おはようございます、3連休は読書三昧だった一龍(@ichiryuu)です。
さて今日は、もと『anan』『Hanako』の編集を担当し、数々のブームを仕掛けてきた島田始さんのアイデア本をご紹介。
アイデア発想法、豊富な事例、そして発想のためのポイントなどなど、とにかく中身の濃い本でございます。
【目次】
はじめに
第1章 「なくてはならない人」になる
第2章 本質を見極める力をもつ
第3章 喜びも悲しみもともにする
第4章 人生でいちばん大切なものを知る
あとがき
【ポイント&レバレッジメモ】
★「自分の困った」を探せ
もし、あなたがアイデアを出すことに苦労しているのなら、まずは自分がコンシューマー(消費者)ならどうか、という原点に戻ってみればいい。
なぜなら、あなたが困っていることはみんなも困っているからです。<中略>市場調査会社を高いお金で雇って、大規模な調査をする必要なんてありません。コンシューマーの姿が見えないデータに価値などないのです。
「自分たちの困った」は結果的に数万人、何百万人が共感できるものになります。
自分が困ったことを解決する。それがソリューション、つまりは「問題を解決すること」の原点であり、アイデアに出会うための重要な発想法なのです。
★「VS発想法」で世間の注目を集めろ!
「ライバル同士の対決」はなぜ、これほどまでに人気を集めるのか?
実は、これには秘密があります。
人の頭は元々「怠け者」です。たくさんの数を認識したり、面倒なことを嫌がる傾向にある。だからこそ、対決という極めてシンプルな図式を好みます。
対決の最大の特徴は、戦う2者以外の人やチームは、観客の頭の中からすっかり消えてしまうことです。
「あなたはバルセロナ派?レアル・マドリード派?」
「大島優子派?前田敦子派?」
「Mac派?Windows派?」
と聞かれれば、多くの人は、その示された二択の中から選ぶことになります。ほかにも数多くの選択肢が存在するはずなのに、もうその2つしか見えなくなるのです。
★「常識のウソ」を探せ
常識は平気でウソをつきます。「三ツ星だから、おいしいに決まっている」。本当にそうでしょうか?多くの人は簡単にそのウソに騙され、あるいは、騙されたことにすら気づかない場合もあります。
これを逆から見れば、大多数の人が常識に支配されているからこそ、常識を疑い、「常識のウソ」を見つけることによって、良いアイデアと出会える確率も高くなるということです。
常識を軽やかに鼻で笑い、自分だけの常識を見つけた人が、未来を切り拓いていくことができるのです。人々は、そういう人のことを「あまのじゃく」「変人」と呼び、成功すれば「イノベーター」と呼びます。僕らはもっと、いい意味で「へそまがり」になるべきなのだと思います。
★「今だけ・ここだけ・あなただけ」を探せ
ファンでい続けてもらうためには、アイデアを出し続ける必要がある。そう、「ブランディング」が必要となります。
こうも言えるかもしれません。
単発のヒットアイデアは客を作り、ブランディングはファンを作る。
一発屋で終わらないためには、つねに進化し続けること。それによって、一過性のお客さんをファンへと固定化させることができるのです。
そのためのアプローチの一つが、流行のユビキタス環境とは全く逆の方法をとること。つまり、ユビキタス環境の代名詞である「いつでも・どこでも・誰にでも」ではなく、「今だけ・ここだけ・あなただけ」になる方法を探すことによって、ファンを獲得するアイデアが生まれます。すべてのサービスやホスピタリティの基本は、この「今だけ・ここだけ・あなただけ」にあるのです。
僕はこれをアンチユビキタス発想法と名付けています。
★オリジナルのアイデアを発想するための微差を見つける5つの方法
1. とにかく現場に行ってみる
2. 資金も時間も投資する覚悟を決める
3. セグメントフリーな友達を持つ
4. 自分のアタマで考える
5. 物事を面白がる習慣を持つ
★感性を磨け
情報は、感性で決まります。あなたがそれを情報であると認識しない限り情報にはならない。
せっかく値千金の情報があったとしても、それを完治する能力がなければ、その価値を知り得ないということです。何回も言います。感性を磨くことが情報を得ることなのです。
情報は、お金と一緒で、多く持つ人の元に集まる傾向があります。しかし、ただ情報を多く集めても、使わなければ時間の経過とともに劣化していき、陳腐化します。だから、使えないとわかれば、それを捨てる勇気も必要です。たとえ、自分からわざわざお金を払って獲得したとしても、です。
距離が大きくなると歪む、というのは、伝言ゲームを思い浮かべてみればわかるでしょう。伝わる距離や媒介する人が増えれば増えるほど、元の情報と違ってきます。
このように、情報とは、とても注意深く扱う必要があるものなのです。
