おはようございます、一龍(@ichiryuu)です。
今日ご紹介するのは江上いづみさんの著書、『JALファーストクラスのチーフCAを務めた「おもてなし達人」が教える “心づかい”の極意』 です。
東京オリンピック開催決定以来、おもてなし本が多数登場していますが、30年にわたる乗務の経験から語られる著者の”心づかい”は、他の”おもてなし本”とは明らかにレベルの違うまさにファーストクラスのおもてなしでした。
今回は本書で紹介されているおもてなし達人の「心づかい」30の習慣から、感心したものやすぐに真似できる習慣を紹介します。
おもてなしの達人に学ぶ「心づかい」の極意のポイント
★何かを手渡しするときは、「目→物→目」
たとえば、お客さまにコーヒーを渡するとき、まずは「お待たせいたしました。コーヒーをお持ちいたしました」と言いながら、お客様の「目」を見ます。
テーブルに書類やパソコンを広げているお客様にお渡しするときは、コーヒーをしっかり受けとっていただいたことを確認するため、コーヒー、つまり提供する「物」を見ます。
そして、お渡しできたことを確認したら手を離して、「どうぞ、ごゆっくりおくつろぎください」と言いながら、もう一度客様の「目」を見るのです。
特に、最後の「目」のときは、お客様から目を離す「目切り」を早くしてはいけません。お客様が物受け取ることに集中していて、まだCAの目を見ていないことがあるからです。
お客様が飲み物をしっかりと受け取ってからCAの目を見たとき、すでにCAが真顔に戻っていたらどう思われるでしょうか?
「CAが振り向いた瞬間に真顔になっていた」と、これもお客様の不満につながるのです。目切りを早くすることなく、ニコッと笑って、「ごゆっくりおくつろぎください」ーーーこれが心遣いを発揮した物の渡し方になります。
⇒ものを渡すときは、相手の目を見て、ものをしっかりして渡した後、もう一度相手の目を見る
★クレームには「愛の栗ようかん」で対応する
「愛の栗ようかん」というのは、次のような意味を持っています。「あい」=あいづち「くり」=繰り返し「よう」=要約「かん」=共感理不尽なクレームをつけてくる人は、おそらく何かを言いたいだけです。吐き出せば収まるという面があります。まずは、すべてを吐き出していただくために、この4つの姿勢で話を聞いていくのです。①あいづち「あなたの話をしっかり聞いていますよ」という態度を伝えるために、適度なタイミングであいづちを打ちます。ただ、言葉は選ぶ必要があります。「そうですか」「それは大変でしたね」と、誠意を感じさせる一方で、あくまでも同意とは受け取られないように工夫します。②繰り返し繰り返し(復唱)も、相手に話を聞いていることをアピールする手法です。③要約要約は、話があちこちに飛んで収拾がつかなくなったときに、お客様の話を整理するために使います。話の要点を絞るうえでも必要な作業です。④共感そして最後に、「ご不快な思いをさせてしまいました」と相手の話に共感します。
★心づかいには心づかいを持って返す
本書は、心づかいの原則と習慣について書いています。そのため、どうしても心づかいをする側の立場に重心を置いていますが、心づかいをされたときの応対も大切である事は言うまでもありません。先ほどの女性代議士のケースのように横柄な態度を取られると、サービスを提供する側もモチベーションが下がってしまいます。「もうどうでもいい。クレームを受けない程度に、適当にやろう」そんなふうに思っても、致し方ないところです。心づかいというレベルからはほど遠い「作業」になってしまうでしょう。しかし、言葉を交わしてくださるお客様に対しては、最大限の心づかいをしようと気合が入るのです。つまり、自分がより良いサービスを受けたいと思ったら、それを相手にどのように伝えるかという心づかいが必要になるのです。ただ黙っているよりも、その心づかいに対しての感謝の気持ちを言葉に表したほうが、さらなる心づかいを受けられるということです。心づかいは、めぐりめぐって自分に返ってくるーーーそのことをぜひ、心に留めておいていただきたいと思います。
★相手の気持ちを先取りする
