おはようございます、一龍です。
今日ご紹介するのはテレビ朝日の人気番組「池上彰のニュースそうだったのか!!」を書籍化したもの。
『池上彰のニュース そうだったのか!! 1 日本人なら知っておきたい「実はみんな知らない日本」』 です。
シリーズ第1巻はサブタイトルでもわかるように、日本について。
みんながよく知っているようで、実は深く知らないものをいろいろ取り上げてくれています。
今回はこの本の中から僕が「そうだったのか!!」となったトピックスを幾つかピックアップします。
いやぁ、知るって楽しい!
実はみんな知らない日本のポイント
★「共産」「共和」は日本製だった
古来から日本人は外国の文化や技術を取り入れて、それを日本風に改良したりアレンジするのが得意な民族。
中国が起源の漢字もその一つです。
漢字が日本に入ってきて、大和言葉に当てはめて「訓読み」をしたり、漢字をもとにひらがなやカタカナを生み出したり。
「音読み」「訓読み」と「漢字」「ひらがな」「カタカナ」の3種類の文字を操る国って日本だけです。
そしてさらには「鰯」「峠」など、日本独自の漢字も生み出しています。
ほんとすごいですね。
さて、日本は漢字文化圏で最初に文明開化をやってのけた国でもあります。
その関係で現在私達が使っている多くの言葉を日本が作り出しています。
幕末・明治時代になると、ヨーロッパやアメリカから全く新しい文化や考え方が入ってきます。
当時はこれらに当てはまる日本語がまだありませんでした。そこで日本の知識人たちは、欧米の思想や科学技術の言葉、特に学術用語を日本語で理解できるように、一つ一つ翻訳して漢字に置き換えていったのです。
たとえば
economy(エコノミー)を例にとると、これは中国で言う「経世済民」、人々の暮らしをよくしていくという意味になる。ならば、「経世済民」の「経」と「済」を取って「経済」にしよう。
なかでも福沢諭吉さんの造語が非常に多いのは有名です。
なんと freedom(フリーダム)を「自由」と訳したのも福沢諭吉さんだったんですね。
ところで、西欧化が遅れた中国では日本から漢字を逆輸入するという自体が発生しました。
漢字を作り出したはずの中国大陸の、今の中華人民共和国という国ですけれども、その国名にある「共和」という字は、実は日本で作られたものです。日本では republiek (オランダ語)を共和国と翻訳していました。
あるいは中国共産党の「共産」。これは communism (コミュニズム)を「共産主義」という言葉が中国に逆輸入されたもの。ということは、「中華人民共和国」も「中国共産党」も、肝心かなめの漢字の部分は、実は日本製なのですね。
どこの国が発祥かは問題ではなく、こうやって文化は磨かれていくものですが、これは面白い現象ですね。
★神宮とか大社とか、神社の名前の違い
日本人の民族宗教は神道。
その神社には「◯◯神宮」とか「△△大社」といったいろいろな呼び方をするものがありますよね。
これらの違いを知ってましたか?
神宮は天皇や皇室と関わりの深い神社です。よく伊勢神宮といいますね。私達はそう言いますけど、正式な呼び方はただの「神宮」。上に何も付けないのです。ですが、今は一般的に伊勢神宮と言っています。
あるいは、明治天皇をまつっているのが明治神宮。そういう天皇や皇族とゆかりの深いところが神宮です。
大社は著名な神社の総本山的なところです。出雲大社や春日大社など。
そのほかに、武士の神様「八幡神」をまつった八幡宮や学問の神様、菅原道真をまつった天満宮もあります。
全然知りませんでしたが、伊勢神宮はただの「神宮」が正式名称だったんですね。
ちなみに
なお、川崎大師のように大師とついているところは、神社ではありません。弘法大師空海に由来するのでお寺です。川崎大師の正式な名前は平間寺。豊川稲荷も正しくは妙厳寺というお寺
だそうです。
豆知識として知っておきたいですね。
★天皇陛下のお仕事
天皇陛下のお仕事って、どんなことをされているか知ってますか?
