おはようございます、一龍です。
20世紀を代表する日本の経営者といえば経営の神様、松下幸之助氏であると言って異論はないでしょう。
一方現役の経営者で最高峰というと孫正義氏だと思います。
今日ご紹介する『最強経営者の思考法』の著者、嶋聡氏は、この偉大な二人の経営者に間近で接した稀有な存在。
そんな著者だからこそ書ける二人の共通点から偉大なリーダー像を浮き彫りにしています。
今回は本書 第1章 松下幸之助と孫正義に見る6つの成功法則 より、二人に共通する成功法則を紹介ます。
松下幸之助と孫正義に見る6つの成功法則
★未来を予測し、予言する
松下幸之助
大阪に市電と言いますか、路面電車ができた。それを見てこれからは「電気の時代」と思いました。
孫正義
ニッチを狙え、という人はバカ。私は30年後のど真ん中の中のど真ん中を狙った。
松下幸之助氏が最初に奉公したのは火鉢店でした。
しかし、わずか3ヶ月で火鉢店が店を閉めることになり自転車商会に移りました。
ここで徹底して商売を教えこまれたそうですが、1909(明治42)年に大阪全市に電気鉄道の線路が敷設されると、「電気の時代」の到来を知ると同時に「電車が普及すれば、自転車の需要は少なくなる」と予測し、電気事業への転業を決意します。
孫正義氏はアメリカ留学中にインテルのコンピュータ・チップの拡大写真に感動して、これからはITの時代になると確信します。
そして政府刊行物センターで白書や報告書を綿密に調べ、30年後には大型コンピュータよりもマイクロコンピュータがメーンになる時代が来る。それもソフト、データを扱う部分が中心になる時代が来ると予測します。
2人共優れた経営者で、どんな分野で起業しても実績を残していたことでしょう。
しかし、未来の”ど真ん中”に焦点をあてたからこそ、偉大な経営者となったのです。
★大風呂敷なビジョンを提示する
松下幸之助
産業人の使命は貧乏の克服である。そのためには、物資の生産に次ぐ生産をもって、富を増大しなければならない。
孫正義
情報革命で人々を幸せに。
1932(昭和7)年、松下電器は中堅企業クラスまで成長していました。ここからさらに発展するために発表したのが「真使命」。
社会全体を貧しさから救い、富をもたらすのが使命というものです。
2010年、ソフトバンク創業30年目の定時株主総会の後、「新30年ビジョン」として「情報革命で人々を幸せに」という目標を掲げますが、「目標は明確に、数字で、期限を切って」が孫正義流。
「30年後のソフトバンクは、時価総額200兆円、世界トップテンの会社になってないといけない」と「大風呂敷」をひろげました。
優れたリーダーは自分の背丈よりも高い目標を公言し、自分を追い込み、飛躍させるのです。
★超長期を語り、人づくりをする
松下幸之助
建設時代10年、活動時代10年、社会貢献時代5年、計25年を1節とし、以後同じ方針・方途を時代の人々に伝えつつ、これを10節繰り返し、250年後に楽土の建設を達成しよう。
孫正義
世界の人々から最も必要とされる企業。300年続く企業をつくろう。
創業300年を超える企業に共通しているのは、第一に価値観を後継者、社員につないでいくのが上手である、第二に超長期の視点から人づくりをしているということです。
1933年、松下幸之助氏は価値観をつなぐために「松下電器の遵奉すべき五精神」を発表しました。
- 産業報国の精神
- 公明正大の精神
- 和親一致の精神
- 力闘向上の精神
- 礼節を尽くすの精神(礼節謙譲の精神)
- 順応同化の精神
- 感謝報恩の精神
松下電器では、この「松下七精神」を朝会のとき人づくりのために唱和しています。
一方松下幸之助氏の25年に対して孫正義氏は30年を1節として、300年というという超長期の目標と5000社の企業グループを創ることを標榜しています。
超長期の計画を語り、人づくりを平行して行っていくことだリーダーには必要です。
★最速で目標を達成する
松下幸之助
われわれはスピードの時代に生きている。きょう考えたことは、その日に実行してしまうこと、思いついたことはすぐ実行するという考え方で仕事を運んでいかねばならない。
