないことは人に「すぐ聞く」というのは、社会人としては当たり前ですねよね。

なおさん
なおさん

ただ、何でも聞けるのは新人のうちの特権で、ベテランになっても「すぐ聞く」人はただ鬱陶しい(時間泥棒)存在になるので気をつけましょう。

2つ目の、仕事の進め方が「確立」されているというのは、教師ならではのポイントだと思います。
というのは、教師の仕事は基本的に長期的には毎年(入学式・卒業式、体育祭、文化祭、総体など)、中期的には毎学期(定期テストや成績処理、懇談など)、短期的には毎週・毎日繰り返す仕事(授業、部活など)、つまりルーティンワークがほとんどなのです。
学校によって多少ルールややり方に違いはありますが、少なくともその学校に1年入れば大体の様子はわかります。
なのに先生の中には、その仕事の時期になるとバタバタしてしまう人がいます。決まった段取りや仕組み化、そして仕事の記録を残していればそんな事態に陥ることはないはずです。

そして僕も実行していたのが3つ目の、たまに「じゃましづらい雰囲気」のときがあるです。
みなさんは「がんばるタイム」って聞いたことありますか?
これ、何かというと、

インターネットはおろか電話も禁止というような、話しかけられない環境で集中した方が私はスムーズに仕事が進みます。下着メーカーであるトリンプ・インターナショナル・ジャパンで採用されて有名になった「がんばるタイム」がその代表的な実践例です(「がんばるタイム」とは、毎日12:30〜14:30の間は電話禁止、私語禁止、立ち歩き禁止でひたすら業務に集中するというものです)

この「がんばるタイム」を一人で実行するわけで、授業が2時間空いている時に僕は「一人頑張るタイム」と称して集中的に書類仕事を実行していました。

ところが、学校の職員室(特に大部屋)というのはとにかく集中するのに向いていない環境なのです。
必ずだれか暇な先生がベラベラ喋っています。
電話もかかってきますし、遅刻してきた生徒の対応なんかもあります。
そんな学校で「がんばるタイム」を実行する方法はただひとつ、“集中できる場所を見つける、あるいは作る”です。
空いている教室(教室なら電話もかかってこない)などをうまく活用して、とにかく集中できる場所を確保しましょう。
ちなみに僕は、この時間はよく喋る先生がいないとか、この時間は準備室に誰もいないといったことを記録していた「裏時間割」みたいなものを作っていました。
そして、その時間にやるべき仕事を割り振って計画を立てていました。

ニケ
ニケ

そんなに学校の職員室って集中できないの?

なおさん
なおさん

むずかしいね。
いつも思っていたのは、先生が集中するための障壁は暇な先生ってことかな。
しょっちゅうなんでも聞いてくる年配の先生がいて、「ちょっと時間いいですか?」ときいてくるので、「急ぎの仕事なのでダメです!」ってはっきり言ってブロックしてたなぁ。

ポイント
時間泥棒はブロックする

「即対応」がすべての基本

学校やクラスで問題が起きたときには、まず迅速で具体的な行動をとることが重要です。〈中略〉即対応をするのは、それ以上、問題を大きくしないためです。

即対応することですべてが解決しなかったとしても、子どもたちや保護者に対し、行動することによって対応中であることを態度で示すことは重要

これはもう基本中の基本。
これを面倒くさがって先送りすると、面倒くさいことはさらに面倒臭くなります。
対応の初速はとても重要。

そして学校では、予測できない突発的な事件も起こりますが、その時に即対応できるようにしておくためのポイントは、担任、副担、学年主任、教頭の連携を日頃から心がけておくことですね。
一人での対応には絶対に限界がありますから。

なおさん
なおさん

言い方を変えると、日頃から学年主任や教頭を“巻き込んでおく”意識が大事かな。

ポイント
いつでもスクランブルできる体制を日頃から作る

部活動は「業務命令ではない」

教師の多忙感に拍車をかけるのが部活動。
特に運動部や、文化部でも吹奏楽などは、土日も関係なく練習、練習試合、大会出場に忙殺されます。

しかし、部活の顧問という仕事は、かなりあやふやなものなのです。

まず、最初におさえておきたいのは、部活動は絶対的な業務命令ではないという点です。

これ、これから教師になりたいという若い方や、保護者や生徒も知らない人が多いと思うので知っておいて欲しいのですが、部活動の顧問というのは業務命令ではありません。
あえて、極端な表現をすれば、「教師が好きでやっている」というタテマエです。

なので、残業代もつきませんし、土日の部活指導の手当も本当に安いです。
都道府県によって額は違いますが、香川県だと今は休日にまる1日部活指導して2000円台ですね(僕が若い頃は1日800円ぐらいでした)。
ほとんどボランティアです。

