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日本人として受け継ぐ大和魂【書評】北尾 吉孝(著)『出光佐三の日本人にかえれ』 あさ出版

おはようございます、仕事についていろいろ考えている一龍(@ichiryuu)です。

さて今朝は、あのベストセラー小説のモデルになった経営者の経営や人生哲学を学ぶ入門書的な本をご紹介。
出光佐三さんと北尾吉勝孝さんのタッグでございます。

日本人であることを誇りに思える1冊です!

 

【目次】
はじめに
序章
第1章 出光佐三という日本人
第2章 魂を培ったもの
第3章 意志と行動の起点
第4章 日本人にかえれ
終章
おわりに

【ポイント&レバレッジメモ】
★「日本人なら必ず立ち直れる」

そして終戦から二日後の八月十七日、社員一同に対し僕は三つのことを伝えた。
1.愚痴を止めよ
2.世界無比の三千年の歴史を見直せ
3.そして今から建設にかかれ
 ただ昨日までの敵の長所を研究し、とり入れ、己の短所を猛省し、すべてをしっかりと肚の中にたたみこんで大国民の態度を失うな。

<北尾さん>
普通の人は、失ったものに対し呆然としてそこに立ち尽くし、何も考えられなくなり、頭が真っ白な状態になってしまうものです。そういう状況であの訓示をされた点が、この方は本当に偉大な人なのだと思わせます。

★「一人の馘首もならぬ!」

「まかりならん。こういうときこそ、日頃唱えている家族主義を実行しなければいけない。政府は今、出光を特に庇護する力はない。出光を庇護するのは、店主であ僕の責任である。一人も辞めさすことはならん。
 出光は事業はなくなり借金は残ったが、海外にいる人材こそ唯一の資本である。帰ってくる人間は資本である。資本とは、外国の考えから言えば金であるが、出光では金じゃない、人間が資本である」

<北尾さん>
 出光さんは「うちは一人も解雇しない」と言い、こんなことでまいる日本人ではない、前を向いて進もうと鼓舞されたのです。あのときの出光さんの発言は、当時のほかのどの経営者の発言よりもすばらしいものではないかと思います。

★「黄金の奴隷になるな」

 金は尊重しなければならない、この点については、僕ほど金に苦しんだ人間もいないだろうから、金のありがたみは誰よりもわかっているつもりだ。しかし、人間が金に使われて、金儲けのために人格を雌視するようなことはあってはならない。

<北尾さん>
 出光興産を維持できたのにはいくつか理由があります。一つは今ここで紹介した、出光さんのお考えが本当にしっかりしていて、また世の消費者に求められるものであったこと。
 もう一つが、そのお考えを社員一人ひとりが理解し、実現するために一致団結して行動し続けていたことです。
 そして「本当に世の中のためになることをしている」そう思ってもらえたからこそ、世間が助けてくれました。「正しいことを続けていれば、世の中に必ず評価してもらえる」と出光さんも言われていますが、私もそう強く感じています。

★「偉大な人」と「天の配剤」

 僕自身も、よくも次から次と襲いくる艱難と戦い、よく苦労を忍んできたと思う。
 僕がいつも楽観的だと評されるのは、ひとえに苦労の賜だ。恒心を得たのである。
 僕の一生は、お互いの恩を知って仲良くする和の精神を会得することに恵まれた一生であった。言い換えれば、日本人として恵まれて育った一生である。まず子どものときに神の恩、父母の恩を知らされた。
 次に先生の恩を知らされ、他人の温情を受けた。そしてさらに、皇室・国家・社会の恩恵を受けて今日に至っている。今後もこの恩を永久に受けるものと信じている。

<北尾さん>
 出光さん力多くのことを成し遂げたのは、ご本人の努力に加え、様々なご縁、良縁と巡り会ったこともあるでしょう。しかし、本人の心根が悪ければ、悪縁と巡り会うことがあっても良縁と巡り会うことはありません。そこに「天の配剤」があるのです。それはやはり出光さんと接した良識ある多くの人が彼を見ていて、この人は立派な人だと思ったからです。
 そういう出光さんの生き様が心ある人に伝えられ、その人がまたこの人物を応援しようというよい循畷がつくられていったのでしょう。

★一に人、二に人、三に人である

 出光の主義の第一は人間尊重であり、第二も人、第三も人である。
 当たり前すぎるほど、当たり前のことで、これを主義などと言うのがおかしいのであるが、このことの実行を叫ばなければならないところに、世相の深刻さがある。父から教えられた独立不覊の精神の根本は、人間尊重であり、自己尊重であり、他人尊重である。

<北尾さん>
お金を出してくれる人や銀行は、いったい何を信じて出したかというと、出光さんや出光興産の社員の人間力です。人間的魅力に加え、この人なら借金を返してくれるだろうという信頼、それが銀行からの資金提供につながったのです。だから、ある意味「信頼」と、「人間力」が一番大事なのです。結局「人こそが資本」なのです。