逆に、取り扱いが難しいからこそ、これを使いこなせるようになると、何をやるにせよ、優位に事を進められるようになります。
【感想など】
すごく内容の濃いアイデア本でした。
それもそのはず、著者は『anan』『Hanako』で、ティラミス、アウトレット、海外ウェディングなど数々のブームを仕掛けてきた方。
あまりにも濃すぎて、とても全体的に紹介できないので【ポイント&レバレッジメモ】では、主に本書の前半部のアイデア発想法を中心にピックアップしました。
第1章に9つのアイデア発想法が紹介されているのですが、たくさんの事例とともに紹介されていて、それを「うちでも使える方法はないか?」と読むだけでもこの本を手にする価値があるかと思います。
いやほんとすごい。
ワタクシは流行に疎いですが、ワタクシの周りで流行っているものをよく考えると、ここで紹介されている9つの発想法のどれかに当てはまってしまうので、納得。
たとえば、讃岐うどんなんて完全に「今だけ・ここだけ・あなただけ」のアンチユビキタスですよ。
数年前にうどんブームが始まって、県外からうどんを食べに来られる方が後を絶たないのですが、地元民としては嬉しいと同時に、とっても疑問でもありました。
「なんでわざわざ高い交通費と時間をつかって、うどんを食べにくるんだろう?」
ワタクシにとってはあまりに慣れ親しみ過ぎて、その特別感がわからなかったのですが、本書を読んで理解できました。
うどんは生もの。
麺は数時間すればのびきるし、出汁も1日経てば味が変わってしまう。
最近はお土産用のうどんもあるし、インターネットで取り寄せも出来るけれど、店で釜から上がった出来たてのうどんには遠く及ばない。
それに讃岐うどんの魅力はロケーションだったり、大将や女将さんの人柄だったりと、現地に行かないと味わえない要素がとっても多い。
なるほど、讃岐うどんはアンチユビキタスだったんだ。
さて、
讃岐うどんの場合は意図せずしてそうなったわけですが、消費者の立場から言わせていただくと、アイデアを仕掛けるなら熟慮に熟慮を重ねてうまく消費者をのせて欲しいものです。
というのも、たとえば”VS発想法”は強力な宣伝効果が期待できる反面、諸刃の剣だったりするからです。
本書で取り上げられている例にAppleに挑むサムスンがあります。
アップルとサムスンが世界中でお互いに訴訟を起こしていることに関して
世界で「アップルVSサムスン」として取り上げられることによって、多くの人の頭の中で「サムスンはアップルに匹敵する唯一のライバルなんだ」というイメージが形成されるからです。
と、著者は語っています。
確かにこのニュースが流れれば流れるほど、そこにはソニーもパナソニックも存在感が消されているいくのかも知れません。
しかしこの訴訟合戦には、「サムスンはしょせんアップルの製品を真似するパクリ会社」というイメージを広めてしまっているという一面も忘れてはいけません。
また、書評ブログをやっていてVS発想法で思い出すのはこの本。
勝間ブームのさなか、2009年の後半に香山さんが著書で努力至上主義に噛み付いたことに端を発したのがこの戦い。
そもそも、人の生き方や価値観なんて千差万別。
二人の議論がかみ合うはずもなく、結論も出るわけではない。
当ブログの古くからの読者さんはご存知かと思いますが、ワタクシもかなり勝間さんには影響を受け、ファンでもあったのですが、「三毒追放とかいいながら、やけに他人に噛み付く人だな」とイメージ悪化。
そして決定的だったのが2010年の正月に放送された勝間VS香山の対談番組。
いやまだここまではいいんですよ。
問題はこの数日後に上記の本が出版されたこと。
「なんだこの対決は結局勝間さんのマーケティングだったのか」と一気に冷めてしまい、以後、勝間さんの本はほとんど読まなくなりました。
(おっと、こうやってブログで取り上げているということは、宣伝効果としては成功しているということか(笑))
そういえば、知り合いの書評ブロガーさんがお二人の対決を「馬場VSラッシャー木村」と称していましたが、VS発想法を仕掛けるなら本書にも登場している、日本一のトマトはどっち?熊本県VS宮崎県みたいなほのぼのとしたものをお願いしたいですね。
さて、長々と思いつくまま書いてしまいましたが、本書の本当のキモの部分は実は後半。
情報の収集と接し方、未来の予測の仕方など、アイデア発想のための言わば深遠部分についての解説が書かれています。
これが秀逸。
特に、”決まっている未来があるのだから、そこから予測して仕掛けていく”という部分は、今日本に一番足りない部分かもしれません。
詳しくはぜひ本書でお確かめいただき、多くの人が来年、ブームを仕掛け、日本を活性化してくれることを望みたいと思います。
本書は三浦崇典様より献本していただきました。
ありがとうございました。