世界の博物館、第43号は国立民族学博物館です。
1970年の大坂万博の跡地の広大な記念公園の中にあるこの博物館は、緑豊かな公園から一歩なかに入ると別世界。
世界中のエネルギッシュな展示品が見るものを魅了します。
【今号の一押し】
この博物館はいくつかのセクション、テーマに分けられて展示されている。
そのなかの一つ、オセアニア展示場のこの展示を今回は一押しにしたい。
全長8mほどの小さな木造カヌーなのだが、ただのカヌーではない。
1975年に開催された沖縄国際海洋博覧会を覚えていらっしゃるだろうか?
その会場にミクロネシアのサタワル島を出発して、3000kmの航海を経て到着したのがこのカヌーなのです。
これは沖縄海洋博の企画として行われた航海でしたが、学術上非常に大きな意義を持つ航海でした。
まず、この航海に使われた写真のカヌーがオセアニアの伝統的建造技術で作られたものであること。
船底と舷側は島のパンノキをくりぬいて作り、接合はヤシの繊維で作ったロープを用いて縛る。
金属を一切使わないその技術は、およそ3000年前から伝わる技術です。
そして、もう一つはこの航海が海図やコンパスなどの近代的航海用具を使わずに、星や海流、風を利用して3000km走破したということ。
つまりこの事実は、数千年前からわれわれの祖先であるアジア系の人々が太平洋に進出していたことを裏付ける実証となるということなのです。
シングルアウトリガーのこんなシンプルな帆走式カヌーで太平洋を自由に航海していた。
現代のわれわれの想像以上に、南太平洋の往来は盛んだったのかもしれません。
さて、この博物館では日本列島の多様な文化も紹介されています。
小さな島国の日本ですが、意外なほど多様な文化を内包していることに気がつくと思います。
日本の文化ってなかなか奥深い!
色々な発見があると思いますよ。
次号はアクロポリス博物館です。