★株式公開は悪だろうか

 株式は非公開にしている。戦時中に軍が株式会社化しろと言ったから株式会社化したまでで、本当ならばそれさえも不要と考えている。人間が資本だからその資本を売り出すわけにはいかないということだ。
 確かに創業後十年間は、金が回らず死ぬか生きるかという非常な苦しみがあった。
 しかしその間に従業員が覚えたことは、人間がしっかりして、力を合わせておれば、どこからか金は出てきて、難関は突破していけるということだ。
 そのような経験を踏まえ、「人が資本である」という言葉ができた。

<北尾さん>
 出光さんは「株式を公開すると、出光とはまったく関係のない人に株を買われてしまう、無関係な人になぜ配当を出さなければならないのか。会社が得た利益は従業員、それを支援してくれた銀行、あるいは取引先に還元していくものであるべきだ」と思われていたのではないでしょうか。<中略>
 彼の姿勢としては、銀行から金を借りるのは是です。しかし「金持ちの金は借りない」と言われたように、資本市場を通じて投資家から金を調達するのは非。こういう基本的な考え方を持たれていたような気がします。
 投資家に配当を出すのはけしからん、キャピタルゲインをもたらすのはけしからんという考えはあるかもしれません。しかし投資家はちゃんとリスクを取っています。リスクに対する利益は当然享受すべきものです。資本主義経済の仕組みというものの中で、出光さんは一側面だけを見てきたように感じます。

★社員は皆、自主独立の経営者である

 出光では従業員全員が経営者であると言える。従業員と僕との間に区別をつけていない。その一例として、創業のときから、僕は従業員と同じように給料を受け取っているが、これは僕が資本家ではなかった、ということを表してはいないか。
 もちろん給料がいくらか違うとか、名前の呼び方が店主と従業員とかいうことはあるが、仕事の上ではお互いに独立して、僕は僕なりの仕事をしているし、従業員は従業員なりの仕事をしている。
 言い換えれば、各自の受け持ちの仕事の上では、お互いに自主独立の経営者だということだ。全員が従業員であり、経営者であるとも言える。
 出光の若い人が、「私は経営者です」と言っているそうだが、それは皆が権限の規定もなく、自由に働いているということであって、僕はこういう形が理想だと思う。

<北尾さん>
 その愛情は出光さんの場合はどこから来ているかというと、人間尊重の姿勢です。部下であろうが上司であろうが、お互い人間同士だという態度です。
 もちろん職場における上下の差はあり、下の者は上の者に対して礼を尽くし、敬意を払うことは組織を秩序立てるために必要ですが、一番大事な根本はお互い人間であり、年や地位の違いはあったとしても、相手を尊重するという態度を持っていなければならないと思います。

【感想など】
◆『海賊と呼ばれた男』のモデル
まだまだピックアップしたいところが満載なのですが、気になるところが本書の場合はあまりに多過ぎて本書前半まででストップしました。

本書はベストセラー、 『海賊とよばれた男』のモデルとなった出光佐三さんの著書からSBIホールディングスの北尾吉孝さんがそのエッセンスを抜き出して解説、さらに所見を述べられる形式で出光さんの経営・人生哲学に迫るものです。

恥ずかしながらワタクシは『海賊と〜』を読むまで出光さんのことを知りませんでした。
同時期の偉大な経営者として松下幸之助さんはよくビジネス書にも引用され、登場されますが、出光さんはほとんど見かけません。

ですが、『海賊と〜』を読んで、「こんな日本人がいたのか、こんな経営者がいたのか」と驚きと感動で震えました。

たぶん同じ経験をした方は多いと思います。

で、出光さんに興味を持ったところへこの本の登場。
出光佐三入門書として多くの人に読んいただきたく、今回ご紹介します。

◆日本人なら当たり前の経営
出光さんの会社経営の方法は「出光の七不思議」と言われるほど、ブラック企業等という言葉が存在する現代の我々から見るとかなり羨ましくもあり、同時に不思議でもあります。

「定年が無い」「タイムカードが無い」「社員が残業代を受け取らない」等々

そんな状態で会社がまわるの?と普通は思いますよね。

出光さんご自身は、経営もご自身の人生も含めて(だと思う)

「僕は日本人として、日本人らしく、実行の道を歩いてきた。妥協を排し、誘惑に迷わず、ただひたすらに日本人の道を歩いてきたにすぎない」

とおっしゃっています。

「日本人の道」?