孫正義
止まっていることのほうが危険です。
スピードを重視したのは何時の時代の経営者も同じです。
時間をかけなければ良い仕事ができないとか、素晴らしい発明が生まれないなどという考えにとらわれるのは危険です。
リーダーとしてのあなたは、目標達成までの時間を、3割短縮することを考えてみましょう。
そのためにはまず、自分がやろうとすることが「いつまでにできる」と確認し、「なんでそんなにかかる」と自問してみましょう。
★「思考の三原則」を身につける
松下幸之助
枝葉末節は小物の政治家でもいい。本当の政治家は100年先、200年先を考える。
孫正義
迷ったときほど遠くを見よ。
「思考の三原則」とは、
- 目先にとらわれないで、できるだけ長い目で見ること。
- 物事の一面にとらわれないで、できるだけ多面的に、できれば全面的に見ること。
- 何事によらず枝葉末節にとらわれず、根本的に考えること。
現場で現実の問題に対応していると、どうしても「思考の三原則」の反対になります。
根本的な問題より枝葉末節な問題のほうを重要な問題ととらえ、振り回されがちとなり、大きな絵、ビッグピクチャーが描けなくなります。
リーダーは重要な問題と対峙したとき、「思考の三原則」につねに戻り、決断し、実行しなければなりません。
★成功を信じ、やり抜く
松下幸之助
成功のコツ。それはな、成功するまでやめんこっちゃ。
孫正義
やり抜くこと。それが成功の近道。
経営の神様が説く成功のコツが、「成功するまでやめない」というのを聞くと、ちょっと拍子抜けしてしまいます。
ですが、「成功するまでやめない」という固い決意を抱いて、懸命に成すべきを成していく。
真心を持って事にあたれば好結果がもたらされることを「至誠天に通ず」と言いますし、やり続けていれば思いもかけない助力があったりして、道が開けてくるものです。
リーダーに必要なのは「持続する意志」なのです。
感想など
冒頭で紹介したように、著者の嶋聡氏は、松下政経塾で松下幸之助氏に間近に接し教えを受け、その後政界に身をおいた後、ソフトバンクで社長室長を約8年務め、”孫正義の懐刀”といわれた方。
日本の歴史上でも最高峰の二人の経営者に間近に仕えるというなんとも羨ましい(といっても僕には絶対務まりませんが)経歴の持ち主です。
その稀有な存在である著者が書いた本書は、二人の経営者の共通点を見事に抽出してくれています。
今回のエントリーでは第1章からポイントをピックアップしましたが、下記の目次を見てもらえばわかるように、経営者として必要な資質を本書は各項目ごとに二人から見出してくれています。
この各項目を本書をひと通り読んで感じたのですが、時代背景も業種も違った松下幸之助氏と孫正義氏ですが、大きな成功を収める経営者に必要なスキルや資質はいうのは、多くの部分で共通しているというところです。
これ、言い換えれば、時代背景や業種に関係ないということ。
もちろん、ポイントでピックアップしたように、とんでもなく大きなリターンを得ようとするのなら、”ど真ん中”を狙わないといけません。
ただ、この二人の経営者に共通するスキルや資質をもっているなら、どんな業種でもそれなりに成功するのではないかと思います。
これまで著名な経営者の言葉や考えをまとめた本はたくさん出版されていますが、松下幸之助氏と孫正義氏に間近に仕え、二人を比較して共通点を抽出している本はなかったと思います。
経営者としては読んでおきたい一冊ですね。
本書は飛鳥新社様より献本していただきました。
ありがとうございました。
目次
はじめに
第1章 松下幸之助と孫正義に見る6つの成功法則
第2章 最強経営者が実践した7つの成長戦略
第3章 最強経営者が備えている6つの条件
第4章 最強経営者になるための6つのリーダースキル
第5章 最強経営者ならではの8つの行動原理
おわりに
関連書籍
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