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不屈!【書評】ポール・ジョンソン(著)『チャーチル』 日経BP社

おはようございます、Vサインをピースサインと呼ぶのに違和感がある一龍(@ichiryuu)です。

さて今日は、チャーチルの伝記をご紹介。
あらためて伝記って面白いなと思うと同時に、現在の日本が学ぶべき内容がぎっしり詰まっていることに気づく一冊でした。

 

【目次】
第1章 若武者
第2章 自由主義の政治家
第3章 失敗の教訓
第4章 成功と悲惨
第5章 荒野の予言者
第6章 最高権力と挫折
第7章 栄光の黄昏
エピローグ 

【ポイント&レバレッジメモ】

「ヨーロッパで戦争が起これば、胸が引き裂かれるような残酷な戦いにしかなりえない。そのなかで勝利の苦い果実を得るには、おそらく何年にも渡って国内の男性を総動員し、平和な産業をすべて止め、社会の活力をすべて一つの目的に注ぎ込まなければならないだろう」。そして、こう、付け加えた。「民主主義は君主国の内閣より執念深い。国民の戦いは国王の戦いより恐ろしいものになるだろう」。こう予言したのは、1914年の破局の十年以上前である。

 新たな富を築く過程は社会全体の利益になる。古い富を使う過程は有益ではあるが、活力がはるかに乏しい。世界の富のうちかなりの部分は毎年生産され、消費される。過去の債務の重荷を振り落とし、確実に良い時代に入るには、新たな富を創造する活気に満ちた活動が不可欠である。

 わたしは深く安堵した。ついに、すべての局面を指揮する権限を与えられたのだ。わたしは運命とともに歩いているように感じた。これまでの人生はすべて、このとき、この試練のための準備に過ぎなかったと感じた。十年にわたって政治の荒野をさまよっていたので、通常の党派感情はなくなっていた。それまで6年間に何度も何度も、詳細にわたる警告を発し、いまでは恐ろしい警告が現実になっているのだから、それに反論できる人はいない。戦争をはじめたとか、戦争への準備を怠ったとして非難されることはない。戦争についてはよく分かっていると感じていたし、失敗するはずがないと確信していた。だから朝が待ち遠しかったが、ぐっすり眠れた。元気づけてくれる夢など必要はなかった。事実は夢に優るのだ。(1940年5月10日首相就任、組閣の日)

「閣僚に話したのと同じことを、下院のみなさんにも申し上げる。わたしが提供できるのは血と労苦と涙と汗、これら以外に何もない」。
「わが目的は何か。それは勝利である。いかなる犠牲を払っても勝利、いかなる恐怖に襲われても勝利、いかに遠く険しい道であっても勝利を収める。勝利なくしては、生き残ることはできない」。(1940年5月13日下院での演説)

 われわれは決してひるまないし、屈しない。フランスで戦い、海で戦い、高まる自信と強まる力をもって空で戦う。いかなる犠牲を払おうともこの島を守る。われわれは水際で戦い、上陸地点で戦い、ので戦い、マチで戦い、丘で戦う。われわれは決して降伏しない。(1940年6月4日)

 暗い日々だと語るのはやめよう。厳しい日々だといおう。いまは暗い日々ではない。偉大な日々、我々の国にとってかつてないほど偉大な日々なのだ。われわれはみな、神に感謝しなければならない。一人ひとりがそれぞれの持ち場でこの日をわが民族の歴史で長く記憶されるようにする動きへ参加するのを許されているのだから。(1941年10月29日ハロー校にて)

 ビーバーブルック卿が評したとおり、チャーチルは「決して報復を求めはしない」のだ。チャーチルの一貫した主張を、見事に示した言葉がある。「戦争には決断、敗北には闘魂、勝利には寛大、平和には善意」。

 フェアプレー、同胞への愛、そして正義と自由の尊重によって、辛酸をなめた世代がこの忌まわしい時代から抜け出し、晴れやかに意気揚々と前進できる日が来るだろう。それまで、決して怯まず、決して倦まず、決して諦めてはならない。(1955年3月1日、最後の演説)

「何もかも飽き飽きしたよ」が最後の言葉だった。だが、ベッドの周りに集まった人々を眺めて、こう付け加えたという。「旅は楽しかったし、やってみる価値があった。一度はね」(1965年1月24日)

【感想など】
ウィンストン・チャーチル。

イメージは、眼光鋭く、葉巻をくわえ、勝利のVサインをするおなじみのあの写真。
(画像検索すると、実際にはVサインしているときはニッコリしてる写真が多いですね)

そして歴史の教科書には必ず登場するヤルタ会談でのローズベルト、スターリンと並んで写っている写真。

それに、「絶対に屈服してはならない。絶対に、絶対に、絶対に!」といった名言。

こういったものを断片的には知っているのですが、これまでちゃんとした伝記を読んだことはありませんでした。
あまりにも有名な、20世紀を代表するリーダーの一人でありながら、しかも、日本がかつて戦った国の首相でありながら、意外と知らない。