憲法で規定されている大臣の任命とか、国会の開会式以外にもたくさんあるようです。
被災地へのご訪問や総理大臣の任命、さらに海外の要人をおもてなしされる様子などはよく目にしますが、実はこのようなこともされています。
それが祈ること。天皇陛下は日本の神主の代表のような方です。ですから、今でも年間数十回、重要な祭祀、つまりお祈りなどの儀式をなさっています。
ふだん私たちの知らないところで、早朝や場合によっては深夜に、皇居の中でさまざまなお祈りをされている。それが天皇陛下のお仕事だということです。
つまり、日本国民の生活の安寧をお祈りされる存在。
それが天皇陛下なのだそうです。
また、
もう一つ、年間1000件以上の書類にサインをすること。これも皇居での大事なお仕事です。
とのことですが、筆でお名前を書かれたものが「御名」、さらに押印されたものが「御璽」というそうです。
そしてこの「御璽」の印鑑、なんと金でできていて重さ3.5キロなのだとか。
いやぁ、テレビで放送されていない国民の目に触れないところでも大変なお仕事をこなされているのですね。
★靖国参拝を中国が批判し始めたのは
今年は終戦70周年でしたが、総理大臣の靖国神社参拝を中国が非難し始めたのはいつからだったのでしょうか?
それは
ある総理大臣の参拝がきっかけで中国や韓国が突然、批判を始めました。
とのこと。
どのタイミングで批判が始まったかというと、中曽根総理大臣の10回目、1985年8月15日の参拝です。これをきっかけに中国が批判するようになりました。
この85年までの約6年間、何度も総理が参拝しているのに、中国と韓国は何も言ってきませんでした。
この時の中曽根さんが記者たちの質問に答えた言葉が
「内閣総理大臣としての資格において参拝をいたしました。(「これは公式参拝でしょうか私的参拝でしょうか?」という記者の質問に)もちろんいわゆる公式参拝です」
中曽根総理は10回目の参拝で「公式参拝」と明言したのです。これは歴代総理で初めてのことでした。
この「公式参拝」に中国が反応したのです。
このとき中国の非難に対して中曽根さんは
中国の胡耀邦さん(総書記・当時)と中曽根さんはとても仲良しでした。それがあったので、中国で批判が起こったのを見て、中曽根さんは「胡耀邦さんの立場が悪くなるな。これはいけないな。胡耀邦さんに迷惑がかかる」と言って、この後、参拝をしなくなります。
しかし、
そしてこの後、胡耀邦さんは結局、中国で失脚します。その罪状というのが発表されています。それを見ると、日本と仲良くしすぎたことが、実は罪状に挙がっているのです。
これ以降、中国のトップは、うっかり日本と仲良くなると自分の身が危ういということになるのです。
こういう前例ができてしまった以上、今後「公式参拝」であろうがなかろうが、中国の指導者は日本の総理大臣が靖国参拝をしたら避難しない訳にはいかないくなってしまっているわけですね。
ということは、この先ずっと総理大臣が靖国神社参拝をすれば非難されるわけです。
ちなみに靖国神社を「 War Shrine」(戦争神社)と伝えている外国メディアがあるそうです。
これは誤解を招くだけですのでやめてもらいたいです。
★君が代の歌詞は誰が書いた?