お客様に対しては、「こういうことをしてもらえたらうれしい」と心の中で思っている気持ちを先取りし、その気持ちに沿った心づかいを提供していくことが必要です。しかも、お客様は老若男女、職業もさまざまです。それぞれの気持ちはまったく異なるので、それを想像しながら先回りして対応していくことにには、相手を思いやる心が大切になってきます。また、お客様がはっきりと望んでいらっしゃることに対応するのは、比較的簡単です。ご要望が見えていれば、対応する方法はおのずと見えてくるからです。むしろ、お客様ご自身で望んでいることを自覚していないうちに、それを先取りして察知し、適切な心づかいができるかどうかが、お客様に満足感を与えられるか、喜びを感じていただけるかの岐路になるのです。「そうそう、それを待っていたんだよ!」ハッとした表情浮かべながら、そんな言葉が返ってきたら、そのお客様に対して高いレベルの心づかいができた証拠です。でも、それは非常に難しいものです。根底に、お客様に対する深い「愛」がなければできないものでしょう。
★「正しい言葉」は心づかいの基本
「何かございましたら、ご遠慮なくお申し付け下さい」と言われたことはないでしょうか?一見、丁寧で隙のない接客用語のようですが、「何かなければ声をかけてはいけないのか」と、逆にお客様に遠慮させてしまうニュアンスが含まれています。「何か」あったときに声をかけてもらうのではなく、ご要望の言葉が発せられる前に、相手が今何を欲していらっしゃるのかを察知し、こちらからアプローチできるのがプロの対応です。特に、ファーストクラスでは「コールボタン」を引かれてお客様に呼ばれることなど、あってはならないと考えていました。
「何かございましたら」ではなく、「いつでもお申しつけください」と相手に遠慮させない言葉をかけることが大切だと思うのです。気づかいから出てくる言葉は、人を気持ちよくさせます。心づかいから生まれる言葉は、人を幸せにします。ぜひみなさんも、相手を観察する力、想像する力を養って、たくさんの人への言葉がけを大切にしていただきたいと思っています。
★「少々お待ちください」ではなく、「すぐに」
「すみません、コーヒーをください」このとき、何とお答えするのが正しい対応でしょうか?「少々お待ちください」ほとんどの人は、この対応に違和感を覚えることはないでしょう。しかし、日本航空ではそのような対応をしてはいけないと指導しています。正しい対応は、次のとおりです。「はい、かしこまりました。すぐにお持ちいたします」
(ギャレーに戻ってコーヒーを用意し、お客様にお渡しするまでの)所要時間は全く変わりません。それなのに、「コーヒーをください」と依頼したときに、「はい、少々お待ちください」と言われるのと、「はい、すぐにお持ちいたします」と言われるのとでは、受ける印象がまったく違うのです。何かをお願いしたときに、「はい、すぐにお持ちいたします」と言われれば、「すぐに」と言う言葉が印象に残り、ほとんど待たなくてもいいと感じるものです。素晴らしいサービスだと高く評価していただけることもあるかもしれません。このように、まったく同じ時間なのにもかかわらず、言葉の使い方を変えるだけで、お客さまに与える印象はまったく違うものになるのです。
もし、何らかの理由があって、本当にお待たせしなければならないときは、相手にはどの程度の時間をお待ちいただくか、誠意を持って伝えればいいのです。むしろ、「少々お待ちください」と言ったのに、その「少々」が1分なのか10分なのかがわからなければ、相手の時間を奪ってしまうことになります。「すぐお手続きいたしますが、おそらく10分ほどお待ちいただくことになろうかと思います。それまで、どうぞお掛けになってお待ちください」そう言われれば、相手も10分という時間の使い方を自分で考えられます。
この言葉は、「相手の時間を大切にする」という心づかいの基本原則につながるものです。「少々お待ちください」という名の「放置プレー」は、相手のことを考えているようで、まるで心づかいをしていないことと変わりません。
感想
本書巻頭に
相手から求められて動くのは「対応」です。こちらから働きかけるのが「心づかい」なのです。