しかし、業務命令ではないといっても、学校の先生は「授業」「校務の仕事」「部活の顧問」の3つの仕事ができて一人前という認識が存在しますし、部活が盛んな“強豪校”に部活指導ができない先生が赴任すると、「使えないやつ」という見られ方をされることもあるのは事実です。
さらに、業務命令ではないにもかかわらず、なにか事故でもあれば顧問の責任問題になります。

僕は部活のメリットの大きさは認めています。
教育的効果が大きいですし、そもそも学校に部活動があることで、日本の子供たちは格安でスポーツを経験することができます。
しかし、それを支えているのは非常にあやふやな立場で責任だけは負わされて、家庭を犠牲にして指導している教師たちの義務感であることを知って欲しいと思っています。

この現状を根本的に改善するには、文科省が大鉈を振るうしかないとおもいますが、まずそんな日はこないでしょうから、教師にできることは

部活動へのかかわり方や考え方を変えていくことしかありません

結局、長期にわたって健全に教師生活をおくりたいのであれば、生徒や保護者にも了解を得て、望ましい顧問体制を自分で作るしかありません。

ニケ
ニケ

父ちゃんも部活は大変だったもんね。

なおさん
なおさん

部活が忙しい学校に勤務していたときは、完全に母子家庭状態だったもんね。
家族もそうやけど、自分自身も疲弊していったよね。
部活との付き合い方は教師生活の質に大きく関わると思うよ。

ポイント
自分の生活にあった部活との付き合い方をつくる

効率化すべき仕事とすべきでない仕事

仕事には「効率化すべき仕事」と「効率化すべきでない仕事」があると著者は言います。
ざっくりとわけると、

効率化すべき仕事

書類作成や事務処理などのルーティンワーク

効率化すべきでない仕事

授業や生徒・保護者にかかわること

先生は生徒に向かって何事も全力で取り組むことを求めますが、その影響でしょうか、教師という仕事においても何事も全力投球していないでしょうか?

「時間」というリソースには限りがあります。
全てに全力で取り組むと、「時間」というリソースはまったく足りないでしょう。
「この仕事の目的、ゴールは何か?」と考える習慣を持つことが、時間を生み出す第一歩だと思います。
教師にとって最も重要な仕事は「授業」と「生徒と向き合うこと」であり、そこにリソースを集中するために、効率化できる仕事はできる限り効率化するべきですし、よく見ると。

例えば、一般の方はご存知ないと思いますが、教師の作成する書類の中で一番重要なものに指導要録」というものがあります。
これ、完成後のチェックも入れると、すごい時間をかけて作成しますが、一般に公開することもなく、決められた保存期間が過ぎると廃棄してしまいます。
僕は現役の教師時代、「指導要録」作成に大量のリソースを注ぎ込むことに何の意味があるのかさっぱり理解できませんでした。

こういう何のためにしなければならないのかわからない仕事が、教師の仕事にはまだまだたくさんあるように思います。

あくまでも、教師にとって大切な仕事は「授業」と「生徒と向き合う時間」です。

ニケ
ニケ

いい意味で、緩急は大切だね。

なおさん
なおさん

長い教師生活はずっと全力投球はできないよ。

ポイント
教師にとって何が一番大切な仕事かを考える

会議の「意図・ねらい」を意識する

会議には、話し合い意見を出し合って何かを決めるという「決議」のためのものと、単なる「連絡」のためのものの2種類あると思います。
で、学校の会議には

会議資料として配布された書類を凝視しながら、提案者が書面とまったく同じ事柄・内容をただひたすら読み続ける

という、「連絡」するためのものが非常に多い。
特に職員全員参加の会議がそれで、確認の意味もあるのでしょうが、いつも時間の無駄だなぁと思っていました。
資料読んでおけばすむことですからね。

また、「決議」のための会議の場合、ゴール設定ができていないためだらだらと長時間話し合って、結局何も決まらないということもあります。
とある高校では、「どうやって働き方改革を実現するか」というテーマで数時間にわたって会議が続き、結局何も決まらなかったというなんとも冗談みたいな本当の話も現実にあったようです。

会議に関しては、会議の進め方とかやり方について教師ももっと勉強するべきだと思います。

ニケ
ニケ

父ちゃんは会議にどう参加していたの?

なおさん
なおさん

前もって資料を読んでおいて、会議中は出席簿の整理をしたり、仕事のスケジュールを立てたりしていたよ。
「連絡」ばっかりだったからね。

ポイント
会議の方法は企業に学ぼう

『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』:まとめ

栗田正行(著)『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』明治図書

まだまだ伸びしろはある!?