日本の国歌は君が代ですが、この君が代についても意外と知らないことが多いです。
その出典は
君が代はもともと和歌でした。西暦900年代はじめに作られた『古今和歌集』に載っています。
ただし、読み人知らず(作者不詳)です。
君が代の「君」とはもちろん天皇のことを指すわけですが、後世には「年長者」を指し、おめでたいイベントで詠まれるようになります。
江戸時代になると、イベントの場でみんながこの歌を詠み上げるようになります。そのイベントとは、結婚式です。
この場合の「君が代」は、お父さんお母さんの長寿や両家の末永い繁栄ということでもいいですし、カップルがこれから永遠に家庭で円満でありますように、ということにも使えます。
縁起のいい歌として親しまれていたのですね。
ちなみに歌詞のなかに「さざれ石」というのが登場しますが、これは
本来は小さな石ですが雨水で石灰岩が溶けて、溶けたところに他の小石をくっつけて大きくなっていきます。小さな石が成長して、やがていわおとなるようなものすごく長い年月、「君が代」がずっと続きますように、ということです。
★県と県庁所在地、名前が違う理由
私が住んでいる香川県も県庁所在地が高松市で、県名と県庁所在地名が違います。
こういった、県と県庁所在地の名前の違う県が17ありますが、その理由は
「明治維新で政府に協力した藩はその名前が県名に残り、さらに県庁所在地にもなっている(と言われている)」
のだそうです。
確かに高松藩は水戸家と縁の深い藩ですので明治維新には協力していません。
ただ、それで言うと疑問なのは、明治維新で中心になった長州藩と薩摩藩です。
実は、長州藩は正式には山口藩、薩摩藩は正式には鹿児島藩だったのです(どちらも明治2年の段階での正式名称)。それがそのまま県の名前になり、県庁所在地が一致しているというわけです。
へえー、そうだったんですか。
一方、幕府側だった名古屋などは県名として残してもらえなかったのか、愛知県となりました。ほかにも明治政府に反対していた盛岡藩があった岩手県、仙台藩があった宮城県など、大きな藩だったにもかかわらず、その名は県名に残っていません。
つまり、明治政府の嫌がらせではなかったのか、という説がなるのです。本当にその通りだよとい裏付けは取れていないのですが、「そう言われている」と皆さんがおっしゃるので、とりあえず現時点での見方として出しておきます。
この理由には確証がありませんが、確かに有り得る話だと思います。
明治政府って露骨に薩長中心の人事をしてたし、政策面でも旧親藩は冷遇していましたもんね。
感想など
◆知るって楽しい!
「知るって楽しい!」ですね。
本書はその楽しさを満足させてくれる一冊です。
この本のもととなっているのはテレビ朝日の「池上彰のニュースそうだったのか!!」です。
残念ながら僕はテレビを見ないので、この番組自体は見たことがありません。
しかし、餅は餅屋といいますか、現在日本一説明がうまい人だと思われる池上彰さんですからテレビ番組の内容をもとにしている本書もすごくわかりやすくて面白い。
今回は「実はみんな知らない日本」というテーマでしたので、日本についての知ってそうで知らないことが書かれていますが、この番組が続くと本書もシリーズで続いていくでしょうから、全巻揃えていくとかなり教養が増えそうです。
日本のことでも知らないことだらけですもんね。
ほんとうに勉強になりました。
こういう教養というか雑学って直接仕事に役立つわけではありませんが、ちょっとした話のネタに知っておくと話題が広がりますよね。
そしてなにより「知るって楽しい!」を実感させてくれます。
これ、読書の満足感にとって大切な要因。
小学生のお子さんがおいでる方はぜひお子さんと一緒に読まれると楽しいですよ。
お子さんにも読書習慣が身につくかもしれません。
今後のシリーズもお楽しみに。
本書はSBクリエイティブ社様から献本していただきました。
ありがとうございました。
目次
はじめに 日本に関する素朴な疑問をわかりやすく
Part1 そうだったのか!!日本語 ひらがな・カタカナ・漢字、3つの文字を使うのはなぜ?
Part2 そうだったのか!!日本人の宗教 あなたの宗教は?日本人が神社にもお寺にも行くのはなぜ?
Part3 そうだったのか!!天皇 天皇陛下のお仕事は?皇居には何が?天皇の始まりは?
Part4 そうだったのか!!日本国憲法 憲法ってなに?憲法と法律はどちらがえらい?
Part5 そうだったのか!!靖国神社 昔は観光名所だった?意外と知らない靖国神社について!
Part6 そうだったのか!!国旗と国歌 日の丸と君が代が「国旗・国歌」に定められたのは最近!?
Part7 そうだったのか!!都道府県 道と県はどう違うの?都と府の違いは?
Part8 そうだったのか!!日本の暦 暦にある「大安」「赤口」「先勝」、説明できる?
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