また、「ホスピタリティ」ともすこしニュアンスが違っています。
「心づかい」には、相手をよく観察し、相手の人となりや状況に応じてどう対応するべきか自分で気づき、思いやりの気持ちを持って相手に接するという柔軟に変化しつつ状況に応じて変化するニュアンスが含まれています。
ファーストフードチェーン店の接客マニュアルとは次元が違うのです。
しかし、そういうふうにいうと「心づかい」は非常に難しいもののように感じますよね。
実際本書を読んで、JALのCAさんたちの「心づかい」の質の高さに驚愕してしまいました。
というか、正直に言ってしまうと、「こそまでしなくてもいいんじゃないか」と思ってしまう事例もしばしば。
ですので、一般社会人として本書を読む場合、特に営業などお客様に接する機会の多い業種の方は基本的なところをまずは意識してみるといいと思います。
たとえば本書で紹介されている日本航空の「接客の5原則」。
接客の五原則 「表情」「態度」「身だしなみ」「言葉遣い」「挨拶」の5つで、
視覚からくる第一印象が「表情」「態度」「身だしなみ」。そして、聴覚からくる第一印象が「言葉づかい」と「挨拶」です。まず視覚からくる第一印象は、たった3秒から5秒で決まり、相手の言葉を交わして受ける聴覚からくる第一印象は、わずか10秒から15秒で決まってしまいます。一度、相手に悪い印象を与えてしまうと、それを覆すには2倍から3倍の時間がかかると言われていますから、いかに第一印象が大切かが分かります。
また、会社のルールなのでしょうか、真夏にサマースーツを着て汗をダラダラ流しながら来られる営業の方もまだまだ見受けますが、こういったものも間違った心づかいに基づく「身だしなみ」だと思うのですがいかがでしょうか。
あと、「言葉づかい」に関しては本当に本書に登場する事例が参考になること間違いありませんのでぜひオススメです。
ともかく、本書に書かれている心づかいに基づいて考えてみると、普段当たり前になっていることの中にも改善点が見えてくると思います。
◆心づかいには心づかいを持って返す
さて、こういうことを書くとおしかりを受けるかもしれませんが、本書を読んでいてちょっと気になった点をひとつ。
本書の「心づかい」のレベルの高さに驚愕したと先述しましたが、それと同時に驚愕したのがクレームをつけるお客様のレベルの低さでした。
本書の構成上、対応の失敗例やクレームも多数掲載されているわけですが、まぁそのワガママ加減のひどさとか、マナーの悪さには呆れるばかり。
例えば足の匂いが強烈なのに靴も靴下も脱いでくつろぐ社長さんの例とか登場しますが、飛行機の中も公共の場なのですからちょっとマナーがなっていないですよね。
また、飛行機というのは料金が高いからなのか、あるいはCAさんの対応が良すぎるからなのか、他の乗り物に乗っているとき以上にお客様がわがままになっているような気がします。
日本の「おもてなし」精神は世界に特筆するべき素晴らしい習慣だと思いますが、たとえどんなお客様であっても「お客様は神様です」的な対応が果たして正解なのかという点に関しては、僕は懐疑的です。
そういった点からも考えて、お客様の立場から気をつけたいのが
「心づかいには心づかいを持って返す」
料金とサービスの交換という”売り買い”の関係が成立しているとはいえ、CAさんはサーバントではありません。
そこには対等な人間同士の関係があるわけで、であればごく当たり前の礼儀というものも存在するはずです。
幾ばくかの料金を払っているんだからとふんぞり返るようなみっともない人間にはなりたくないですよね。
「おもてなし」や「心づかい」を受けるに値する人間としての立ち居振る舞いも意識していきたいと本書を読んで感じました。
本書はDiscover21社様より献本していただきました。
ありがとうございました。
目次
はじめに おもてなしの一歩先をいく「心づかい」
第1章 おもてなし達人の「心づかい」7つのルール
第2章 おもてなし達人の「心づかい」30の習慣
おわりに 心づかいの「極意」とは
関連書籍
「心づかい」「おもてなし」のこういった本もいかがでしょう