以上、栗田正行先生の『高校教師の働き方』より、気になったポイントをピックアップしてみました。

この本、教師の仕事の全範囲にわたってカバーしているため、細かくピックアップするとキリがないため、上記の5つにしぼって僕の考えや経験を含めて書いてみましたが、いかがだったでしょうか。

僕は2019年3月に高校教師を辞職しましたが、辞める1、2年前から高校の現場でも「働き方改革」という言葉をよく聞くようになりました。

先生の働き方の効率化という点だけで言うと、まだまだ改革の余地があると僕は思っています。
例えば、高機能のマウスやPCの便利な機能を使いこなすことなど、デジタル機器をうまくつかえばまだまだ伸びしろはあるでしょう。

しかし、現場でよく感じたのは学校という働く環境の劣悪さでした。
例えば、2018年の夏、記録的な猛暑だったじゃないですか。
あのとき、全国の公立学校のエアコンの導入率に僕はびっくりしましたよ。
エアコンすら100%設置されていないのが日本の学校現場の現実なのです。

この本では、教師個人個人の働き方についてどうすればもっと効率化できるかを、著者自らの体験をもとに書いてくれています。
その点はすごく参考になるので,ぜひ現役の先生に読んでほしいと思います。

ですが、現場の教師の努力にばかり頼るというのはそろそろ限界ではないかと僕は感じています。

根本的な改革をしないと日本の教育は崩壊する

実は僕は、教師の「働き方改革」は無理だと思っています。
それどころか、日本の教育はこのままでは崩壊すると予測しています。
感覚としては、崩壊寸前の教育現場を、現場の先生たちが歯を食いしばって支え続けているという感じでしょうか。

にもかかわらず、どんどん人員削減が進み、「授業」「校務の仕事」「部活の顧問」の教員の仕事の3本柱のすべての荷重が増えています。
職員数の少ない学校では、「校務」も「部活の顧問」も複数掛け持ちするのが当たり前になっています。
そういうブラックな現実が学生にも聞こえているのでしょう、教員採用試験に優秀な人材が集まらなくなってきました。
それに、現役教師の年度途中での離職や休職も増えています。

また、インターネットの普及により、実は学校という場所に行かなくても自宅でYouTubeで勉強することができ、しかも学校の先生より授業がうまかったりするコンテンツがたくさん登場しいます。
その事実にコロナウイルスによる休校中に、おおくの生徒が気がつくのではと思っています。
すると、優秀な生徒ほど学校に行くメリットを感じられなくなるでしょう。
近い将来、学校に通うのは、学校に行かないと勉強しないというレベルの生徒だけになるのではないでしょうか。

こうして、日本の教育は質量ともに低下して、それはとりもなおさず日本の国力低下に結びついていくと、僕は予想しています。


そうならないためには、トップダウンの改革が絶対必要で、たとえば部活を学校教育から完全に切り離し、教師には授業に専念してもらうといった大鉈を振るうしかないのですが、まぁ、文科省には期待するだけ無駄でしょうね。
なんのビジョンもないですから。

そろそろ、日本は将来どこへむかっていくのか、そのためにどんな教育がもとめられるのか、国民の皆様で考えていただきたいと思います。


この本をひとことで言うと

教師の働き方マニュアル

この本の評価
読みやすさ〈寸評〉すらすら読めます
(5.0)
実現できそう度〈寸評〉実現しないとブラックのまま
(4.5)
実用度〈寸評〉誰でも実行できます
(4.0)
コスパ〈寸評〉実現すれば一生ものです
(4.0)
信用度〈寸評〉著者が実証済み
(5.0)
総合評価
(4.5)

著者プロフィール

栗田正行(くりた まさゆき)

一度は憧れて教員になるも理想と現実のギャップに耐えられず退職。飲食業を経て、塾講師へ転身。教室責任者として、授業スキルだけでなく、社会人としての考え方、効率的な働き方、子供から大人まで対応できる幅広いコミュニケーションスキルを徹底的に学ぶ。その経験をもとに、今一度教職を選んで現在に至る。書籍や連載の執筆に加え、講演や校内研修の講師としても活躍中。実務に即し、再現性のある内容で参加者の満足度は高い。

『高校教師の働き方 最高の教師ライフを送る仕事術』:もくじ

はじめに
序章 高校教師の1日&1年のタイムスケジュール
1章 おさえておきたい仕事のやり方・考え方
2章 授業―基本と入念な準備で教師ライフを変える
3章 部活指導―効率化&協力で教師ライフを変える
4章 会議・書類作成―整理整頓と効率化が教師ライフを変える
5章 補習・定期テスト・面談等―生徒の学力を上げることが教師ライフを変える
おわりに

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