これについて北尾さんは

「自反尽己」すなわち己に反って、己を尽くし、自分の中に潜在しているものを十分発揮すること

と解説されています。

ちょっとむずかしいですが。ようするに日本人としての資質を引き出すことができればそれはできるのだと。

この「日本人の資質」についてはひと言では言い表しにくいですね。

一応、本書では「大和魂」と表現していて、その結実したものが「武士道」という位置づけで解説してくれています。

そこには和を重んじるとか、精神性の高さとか、日本的な美徳が内包されているわけです。

ただ、昨今の出来事で一番端的にそれを表現しているのは、東日本大震災での東北の人々の秩序だった行動でしょう。

特に(不謹慎ですが)フィリピンでの台風被害後の治安の悪化のニュースを見るにつけ、日本民族の資質がいかなるものかを改めて感じるのはワタクシだけではないと思います。

その我々日本人が生まれながらに持っている、先祖が代々作り上げ伝えてきた資質を引き出して、それに基づいて生き、それに基づいて経営すればいいというのが出光さんの主張です。

◆愉快に働く
では日本人の資質を引き出し、日本人なら当たり前の経営とはいったいどんな経営なのか。
ヒントはこの言葉にあると思います。

 給料か仕事に対する報酬でないとすれば、社員に対する報酬は何かということになるが、それは適材適所によって自由に働かせ、人生を楽しませることだ。
 日々の仕事を楽しんで時間も忘れ、公私の別も忘れて愉快に働くのが本当の人生ではないだろうか。

「愉快に働く」、「仕事が楽しくて仕方がない」、・・・えっ、ほんと?って思ってしまいますよね。

ワタクシも含めて多くの人が生きるために(お金のために)、人生の貴重な時間と労働力を提供して働いていると思います。
そういう人たちにとって、仕事は苦痛でしかありません。

だからこそ「好きなことをして生きていきたい」という人が後を絶たないわけですし、ノマドなんてものが流行したりするわけです。

でも、世の中には確かに社員が自主的に「愉快に働く」、私を滅して会社のため、地域のため、顧客のために働いて幸せを感じる会社が存在するのです。

実は本書を読みながらずっとある本のことを思い出していました。
それは 『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズです。

この本に登場する会社は、どこも離職率が低く、社員満足度の高い会社ばかりです。
そしてその経営者の経営方針には出光さんの経営と通じるものがあります。

たとえば、社員を大切にすること。

社員を大切にするというのはなにも高い給料を支払うとか、福利厚生を充実させるということではありません。

それは社員の人生に責任を持つことです。

ところが今は、非正規社員の割合を増やし、あるいは正社員の肩書きを担保に超過労働を課したり、それでいて経営が苦しくなるとリストラをする。

長く不況だったから、円高が続いたからとよく言い訳されますが、出光さんは敗戦のどん底の時でも社員を一人もクビにしなかったじゃないですか。

まだまだ厳しい経済状態(田舎ではアベノミクスなんてまったく関係ないです)が続いていますが、いまこそ大和魂を振るい立たせる日本的経営を見直す時期なのではないでしょうか。

そして、日本人自身も自分たちの血に流れる先祖から受け継いだ資質を再発見する時だと思います。

本書がそのきっかけになることを願います。
そして、日本的経営が全世界に広がって、グローバルスタンダードとなれば、本当に世界は変わるんじゃないかと思っています。

まずは日本人の我々から、「日本人にかえれ」を実行しましょう。

本書はあさ出版編集者の吉田様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】
出光さんの御著書、あるいは出光さんに関連した本をリストアップしました。

 

海賊とよばれた男・出光佐三が自ら語る「和」の思想。 「人間尊重」を理念に掲げ、社員は家族、非上場でよい、タイムカードはいらない、定年制度はいらない、労働組合はいらない等、独特の社風のもとに出光興産を一代で築いた出光佐三。彼が、マルクスの思想の目指すところは出光と同じであり、ただそこにいたる方法が決定的に相違することを示し、その上で日本人が世界の平和と福祉に貢献するための道標を明らかにした快著。

 

和の経営哲学を明らかにした快著。「お互いのために自発的に自由に働いて能率をあげる人間の和の姿が具現化した経営」の理念を語る。

 

一度も「金を儲けよ」とは言わない、「社員は家族である」との信念を貫き通す―出光興産創業者・出光佐三は、若くして石油業に飛び込み、苦闘を重ねて拡大した会社資産を敗戦で喪失。だが社員の馘首はせず、海峡封鎖されたイランから日章丸で石油を購入、占領下の日本で国際石油メジャーを相手に独立自尊を貫いた。「黄金の奴隷となるなかれ」など、生涯を戦い続けた経営者が残した魂の言葉。

 

英米を欺き、官僚に楯突き、戦後の日本人に希望を与えた男。出光は一途なほど日本という国を愛しながら、国家官僚を徹底して嫌った。戦時中は軍部にも堂々と楯突いた。その行動は奇想天外。つねに人の意表をつき、非常識と罵倒される。だが、時が移ると、世は出光の決断にいつの間にかなびいていた。

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