で、今回献本していただき、読む機会を得たので喜び勇んで読ましていただいたのですが、これはすごい。
国家的危機状態のときに、この人しかいないと思われるリーダーです。

司馬遼太郎風にいえば「小さな島国の危機を救うために使わされた宿命の人」と言ったらいいのでしょうか。

ともかく、東日本大震災の後、原発への対応や復興よりも政局に右往左往していた当時の民主党のリーダーとは危機対応能力が全然違う。

そういうと、「戦争は天災とちがってある程度予測がつくから準備ができる」と言う人もいるでしょうが、ナチスヒトラーの台頭が非常に危険であることを警告し続けていたのはチャーチルだけだし、すでに第1次世界大戦前にヨーロッパでの戦争が非常に悲惨なものになると予見していたのもチャーチルなのです。

この予見力はいったいどうやって養われたのか?
今回本書を読んでいくつもの注目すべきポイントがあったのですが、ワタクシが一番注目したのはそこでした。

本書では歴史的想像力と表現されていますが、チャーチルの歴史に対する強い関心と洞察力は、どうも若いときから養われていたようです。

若いときに赴任したインドでのエピソード。

「インドでは軍隊の勤務は朝は早くからはじめるが、気温が上がる昼間には長い休憩時間がある。ほとんどの将校は昼寝に使ったが、チャーチルは違っていた。読書に使ったのである。トマス・マコーリーの『イングランド史』とギボンの『ローマ帝国衰亡史』はむさぼり読んだ」

また、

チャーチルは、「どうすれば未来予測能力が身につくか」と周囲に問われるたびに、「歴史に学べ、歴史に学べ」と答え、「国家経営の秘訣はすべて歴史の中にある」と述べたという。

「過去の歴史の出来事が反復されて現在に表れるパターンを見抜くパターン認識の能力が優れていた」と評されるように、歴史への深い洞察が歴史的想像力を養わせたようなのです。

この点は非常に興味深いですね。

たいていの場合歴史というのは国家の営みの記録、つまりその国の政治の記録ですから政治家にとっては他に類がない最高のテキストでしょう。

経営者が過去の偉大な経営者の本を読むように、本来政治家というのは一番歴史から学ばなければならない職業だと思います。

あべちゃん、歴史の勉強してる?

ただ、チャーチルのすごいところはそれだけではありません。
テクノロジーや新技術に対しても造詣が深い。

たとえば、戦争の主役は飛行機になると早くから理解し、準備をさせている点。
いくら歴史をまなんでも、普通ここまでは考えがいたらないでしょう。

信念の人でありながら、創造性とアイデアの満ちた柔らかい思考ができる人だったんですね。

さて、日本もいま外交上は危機的状況にあります。
果たして何人の政治家は危機を予見して警告を発しているのか?

憲法改正論も白熱してきた昨今、本当の意味での危機に備えるとはどういうことか?危機が起きたときにはどうするべきか?

そういった観点からも本書を読んでおくといいかもしれません。

海をはさんだ向こうから、軍事的侵略を受ける。
歴史はパターンで繰り返しますから。

本書は日経BP社、東城様より献本していただきました。
ありがとうございました。

【関連書籍】

★本書中で推薦されているチャーチル関連本

 

植民地での従軍・観戦に、福祉政策の着手に、第一次大戦の作戦指揮に、時には反革命に情熱を傾け、歴史を書くことで政治家としての背骨を作ってきたチャーチル。彼は1940年、ただ一国でナチ・ドイツに対峙する祖国を率いて立つ。イギリスの過去と現在を一身に体現した彼は、帝国没落の暗黒の時を、輝ける一ページに書き変えた。資料を博捜し、貴重な見聞を混えて描く巨人の伝記に、あらたに「チャーチルと日本」の一章を増補した。

 

ヒットラーの攻勢の前に、絶体絶命の危機に陥った斜陽の老大国イギリス。その時、彼らが指導者に選んだのは、孤高の老政治家チャーチルだった。なぜ国民はチャーチルを支持したのか。なぜチャーチルは危機に打ち克つことができたのか。波乱万丈の生涯を鮮やかな筆致で追いながら、リーダーシップの本質に鋭く迫る。今こそ日本人が学ぶべき“危機の指導者論”。

★チャーチル自身の著書

 

強力な統率力と強靭な抵抗精神でイギリス国民を指導し、第二次世界大戦を勝利に導き、戦時政治家としては屈指の能力を発揮したチャーチル。抜群の記憶力と鮮やかな筆致で、本書はノーベル文学賞を受賞。

【管理人の独り言】

チャーチルの関連本ではDiscover21さんもちょうどこの本を出したばかり。

 

本書は、名言の達人とされるチャーチルの言葉から150を厳選。
あらゆる人生の危機を乗りきり、困難な局面を逆転する術、そこから成功に満ちた豊かな人生へと転換する術、人生を慈しみ味わう術を学ぶことができる一冊。

こちらは名言集ですが、演説かとしても著述家としても超一流のチャーチルですから、心に響く名言と出会えるのではないでしょうか。

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